「やや、これはすごい。」
久しぶりに横山作品っぽい台詞を口にして驚くバビル2世。
山野家が2、3軒入りそうな大広間に、同時に3桁単位で席につけそうな大きさのテーブルが3つ並べられている。
すでにテーブルにはローソクに火がつき、花がいけられ、果物の入った籠が置かれている。食事をしている生徒も多い。
それぞれの机に同じ色のマントを身につけた生徒同士、分かれて座っている。どうやらマントの色は学年を意味していて、
学年ごとに座るテーブルが決まっているようであった。
『そういえば、朝やってきた二人もルイズと同じ黒いマントを身につけていたな。』
黒マントの生徒は真ん中のテーブルについているところを見ると、ルイズたちは2学年であるようだ。
食べ終えた生徒の中には仲間で集まって騒いでいるものもいる。朝からテンションが高いのは、呼び出した使い魔について互いに
批評しあっているゆえらしかった。
『アルヴィーズの食堂』
将来のメイジを育成する学園の食堂といっても、そこに集まっている貴族の子弟はにきびも花盛りの子供である。
やっていることが元の世界の学生と変わらない事実にバビル2世は妙な安心感を覚えていた。
ルイズはそんな一団を避けて席に着く。
当然のようにバビル2世も席に着こうとする。
が、ルイズに手で制されてしまう。
「うん?」
制した手が床を指す。そこには皿が1枚。
透けてしまいそうな薄く小さな肉片入りスープ。皿の横に固そうなパン切れが2枚。
ルイズの前に置かれた料理がWiiとPS3だとするならば、それはバーチャルボーイといった感じである。
「あのね? ほんとは使い魔は、外。あんたはエルフだっていうし、私の特別な計らいで、床」
先ほどからなぜか機嫌が悪いままのルイズが目もあわせずに言う。
むむむ、と汗を流して皿を見るバビル2世。
始祖ブリミルと女王陛下にお祈りをしてから、ルイズは食事を始めた。
バビル2世はしかたがないので口に放り込むが、すぐになくなってしまう。当然少しも足りない。
やおらテーブルの足を指で叩いて拍子をとりながら、歌いだすバビル。
「長剣よ 帰ろうか 俺には 肉を 食わせない ♪」
「馮驩じゃないんだから…」
呆れたようにバビル2世を見るルイズ。
久しぶりに横山作品っぽい台詞を口にして驚くバビル2世。
山野家が2、3軒入りそうな大広間に、同時に3桁単位で席につけそうな大きさのテーブルが3つ並べられている。
すでにテーブルにはローソクに火がつき、花がいけられ、果物の入った籠が置かれている。食事をしている生徒も多い。
それぞれの机に同じ色のマントを身につけた生徒同士、分かれて座っている。どうやらマントの色は学年を意味していて、
学年ごとに座るテーブルが決まっているようであった。
『そういえば、朝やってきた二人もルイズと同じ黒いマントを身につけていたな。』
黒マントの生徒は真ん中のテーブルについているところを見ると、ルイズたちは2学年であるようだ。
食べ終えた生徒の中には仲間で集まって騒いでいるものもいる。朝からテンションが高いのは、呼び出した使い魔について互いに
批評しあっているゆえらしかった。
『アルヴィーズの食堂』
将来のメイジを育成する学園の食堂といっても、そこに集まっている貴族の子弟はにきびも花盛りの子供である。
やっていることが元の世界の学生と変わらない事実にバビル2世は妙な安心感を覚えていた。
ルイズはそんな一団を避けて席に着く。
当然のようにバビル2世も席に着こうとする。
が、ルイズに手で制されてしまう。
「うん?」
制した手が床を指す。そこには皿が1枚。
透けてしまいそうな薄く小さな肉片入りスープ。皿の横に固そうなパン切れが2枚。
ルイズの前に置かれた料理がWiiとPS3だとするならば、それはバーチャルボーイといった感じである。
「あのね? ほんとは使い魔は、外。あんたはエルフだっていうし、私の特別な計らいで、床」
先ほどからなぜか機嫌が悪いままのルイズが目もあわせずに言う。
むむむ、と汗を流して皿を見るバビル2世。
始祖ブリミルと女王陛下にお祈りをしてから、ルイズは食事を始めた。
バビル2世はしかたがないので口に放り込むが、すぐになくなってしまう。当然少しも足りない。
やおらテーブルの足を指で叩いて拍子をとりながら、歌いだすバビル。
「長剣よ 帰ろうか 俺には 肉を 食わせない ♪」
「馮驩じゃないんだから…」
呆れたようにバビル2世を見るルイズ。
「するとルイズは孟嘗君ということになるな。孟嘗君は客人を決して粗末に扱わなかったと聞くが?」
「仕方ないわね。」
孟嘗君とか馮驩っていったい誰よ、とぶつぶつ言いながらほくほくと湯気をたてる鳥のソテーをナイフで解体していくルイズ。
そして、皮だけをバビル2世の皿に落とす。
「げえっ!これは皮だけで中身がないじゃないか。」
「癖になるから、肉は駄目。」
妙に意地になってつっけんどんに言うルイズ。
どうだ、ご主人様に逆らったら食事すらままならないのだ。自分の立場を思い知るがいいわ。
と本人はこの仕打ちの理由をそう思い込もうとしているが、実際のところはまったく別の感情がそうさせていることにも気づいていた。
だがプライドがその事実を押さえ込んで、『使い魔に対する躾』なのだと必死に自分を納得させようとしていた。
「………」
バビル2世が突然立ち上がる。忘れていたへそくりが出てきたような表情をしている。驚きと喜びが同時にやってきたような顔だ。
「な、なによ。」
嫌がらせに近い躾をしたのにそのような態度をされて怯えるルイズ。そういう趣味のエルフなのだろうかと、少し顔が赤くなる。
「ごめん、急用ができたんだ。またあとで」
慌てて出て行くバビル2世。呆然と見送るルイズ。
が、その様子は普通ではない。別の理由があるのだろうか。
「………何よ、あれ。後でお腹空いたって言っても何もあげないんだから」
妄想がエスカレートして茹でたこのようになっていたルイズであったが、それを打ち消すように頭を振り、あくまで平静を装う。
しかしその後、フォークから肉が急に逃げ出すようになり、おまけに「ぼくのパンが消えた!」と騒ぐギーシュのせいで満足に食事を
取れず、お腹をすかせて授業に臨む嵌めになってしまった。
「仕方ないわね。」
孟嘗君とか馮驩っていったい誰よ、とぶつぶつ言いながらほくほくと湯気をたてる鳥のソテーをナイフで解体していくルイズ。
そして、皮だけをバビル2世の皿に落とす。
「げえっ!これは皮だけで中身がないじゃないか。」
「癖になるから、肉は駄目。」
妙に意地になってつっけんどんに言うルイズ。
どうだ、ご主人様に逆らったら食事すらままならないのだ。自分の立場を思い知るがいいわ。
と本人はこの仕打ちの理由をそう思い込もうとしているが、実際のところはまったく別の感情がそうさせていることにも気づいていた。
だがプライドがその事実を押さえ込んで、『使い魔に対する躾』なのだと必死に自分を納得させようとしていた。
「………」
バビル2世が突然立ち上がる。忘れていたへそくりが出てきたような表情をしている。驚きと喜びが同時にやってきたような顔だ。
「な、なによ。」
嫌がらせに近い躾をしたのにそのような態度をされて怯えるルイズ。そういう趣味のエルフなのだろうかと、少し顔が赤くなる。
「ごめん、急用ができたんだ。またあとで」
慌てて出て行くバビル2世。呆然と見送るルイズ。
が、その様子は普通ではない。別の理由があるのだろうか。
「………何よ、あれ。後でお腹空いたって言っても何もあげないんだから」
妄想がエスカレートして茹でたこのようになっていたルイズであったが、それを打ち消すように頭を振り、あくまで平静を装う。
しかしその後、フォークから肉が急に逃げ出すようになり、おまけに「ぼくのパンが消えた!」と騒ぐギーシュのせいで満足に食事を
取れず、お腹をすかせて授業に臨む嵌めになってしまった。
食堂から見えた建物の角を曲がり、人気のない場所へと急ぐ。
裏手まで移動し誰もいないことを確認すると跳躍し、高い塀を飛び越える。
着地をしてあたりを見回す。
「ロデム!ロデム!」
周囲に己のしもべの名を呼びかけるバビル2世。
あの時バビル2世の見たもの、それは塀の上に立つ黒豹ロデムらしき姿であった。
だが、懸命に呼びかけてもその姿を見つけることはできない。姿を現すことはない。
喜びの表情はたちまち落胆へと変わる。
「……ぼくの気のせいだったか。」
悲しげに鳴る胃袋。喜びが消し去った空腹感が一気に襲ってくる。
「あのぶんじゃあ昼にもまともに食べられるかどうかわからないし、まいったな。」
思案しながら懐からパンを取り出して咥え、歩き出す。ここに来る途中で失敬したものだ。
裏手まで移動し誰もいないことを確認すると跳躍し、高い塀を飛び越える。
着地をしてあたりを見回す。
「ロデム!ロデム!」
周囲に己のしもべの名を呼びかけるバビル2世。
あの時バビル2世の見たもの、それは塀の上に立つ黒豹ロデムらしき姿であった。
だが、懸命に呼びかけてもその姿を見つけることはできない。姿を現すことはない。
喜びの表情はたちまち落胆へと変わる。
「……ぼくの気のせいだったか。」
悲しげに鳴る胃袋。喜びが消し去った空腹感が一気に襲ってくる。
「あのぶんじゃあ昼にもまともに食べられるかどうかわからないし、まいったな。」
思案しながら懐からパンを取り出して咥え、歩き出す。ここに来る途中で失敬したものだ。
「……な、なによ、あれ」
塀の上で呆然とする人影。
「フライも使わずにこの塀を飛び越えたっていうの……?いったい何者なの……?」
黒ずくめのローブを目深に、身にまとった緑髪の美女――バビル2世が一瞬ロデムと見間違えた女性は、目を白黒させながら、
バビル2世を目で追いかけていた。すなわち下見中の、ロングビルと名乗る、土くれのフーケその人であった。
2世が腹をすかせていなければ、すぐに見つかったであろう彼女の幸運に乾杯、である。
塀の上で呆然とする人影。
「フライも使わずにこの塀を飛び越えたっていうの……?いったい何者なの……?」
黒ずくめのローブを目深に、身にまとった緑髪の美女――バビル2世が一瞬ロデムと見間違えた女性は、目を白黒させながら、
バビル2世を目で追いかけていた。すなわち下見中の、ロングビルと名乗る、土くれのフーケその人であった。
2世が腹をすかせていなければ、すぐに見つかったであろう彼女の幸運に乾杯、である。