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  • ウルトラ5番目の使い魔、第三部-28

あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ウルトラ5番目の使い魔、第三部-28

最終更新:2015年07月03日 00:21

匿名ユーザー

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 第28話
 夜の支配者

 巨蝶 モルフォ蝶 登場!


 ハルケギニアを明けない夜が包んで、早くも一月あまりの時が流れようとしていた。
 わずか一月前には、世界は光に満たされていた。昼と夜が規則正しく巡り、昼は太陽が、夜は月と星が大地を照らし出していた。
 それが、当たり前だと思われていた。
 人と人の流れもそうだった。ルイズたちは日々学院で勉強し、才人は雑用に汗を流し、銃士隊は剣を振り、子供は遊び、大人は働く。
 それが、守られるべき平穏であり、そのために人間たちは不断の努力を続けてきた。

 ヤプールの送り込んでくる超獣を何度となく打ち破り、不可能に幾度となく挑戦してきた。
 過去の人間がそれらを見たなら、まさしく奇跡と呼ぶに違いない。
 中でも、最大の奇跡と呼ぶべきなのは、六千年の常識を覆した、東方号によるエルフとの直接交渉にあることは疑う余地はないだろう。
 筆舌に尽くしがたいほどの苦難と冒険を乗り越えて、エルフの首都アディールにたどり着いた快挙。そこで繰り広げられた、人間とエルフの修好を妨害せんものとするヤプールの怪獣軍団との死闘。
 あれは誰もが忘れない。何度も絶体絶命の危機に陥りながらも、その身を挺して人々を守り、悪を退けた光の巨人たちを。

 あきらめない限り、希望は失われない。

 しかし、世界は変わってしまった。数を計ることさえできない無数の昆虫の群れが空を覆って太陽を隠し、地上は完全な闇に閉ざされてしまったのだ。
 人々は混乱し、人心の乱れにつけこんで悪はハルケギニアへとすさまじい速さで根を張っていっている。このままでは、この世界はヤプールの侵攻を待つまでもなく、人間たち自らの手によって滅亡してしまうだろう。
 なのに……あのとき戦ってくれた光の巨人は、今はいない。エースはヴィットーリオの虚無魔法によって才人とルイズが別々の時空に追放されてしまって、戻る目処さえ立っていない。
 そしてもうひとり。エルフの伝説にあった、あの青いウルトラマン……彼はその後、一度も姿を見せていない。
 破滅に瀕したハルケギニア。その中でも、あがき続ける人間たちに希望の未来は訪れるのだろうか。

 光はもう一度、大地を照らし出してくれるのだろうか。お日様が暖かい昼下がりに、子供たちが駆け回って遊ぶ日常が、再び訪れてくれるのか。
 闇は依然として沈黙を守り続けている。それでも、時間だけは止まらない。


 キュルケたちがラグドリアン湖へと向かい、ロボット怪獣ガメロットを撃破しているのと時を同じくして、もうひとつの重大な事件が幕を上げていた。

 場所はガリア王国の、首都リュティスから南東に下った山間部。その辺りは濃い森林地帯に覆われて、目だった産業も産物も存在しないために、街道沿いにわずかな畑を持つ寒村が点在する以外にはなにもない土地のはずだった。
 存在し続ける理由としては、ここがアルビオンからトリステインを経てガリアへ入り、さらに南下してロマリアへと続く巡礼街道のひとつであったということぐらいである。だがそれも、何年か前に南西部にロマリアの虎街道へと直結する新街道が開かれてからは必要性を薄れさせ、この近年は通行人はおろか住民さえ減少の一途を辿っている。現在は、新たにこの地方に移り住もうとするような人間は、人気を避けて静養したいと望む老人か病人くらいしかおらず、外の人々からはすでに忘れられ始めていた。

 だが……さびれる一方の辺境の地とはいえ、まだ相当数の人間が村々に点在して住んでいることには違いない。そんな、外部との関わりの薄い陸の孤島のような村にも、数週間に一度は旅人や商人が訪れて、旅の消耗品を買い込んだり、少ないながらも収穫された作物や狩猟の獲物を取引していく。そこには紛れもなく人と人との交流があり、それらの人々は、年に数回訪れるそれらの村々に立ち寄ることを楽しみにしているという。
 ただし、辺境を旅するそうした人間たちがひそかに恐れていることがある。まれに、めったに、人によっては一生遭遇しないことも多いが、そうして忘れられかけた頃に天災のように起こるそれに出くわしたとき、人は恐怖におののき二度とその地に近づかないという。

 想像してみるとよい。『ほんの数ヶ月前まで貧しいながらも活気のあった村が、次に訪れたときには人っ子一人住まない荒れ果てた廃墟になっていた』ということを。
 なぜか? 疫病による大量死。悪政による住民の逃亡。それらも確かにあるが、数百人単位の村ひとつが消滅するほどのことは滅多にありはしない。
 答えはひとつ、滅んだ村は外敵に襲われたのである。それも、野盗による襲撃などという生易しいものではなく、人ならぬモノ、亜人の襲撃によってである。
 そう、このハルケギニアには数多くの亜人種が存在している。それらの中には、翼人のように人間から手出しをしなければ襲ってくることはない理知的な種族もいるが、大部分はオークやトロルのように知性薄弱で凶暴なモンスターばかりであり、これらの群れに襲われて滅ぼされた村も少なくはない。
 ただし、オークやトロル、またはコボルドなどによる村落の消滅は動物災害に近く、地球でも熊などによって甚大な被害が発生し、結果的に集落が消滅する事例が実際にあることから、決してハルケギニアだけが特別なわけではない。
 恐れられているのは、それらの亜人種の中でも高度な知能を持ち、かつ凶悪な性質から妖魔と呼ばれる者たち。その中でもさらに、他の種族にはないある特徴を持ち、それを利用して狡猾かつ残忍な手法を好む、ある種族による犯行である。奴らはオークやコボルドのように群れをなして人里を力づくで襲撃したりはせず、大抵はひとりか数人の少人数でひっそりと人里に忍び込む。そして、この種族の妖魔に狙われたが最後、人々は恐怖におののき、犠牲者の哀れな屍がひとつふたつと日々増えていく。
 そう、この妖魔は人間に化けて村に入り込み、内側から食い荒らしていくのだ。恐れられている理由はここにある。オークやトロルなら、迎え撃つことも逃げることもできるが、この相手は平和な日常に潜んで、いつ襲ってくるかわからないために防ぎようがないのだ。さながら通り魔にも似て、犠牲者は襲われる瞬間まで気づくことはなく、姿なき殺人鬼は影から獲物を襲い続け、そして村は死人にあふれて、生き残った人間たちは泣く泣く故郷を捨てて逃げ出すことしかできない。
 その恐るべき死神たちの名は”吸血鬼”。人間の血を好み、殺戮を繰り返す、ハルケギニア最悪の妖魔である。熟練のメイジでも対抗は難しく、その名が唱えられるだけで人々はおののき、住民を失って地図から消えた村や町は数知れない。そして生存者も、あまりの恐怖に体験を語ろうとする者は少なく、殺戮の所業は闇に葬られていくのだ。
 まさに人間の天敵であり、恐怖の対象という度合いで言えばエルフすらもしのぐ。そして、その吸血鬼のひとりがこの地に潜伏し、獲物が来るのを待ち構えていた。

 闇の中に巣食う、闇の住人吸血鬼。これから始まるひとつの事件は、ハルケギニアのほとんどの人々に知られることなく終わりまでを駆け抜ける。だが、この辺境で起こった小さな戦いの行方は遠からぬ将来において、ハルケギニア全体はおろか、全世界の運命をも大きく左右していくことになる。
 ただし、それがいかような方向へと舵を取っていくのかは、神も悪魔も知る由はない。未来は無限大であり、たとえ全知全能の存在であったとしても、それは”今”のことでしかないのだから。


 語りを現世へと戻し、暗闇の中から幕は上がる。


 湿った空気と、かび臭い匂いが鼻をつき、わずかに虫の鳴き声がする薄暗い空間で少女は目覚めた。うっすらと開いた翠色の眼に光が入り、見覚えのない眺めに彼女は戸惑った声を漏らした。
「えっ……ここは、どこ」
 視界に映ってきたのは、差し渡し五メートル四方程度の部屋だった。その隅には古びた箪笥と、小汚い毛布が乗ったベッドが置かれ、正面の小窓からは曇った空が見えた。
 どうやらここは、どこかの平民の家の一室らしい。部屋の様子から彼女がそう察したのは、彼女が以前住んでいたウェストウッド村の家の雰囲気に似ていたからだった。家具はいずれも無骨な手作りで、子供たちと過ごしていた日々の思い出が彼女、ティファニアの胸に蘇ってくる。
 しかし、感傷に浸れたのは一瞬だった。辺りを見回して、気が落ち着いてくると、ティファニアは自分がその部屋の柱に後ろ手で縛りつけられているのに気がついたのだ。
「なにこれ! んっ、外れない」
 もがいてみたが、ティファニアの両手首は背中に回した状態で頑丈なロープでがっちりと柱にくくりつけられており、非力な彼女の力ではどうにもならなかった。
 わたしは、いったいどうしてこんなことに? 目が覚めてみて自分の陥っている状況の異常さに気づいて動揺するティファニアは、必死に気を失う前に何があったのかを思い出そうと試みたが、その前に自分が今どうなっているかを明確に自覚せざるを得なかった。
 そう、自分は以前、同じ状況に陥れられたことがある。あれは確か、ガリアのアーハンブラ城というところだった。そこへ……
「わたし、またさらわれちゃったんだ」
「へえ、なかなか理解が早いんだね。少し感心しちゃった」
「えっ! だ、誰!」
 突然、部屋の中に幼い少女の声が響いた。驚いたティファニアが部屋の中を見回すと、いつの間に現れたのだろうか。さっきまで誰もいなかったはずのベッドの上に、ちょこんと五歳前後と見える金色の髪をした少女が座っていた。
「あ、あなたは……?」
「おはようお姉ちゃん。よく眠っていたね。なかなか起きないものだから、わたしそろそろ起こそうかと思ってたからちょうどよかったよ」
 ティファニアの問いに答えずに、少女は明るくよく通る声でしゃべった。その顔には笑顔があふれており、少女の幼げな容姿とあいまって、まるで人形のように可愛らしげに見えた。
 だが、普通の人であれば心を溶かされてしまうような可愛らしげな少女の笑みとは裏腹に、ティファニアは表情を凍らせて、鋭い視線を少女に向かって放っていた。すでにティファニアの顔には動揺はなく、心からは戸惑いは消えていた。
 なぜなら、ティファニアは目の前の天使のような少女の影にある、大きな違和感を感じ取っていたからだ。一見、無邪気な子供のように見えるけれども、逆にあまりにも美しすぎる。人形のような、ではなく人形そのもののような作り物じみたあどけなさの不自然さが、多くの子供たちと直に接してきたティファニアには見えたのだ。
「あなたが、わたしをさらってきた犯人ね」
「あら? 本当に察しがいいんだ。めんどくさい説明をしなくちゃいけないと思って、いろいろ考えてたんだけど手間がはぶけて助かっちゃう。なんでわかったの?」
「あなた、子供を装う演技がうまいのね。けど、あなたの仕草は大人が勝手に思ってる子供っぽさだったわ。ほんとうの子供は、もっと落ち着きがなくてきょろきょろしてるものなの。しゃべるときだって、思ったことをそのまま口にするけど、あなたは考えて言葉を選んでる。そんなこと子供にはできないわ」
 ティファニアが確信を込めて断言すると、その少女は今度は本当に子供らしく腹を抱えて笑って見せた。
「あっはははは、なーるほどね。私、おしゃべりはあまり得意じゃないから騙せなかったかあ。こんなのでも、大人はたいがいバカだからちょっと泣いたり甘えればコロっと騙されてくれるんだけど、こんなすぐに見破るなんてお姉ちゃんすごいね。でもほんとのこと言えば、子供を演じてるわけじゃないんだよ。これでも私はまだ子供なの、ただちょっとだけ私たちの種族は大きくなる早さが人間と違うだけ」
「あなた、いったい何者なの?」
「ん? 吸血鬼だよ」
 こともなげに言ってのけた少女の、その唐突な言葉にティファニアはあっけにとられるしかなかった。
「きゅう、けつ、き?」
「そう、名前はエルザ。よろしくねおねえちゃん」
 ニコリと笑い、エルザと名乗った少女は言葉を失っているティファニアを無邪気そうな童顔で見つめた。
 対して、ティファニアはまったく理解が追いつけていない。伝聞で、吸血鬼という妖魔がいるということだけは知っていたけれども、彼女の知識はそこまでだった。すると、ティファニアの困惑を見て取ったエルザはベッドに座ったまま、楽しそうに足をばたつかせてみせた。
「あっはは、お姉ちゃん今バカみたいな顔してるよ。でもしょうがないか、普通の人は吸血鬼なんて見たことないものね。牙だって、ほらこんなふうに隠しておけるんだ」
 そう言って、得意げに口を開いたエルザの犬歯が、ティファニアの見ている前で見る見る伸びて狼のように長く鋭く変わった。部屋の薄暗い中に、白く輝く二本の凶器。それはエルザの幼げな容姿とはまるで釣り合わず、唖然としているティファニアにエルザはさらに楽しそうに続ける。
「驚いた? すごいでしょう。この牙をね、人間の首筋に食い込ませて、あふれ出てきた血をゴクンゴクンってすするんだよ。あ? お姉ちゃんったら、まだ信じられないって顔してるね。そうだ、いいもの見せてあげる」
 するとエルザは、座っているベッドの裏側からなにかをつかむと、無造作にティファニアに向かって放り投げてきた。それは、エルザの背丈より大きいが妙にひょろひょろしたもので、ティファニアの前の床に落ちると、カラカラと乾いた軽い音を立てて転がった。
 いったいなんだろう? それは色が黒くて、明かりのない室内ではいまいち正体がわからない。ティファニアは目を凝らして、それがなにかを確かめようと試みた。

 枯れ木? いや、人形? いや……えっ!
「こ、これって! に、人間の!」
 その瞬間、ティファニアの体から血の気が一気に引いた。

「そう、人間の死骸だよ。血を一滴残らず吸い尽くした絞り粕。お姉ちゃんが眠っているうちにお腹がすいたから、さっき一人いただいちゃってたんだ」
「ひっ、ひうっ!」
 楽しげに笑うエルザの口から覗く牙と、目の前のカラカラに乾いた死体の首元に空いたふたつの穴が、エルザの言葉がほんとうだと告げていた。
 ティファニアの足元に転がる死体は土色に完全に干からびており、目は黒い空洞になり、口は断末魔の叫びのままで、大きく開かれたまま固まっていた。
「あっはっはっ、びっくりしたでしょ。けど、これで信じてくれたね? そう、私は吸血鬼……闇の中に生きる、美しき夜の種族」
「こ、この人は……?」
 ガタガタと震えながら、ティファニアは死体が誰なのかを尋ねた。死体は完全に乾ききっていて、もう生前の姿を想像することはできない。
 だがエルザは、まさかまさかと怯えるティファニアに努めて優しげな声で言った。
「心配しなくても、お姉ちゃんの知り合いじゃないよ。私が支配したこの村の女の人。味も悪くなかったけど、なかなか楽しいお昼ごはんだったからお姉ちゃんにも見せてあげたかったな。知ってる? 人間の血ってさ、若い女の人が一番おいしいの。だから村中の女の人を集めて閉じ込めてあるんだけど、ただ血をもらうだけじゃ味気ないから、その人たちに一言言ってあげたの、わかるかな?」
「ひっ、ひぅぅ」
「ああ、お姉ちゃんのその怯えた顔もいいよぉ。そんなふうに怯える人たちに、私はこう言ったの。「あなたたちで一人、私のごはんになる人を差し出しなさい」ってね。そうしたらねぇ、もうひどい押し付け合いよ。「お前がいけ」「あんたが先よ」って、ののしりあい、殴り合い、もう必死すぎて久しぶりにいっぱい笑ったなあ。そして、やっと地味で気の弱そうな子を一人差し出してきたんだけどね」
「それが、この人……?」
「ブーッ! 残念はずれ。そのとき私は、生け贄を差し出してきたお姉さんにこう言ったんだ。「じゃあ、あなたで決まりね」と。そしたらその人、最初は呆然としてたんだけど、すぐに怒鳴ってわめいたの。「話が違う」「私はイヤだ。あいつを食べろ」ってさ。けど私は最初から、やっと助かったと思って安心してる人の顔が恐怖にゆがむのが見たかったの。そのほうがドキドキするじゃない? で、泣き喚くお姉さんの手足をしばってゆっくりといただいたわ。おいしかったなあ」
 うっとりとした表情で、エルザは舌で口元をペロっと舐めて言った。その口元には、凶悪な二本の牙が冷たく光っている。
 この子は本物の吸血鬼、生き血をすすり、恐怖をもてあそぶハルケギニア最悪の妖魔。ティファニアの体に、いままでなかった震えが走って止まらない。
「わ、わたしも食べる気なの?」
 恐る恐るティファニアは尋ねた。しかしエルザはその問いに、少し困ったような顔をして言った。
「うーん、できればそうしたいんだけどね。お姉ちゃんは生きたまま引き渡さないといけないの。それが、ロマリアのお兄ちゃんとの契約なんだ」
「ロマリア! そう、そういうわけだったの……」
 エルザの一言に、ティファニアの頭の中にあったもやが一気に晴れていった。
 そして理解した。なぜ自分がさらわれたのか、その理由もなにもかも。
「わたしの、虚無の力が欲しいのね。わたしの、わたしの友達たちは、みんなはどうしたの!」
「あら、ほんとうに思ったより頭はいいんだ。くふふふ、そう来ると思って用意しておいたんだよ。ロマリアのお兄ちゃんからのプレゼント、見せてあげる」
 そう言うと、エルザはベッドに立てかけてあった姿見をティファニアの前に置いた。それは、一見するとただの鏡のようであるが、装飾に奇怪な文様が刻まれており、ティファニアにでもすぐにそれが仕掛けのあるものだとわかった。
「これね、ガリアで作られた『遠見の鏡』っていうマジックアイテムなんだって。効果はまあ、名前でわかるよね? んーと、使い方はと」
 エルザは少し思い出すようなそぶりを見せると、鏡の紋様を指で数回なぞった。
 すると、操作が加えられた遠見の鏡は光りだし、遠く離れた場所の光景を映し出した。しかしそれは、仲間たちの身を案じていたティファニアの不安を、最悪に限りなく近い形で実現するものだったのである。
「ミシェルさん! ギーシュさん! みんな!」
 鏡の向こうには、森の中の沼地が映っていた。そのほとりの草地に、ギーシュたち水精霊騎士隊や銃士隊は倒れていたのだが、彼らの頭上に異様なものが飛んでいた。
「な、なんなの? あの大きな蝶たちは!」
 そう、それはまさしく蝶の群れだった。しかし、大きさが馬鹿げており、羽根の差し渡しがざっと八十センチはある巨大なものだったのだ。サファイアのような青い羽根がきれいではあるが、その巨体ゆえにグロテスクな印象しか受けない。それらが十数匹も舞う下で、ギーシュたちは身をよじりながら苦しんでいた。
「あら、あらあらあら、苦しそうに。けど、あの子たちの毒鱗粉をあれだけ浴びて、まだ正気を保っているなんて意外としぶといね」
「エルザ! あの蝶は、あなたの仕業なのね」
「そうよ。私の可愛いペットたち。私ね、気ままに旅をしてるときは、あの蝶ちょの卵を水辺に撒いて育てて、寄ってきた人間をしびれさせていただいてるの。モルフォって知ってる? 奥地にしかいない珍しい蝶なんだけど、手なづけると便利なんだよ」
 モルフォ……その名前に、ティファニアは聞き覚えがあった。ネフテスへの遠征から帰って来て、しばらくルクシャナの助手としてアカデミーで勉強していたとき、ポーションの原料としてモルフォの鱗粉を目にしたことがあった。そのときには、大変希少価値が高いけれども、毒性も強いから絶対に触らないようにと聞いている。それが、あの蝶なのか。
 愕然とするティファニア。だが実は、この蝶は地球にも生息していて、かつて日本でも発見例が報告されているのだ。
 『巨蝶・モルフォ蝶』全長八十センチメートル、体重百グラム。アマゾンを原産とする幻の蝶で、水辺を好み、群れで活動する。そしてその羽根からばらまかれる毒鱗粉は、人間さえのたうちまわらせるほどの強い毒性を持っている。
 ただし、このモルフォ蝶は特殊な種類で、紛らわしいのだが、普通の昆虫としてもモルフォという種類の蝶はいるのだけれど、それとはまったく違うものである。
 普通のモルフォが何らかの原因で突然変異で巨大化してモルフォ蝶になったのか、それとも最初から巨大な種類であったのかはわかっていない。しかし、そんなことはともかく、モルフォ蝶が人間にとって危険な生物であることは間違いない。
「みんな、早く逃げて!」
「無駄だよお姉ちゃん、みーんな、モルフォの毒鱗粉をたっぷり浴びちゃってるからね。あとどれだけ持つかなぁ? うふふ」
 エルザは自信ありげにティファニアの叫びを一蹴した。
 確かに、モルフォ蝶の毒鱗粉は強力であり、これの生息する水辺にはオークでさえ近寄らないと言われる。民間にもその恐ろしさは伝承されており、幼年時代のルイズとアンリエッタが興味本位でこれの生息地に探検に出ようとして、一週間の外出禁止を食らったこともある。
 牙を口元から覗かせ、残忍な笑いを浮かべるエルザと、悲痛な表情に沈むティファニア。このままでは、みんながあの毒蝶の餌食になってしまう。


 どうして……どうして、こんなことになってしまったのかと、ティファニアは無力感をかみ締めながら記憶の糸をたどった。
 そうだ、わたしたちは……ここまで。


 ここで、時系列はややさかのぼり、一行がトリステインを目指してガリア辺境の森の中の街道を歩いていた時に返る。
 ロマリアでの天使の事件で、才人、ルイズ、デルフリンガーを失った一行は、事の次第を女王陛下と仲間たちに伝えるために、帰国を急いでいた。
 しかし、それは決して平坦な道のりではなかった。あの戦いの後、別行動をとっていたティファニアやモンモランシーらとの合流は幸いにもうまくいき、才人らが死んだということで嘆き悲しむティファニアをなだめて、彼らはロマリアから一路トリステインを目指すことにしたのだが、その方法が難題であった。
 帰国の道は、大きく分けて空路、海路、陸路の三つである。しかし、空路は飛行船の搭乗料が多額にかかるため、手持ちの資金が間に合わないために即外され、海路は空路に比べれば料金は安いとはいえ、空が闇に包まれてからは海の怪獣たちの動きも活発になってきたということで長距離航路は無期限運休になっていて、残るのは必然的に陸路を歩いて帰るのみとなる。
 ただし、その陸路もまた彼らを悩ませた。トリステインへといたる最短の街道は、火龍山脈の大陥没によって封鎖されているために大きく迂回することを余儀なくされ、慣れない土地の手探りでの旅はさしもの銃士隊も手を焼いた。
 いや、単に困難な旅であるならば、彼らはこれまでに何度もそれを乗り越えてきた。しかし、今回の帰途は、これまでとは違った。
「サイト……サイト」
 平民に扮して歩く一行。その中で、うつむきながら呻くようにしてミシェルが漏らした声が、全員の心情を代弁していた。
 なにを成し遂げることもできぬまま、仲間を失っての逃避行。皆の意気が高かろうはずもなく、特にミシェルの落ち込みようがひどかった。あれ以来、自殺だけは思いとどまってくれたものの、ときおりうわごとのように才人の名前を繰り返すばかりで、そのやつれようはひどかった。
「副長、サイトは……」
「わかっている。わかっているさ……わかって」
 無理もない……泥沼のような半生を送ってきたミシェルにとって、はじめて手を差し伸べてくれた才人の存在がいかに大きかったか、どれだけ深く才人を愛していたか、皆が知っていた。そして、自分たちにはどうしてやることもできないことを、誰もが痛感していた。
 彼女をはげましてやることができるとしたら、彼女の義理の姉のアニエスしかいないだろう。そのためにも、なんとしてでも連れて帰る。銃士隊員たちは、それが才人へのせめてもの手向けだと、自分たちにも浅からぬ関係のあった才人の死を悲しみながらも自分を叱咤し、ギーシュたち水精霊騎士隊も、才人とルイズの犠牲を無駄にしてたまるかと、自分を奮い立たせていた。
 そしてティファニアやモンモランシー、ルクシャナらも、受けた衝撃からは一応は立ち直っていたものの、友を失った衝撃が軽いはずはない。
「ルイズ……ほんとうに、バカなんだから。あなたが死んだって、あなたの家族に伝えなきゃいけないわたしたちの身になりなさいな」
 気の強いモンモランシーにも今は精彩がない。これまで水精霊騎士隊は戦死者を出したことがなかった。だが、頭で想像していたのと実際に体験することでは大きく違う。表面は平静を装ってはいるものの、誰も余計なことを言おうとしない道中は、まるで葬列のようにさえ見えた。

 そんなときのことである。ひたすらトリステインへと向かい、辺境の森の中の人気のない街道を歩き続けていた一行の耳に、森の奥から悲鳴が聞こえてきたのは。
「いやぁぁっ! 誰かぁ! 誰か助けてぇ!」
 一行の耳朶を打ったのは、幼げな女の子の声だった。暗く静まり返っていた森の中で、突然耳に飛び込んできたその悲鳴に、ギーシュたち水精霊騎士隊、そして銃士隊ははじかれたように飛び出したのだ。
 そしてそのころ、森の奥の小道を十二歳くらいの少女が必死に走っていた。
「はぁ、はぁ……やだ、やだぁ」
 少女は平民の村娘風の身なりで、頭には赤い頭巾をかぶっている。その頭巾からグレーの少しちぢれた髪が覗き、笑えば誰もがかわいいと褒めるであろう目鼻立ちをしているが、今の彼女の顔は涙で大きく崩れていた。
 吐き出す息が切れ、手も足もガクガクとして激しく痛むが、少女は走ることをやめない。その後ろからは、重く乱暴な靴音が近づいてくるけれども、少女は決して振り返ろうとしなかった。
「来ないで、来ないで! やだ、誰かぁ!」
 そう、少女は追われていた。その顔は恐怖に歪み、背中のほうから近づいてくる足音と、獣のような荒い息遣いが聞こえてくるごとに、焦点の定まらない目からは涙があふれだしている。
 逃げなきゃ、逃げなきゃ殺される! 少女は、自分を追ってきているものに捕まったが最後、決して助からないであろうことを知っていた。ひたすら助かりたい一心で走り、森の先を目指す。ここを抜ければ街道に出られる、そうして通りがかった誰かに助けを求められればなんとか!
 だが、少女の必死の逃亡も、子供の脚力では結果は知れていた。いきなり後ろからむんずと手首を掴まれて、少女の小さな体は軽々と宙に持ち上げられてしまった。
「離して! 離してぇ!」
 少女の手首を掴んで宙吊りにしていたのは、屈強な大男だった。年のころは四十代そこそこで、そこらの平民と同様の粗末な衣服をまとっている平凡そうな男に見えた……その野獣のように血走った目と、口元から伸びた鋭い牙を別にしては。
「ア、アレキサンドルさん、や、やめ……ヒッ、ば、化け物っ!」
 引きつった声で悲鳴を漏らしながら少女はもがいた。しかし、非力な子供の力では大人の大男に敵うわけもなく、必死に相手の胸板を蹴りつけるもまったく効果は見えなかった。
 そして、男は鋭い牙を覗かせる口元をにやりと歪ませ、少女の喉をわしづかみにして締め付けてきたのだ。
「かっ……やめ、やめて……た、たすけ……お、かあ、さん……」
 息を吸えない。舌がしびれ、目玉が飛び出そうだ。少女は激しい痛みと恐怖の中で、はっきりと自分の死を意識した。
 苦しい、殺される、死にたくない、助けて、お父さん、お母さん、誰か!
 少女の吐息が途切れていき、助けを求めた最後の声も、か細く森の空気の中に溶けていく。
 だが、そのときだった。

「なにやってんだ、てめぇぇーっ!!」

 突然、横合いから突っ込んできた黒い影が男をふっ飛ばし、思わず緩んだ手の中から少女の体が解き放たれた。
 支えを失った少女の体は、力を失ったままで頭から落ちていく。しかし地面にぶつかる直前に、小さな体はすべりこんできたたくましい体によって受け止められていた。
「危ない、かろうじて間に合ったか」
「さっすが、銃士隊一の俊足の持ち主!」
 少女を受け止めたのは、全力疾走で駆け込んできた銃士隊の隊員のひとりだった。彼女のかたわらには、男を体当たりでふっ飛ばしたギーシュのワルキューレが槍と盾を構えて守るように立っている。
 そして森の先から響いてくる十数人の足音。悲鳴を聞きつけてやってきた水精霊騎士隊の少年たちと銃士隊の一行が追いついてきたのだ。一行は少女を介抱している隊員の周りを囲むと、盾のような陣形を組んだ。少女は口から泡を吹いているが、なんとか命に別状はなさそうだった。他の皆も、後から続々追いついてくる。
「ゲホッ、あ……だ、誰?」
「心配するな。もう大丈夫だ……皆、気をつけろ! そいつ、人間じゃない!」
「なに!?」
 恐怖感さえ混じった声での警告に、陣形を組んでいた水精霊騎士隊と銃士隊は、起き上がってきた大男の顔を見て絶句した。ここまで彼らは、獣か野盗にでも子供が襲われているのだろうと考えて駆けつけてきたのだが、目の前の相手がそんな生易しいものではないことに気づかされたのだ。明らかにまともな人間ではない男の狂相を見て思わずうろたえたギーシュが、隣でひきつった表情に変わっている銃士隊員に尋ねた。
「な、なんなんだいアレは! よ、酔っ払いじゃないよね?」
「屍人鬼(グール)だ。気をつけろ」
「グ、屍人鬼って……まさか吸血鬼の!」
「そうだ。吸血鬼に血を吸われた人間の成れの果てだ。くそっ、冗談じゃない。来るぞ!」
 吸血鬼に血を吸われた人間は普通はそのまま血を吸い尽くされて死亡するが、吸い尽くされなかった場合はより恐ろしいことになる。それが、殺害された人間の死体が吸血鬼の魔力で操られたモンスターである屍人鬼だ。これは一種のゾンビであるが、吸血鬼の忠実な操り人形であり、吸血鬼が狩りの道具として多用する。
 つまりは、この近くに吸血鬼がいるということを意味し、一行が焦ったのもそのせいだった。しかし、今はともかくも襲い掛かってくる屍人鬼をなんとかするのが先だ。まずは銃士隊の数名が飛び出すと、数の優位を活かして左右から斬りかかった。
「いあぁぁぁっ!!」
 叫び声とともに、屍人鬼の男の右腕、左腕が切り裂かれる。だが、屍人鬼は獣のような叫び声とともに太い腕を振り回すと銃士隊員たちを振り払ってしまい、その壮絶な光景にギムリは唖然とした。
「あ、あいつは痛みを感じていないのか?」
「なにしてる! こいつの狙いはそっちだぞ」
 怒鳴られて、ギーシュたちははっとした。屍人鬼のターゲットは、この少女だ。当然のように、取り返そうと防壁を組んでいる水精霊騎士隊に向かってくるために、ギーシュたちは慌てて魔法を唱えた。
「ワ、ワルキューレ、あいつをやれ!」
 たちまち、ワルキューレが斬りかかり、他にも火や風の魔法が屍人鬼に殺到する。
 しかし、いくら狂相をしているとはいえ、相手も人間だということが必殺の気合を鈍らせた。数人がかりのメイジの攻撃だというのに突進を食い止めきれず、ギーシュの目の前まであっというまに迫ってくる。
「う、うわぁぁぁっ!」
「馬鹿者! なにをやっている!」
「し、しかし相手はにんげ……」
「一度屍人鬼にされてしまったら元に戻すことはできん。もう動く屍なんだ。倒す以外に手立てはない」
 銃士隊員は怒りとともに悲しみを交えた声で言った。屍人鬼は人間が操られているのではなく、人間の死体があたかも生きているように操られているだけなので救う方法がないのだ。吸血鬼の非道さを示す所業のひとつだが、わかっていても元は人間だったものを倒すのは気分のいいものではない。
 が、屍人鬼は体を焼かれ切り刻まれ、本当のゾンビのような姿になりながらも、まるでロボットのように前進をやめず、ひるむギーシュたちを突き飛ばして、少女を抱きかかえている隊員に迫った。
「おのれ化け物め!」
 彼女は少女をかばいつつ、片手で抜いた剣で屍人鬼を迎え撃った。しかし、屍人鬼の力は熊のように強く強化されており、いくら銃士隊員でも片手では食い止めきれない。
「ひ、ひぃっ」
「逃げろ、は、早くっ!」
 銃士隊員は、少女をかばいきれないと、自分が食い止めているあいだに早く逃げろとうながした。
 だが、腰が抜けている少女は立つことすらできない。そして、屍人鬼の血まみれの手が少女に延びた、まさにそのとき。
「いやぁぁぁぁっ! おとうさん、おかあさーん!」
「『マジック・アロー!!』」
 突然、無数の魔力の矢が屍人鬼を貫き、蜂の巣にされた屍人鬼は吹き飛ばされて立ち木に叩きつけられた。
 今の魔法は、誰が!? マジック・アローは魔力そのものを凝縮して放つ高位の攻撃魔法、水精霊騎士隊の未熟な腕で放てるものではない。なら、まさか!
「ふ、副長……」
「……」
 そこには、心が折れて戦う力など残っていなかったはずのミシェルが、亡霊のようにうつむいたまま杖を握って立っていた。
 しかし、屍人鬼は人間ならば即死しているほどの傷を負いながらも、うなり声をあげてミシェルに襲い掛かってくる。危ない! という叫びが次々に響き、呪文の詠唱をする時間すらない。
 が、ミシェルは戦意を失っている人間とは思えないほどの早さで杖から剣に持ち替えると、鞘から抜いた勢いのまま上段に構え、そして。
「でぇぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーっ!」
 獣、いや、龍の咆哮のような叫び声とともに、ミシェルの剣は屍人鬼の頭頂部から足元までを切り裂いた。
 刹那……屍人鬼は左右に真っ二つに両断され、哀れな大男の死骸は、ただの冷めた肉の塊に戻って崩れ落ちたのである。
「す、すごい……」
 水精霊騎士隊も、銃士隊も、ただの一刀で大男の屍人鬼を倒してしまったミシェルの剣技に圧倒されていた。さすがは、アニエス隊長に次ぐ剣の達人……メイジとしての力にばかり目を奪われがちだが、剣士としての強さも一年前とは比べ物にならなかった。
 しかし、戦うだけの気力を無くしていたはずのミシェルがなぜ……? 皆が、そう思って戸惑っていると、ミシェルは剣に残った血を振って払うと鞘に収め、少女に歩み寄ると、かがんで話しかけた。
「大丈夫か?」
「え、あ……お、おねえさんは?」
「君の、おとうさんとおかあさんは?」
「え? あ、あ……あああっ!」
 そのとたん、少女は堰が切れたように泣き始めた。
「うあぁぁぁぁっ! 助けて、助けてっ。わたしの、わたしの村がっ! おとうさんとおかあさんたちがぁぁぁっ!」
「だいじょうぶ、だいじょうぶだから……」
 ミシェルは泣きじゃくる少女を抱きしめて、その背中をさすって優しく慰めていた。
 だが、仲間たちは見ていた。家族を呼んで泣き続けている少女と同じように、ミシェルの目からも光るものが流れ落ちていることを。


 そして、屍人鬼を倒した彼らは、これがまだ始まりに過ぎないことを知ることになる。
 そのころ、ティファニアやモンモランシーたちは、悲鳴を聞きつけて飛び出していった水精霊騎士隊や銃士隊を見送って、街道に残り待っていた。
「皆さん、大丈夫でしょうか……?」
「心配いらないわよテファ。まったく、なにが危ないからここで待っていてくれよ、よ。かっこうつけちゃって」
 不安げなティファニアと、プリプリと怒っているモンモランシー。彼女たちは、駆けだして行ったギーシュたちを案じてはいたが、銃士隊もいっしょだしよほどのことがない限りは大丈夫だろうと考えていた。不安があるとしたら、調子が戻っていないミシェルくらいだけれど、彼女もプロの軍人なのだし滅多なことはないだろう。
 相手は山賊だかなんだか知らないけれど、十人ばかりのメイジがいれば大抵は恐れをなして逃げ出す。モンモランシーたちはギーシュたちの無傷の帰りをほとんど疑っておらず、いっしょにいるルクシャナも、つまらなさそうに彼らの帰りをぼおっとしながら待っていた。
 当然、警戒心が散漫になり、わずかに注意を払う方向も、ギーシュたちの向かった小道の先だけになる。
 ところがこのとき、油断する彼女たちの背後から忍び寄ってくる人影があったのだ。しかし、彼女たちがそれに気づいたときには、すでに手遅れになっていた。

「きゃあぁぁぁぁっ!」
「今の声は、モンモランシー!?」

 ギーシュが叫び、水精霊騎士隊は血相を変えて元来た道を引き返した。
 全力で走り、森から飛び出して街道へ出る。そこには、モンモランシーとルクシャナが道の真ん中に倒れていた。ギーシュはすぐにモンモランシーに駆け寄って抱き起こして呼びかけた。
「モンモランシー! 大丈夫かい! モンモランシー、ぼくのモンモランシー!」
「う、ううん……ギーシュ? はっ、いけない! ギーシュ、大変よ。ティファニアが、テファがさらわれちゃったのよ!」
 水精霊騎士隊に激震が走り、後から追いついてきた銃士隊も事の次第を知って愕然とした。
 これは、罠だ。あの屍人鬼は、最初から水精霊騎士隊と銃士隊をおびき寄せて、ティファニアを奪うための囮だったのだ。
 犯人は……疑う余地もない。ロマリアの手のものに違いない。でなければ、ティファニアひとりだけをさらっていくわけがない。
 それに……と、一行はつばを飲み込んだ。自分たちも、このまま見逃されるとは思えない。きっと、誰一人としてこの森から出すつもりはないだろう。

 暗い森の中で、姿も見えない吸血鬼を敵にして、水精霊騎士隊と銃士隊に大きな試練が立ちはだかろうとしていた。


 続く


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