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ゼロのしもべ
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ゼロのしもべ第3部-1
ゼロのしもべ 第3部 ドミノ作戦編~全てはビッグ・ファイアのために~ 異世界ハルケギニア 人類は魔法の力によって 栄光ある社会を築いていた。 だがその栄光の陰に 暗躍する1人の男がいた。 かつていくつもの組織を率い、世界を支配せんと目論んだ悪の指導者、ヨミ。 一方、3つのしもべを率いて、その野望に立ち向かいつづけた一人の少年の姿があった。 名をバビル2世。超能力少年、バビル2世。 第3部1話 ガリア王国は、ハルケギニア最大の人口を抱える大国だ。人口およそ1500万人。魔法先進国であるガリアは、メイジ……、 つまりは貴族の数も多い。やはりハルケギニア最大の人口を誇る首都リュティスのメイジの人数は、やはり他の追随を許さない。 リュティスの政治中枢は、街の真ん中流れるシレ川に位置する中州から、川の西岸…町外れ... -
ゼロのしもべ第3部-10
10話 女王アンリエッタが突如王宮から姿を消した。 警護をしていた衛兵を蹴散らし馬で駆け去ったのだ。ただちに王宮内にはかん口令がしかれ、出入りの業者から陳情に来ていた 地方貴族に至るまですべて留め置かれた。進入した形跡が皆無なことから、内部に協力者がいることは確実であったからだ。 結果、高等法院のリッシュモン長官が逮捕された。女王が消えてからわずか5分後の、超スピード逮捕だった。 「なにこれ?待ち構えてたよね?」 女王誘拐の報が入るとほぼ同時に突入してきた憲兵隊に組み伏せられながら、リッシュモンが叫んだ言葉である。実際憲兵隊は ドアの外から窓の外、たんすや机の下、ベッドの脇にまで隠れていた。これは気づかなかったリッシュモンの落ち度であろう。 その後、あっという間に腕を切り落とされたリッシュモンはピーピー泣きながら今回の事件について告白をした。... -
ゼロのしもべ第3部-9
9話 翌日。 お日様も充分高くなって後、全員で湖に向かうと水の精霊はすでに準備万端で待ち構えていた。 というか朝からそこにいたりした。吉田照美が裸足で逃げ出すぐらいやる気満々だ。 「遅かったな。単なるものよ。」 遅くねーよ!、と全員が心の中で同時に突っ込む。約束の時間よりもまだ1時間も早いのだ。水の精霊の機嫌を損ねては一大事 なので誰も口に出さないだけである。 「水の精霊よ。もうあなたを襲うものはいなくなったわ。」 「ご苦労。まだなのか、我が愛しい方は?」 襲撃者が二の次になっている水の精霊。自分の身体の一部なのにいいのだろうか? 「慌てるな。」 バビル2世が一歩前に出た。 「もう、来ている。」 その宣告と同時に、巨大な鉄の巨人が姿を現した。体長およそ30メイル。堂々たる体躯の、巨人であった。それが、膝までしかない ... -
ゼロのしもべ第3部-2
トリステインの城下町。ブルドンネ街では派手に戦勝記念のパレードが行われていた。 女王戴冠が決定しているアンリエッタの乗る馬車を、狭い街路いっぱいに詰め掛けた観衆が歓声で迎える。いまやアンリエッタは、 強国アルビオンを打ち破った聖女としてあがめられ、人気はとどまるところを知らない。 隣国ゲルマニアの皇帝との婚約も解消された。ゲルマニアでさえその勢いに恐れるアルビオンを打ち破ったトリステインに、意義を 唱えることなどできようはずもなく、婚約なしで対等の同盟締結と相成った。 そんな賑々しい凱旋の一行を、宿の2階から眺める2人の男がいた。 名はない。 誰に問われようとも、今まで「名はない」という一言で済ませてきたこの2人を、いつしか皆「名無し」と呼ぶようになっていた。 「戦勝パレードか。人間というものはなぜ命をいたずらに奪うことを、これほど賞賛するのか。... -
ゼロのしもべ第3部-14
空にそびえる水神(わだつみ)の城♪ とか替え歌を歌いたいような、うねる巨大な水の竜巻が出現した。まるで、水の城だ。 完成した城は、おまけに命の鐘の力をもって意思を得ている。やばさは尋常のものではない。いうなれば意思をもった大量殺戮 兵器である。 土砂を吸い上げながら、その城は進軍を開始した。触れるもの全て飲み込み、破壊していく。凶悪なミキサーであった。 こんなものに襲い掛かられては、人間の作ったものは城であろうとなんであろうとひとたまりもないだろう。 「我に仇為す不届きものども!命を食らえば現世を失う!春夏秋冬万物流転!消滅尚もて往生せ!」 水竜巻がけたたましい笑い声をあげる。竜巻表面に浮きでたクロムウェルの顔がぐじっと醜く歪んだ。嗤っているのだ。 その大きさからは想像できぬほど、速い。人間の全速力などナメクジほどでしかないはずだ。バビル2世は逃... -
ゼロのしもべ第3部-24
アルビオン侵攻戦争、通称白伐が正式発表されたのはそれから3日後、年末はウィンの月の第一週、マンの曜日のことであった。 文武百官が見守るなか、マザリーニの手により「出師の表」が読み上げられた。事実上の宣戦布告である。 トリステイン・ゲルマニア連合軍6万を乗せ、500隻を超える大艦隊がラ・ロシェールから出航した。 総指揮はマザリーニ卿であるが、本人は後方で輸送任務および糧秣調達を専門に行う。実際にアルビオンで指揮を執るのはシュゥユ・ド・ポワチエ提督である。 美周郎という異名をとる彼は、トリステイン武官の名門の出であり、艦隊戦の名手であった。 このド・ポワチエ提督をはじめ数名の将軍に、アンリエッタはルイズが虚無の使い手であるということを伝えてあった。 さらには孔明がなにやら秘策と授けたらしいのだが、真贋は不明である。というか、作戦が成功したら自分の手柄にしてそうだ。 ... -
ゼロのしもべ第3部-17
17話 「ちょっとそこのレッツゴー三匹」 あんまり関わりたくないけれど放置しておくほうが恥ずかしい。しかたなく声をかけるルイズ。 「大々的に自分たちは馬鹿だって主張しなくても、皆知ってるから安心しなさい。」 「ひでぇ!」 にこっと慈愛に満ちた笑みを浮かべるルイズ。精神的ダメージは倍増だ。 「ヴァリエール!これは男同士の友情の話だ。」 「そうだ。部外者は出て行ってくれないか?」 一斉に抗議の声を挙げる馬鹿3人。しかしルイズは、蚊の羽音ほども気にする価値はないとばかりに、華麗にスルーする。 「はいはい。わかったから恥を強調する舞台装置はさっさと片付けて、撤収しなさい。」 進級したばかりのころはおそらくムキになっていたことだろう。しかしルイズはいつまでも子供のままではない。ここ数ヶ月の経験で、 真正面から真剣に相手をしないほうがいい人種がいるこ... -
ゼロのしもべ第3部-6
扉のきしむ音に、ルイズが夢の世界から引き戻されると、荷物をまとめて出て行こうとするバビル2世と目が合った。 「……なにごと!?」 一瞬で目が冴えて、飛び起きる。 そりゃそうだ。起床したとたんかを出て行こうとする人間と目が合えば、どんな低血圧であろうと覚醒する。帰ってきたら置手紙だけ、 よりもよっぽど心臓に悪い。 「やあ、おはよう。起こしてしまったか。ゴメン、ゴメン。」 爽やかに挨拶をするバビル2世。とてもじゃないが家出をしようとしている人間とは思えないほど明るい。 「やあおはよう。じゃないわよ!なに荷物まとめてるのよ!家出?家出なの!?使い魔のくせに家出?主人を見捨てて出て行こう ってわけ??あったま来たわ!」 ベッドの脇に立てかけてある杖を取り上げて、さっと掲げる。 「逃げるというなら今すぐ消し飛ばしてあげるわ!覚悟しなさい。」 呪... -
ゼロのしもべ第3部-12
クロムウェルを取り囲んでいた全ての男たちが倒れた。 倒れたと思ったときには、死体がミイラのように干からびた。干からびた死体は瞬く間に砂となって消えて行った。 巨大化したクロムウェルの握りし鐘が、赤から紫、そして青へと変わっていく。最終的には目も眩まんばかりの白光を放ちはじめた。 森の木々が立ち枯れし、葉を茶に染めて、しなびていく。 たちまち周囲10メイルは草木一本ない茫々たる荒野となった。 「殷周秦漢魏隋唐宋金元明清袁華人民毛長征!」 当たるを幸いに、周囲のものに当り散らすクロムウェル。完全にぶち切れていて、始末に終えない。目に入るもの全てを破壊しようと しているのだ。 「この!」 キュルケが果敢に炎球を放つ。 「激痛火傷皮膚重傷熱湯独楽朝流!!」 油をかけた枯れ木のように、全身に火が燃え移り、苦悶にあえぐクロムウェル。周囲にゴム... -
ゼロのしもべ第3部-15
しばらく気を失っていたアンリエッタは、自分の名前を呼ぶ声で息を吹き返した。 ルイズが心配そうに自分を覗きこんでいる。 雨は止んでいた。辺りの草は濡れ、ひんやりとした空気に包まれている。先ほどの激しい戦闘がまるで嘘のようだ。 だが嘘ではない証拠に隣にはウェールズのなきがらが横たわっている。離れたところには、クロムウェルの躯が転がっている。 少し目を凝らせば周囲には枯れ果てた草や、めくれ上がった地面、根こそぎ引き抜かれた巨木が散乱している。 そのクロムウェルの躯の傍に落ちている鐘が一つ。 命の鐘。 ウェールズの贋物を作り出したあらゆる生命を操るという鐘だ。クロムウェルはとうとうこの鐘に命を食い尽くされたのである。 アンリエッタにはそういった理屈はわからない。ただ、全ての夢がうたかたの泡の如く消え去り、あるべき姿へ戻っていったことを感じていた。 ... -
ゼロのしもべ第3部-11
11話 怨怨怨怨怨、と地鳴りとも鳴動ともつかぬ叫びをあげながら現れたのはポセイドンほどもある巨人。 手は馬を握りつぶせるほどに大きく、足は並みの家ほどもある。 血のように赤く、ギラギラと輝く目。大きく開かれた口。そして、右手に握られた巨大な鐘。 「なによ!これ」 とつじょ現れた巨人を見上げてキュルケが叫ぶ。思わず足がすくむ大きさだ。 「命の鐘!」 水の精霊がビンの内側に顔を寄せた。 「まずいぞ。あれは媒介としている単なるものを飲み込んでしまったのだ!」 「どういうことなの!?」 モンモンが大声で問う。戦い向きではない水の魔法を得意とするため1人残っていたのだ。 「命の鐘は操者の生命を消費し力へ変えるというたのを覚えておるか?それの意味するところは、生命の消費量に応じて威力が変化 するということ。見よ、あの単なるものの周囲を!... -
ゼロのしもべ第2部-1
前へ(第1部) / トップへ / 次へ 「これが調査班が撮影してきたSBC基地のありさまだ。」 モニターには熱でへしゃげた鉄骨、粉々になった岩とコンクリート、瓦礫に埋まった人間の死体が次々と映し出されていく。 「まず修理のしようがないほどの破壊のされかただ。」 会議室にいる男たちは血相を変え、食い入るように画面を見つめている。 その最奥に、悠然と座っている男がいた。 ヨミだ。 「しょくん、みられるとおりだ。わずか一日で、わが組織のほこる対トリステイン王国攻略用基地が完璧に破壊された。」 「ヨミ様、いったいどこの国が攻撃をしたのです?トリステインが我々に気づいたのですか?」 「いや」ヨミが首を振った。 「そうではない。この基地を破壊したのはあのバビル2世だ。」 画面に映し出されたのは、まぎれもないバビル2世だ。 「「「バビル2世!!」」」 ... -
ゼロのしもべ第3部-18
18話 「おう、とうとう完成したのか!」 ドアが開く。 ガラガラと音を立てて、車椅子が運び込まれる。 その上には、山賊のような風体の男が座っている。全身、包帯だらけでまるでミイラだ。 「張飛殿。」 敷島に説明を受けていたジョゼフが、振り返って近づく。手をとって、うんうんと頷き、 「お体のほうはよろしいのですか?」 「はっ。ゲートの固定化に成功したと聞けば、寝ていられん。」 包帯の隙間からわずかに覗く目の周りの青たんがにまっと歪む。どうやら嗤ったようであった。 張飛が、ズタズタの身体で戻ってきたのはまだ1週間ほど前のことである。 ルイズの誘拐を土鬼と名乗る何者かに阻止された、のだという。 その身体を見て一番驚いたのは、ほかでもないジョゼフであった。 なにしろ張飛は九大天王でも1,2を争う猛者なのだ。現にジョゼフは、精... -
ゼロのしもべ第3部-13
13 ルイズを抱え上げた男は、身長180サントあまり。均整の取れた体つきをしていた。 不思議なことに、その身体は女性のように柔らかかった。受け止められたルイズがついすぐ上の姉であるカトレアを連想してしまう ような、柔らかい身体であった。よく考えれば胸もなく、あきらかに男の身体だというのに。 ルイズにそう思わせたのは、男の筋肉であった。生ゴムのように柔らかで、しなやかな筋肉。猫化の猛獣を思わせる優れた筋肉が 男の五体を覆っているのだ。 先ほどまでルイズを抱えていた張飛がブルドーザーやダンプカーだとすれば、この男はスポーツカーである。純粋に、速度のみを追 求した理想的なエンジンと、フレームの持ち主。そんな印象を受ける。 「おいおい/なに阿房みたいに呆けてやがんだよ/たすけにきてやったんだから、もっとよろこべってーの?/」 「で、デルフ!?」 突如現れ自分をキ... -
ゼロのしもべ第3部-19
またたく間に数日が過ぎた。 「胸が大きくなるジンクスがある」 というスカロンのふかしか事実かわからぬ言を信じたルイズは、意外と真面目に接客を行っていた。 といっても、『きわどい格好の可愛い女の子が飲み物を運ぶ』というスタイルは、貴族で比較的潔癖なルイズにとっては耐え難いことである。愛想一つせず、客にワインをかけたり、平手打ちを食らわしたり、蹴ったり、ベアクローで植物人間にしたり、とてもではないが接客業などとは真逆の行動ばっかしてしまったのである。 そんなことばかりしていたら、客がつかないのは当然でしょでしょ♪ってな感じであった。もう意図的に客を寄せ付けないようにしているとしか思えない。チップなど一枚も貰えず、情報収集しようにも客と会話をすることすら稀。そればかりか、貰えるはずの給金まで減らされてしまうありさま。 「急な願いを聞いていただけただけでもご迷惑をかけているのに、そ... -
ゼロのしもべ第3部-16
樊瑞と名乗った男の身体から、殺気が烈風のようにフーケに襲い掛かる。 たまらず顔を背けてしまいそうになる。 しかし、そんなことをすれば即座に自分の命が危ないことを、フーケは直感的に悟っていた。 戦場で敵から目を逸らすことは死を意味する。 しかし、一度死んだ身であるフーケでなければ、歴戦の猛者といえども顔を背けていたに違いない。 「殺しただって?」 懸命に記憶の糸を手繰るが、思い当たる節はない。なにかそういう話を聞いた事もない。 『かつて貴様の父親に、ぼろくずのように父親を殺された男だ』と樊瑞は言った。 フーケこと、マチルダ・オブ・サウスゴータの父親が死んだのは4年前のことである。 その名の通りサウスゴータの太守であった父は仕えていた今は亡き大公の事件に連座し、命を落とした。 主君である大公の命を受け、ある人物を匿ったのである。 ただの... -
ゼロのしもべ第3部-4
4話 「ウッ!あいつハマサカ、『幻惑』ノ『セルバンテス』!!?」 ガーゴイルが大きく身体を仰け反らせる。 小型とはいえ、ガーゴイルは普通の人間では出せない力を持つはずだ。それをここまで怯えさせるとは一体何者なのか。 「迎えに来たよ。シャルロット君!!」 雲の上。ガーゴイルに運ばれる馬車を受け止めようとするかのように、男が立ちはだかる。 「ウワアッ!」 馬車を掴んだガーゴイルが、馬車の向きを変えようと慌てて身体を傾ける。 だが間に合わず、まさに衝突するという刹那、セルバンテスの姿が煙のように消えうせる。 「何ッ!?」 外を警戒するガーゴイルが瞬きをせぬうちに、キュルケとガーゴイルの間にバンテスは立っていた。 「シャルロット君……」 ゴーグルを指で持ち上げ、タバサに視線を向けるセルバンテス。頼もしくも力強い笑みがそこにあっ... -
ゼロのしもべ第2部-22
前へ / トップへ / 次へ(第3)部 光の球が空を遊弋する艦隊を包んだ。 膨れ上がる光球が空を飲み込み、そして消えた。 光が消えた後に現れたのは、炎上しながら高度を下げていくレキシントンの姿であった。 なにかのジョークのように、空に浮いた小島のような戦艦はがくりと艦首を落とし、地面めがけて墜落していく。 「大変です、ヨミさま!いっさいのエネルギーが消滅しています!」 「風石も消滅!電力系統全てダウン!一切の制御が不能です!」 「メイジたちの魔力もゼロになっています!脱出しようにも、フライもレビテーションも使えません!」 「ドラゴン、サンダーともに墜落していきます!このままでは本艦も!」 呆然と、砂嵐もなく消えうせた画面を見ているヨミ。 勝利を確信し、余裕に満ちた表情でモニターを見ていたヨミの姿はそこにはなかった。 「なんだ、なにが起こった!?」 ... -
ゼロのしもべ第3部-8
8話 日もとっぷり暮れて、翌日に近いヨルー! なぜか谷岡ヤスジっぽく夜がやってきた。緊迫感が欠片もないのはどういうことだろう。 理由は簡単。昼間の幽霊騒動のせいで、女衆は襲撃者よりも幽霊のほうに怯えているからだ。モンモンなぞギーシュの腕にすがり つき、ガタガタと震えている。「大丈夫。僕がついてるじゃないか。」と慰めるのはギーシュ。増水した湖さえ干上がりそうだ。 一方ルイズはというと、 「ゆ、幽霊なんて、こ、こ、怖いわけないじゃないの。モ、モンモンモンモランモンシーも、た、たいしたことないわねっ!」 と精一杯虚勢を張っていた。誰だ、そいつは。 「ひ、昼に見張りましょうよ!昼に!」 こんな意見も出たのだが、当然却下された。襲撃者は夜来るというのに昼見張ってどうするのだ。そういうと、 「おっちょこちょいな襲撃者がいて、間違えて昼に来るかも... -
ゼロのしもべ1
前へ / トップへ / 次へ 振り返ると野望の塔は地響きを立て、氷山を引き裂きながら極寒の北極海へ沈み行くところであった。 宿命の戦いにとうとう決着がついたのだ。 「建物が沈んでいく。」 断末魔をあげ、消え行く建物を見送る少年。長年にわたり実質一人で行動しているせいか、 最近はついつい独り言を言うようになってしまっているのが悩みだ。 冬の北極にいるにもかかわらず、シャツの上に前を空けた学生服という自然を舐めきった服装。 燃えるような赤い瞳と髪。どう考えても不良である。 海に浮かぶ鉄のなにかに乗っている。何か金属製の巨大な物体が海中にいて、それが背中だけを 海上に晒しているようだ。姿かたちは鉄の巨人の背中といったところか。 「だれも近づく者のない北極の海底で静かに眠ろうというわけか。」 声に感慨と、どことない寂寥を感じる。まるで長年の親友を失... -
ゼロのしもべ第3部-3
「ちょ、ちょっと待て!/なんか話の前後につながりがねーんじゃねーか!?/おもわず感心しそうになったじゃねーか!/オデレータ/」 いつものように無理矢理納得させられそうになっていたデルフが我にかえって叫ぶ。 「それによ/協力しろだなんていうが、オレはおめーに協力する気はいっさいねーぞ!/」 全身をゆすって、なんとか孔明の手から逃げようとするデルフ。肩に柄を当てたら気持ちよさそうだ。 そんな様子を見て孔明がやわらかい笑みを浮かべる。 「いえいえ。おそらく、あなたは協力しますよ。間違いなく。」 そしてデルフにだけ聞こえるような声で、ボソリとあることを呟いた。 途端、デルフの抵抗が嘘のように消える。声を震わせながら、 「……そりゃーよ、本当なのか?/」 孔明が頷く。 「嘘はついておりませぬぞ。この孔明の調査に間違いはありませぬ。」 「オデレー... -
ゼロのしもべ第3部-7
7 ここは梁山泊の最深部。忠義堂。晁蓋ことガリア王ジョゼフは腕組みをしてブレランドの報告を聞いていた。 「では予定通り、クロムウェルは。」 「はい。今回のドミノ作戦、クロムウェルに渡した命の鐘が鍵になります。それゆえ本人が陣頭指揮を執ることに決定しました。」 すでにクロムウェル自身は作戦のため地上に降りております、とブレランド。目を閉じてそれを聞く晁蓋。 「だがクロムウェルは……」 「はい。すでに限界が近いと……」 ブレランドが汗を拭きながら答える。 「あまりあれを長く使うのは危険だと説明しておいたのですが。今回の作戦、バビル2世を相手にする必要がある以上、確実に成功 させる必要がありますゆえ。」 「本人が強く希望したのか。」 頷くブレランド。 「クロムウェルはここでバビル2世をしとめるつもりのようです。」 ふーむ、と考え込む晁... -
ゼロのしもべ第3部-5
「なんであんたがここにいるのよ。」 王宮を訪れたルイズを出迎えたのは、口ひげを蓄えた優男……つまり孔明であった。 孔明は従者と警護を連れて、広場へ粛々と現れた。ネクタイには百合の花をかたどった紋章をつけている。これをつけているものは 宮廷ではほかにマザリーニ枢機卿ぐらいのものであり、すなわち一国の丞相であるということを示している。 丞相。宰相ともいう。いわゆる総理大臣のことである。 これまで内外の諸問題を1人で担当していたマザリーニの強い推薦により先日孔明は、新設された右丞相の地位についたのであ る。内政担当の右丞相を孔明が、外交担当の左丞相をマザリーニが任されている。 本来の格からいえば、右丞相へはマザリーニが就任するはずである。しかしアンリエッタの女王就任を機に、宮中から自分の影響を 減らして行きたいというマザリーニの強い意向から、このような形... -
ゼロのしもべ第3部-20
「ん?」 樊瑞の視線に気づいたバビル2世が振り返る。その視線を受け、思わずたじろぐ樊瑞。 「ぼくに何か用ですか?」 「い、いや用というわけではないんだが……」 そう、用があるわけではない。そもそも今の樊瑞には用など存在しない。樊瑞が覚えているのは、自分が山奥に篭り、呂尚という老人に魔法ではない不思議な術を習っていたこと。そして、呂尚が死に、山を降りたこと。それだけである。しかしこれは1ヶ月も前のことであり、それから今まで何をしていたのか、まるでそこだけ切り取られたかのように、すっぽりと記憶から抜け落ちているのだ。いや、抜け落ちているのは、自分がなぜあそこまで熱心に仙術と呼ばれる類の術を修行していたのか、その理由も消えている。両親や、兄弟の記憶もない。不自然なまでにすっぽりと抜け落ちている。 だが一番奇妙なことは、記憶が抜け落ちているということを不思議に思わない、ということで... -
ゼロのしもべ第2部-14
前へ / トップへ / 次へ アルビオンの首都、ロンディニウム。 その郊外にロサイムという町がある。王立空軍の工廠として有名な町である。巨大な煙突立ち並ぶ製鉄所、広大な木材置き場、 兵器工廠……ハルケギニア最強を唄われるアルビオン空軍の要である、ということはすなわちアルビオンの生命線であるというこ とでもある。 そこにひときわ目立つ大きな建物がある。空軍の発令所だ。かつて王立空軍の頭脳であったこの建物も、戦争終結によりレコン・ キスタに占有されてしまい、今は三色旗が翻っている。さらにひときわ異彩を放つのが、テントに覆われた巨大戦艦だ。レコン・キスタ は鹵獲した戦艦「レキシントン」を改装中なのである。 現在、ロサイムの町は完全封鎖体制、戒厳令の真っ只中にあった。 通りを歩くのは巡回する警備兵のみである。 その警備兵を見ていると妙なこと... -
ゼロのしもべ第3部-21
のどかな田園風景の中を、ガタゴトと馬車に揺られてはや3日。気分がドナドナだったのはすでに過去の話。こうまで長時間馬車に 乗っていると無我の境地に達してくるから不思議だ。ライダーズ・ハイとでもいえば良いのだろうか? ま、それでも一緒にきゃわゆい女の子でも乗っていれば話は別だろう。うふうふあはは胸が当たってます当ててんのよの世界が展 開されて、いっそ目的地に着く必要はないと感じるだろう。 しかし、残念だが現実は非情である。同乗しているのはおっさんであった。しかも変な仮面をかぶっているやつに、モノクルを嵌めた オッサンだ。馬車のドアを開ければオッサン臭が周囲5kmを汚染しそうではないか。 「いつになったらつくんだろうか?」 心の底から嫌気が差したという感じで、げんなりしたバビル2世が呟く。魔法学院を出てすでに2日目の朝を迎えていた。そろそろラ・ ヴァリエール家の領地に入る... -
ゼロのしもべ第3部-22
ルイズたちは、全員でカトレアの馬車に乗り込んだ。 あれだけの動物がいて、しかもこの人数だというのに乗れこめる馬車とは。それだけでただごとではない。 しかし、問題なのは…… 『…姉さま。ちょっと聞いていい?ちいねえちゃん、どうしちゃったの?』 ひそひそ声でルイズ。 『知らないわよ…。お父様には、「いい薬が手に入ったから、試してみる」って一月前に連絡があったけど…』 涼しげな表情のアルベルトにガンを飛ばしていたエレオノールが、我にかえって同じくひそひそと返す。。 2人がうつした視線の先には、鼻血をたらして実に幸せそうな表情のカトレアがいる。 「おかしいな。」 と、首を捻ったのはバビル2世である。脂汗までかいていて、様子がただ事ではない。その様子を見てルイズが肘でわき腹をつつき 「何がおかしいのよ?」 「……いや、ぼくのことを『バビル2世』と呼んだから、なぜ正... -
ゼロのしもべ第3部-23
食事が終わり、当てられた部屋に戻ってきたバビル2世。 「おかしいな、ぼくの超能力がすこし衰えているのかと思い、ルイズのおかあさんに試したが、普通に読めた。」 納屋へ臨時にベッドを置いたような部屋で、うんうんと呻っていた。というか、まだ悩んでいた。 「つまりカトレアさんはぼくに心を読ませないなにかを持っているということだ。」 ルイズたち曰く、カトレアは以前身体が弱かった、らしい。それを治すためいい薬が手に入ったので飲ませた。今は以前と性格が変わってしまっているという。 「つまりその薬がなにか彼女に影響を与えているというわけか。」 いったいなんの薬だろうか? この世界はファンタジーな世界、魔法のある世界だ。テレパシーをきかなくするような副作用を持つ薬があってもおかしくない。この家の財力を見るとどんな薬でも地の果て海の彼方から集めようとするだろう。 「だが、ただ薬を飲ん... -
ゼロのしもべ第2部-21
前へ / トップへ / 次へ 老人が落下していく。 残月と戦っていた中年男が、必死に落下する老人を追う。 信じられぬ高さまで飛び、その身体を受け止めた。 「ぐはぁ!」 受け止めた老人が、口から血を吐く。 「う……効いたわぃ。さすがは、バビル2世……」 「しっかりしろ!傷は浅い!」 草木を撒き散らし、煙を立てて着陸する男。グッとロプロスを見上げる。 「やはりあれはロプロスか!」 「間違いない……。我々の要注意観察対象No.1900701。すなわちバビル2世の忠実なるしもべ…」 地面に降ろされた老人がよろよろと立ち上がる。 「だが、われわれの力ならば、あの攻撃も避けることはできたろう。なのになぜ!?」 まともに食らったのだ、と問いかける男。老人は目を閉じ、顔を伏せた。 「わからぬ。なぜか、身体がまったく動かなかったのだ。そう、この少年を攻撃して... -
ゼロのしもべ19
前へ / トップへ / 次へ(第2部) 深夜、学院長室でオスマンは戻った4人の報告を聞いていた。 曖昧だった状態を無理矢理電気ショックで引き起こしている。よく死なないものだ。 「ふむ……では、ミス・ロングビルが土くれのフーケであり、あくまで単独犯。しかし、協力組織は存在していた、と?」 髭をもしゃもしゃ弄り、報告書に目を通すオールド・オスマン。 「美人だったのでなんの疑いもなく秘書に採用したのだが…惜しいことをした。」 「ちょっとは反省してください。で、いったいどこで採用されたんですか?」 隣に控えたコルベールが尋ねる。目が泣きどおしで真っ赤である。 「町の居酒屋でな、まあ色々と…ごにょごにょ…おっほん。まあ、深い詮索をするのはトリステインの人間としては恥ずべきことじゃ。」 「そういう風に言うと誤魔化しがものすごい高尚なことに感じるから不思議ですね... -
ゼロのしもべ第2部-17
前へ / トップへ / 次へ 「話は変わるけど」 とルイズが一向に進まぬ草案作成に見切りをつけ、気分転換にバビル2世に話を振る。 「やっぱり、元の世界に戻りたい?」 唐突だな、おい、と苦笑するバビル2世。 「今は、まだヨミがいるからね。」 帰るわけにはいけない、というバビル2世に、寂寥を感じた。 いずれ自分の目の前にいる使い魔は、自分の前から姿を消すのかもしれないという不安と、あくまで自分の使い魔としてこの世界 にいるのではなくヨミという男と戦うためにこの世界にいるのだといういわば嫉妬から来たものであった。この少年の目に自分ははた して映っているのだろうか。わたしは刺身のつまなのではないか。自分はなぜこの少年を呼び出したのか。 だが、それも無理はない。 よく考えれば自分はゼロの二つ名を持つ、メイジとはいえない人間に過ぎない。この少年は3つのしもべを... -
ゼロのしもべ3
前へ / トップへ / 次へ 「ふむ、珍しいルーンだな。」 差し出した左手を覗き込んで、コルベールという教師が呟く。 珍しいと聞いてさもあらんとその場にいた人間は頷いた。一方はバビル2世であり、仮にも宇宙人の血を引いている以上、 普通のものがでなくても『それほどおかしくはない』と考えた。もう一方はそれ以外の面々であり、『平民の使い魔だしな』 というものであった。もっとも後者は正確には『ルイズが呼び出せたんだしそうだよね』というものがほとんど混じっていた。 「コントラクト・サーヴァントはちゃんとできているし、安心しなさい。おめでとう。」 ありがとうございます、と謝辞を述べるルイズ。 「さて、じゃあみんな教室に戻るぞ」 促すと、コルベールはじめルイズ以外の全員がふわりと宙に浮かぶ。使い魔も例外ではない。 ルイズが飛べないことを口々に囃しながら飛ぶ面々... -
ゼロのしもべ第2部-18
前へ / トップへ / 次へ 18話 ここで幾人かの行動を点景として記していく。 樊瑞と呂尚の永久の別れは突然やってきた。 樊瑞が火傷に効く薬を作るため、薬草を集めていると、山の向こうで轟音が響いた。 すぐさま樹に駆け上り、音のした方向を見る。 「おお!」 目に飛び込んできたのは巨大な戦艦。それが百合の紋章をつけた戦艦に、一斉射撃を行っているところだった。 樊瑞の目の前で、戦艦は爆破炎上をし、艦隊は見る間に散り散りになっていくではないか。 「いかん!お師匠様が!」 樹を駆け下りた樊瑞は、矢のような速度で師匠の眠る山小屋へと向かった。呂尚の身体は癒えきっていない。そのようなところで あのような爆発音を聞けば、ショックでどうなるかわからない。あるいは何事かと思わず外に飛び出してしまうかもしれない。 果たして、駆けつけた樊瑞の目に映ったも... -
ゼロのしもべ第2部-12
前へ / トップへ / 次へ 目を開いたウェールズの目に飛び込んできたのは、神の奇跡を目の当たりにした僧侶のような顔で驚愕する父ジェームズの姿で あった。目からは涙がこぼれているし、祈るように指まで組んでいる。 なぜ父は泣いているのだろう。なぜ父は祈っているのだろう。 父だけではない。その場にいた人間全てが泣いていた。祈っていた。 そして、口々にある少年の名を叫ぶ 「バンザイ、ビッグ・ファイアバンザイ!」 父が少年に抱きつき、離れて地に伏せ祈りを捧げる。始祖ブリミルへの感謝をこめた祝詞だ。神聖な言葉の羅列による詩だ。 一国の王が使い魔に与える歌ではない。国の祭典や戦争の勝利など、国家的な祝いの場において、唄われる祝詞であった。 「おお……トリステインの若きメイジ、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの使い魔よ。貴方は一... -
ゼロのしもべ16
前へ / トップへ / 次へ フーケの前に立つバビル2世。 その背後には3つのしもべが控え、辺りを睥睨している。 「なぜお前はぼくの名前を知っていた。どこまで知っているんだ?」 「ど、どこまで……」 訊かれても、ほとんど知りはしない。 ただあの仮面の男に妙な絵と、名前を教えられただけなのだから。 「仮面の男とは誰だ?」 仮面の男といわれても、自分はただアルバイトを頼まれたに過ぎない。詳しいことは何も…。 と、ここまで来てフーケは気づく。自分はこの少年にバビル2世などと一言も言っていないし、今だって何一つしゃべっていないのに、 それに応えるように話しかけてくるではないか。まるで、心でも読んでいるように。 「そうだ、ぼくは心を読むことができる。だから隠してもムダだ。素直にしゃべったほうが身のためだぞ。」 なんということだ。ということはこの少... -
ゼロのしもべ2
前へ / トップへ / 次へ 妙に焦げ臭い。 良く嗅いだことのある匂いだ。爆発が起きた後、あたりにこういう匂いが漂う。 「あんた誰?」 突然現れた少女がそう問う。 薄桃色の光沢のかかったブロンドヘア。一瞬染めたのかと思うが、根元まで色が変わらないところを見ると どうやら自毛らしい。 黒いマント、杖。まるで 「魔法使い…?」 ゆっくりと腕を下ろす。視界に、周辺に立っていた若者たちが入る。ほぼ全員同年齢らしい少年少女は、 どれも皆この少女と同じように一律黒マントと手には杖である。 ただ、目の前の少女は成長が遅れている部類に入るだろう。主に胸の部分が、である。 「メイジよ!」 少女が呟きに反論する。どうもこだわりがあるらしい。 「明治?」 いや、magiだろうか。たしかMagicの元になった単語の。 「なによ、明治って。そんな... -
ゼロのしもべ第2部-10
前へ / トップへ / 次へ ジャーン ジャーン ジャーン 大軍が動く。 様子見のために先発は1万。その背後を主力部隊4万が固めている。 先発部隊1万は傭兵を中心とした部隊である。万一、なんらかの罠があった場合にメイジへの被害を最小限に抑えたいためである。 もっとも、深読みする人間は「おそらく杖ではなく剣槍でメイジを仕留めるのだろう」と、王党派をとことん辱めるためにこの編成にした のだろうと思っているようだった。 先発隊の先に2000の兵が物見として出ている。万一城に急変あれば、フクロウがただちに飛んでくるようになっている。何事もなく ても、司令部との間に30分ごとに報告を送るように命じてあるのだ。 「いかにコウメイとやらが兵法に通じていようとも、この兵力差ではどうしようもあるまい。見張りに気づいたのか火薬をしかけ... -
ゼロのしもべ第2部-13
前へ / トップへ / 次へ まだ日の昇らぬうちにアルビオン王党派の諸氏は散って行った。 全員が孔明の指示に従ってのことである。彼らのなすべきことは3つ。 1つ。アルビオンに、情報収集を主目的とした工作機関を作り上げること。 1つ。各国の王族や貴族に支援を働きかけること。 1つ。レコン・キスタの分断工作。 新政権となったレコン・キスタは歴史の例に倣い、粛清により多くの血が流れるだろう、というのが孔明の見方であった。いや、すで に血は流されている可能性がある。その血をより多く流させる必要が、敗者であるアルビオン王家にはあった。 「いくら必要とはいえ、忠臣の血が流れるのを見るのは忍びない。」 と、国王は嘆いたが、ことここに至ってはもはや他に方法もない。 第1のグループはさっそくラ・ロシェールに出発した。目的はすでに述べたようにスパイ... -
ゼロのしもべ第2部-11
前へ / トップへ / 次へ 「うわぁー、魚紳さん、なんだべあれは!?」 「三平くん、あれが今日のターゲットの竜だ。」 と、いきなりのインチキ東北弁で申し訳ないが、思わず釣りでキチで三平が出てくるほど、呂尚の釣りっぷりは見事であった。 作画:矢口高雄って感じだった。 虚空に稲妻が走り、裂けた。 引き抜かれた釣竿に従って、空間の裂け目から巨大な竜が現れた。 「なんだ、あのドラゴンは!?」 「見たことがないぞ、あんな竜は!」 幻獣やモンスターに詳しいはずのメイジたちが口々に騒ぎ立てる。当然である。彼らが知るドラゴンはティラノサウルスのような 二足歩行をし、羽の生えた恐竜といったものがほとんどである。中にはサラマンダーのようなタイプもいるが、それでもおおむねの ドラゴンのイメージは前述のようなものであった。 ところが、空に現れた老... -
ゼロのしもべ第2部-7
前へ / トップへ / 次へ ゼロの策士 「う、動いた…」 「終わりだ…動いた…/」 まるで正反対の反応を見せる1人と一本。1人は歓喜、1本は絶望。 そして名を呼ばれたバビル2世は… 「いったいおまえはだれだ。何者なんだ!?」 むむむと唸っていた。透視しても見えるのは精密な機械類のみで、生物の痕跡すらない。 「おわかりにならずとも、いたしかたありますまい。」 顔を上げ、微笑むコウメイ。 「なにしろ、この姿でお会いするのは今日が初めてなのですから。」 声もはじめて聞く声だ。「旦那様の名前はダーリン」と今にもナレーションしそうな声であった。 初めて、と聞いてバビル2世の機嫌が悪くなる。 「初めてならぼくがわかるわけがないじゃないか。」 バカにしているのかこいつはと憮然とする。だがコウメイなる男は意に介していない様子で、 「い... -
ゼロのしもべ13
前へ / トップへ / 次へ バビルの名を持つものは、異郷の地で故郷へ帰る日を夢見る運命にあるのか。 バビル1世は帰るために塔を作った。 だが塔は事故から消滅し、彼は異郷の土となった。 5000年後、バビル2世も同じく異郷にあった。 すくなくともバビル2世は故郷に帰りうる情報を手に入れた。 虚無の魔法使いと始祖の祈祷書―― 虚無の使い手はすぐ傍にいる。バビル2世の主となったメイジ、『ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール』である。 だが彼女はまだ未熟なメイジであった。まだ虚無の魔法を使いこなせてなどいなかった。 ゆえに、彼女を育て上げる手段が必要であった。 育て上げる手段、すなわち始祖の祈祷書である。 「始祖の祈祷書なら王室の宝物庫にも一つあったはずよ」 帰路、馬上でそれとなく尋ねると出てきたのは意外すぎる言葉であ... -
ゼロのしもべ第2部-15
前へ / トップへ / 次へ ルイズが巫女に選ばれた日から、数日あまり姿を見せなかった残月が、久しぶりに学院に姿を現したのは午後、コルベールの授業 中のことであった。 ちょくちょく学院内をうろついているところを多くの生徒に目撃されていたため、(しかしこの学院のセキュリティはどうなっているのだ) もはや誰もその変態仮面には驚かなくなっていた。が、今日は少し様子が違った。 「うほおおおおおおおおおお!ふはああああ!!」 まず一番驚いたのは誰あろう、教師のコルベールであった。本来生徒がこのような態度を取れば注意してしかるべき立場の人間が、 いつものえんじんがどうこうという授業を放り出して、残月に駆け寄った。 正確には、残月と共にやってきた竜騎士隊が運んできた、ものに駆け寄った。 突然放置された生徒たちはなすすべなく教室からその光景を見ていた。コルベールが興奮し... -
ゼロのしもべ6
前へ / トップへ / 次へ 「やや、これはすごい。」 久しぶりに横山作品っぽい台詞を口にして驚くバビル2世。 山野家が2、3軒入りそうな大広間に、同時に3桁単位で席につけそうな大きさのテーブルが3つ並べられている。 すでにテーブルにはローソクに火がつき、花がいけられ、果物の入った籠が置かれている。食事をしている生徒も多い。 それぞれの机に同じ色のマントを身につけた生徒同士、分かれて座っている。どうやらマントの色は学年を意味していて、 学年ごとに座るテーブルが決まっているようであった。 『そういえば、朝やってきた二人もルイズと同じ黒いマントを身につけていたな。』 黒マントの生徒は真ん中のテーブルについているところを見ると、ルイズたちは2学年であるようだ。 食べ終えた生徒の中には仲間で集まって騒いでいるものもいる。朝からテンションが高いのは、呼び出し... -
ゼロのしもべ17
前へ / トップへ / 次へ 17話 トリスタニアの南。 山の中にラ・ロシェールという港町がある。 こういうと奇妙に思うだろうが、これは浮遊大陸アルビオンの周期経路近くにある町ゆえ、そこに行き交う人々が自然と集まりだし、 往復連絡船等が就航し始めたことに由来する。 桟橋には多くの船が係留され、大陸の接近を今かと待ちかねている。 そのラ・ロシェールから北東に70リーグばかり行った土地に、最近奇妙な噂があった。 土地の人間や旅人、商人が神隠しにあうのである。 もともと何もない荒れ地で、一種天然の要害と言ってよい地形だった。 そのため近道をしようとする人間ぐらいしか寄るものは居なかったが、こんな噂が立てばますます人気が失われる。 あるいは眼がうつろな集団がその土地に向かって行ったというけったいな噂もあった。 今では誰もその土地に近づこうとしな... -
ゼロのしもべ第2部-5
前へ / トップへ / 次へ 宿に戻り、割り当てられた部屋に着く。 道中から、妙にギーシュが思いつめた顔をしていた。 そんなに貞操の危機がショックだったのだろうか。 「なあ、ビッグ・ファイア……キミはすごいな」 散々迷った挙句、そう切り出した。 「あの魔法衛士隊の隊長と模擬とはいえ引き分けたんだぞ。すごいじゃないか。」 褒めているんだが、微妙に何かを迷っているそぶり。簡単に言うなら、なにかのタイミングを計っているようだ。 あの、えっと、その、と切り出したいが覚悟を決められない様子。 というのも、ギーシュはバビル2世に、 「戦い方を教えてもらいたい」 と言い出そうとしているからだ。 仮にもギーシュは元帥の息子である。その命は国のため、ひいては王女アンリエッタのためにあると言っても過言ではない。 それだけに今回の任務に対する意気込みは相... -
ゼロのしもべ第2部-19
前へ / トップへ / 次へ 「ん?なにかしら、あれ」 調子に乗って敵揚陸艦を落としまくっていたシエスタが気づくと、鉄人の足元へガラクタのようなものが迫りつつあった。 破壊した敵船が、そのまま浮かび上がって鉄人を追いかけているという雰囲気だ。 「おもしろいわね。どうしてもわたしに殺されたいっていうのね!」 ぐるるるると目を渦巻きにして、操縦かんを握り締めるシエスタ。鉄人が縦旋回して、足元から迫り来るガラクタに襲い掛 かった。 「がおおおおおん!」 鉄人が吼えた。鉄の拳が、ガラクタをぶち破り、突貫する。 「…ん?あ、あれ??」 シエスタが慌てて操縦かんをガチャガチャ動かす。 見ると、鉄人がガラクタに挟まって、身動きがとれないでいるではないか。 「シエスタ!マストじゃ!マストに身体が絡まって、動きを殺されておるのじゃ!」 背後から慌てて曽祖父ショウ... -
ゼロのしもべ第2部-16
前へ / トップへ / 次へ ズイと呂尚との出会いは20年以上前に遡る。 ズイ。本名はハン・ズイという。トリステインはおろか、ハルケギニアでも珍しい名前だ。なにしろ苗字が先に来る時点で稀である。 おまけにズイなどという名前を持つものは、犬猫にもいないのではないか。 父親はハン・カイといい、狩人であった。獲物は主に犬。ハルケギニアでは犬肉を食する文化はないが、毛皮を一部の好事家が 靴にしたり防寒具にする。また、増えすぎた野良犬を間引くのにも重宝されていた男であった。 このハン・カイが突然死んだ。死因は溺死であった。 陸の上で溺れ死んだのだ。 話によると、アルビオンの貴族と毛皮の売買で揉め、交渉が決裂した。その帰り道、船から下りて2,3歩も歩かないうちに悶え始め、 水を大量に吐いて死んだという。腹を割いてみると、肺は水に浮いているような状態であった。 ... -
ゼロのしもべ5
前へ / トップへ / 次へ まず目を覚ましたのは超人的な体力を持ち、1週間ぐらいなら場合によっては寝る必要のないバビル2世であった。 毛布に包まって床の上で寝たのだが、それでもほぼ体力はフルに回復し、ヨミとの戦いで減ったエネルギーも回復している。 「これはどういうことだろう」 自分の事ながら、訝しく思う。 あれだけの激戦を繰り広げたのである。おまけに数時間しか寝ていない。通常、エネルギーの回復には完全看護のバビルの塔 でさえ、あの消耗度なら1ヶ月はかかっておかしくないのだ。 それが、何事もなかったかのように全快していた。 適当な広場に生えている木を選び、それに念動力をかけてみる。 腕を交差させ、足を組んで中腰に座るポーズを行なうと、全身から光が放たれ、超能力が発現する。 見よ、木は浮かび上がり、捻じれ始めたではないか。 まるで絞った雑巾のよう... -
ゼロのしもべ第2部-3
前へ / トップへ / 次へ アサー!と谷岡ヤスジみたいに夜が明けた。 というか正確にはまだ明けてはいない。 まだ夜は完全に明けきっておらず、朝もやが立ち込めていた。3人は馬に鞍をつけ、旅の準備をしていた。うち一頭はロデムが変身した 馬である。ロプロスとポセイドンは万一のことを考えすでに出発させている。 ヨミは自分の居場所をフーケの件から突き止めている可能性がある。そのときヨミ自身がくれば、しもべはあやつられ周囲に大惨事を 巻き起こしてしまうだろう。そのためにもいったん移動させておくべきと考えたのだ。 ポセイドンは目的地近くにあるという池に、ロプロスは岩山の陰に隠れているはずだ。 ルイズはいつもの姿に加えて乗馬用のブーツを履いている。ギーシュは履いていない。 と、出発前にギーシュが妙なことを言い出した。 自分の使い魔である巨大モグラを連れて行き... - @wiki全体から「ゼロのしもべ第3部-10」で調べる