あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ内検索 / 「ゼロの魔人-02」で検索した結果
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ゼロの魔人
...ゼロの魔人-01 ゼロの魔人-02 ゼロの魔人-03 -
ゼロの魔人-02
ルイズが半覚醒すると、其処は柔らかなベッドの上だった。 首だけを擡げ周りを確認すれば、馴染みの重厚な調度品や家具。 青に淡く光る何かが見て取れ、其処が寮の自室である事を認識させる。 窓から差す穏やかな光は、双月の明かりである事が窺え、今が夜である事を教えた。 寝起きの弱い少女は再度、枕に頭を投げ出すと重い思考の海に沈む。 (体。重い……動く気しないわ。 はぁ……お腹すいたぁ。今日の夕食なんだったかしら? まぁ……もぅ、なにも残ってないだろうけど。 それにしても体があちこち痛いわね。 フフッ……あんな大爆発、間近で食らっちゃったんだもの。 むしろ、この程度で済んで幸運ってやつかしら?) 取り留めの無い事を考えながら自嘲を零し、微睡みから解放される。 意識して息を深く吸い込み、体の隅々に空気を送り込むと、 今まで思惟に掛かっていた靄が散り、頭... -
ゼロの魔人-01
ゼロの魔人――1話 少女は、爆風に乱れ、焦げてしまった、 桃色の艶やかなブロンドを気に留めるでもなく。 振り下ろした杖が消し炭と化し、 爆裂四散した事に気を病むでもなく。 爆発の衝撃で煤に塗れ、割れてしまった綺麗な爪の痛み、 ボロボロの衣服に気が立つでもなく。 まして、幾人かの親しくも無い学友が、 先の爆発に巻き込まれ昏倒している事に気が差すでもなく。 唯、目前に広がる結果に嬉嬉と、不安をない交ぜした様な、 何とも形容しがたい感情に囚われ、戦慄いていた。 今日は、トリステイン魔法学院に於ける春の使い魔召喚の儀式その日であり、 今後の魔法使いとしての属性を固定。専門課程への移行。 更には、二年への進級試験も兼ねる重要な役割を担うものである。 例年通り執り行われたそれは、稀に見る優秀な成果を呈し。 一抹の心配事を内包するも、つつがなく儀... -
ゼロの使い魔人
東京魔人學園伝奇シリーズから、『陽の黄龍の器』こと、 緋勇龍麻 ゼロの使い魔人-01 ゼロの使い魔人-02 ゼロの使い魔人-03 ゼロの使い魔人-04 ゼロの使い魔人-05 ゼロの使い魔人-06 ゼロの使い魔人-07 ゼロの使い魔人-08 ゼロの使い魔人-09 ゼロの使い魔人-10 ゼロの使い魔人-11 -
ゼロの魔人-03
昨夜の、近年類を見ない大地震は、トリステイン魔法学院に勤める者を煩忙させた。 学棟の被害は、連綿と施された固定化の魔法により軽微である。 しかし、保管されていた瓶詰めの秘薬や陶器など、 設置されていない物は悉く損壊し、甚大な被害と成っていた。 怪我人一人として出なかった事が、奇跡的様相を呈している。 夜を撤して院内を奔走し、事態の収拾に人力尽くした教員や奉公人は、明け方あたりに漸く報われ、 日の上る頃には、常より少々慌しい業務を残すのみとなった。 欠伸を噛み殺し、山の様な洗濯物を消化する為、 メイドの少女は一人、学院外に設置された洗い場へと赴く。 気持ち足早に辿り着くと、先に訪れていた人影へ目を奪われた。 暫し立ち止まり思案の後、少女は喜色満面の笑みを湛え、小走りに近づき、 その者をまじまじ下から覗き込んで観察する。 「あの……貴方はもしや……悪魔さ... -
ゼロの魔獣
「魔獣戦線(無印)」の真理阿を召喚。 第一部 『 魔獣 来たる 』 ゼロの魔獣-01 ゼロの魔獣-02 ゼロの魔獣-03 ゼロの魔獣-04 ゼロの魔獣-05 ゼロの魔獣-06 ゼロの魔獣-07 ゼロの魔獣-08 ゼロの魔獣-09 ゼロの魔獣-10 ゼロの魔獣-11 ゼロの魔獣-12 ゼロの魔獣-13 ゼロの魔獣-14 第二部 『 回天 -トリステイン拳獣士- 』 ゼロの魔獣-15 ゼロの魔獣-16 ゼロの魔獣-17 ゼロの魔獣-18 ゼロの魔獣-19 ゼロの魔獣-20 ゼロの魔獣-21 ゼロの魔獣-22 ゼロの魔獣-23 ゼロの魔獣-24 ゼロの魔獣-25 ゼロの魔獣-26 第三部 『 2nd Kiss 』 ゼロの魔獣-27 ゼロの魔獣-28 ゼロの魔獣-29 ゼロの魔獣-30 ゼロの魔獣-31 ゼロ... -
ゼロの魔王伝
吸血鬼ハンターDからD 魔界都市ブルースから浪蘭幻十、ドクターメフィスト、姫を召喚 ゼロの魔王伝-01 ゼロの魔王伝-02 ゼロの魔王伝-03 ゼロの魔王伝-04 ゼロの魔王伝-05 ゼロの魔王伝-06 ゼロの魔王伝-07 ゼロの魔王伝-08 ゼロの魔王伝-09a ゼロの魔王伝-09b ゼロの魔王伝-10 ゼロの魔王伝-11 ゼロの魔王伝-12 ゼロの魔王伝-13 ゼロの魔王伝-14 ゼロの魔王伝-15 ゼロの魔王伝-16 ゼロの魔王伝-16b ゼロの魔王伝-17 ゼロの魔王伝-18 ゼロの魔王伝-19 ゼロの魔王伝-20 ゼロの魔王伝-21 ゼロの魔王伝-22 ゼロの魔王伝-23 ゼロの魔王伝-24 -
ゼロの魔人-00
ひとつの世界が死に、彼は産まれた。 数多の敵を鏖殺し。 全てのコトワリを否定し。 天上に耀くカグツチさえも打倒して 世界は、新たに生まれ変わる力を失った。 創世は成されなかったのだ。 辺りは、際限ない闇と混沌に満ち、 純然たる悪魔へと変貌をとげた少年は、 時間の概念さえ失われた其処に、独り佇んでいる。 彼は待っていた。 曖昧な悠久を享受し、それを待っていた。 そして、静かにその時は訪れる。 彼は、それが何であるかを知っている。 それが、主従の契りである事を知っている。 それが、次なる創世の始まりである事を知っている。 躊躇う事なく、咫尺に揺蕩う銀の水面へ体を沈め、 久しく発する事の無かった言葉を紡ぐ。 僕の名は―― -
ゼロの最初の人
藤崎竜版「封神演技」より作品終了後の「太公望(=伏義=王奕)」 ゼロの最初の人-01 ゼロの最初の人-02 ゼロの最初の人-03 ゼロの最初の人-04 ゼロの最初の人-05 -
ゼロの魔獣-02
前ページ次ページゼロの魔獣 結論からいえば、真理阿は『役に立つ』使い魔だった。 召喚から3日経ち、あらためてルイズはそう思った。 まず、彼女よく働く。 ルイズが指示を出すまでもなく、掃除や洗濯にと甲斐甲斐しく動き回る。 おそらくは天性の働き者なのだろう、同年代のメイド(シエスタと言ったか?)と親しくなった真理亜は そのまま厨房の仕事を手伝いに行き、たちまち平民たちの間で人気者になった。 (手伝ったお礼にと貰った布団を繕いなおし、その日のうちに寝所まで確保した。) 平民だけではない。 彼女はどういうわけか、他の使い魔達から好かれた。 彼女の前では本来獰猛な性質の使い魔も、鼻を鳴らして擦り寄ってくる。 じゃれつくフレイムを見て、「どっちが主人か分ったもんじゃないわね」などとキュルケは苦笑したが 彼女自身、真理阿の事を気に... -
ゼロの魔王
「ライブ・ア・ライブ」のオルステッドが召喚される話。 ゼロの魔王-1 ゼロの魔王-2 -
ゼロの使い魔人-02
前ページ次ページゼロの使い魔人 …天を貫くかの様に高く掲げられた杖が、鋭く振り下ろされた。 果たして、この挙動を何十回繰り返しただろうか? ただ一心に呪を紡ぎ、 己が裡に在るだろう《力》を注ぎ、解き放つ。 だが……。それに応えるのは、只の土煙と爆音。そしてそれにも増して不快で自身を辱める、 男女入り交じった嘲弄の雨だった。 この日を迎えるにあたって、彼女は心身共に入念な準備を施し、不退転の決意を胸に臨んだ。 ――が、度重なる失敗と外野からの呵責無い悪罵、野次がもたらす、焦りと無力感は体力に集中力をも蝕み、 それらが相俟って、『もう後が無い』という事実を彼女に自覚させる。 揺らぐ身体と心に鞭打ち、天地全てに届けといわんばかりの声で、彼女は呪を構築し詠み上げた。 そして……。遂に「それ」が彼女の眼前に顕れた。 それ迄の爆発では無い。七色に煌... -
ゼロの使い魔人-01
前ページ次ページゼロの使い魔人 …時に西暦2004年12月24日深夜。 日本国東京都、新宿区私立天香學園高等學校…の地下深く。 「うおおぉぉぉぉっ!!」 一瞬前迄、自分の身体があった所へ一抱え程もある岩塊が落下し、砕け散る。 止む事無く聴覚を独占する、不気味な地鳴りと不快な振動音。 頭上より落ち続ける土くれと埃の量は増す一方。 そんな修羅場の直中を、振り返らず、足を止めず只駆け抜ける人影……。 何故、彼はそんな状況に陥ったのか……。 ――遥か昔。この地には、今は失われた文化と技術に支えられた文明が存在った。 それを神の力だのと思い上がった者達は、驕慢極まる振舞いの結果、自分自身すら制御の 出来ない存在を生み出し、処置に困った挙句、そいつを『臭い物には蓋を』の如く、地下深くに閉じ込め 『無かった事』にし、事態の収拾を謀り、それは上手く... -
ゼロの使い魔人-04
前ページ次ページゼロの使い魔人 ――鼓膜をつつき回す電子音が、沈み込んでいた彼の意識を『現実』へ引き揚げる。 (う……) ぼやけた目を一、二度しばたたかせた龍麻は、更に指で軽く瞼の上から揉んで視界をはっきりさせる。 「…俺は、――そうだったな」 回転を始めた脳細胞が、彼自身が置かれた状況を余す所無く伝えて来る。 龍麻はその事実に一つ溜め息を付くと、腕時計のアラームを止め、その場で上体を伸ばした。 被っていた毛布を畳んで側に置くと、ブーツの紐を締め直し、相棒たる黄龍甲を腕に着け、立ち上がるとおもむろに部屋を見回した。 ――十二畳程の室内。机に本棚、来客用の椅子と小テーブルやクローゼット、天蓋付きのベッド…。 そのどれもが、手の込んだ細工と意匠が施された、上質な代物であるのは一目で解る。 そして…寝台で穏やかな寝息を上げている、龍麻にとっての疫... -
ゼロの魔獣-01
前ページ次ページゼロの魔獣 (やったわ! 成功よ!!) まばゆい閃光の中、ルイズは確かに見た。 黄金のたてがみに巨大な牙、鷹のごとき翼を持つ獅子 筋肉はゴリラ! 獲物を捕らえる猛禽の眼光 そして・・! (え・・・!! そ、 そんな!?) 「グワオオオオォォォォォ!!! ナメんじゃあねえええええええぇぇぇ!! 俺はまだ くたばっちゃあいねえぞおおおおおおおオオォォォ!!!!」 (コイツ コイツは魔獣・・・? それとも・・・) ルイズが我に返ると、爆風は既に収まっていた。 立ち上る白煙の中から現れたのは、長い黒髪の少女 見るからに平民といったみすぼらしい格好だが、吸い込まれそうな程に大きな瞳が愛らしい。 「ちょっ、ちょっと! 平民がどこから入り込んだの!? 私の使い魔はッ!? あ... -
ゼロの使い魔人-05
前ページ次ページゼロの使い魔人 …授業が行われる教室の構造は、大学の講義室と凡そ変わりない。 半分に切った擦り鉢の様な石作りの部屋に、階段状にしつらえられた机と椅子が並んでいる。 ルイズと共に龍麻が入室するや、あちこちで笑い声が上る。 笑い声の元を睨みつけつつ、ルイズは席の一つに着くが、龍麻は部屋の最後部の壁際…、部屋全体を見回す位置に立つ。 龍麻が見た限り、生徒連中は全員が大なり小なり、使い魔らしき生物を引き連れていた。 ――まあ猫や鴉、大蛇や梟とかはまだしも、例のキュルケが連れていた火トカゲに始まり、コンピューターRPGや 幻想小説にのみ存在し得た筈のクリーチャーが当たり前の様にいる光景には、それなりに 『経験値』を蓄えている龍麻といえど、感心や呆れとは無縁で居られなかった。 (よくもまあ…。此処は本気で何でもアリというか、とんだお化け屋敷... -
ゼロの使い魔人-03
前ページ次ページゼロの使い魔人 「チキュウ? トウキョウ? シンジュク? …変わった地名ね。聞いた事ないわ」 「…ハルケギニア大陸のトリステイン王国、だったか。一晩に月が二つも昇る夜、 というのも有り得ん話だが、何より魔法なんて代物は、俺の世界では表向き、完全に否定されたからな」 「そもそも、あんたのいた世界ってなによ? 月が一つだけ? しかも、魔法が無いだなんて信じられないわ」 …その夜。 学院生寮内、ルイズの私室にて両者は話合いの場を持っていた。 部屋の主は、天蓋付きのベッドに腰を下ろし、龍麻はその対面にて椅子に座り、足を組んでいる。 「別の世界から(無理やり)呼び込まれた」と言う龍麻の主張に対し、ルイズは露骨な不信…を通り越して、 『頭がちょっと可哀想な人』という視線を向けっ放しだった。 相棒ともいえる、小型多目的情報端末(通称H.A... -
ゼロの魔獣-05
前ページ次ページゼロの魔獣 昼間の決闘騒ぎに加え、広場での爆発事故。 当面の謹慎、退学すらも覚悟したルイズであったが、その処分は事のほか軽いものだった。 ルイズが魔法を使ったのは、あくまで友人を守ろうとした先走りであり、 爆発を引き起こしたのは結果に過ぎない、というキュルケ達の弁護が通ったのが大きかった。 また、ギーシュも自らの過ちを素直に認め、シェスタ・真理阿・ルイズに謝罪してきたため 結局は双方厳重注意と、広場の後片付けを命じられただけで放免となった。 もっとも、教師陣のほうにも後ろめたさはあった。 一連の動きを早い段階で掴んでおきながら、平民の使い魔への興味から、事態を黙認したのだ。 この場合、責められるべきは大人達の打算であり、少女の一途さでは無いだろう。 加えて・・・この話を大事にはしたくなかった。 立... -
ゼロの魔獣-03
前ページ次ページゼロの魔獣 「決闘だ!決闘を申し込む!!」「望むところよ!あたしの魔法でギッタギタにしてやるわ!!」 突然振って沸いた決闘騒ぎに、食堂は熱狂に包まれる。 騒ぎの敬意は実に些細な事だった。 その日給仕を務めていたシエスタは、香水のビンを拾い、落とし主であるギーシュに届けた。 ところが、それが原因でギーシュの二股が発覚、結果ギーシュは二人から袖にされてしまう。 面目を失ったギーシュは怒りのハケ口をシェスタに向けた。 まあ、よくある話である。 そこに、同じくストレスのハケ口を求めるルイズがたまたま通りがかった。 ルイズは真理阿直伝の正攻法でもってギーシュを責める。(というか、当り散らした) その後、壮絶な舌戦が繰り広げられ、ついには決闘、である。 「お待ちなさい」 凛とした声が響き、場が静まる... -
ゼロの使い魔人-06
前ページ次ページゼロの使い魔人 朝の洗濯で使った水汲み場に立ち寄り、掃除で付いた汗と汚れを洗い流した龍麻は、 幾分さっぱりとした足取りと表情で食堂へと向かっていた。 扉を押し開け、室内へと足を踏み入れる。 既に生徒らの大半は食事を終えてる様で、朝に知り合ったシエスタを始めとするメイド達がデザートを配っている。 テーブルの一角では、金髪の少年――ギーシュと呼ばれていた彼を囲んで出来た人垣からの、何やら囃立てる様な声を余所に 龍麻は、人目を引く桃色がかったブロンドの髪の持ち主の元に向かい、声を掛ける。 「部屋の後始末は終わったぞ」 「そう。随分とモタついたようだけど、まあいいわ。アンタの言う通り、ご飯は外に置いてるから。 食べ終えたら、呼ぶまで外で待ってなさい」 「解った」 ルイズの声に簡潔に応えて、踵を返す。 先程の雑談の輪の側を龍麻が通り掛かる直前。 ... -
ゼロの使い魔人-09
前ページ次ページゼロの使い魔人 トリスタニア…… 建国以来、六千年に及ぶ歴史を閲するトリステイン王国の首都である。 壮麗な外観と威容を備えた王城を中心に、各種公的機関や貴族の居館が立ち並び、 更に王城から続くブルドンネ街を中心にした一帯は、この国の文化・経済・娯楽 の供給源にして消費の場でもある。 所狭しと建物が林立し、その合間を縫って敷かれた道の両端には無数の露店が開 かれ、街の賑やかさをより高める一因となっている。 背や手に目一杯の荷物を抱え歩く者、急ぎの用なのかコマネズミよろしく忙しな く駆け回る者、散歩がてらにぶらつく者、露店を冷やかし、又は真剣に値切ろう とする奴……。 そんな、歳も出で立ちも目的も様々な人間が行き交い生み出す、嬌声とざわめき の坩堝を掻き分ける様に、どこにでもいるようでその実、注視してみれば一風変 わった取り合わせの二人組が... -
ゼロの使い魔人-07
前ページ次ページゼロの使い魔人 ―――枷から解かれた猟犬の勢いで迫る、鈍い光沢を持つ戦乙女を模した彫像。 凡そ金属で出来ているとは思えない、しなやかな動きと軽捷さは驚くに足る。 突進した勢いもそのままに、ゴーレムの右拳が龍麻の顔面へ飛ぶ。 僅かに身を逸らし拳に空を切らしたが、続けざまに横蹴りが唸りを上げて迫るも、その軌道上に 龍麻の体は無い。 三撃目、外れ。 四撃目も同様。掠りもせず、単に空を掻き乱したに留まる。 (見かけに反して、よく動くな……) と、左からの巻き込むような一打をいなし、龍麻は思考を巡らせる。 ……確かに、自慢するだけの事は有る。 心得の無い人間なら、まず躱せもせず一撃で地面に転がり、悶絶しているだろうし、振るわれる 金属製の四肢はそれ自体が兇器足りうる。 当たり所に因れば容易に骨を砕き、身を潰せるだろう。 けど……、それだけだと。... -
ゼロの魔獣-08
前ページ次ページゼロの魔獣 「―それは違います 今回の事件の責任は ミセス・シュヴールズひとりに押し付けて済むものではないのです。」 宝物庫。 その巨大な風穴の開いた一室では、真理阿の独演会が行われていた。 話は三十分ほど前に遡る。 城下町からの帰り、偶然にも『破壊の杖』盗難事件の目撃者となった四人は 一夜明けた後、現場検証のために宝物庫へと呼び出された。 ところが、議論が責任問題へとすり替わり、当直のシュヴールズが槍玉に挙げられる事態に至ったため 真理阿は彼女の弁護を始めたのである。 「みなさんの中に 一度たりとも当直に手を抜いたことがないと 自信を持って言える人はいますか? 賊が進入する可能性を想定し 警鐘を鳴らしていた人はいましたか? ―事件は起こるべくして起こりました・・・ 今... -
ゼロの魔獣-09
前ページ次ページゼロの魔獣 トリステイン魔法学院から、馬車に揺られること四時間― 森の奥の開けた空き地に、それとおぼしき廃屋はあった。 早速一同は、『破壊の杖』奪還の作戦を考える。 「駄目よ! マリア 魔法の使えないあなたが偵察なんて」 真理阿の提案にルイズが反発するが、真理阿が持論を述べる。 「魔法の使えない私が後方に残っても 仲間の危険は救えないわ むしろ私が前に出て掩護を受けた方が 全体の生存率は上がる それにイザという時 前衛は逃げに徹するんだから 魔法を使えるかどうかは関係ないわ」 正論である。 なおも何か言いたげなルイズに、真理阿が続ける 「大丈夫 本当に危ないときは デルフを囮にして逃げるわ」 ヒドイ事をさらりと言う。 真理阿の背中で、デルフリンガーが泣いた。 結局、真理... -
ゼロの魔獣-13
前ページ次ページゼロの魔獣 語られるべき話は全て出尽くし、慎一はそこで口を閉じた。 学院長室の空気が緩み、オールド・オスマンは、ふう、とため息を漏らした。 高度な魔法の習得を通じ、世界の理の多くに触れた老人ではあったが 目の前にいる若者の体験は、彼が知覚出来るレベルを遥かに超えていた。 よく言えば博識、悪く言えば変人で知られたコルベールは、 高度に発達した科学技術で成り立つ異世界の話に、初めは目を輝かせていたが 話が神々の戦いに踏み込むまでに至り、戸惑いを隠す事が出来ずにいた。 「・・・お話はわかりました ―それで ミスタ・クルマ」 「慎一でいい」 「ではシンイチ あなたはこれから どうなさるおつもりなのですか?」 「・・・元の世界に戻る それだけだ」 自らの体を切り刻み、母親をモルモットのように殺した、父・... -
ゼロの魔獣-07
前ページ次ページゼロの魔獣 ―虚無の日。 ルイズ達は、トリステインの城下町に来ていた。 着のみ着のままで召喚された真理阿には、 代えの服や、その他最低限の生活用品が必要であったからだ。 「あら いいじゃないマリア! やっぱり私の目に狂いは無かったわね」 そう言いながら、真理阿を着せ替え人形にしているのはキュルケ。 「・・・って なんでアンタがココにいるのよ!」 「あら? マリアは私の友人でもあるのよ それに私たちがシルフィードで運んであげたから こうしてじっくり吟味出来るんじゃない ちょっとは感謝しなさいよ ヴァリエール」 「アンタの使い魔じゃ無いでしょーが!!」 真理阿はと言えば、きらびやかなドレスに落ち着かない様子だ。 「やっぱりこんなのダメよキュルケ 背中が見えすぎているし、スリ... -
ゼロの魔獣-06
前ページ次ページゼロの魔獣 頭上には、満天の星空が広がっている。 二つの月の輝きの下、ルイズは再びヴェストリの広場にいた。 その目の前にあるのは、一体の案山子。 突き立った一本の棒に、ひしゃげた青銅の鎧兜が結わえてある。 ギーシュのワルキューレを再利用した、練習相手というワケだ。 (今回の惨事は、全て私の責任・・・) 主である私に十分な力があれば、真理阿も無茶な決闘は挑まなかったハズだ。 のみならず、自分の力量を見誤った結果、大切な友人を殺めるところだった・・・。 (せめて 彼女の献身に報いるだけの力を身につけなければ!) ルイズは深呼吸して、詠唱を始める。 まずは炎の系統、ファイヤーボール。 詠唱に合わせて大気が振るえ、体内に力が満ちてくるのが分かる。 (イケる!) 高まる魔力を杖先に集中し、... -
ゼロの使い魔人-08
前ページ次ページゼロの使い魔人 「キ? 何それ。精神力ならともかく、そんなの聞いた事ないわ」 「解釈は諸説あるが、解り易く言えば人間の生きている力そのものさ。人だけじゃない。鳥や獣、樹や草、ひいては土、水、風、火とか世界に在る物全てに遍く宿っていて、その存在を成り立たせている万物の根源ともいえる物……、って思想が俺の国を含めた周囲の地域には在る。断じて、魔法やその副産物なんぞじゃ無い」 「信じられないわよ。今だって、そんなのまるでわかんないもん」 と、眉を顰めて龍麻を見やるルイズの口調と視線に態度は、前日にも増して棘を含んで、もはや敵意と称しうる段階にあり、その余りの空気の悪さに内心辟易しつつ、龍麻は肩を竦めてみせる。 「当たり前すぎて自覚出来ないというか、本来は目に見えて影響を及ぼす程強くないんだよ。 あんた等魔術師が魔術を使う際に必要な精神力とかだって、それを使... -
ゼロの魔獣-12
前ページ次ページゼロの魔獣 地球。 ― 慎一と真理阿が出遭った世界。 ハルケギニアとは異なる宇宙に存在するその惑星は、 後に『神』の名で呼ばれる事となる、ある種の意志によって創造されたものだった・・・。 『神』は天地を切り開き、あまねく生命の大元を生み出した後、深い眠りについた。 『神』の眠りし大地で、生物たちは互いを喰らい合いながら進化を重ね、 やがて、地上の覇者となる人類が誕生した・・・。 『神』が何の目的で、その蒼い惑星を生み出したのか、其れを知る術は無い。 だが、再び『神』が目を覚ます時、大地は裂け、天は荒れ狂い、全ての生命は死に絶えるであろう・・・。 ―神託や予言の類では無く、高度に発達した科学技術に拠って『神』の存在を知覚するに至った十三人の学者は、そう結論付けた。 彼らは... -
ゼロの魔王伝-02
前ページ次ページゼロの魔王伝 ゼロの魔王伝――2 眼鏡のレンズ越しに、差し込む陽光に煌めく目に見えぬ何かを見つけ、タバサが熱い泥濘のように溶けかかっていた思考を引き締めた。『雪風』の二つ名に相応しい氷の刃の様に、冷たく鋭利な思考を取り戻した。 ロウランゲントと名乗った顔の見えぬ青年の左手に纏わりつく煌めき。天の河を形作る星達の煌めきさえも色褪せて見えるのは、煌めきそのものよりもそれを纏う幻十の繊指の美しさの故であった。 指の関節に寄る皺も、骨と腱と肉を覆う肌も、かすかに桃色を刷いた爪も、すべて人間の指とおなじ部分によって構成されている。 だというのに思わず目を向けてしまうその美しさはどうした事か。老若男女誰しもに刻まれている指関節の皺もあるというのに、無限の宇宙に渦を巻く星雲の様に自ら輝いてさえいる。 黒闇の衣から覗く肌を見よう。大地の奥... -
ゼロの魔獣-15
前ページ次ページゼロの魔獣 ―チェルノボーグの監獄。 一切の不審人物が立ち入ることのできないハズのその館内を、 明らかにその場に似つかわしくない不審者が二名、我が物顔で進んでいく。 片方は長身の白仮面。 黒マントからのぞく長柄の杖が、かろうじて彼がメイジである事を推測させる。 もう片方の男の格好は、その場どころかその世界にすら似つかわしくない。 大柄の恰幅のいい肉体にスーツ姿、その上から、さらに白衣を羽織っている。 ふたりは目的の牢獄の前までたどり着くと、その女性とおぼしき囚人に声をかける。 「迎えに来たぞ『土くれ』よ」 『土くれ』と呼ばれたその囚人は何の反応も示さない。 訪問者の方を見ようともせず、空になった茶碗で遊んでいる。 『仮面』の男が言葉を続ける。 「ここから出たくは無いかね『土くれ』のフーケよ」 「・・... -
ゼロの魔獣-11
前ページ次ページゼロの魔獣 「まったく ただの使い魔じゃないとは思っていたが これ程のものとはねぇ・・・」 ガチャリ、と銃を構える音がする。 男は不機嫌そうな表情をして、ゆっくりと茂みの方を振り返る。 『破壊の杖』を携え、茂みの中から現れたのは、ミス・ロングビル・・・。 「まさか 魔獣に化ける能力を持つ使い魔だったなんてね しかもその正体が こんなにも逞しい兄さんだったとは思わなかったわ」 ルイズは驚き、男の顔をまじまじと見つめる。 へっ、と男が鼻をこする。 「化けていたのはお互い様だろ ミス・ロングビル 『土くれ』のフーケさんよぉ」 男の言葉に、フーケは満足そうに笑みを浮かべる。 「・・・こんな三文芝居に突き合わせたのは、その銃が原因って事か」 「―ご名答 フフ... -
ゼロの魔王伝-04
前ページ次ページゼロの魔王伝 ゼロの魔王伝――4 いかにして彼らはハルケギニアに召喚されたか――吸血鬼ハンターの場合。 西暦120XX年。南部“辺境”にて。 稲光が月を覆い隠した分厚い雲を白々と染めては切り裂き、夜雨の中を飛ぶ飛行獣や無人戦闘爆撃機を貫き、轟く雷鳴は地に伏した妖獣や邪妖精たちの体をびりびりと震わせていた。 時折天に走る雷竜に照らされて、緩やかな丘陵地帯に立つ古城のシルエットが照らし出される。一万数百年以上前にあった人類の中世時代、西欧で建造された当時の城郭を模したと思しい建築物であった。 違いがあるとするならば、城を構成するのは全て自己再生機能を持った人造の模擬石であり、鉄鋲が幾つも打たれた鉄扉は、時に質量無限トンとなり、加えられる負荷を四次元方向にずらしていかなる圧力にも耐える空間操作技術の加護を受けていた事。 ... -
ゼロの魔獣-38
前ページゼロの魔獣 旧タルブ村跡地。 そこに、かつての人々の営みの跡は見受けられない。 目の前に広がるのは、ペンペン草一本生えていない荒野。 明らかに自然の作ったものではない、断層と陥没。 そして、その中央にポッカリと開いた 『 地獄の釜 』・・・。 最後の調査隊が引き上げを決め、今や無人となった惨劇の場に、一組の男女が立ち尽くしている。 女の方は、ズタボロのマントに全身を包んだ緑髪。 端正な顔立ちを台無しにする異常な目付きの悪さ、加えて、やたら大仰且つ悪趣味な煙管をふかしている。 一目見れば分かる危険人物 ― 『土くれ』のフーケだった。 「・・・旦那もまた えらくこっぴどくブチのめされたもんだねえ・・・」 フーケがしみじみと言う。 男の方は、右手は手首から先が、左は肩口から先が丸々存在せず 羽織っ... -
ゼロの魔獣-04
前ページ次ページゼロの魔獣 「もうやめてよ!! ギーシュ! こんなの一方的じゃない!!」 ルイズの悲痛な叫びが広場に響く。確かに眼前の光景は一方的なものだった。 ギーシュの呼び出した、7体のゴーレム━青銅のワルキューレを前に、真理阿は近づく事さえ叶わない。 ただひたすらに避け、逃げ惑い、攻撃をかろうじて剣で受け止めるだけである。 「そうはいかないよルイズ! グラモン家の名誉にかけて 当事者であるマリアが音を上げるまでは 攻撃の手を緩めるわけにはいかない」 そう言いながら、しかし、ギーシュはある違和感を感じていた。 平民相手にわざわざ魔法を見せたのは、別にメイジのプライドなどといった大層なものでは無い。 下手に剣を使って、女性に傷つけるのを恐れたのだ。 7体のワルキューレなら安全に相手を捕らえ、屈服させる事が出きる・... -
ゼロの魔獣-37
前ページ次ページゼロの魔獣 ルイズは虚空にいた。 天地の区別のない世界。 眼前に広がる星の海。 一切の音のない本物の静寂。 体を抜けるひんやりとした空気・・・。 ― 自分はどうなってしまったのか? ― 慎一は、元の世界へ戻れたのか? ― トリステインは、ハルケギニアは滅んでしまったのか? すべての思考が虚ろで、どこか、ひどく虚しいものに感じられる。 無限の空間を一人漂う。 ただ、そこに在るがように、ルイズは宇宙の一部となっていた・・・。 ―と、 不意に、ざわり、と、星達のざわめく音を聞く。 静謐な空気に満ちた世界に、徐々に喧騒があふれ出す。 光の粒が大きくうねり、巨大な大河となって、遥か彼方へと流れ出していく。 ただならぬ予感に目を凝らす。 星と思えた光の粒は、一つの生命。 ... -
ゼロの魔獣-19
前ページ次ページゼロの魔獣 ―『女神の杵』亭・中庭 かつては貴族たちが集まり、陛下の閲兵を受けたという練兵場跡に、2人の獣が佇立している。 「昔・・・ といっても君には分からんだろうが かのフィリ・・・」 「目だああアアァッ!!!!」 薀蓄を語りながら振り向きかけたワルドの眼前に、突如唸りを上げて鉄爪が迫る。 首を捻りながらかろうじて避ける。その頬に赤い筋が走る。 「落ち付け!介添え人がまだ来ていない・・・」 「安心しろォ! 介錯なら俺がしてやるぜぇ!!」 「―ッ! ケダモノめッ!!」 何言ってやがる。 慎一が心中で毒づく。 自室で挑発を受けた時点で喧嘩は始まっていた。 中庭までノコノコと着いてきたのは、宿の方に気を使ったからに過ぎない。 自分がワルドだったら、事ここに至って、杖も抜かずに講釈を始めたりはしないだろう。 ... -
ゼロの魔王伝-03
前ページ次ページゼロの魔王伝 ゼロの魔王伝――3 ある人影が歩みさった後の世界はたちまちの内に色褪せて輝きを失っていた。人影がそこに在る瞬間のみ輝いていた世界は、それゆえに美の神の加護を失った時、荒廃に身を任せて灰色に煙る事を選んでいた。 こつり、と先程まで弄んでいたタバサと言う名の少女を怯えさせる為にわざと立てていた足音は既に無い。 地平線の彼方に沈み、暗闇の手に委ねられた世界の中で、その男――幻十の影だけが白々と月輪を浮かべる月の様に、投げ落とされた硬質の床の上で輝いていた。 風になびく黒衣の裾は折り畳まれた悪魔の翼の様に映り、頬に触れる風も、瞳に映される世界も、そのまま時が止まれば良いと切に願ったことだろう。 その美しすぎる男に見つめられたままで居たいと、触れていたいと。 だが、それを幻十は嘲りと共に一笑に伏すだろう。自らを... -
ゼロの魔獣-25
前ページ次ページゼロの魔獣 「フン・・・ あの山師め・・・ しくじったか」 誰に言うでもなく悪態をつきながら、ワルドがゆっくりと慎一の方に向き直る。 その冷めた目で、慎一のダメージ、傷の一つ一つをじっくりと分析していく。 実際、慎一の状態は最悪であった。 おびただしい量の出血、未だ開かぬ右目、薬によって極限まで酷使された肉体、 僅かに体を動かすだけで、その全身が悲鳴を上げる。 だが、だからといって歩みを止める慎一ではない。 猫の鼻先に噛み付く鼠の如く、雀を仕留める蟷螂の如く 肉体の最低なコンディションが、慎一の中にかつてない集中力を生み出していた・・・。 「シンイチ 俺を使え!」 その声を聞き、ゆらりと踏み出そうとした慎一の足が止まる。 声の主は、数少ない惨劇の目撃者・デルフリンガー。 「・・・役者... -
ゼロの魔獣-21
前ページ次ページゼロの魔獣 慎一の脳裏にかつての記憶がよぎる。子供の頃見たアニメ。 巨大な悪の組織と戦うスーパーロボット。敵を穿つ未来の兵器・巨大ドリル―。 ―まさか! 剣と魔法の世界でお目にかかる事になろうとは!! 郷愁に耽っている暇はない。慎一の倍はあろうかと言うその鉄隗を、間一髪、横っ飛びで避ける。 その眼前に、今度は巨大な足が突っ込んでくる。避けている余裕はない。 両手で受け止め、入り口側の壁をぶち破って、宿の外へと押し出されていく。 宿の二階部分まで破壊しながら、そのゴーレムの全身象が露わになる。 全長は過去に見たそれと同程度、ただし、大きくくびれた腰部を始め、全身が鋭角的にスリム化している。 特徴的なのは左手のドリル、そして、慎一を押し潰さんと回転する、脚部側面に取り付けられた4つのローラー。 敵は、魔力を回転力へと変換す... -
ゼロの魔獣-22
前ページ次ページゼロの魔獣 鋼の巨人と青銅の乙女の交錯に、大気は振るえ、大地が鳴動する。 ゴーレムの自慢の左手が螺旋を描き、ワルキューレの胸甲に突き刺さる。 不快な金属音が轟き渡り、真昼の如き火花を散らし、乙女の胸元を大きく抉り取っていく。 「一気に押し切っちまいなッ!! ゴーレム!!」 「気高く可憐に投げ返せ! ワルキューレッ!!」 主の激励を受け、乙女の瞳が燃え上がる。 腰を落とし、大股を開いて踏みとどまると、無骨な両手でドリルを掴む。 回転は掌中で激しくもがき、生じた摩擦でワルキューレの手が赤々と燃える。 全身を使って暴れる螺旋を押さえ込み、体を反らしてドリルごと巨体を持ち上げると、一息に真横へ放り投げた。 「ハッ!! やるじゃないか! ボウヤ」 大きく投げ飛ばされながら、ゴーレムが右手で大地を突く。その... -
ゼロの魔獣-33
前ページ次ページゼロの魔獣 「『何ゆえコイツがこんな所にいるのか・・・?』 そんな顔かな? それは」 慎一は無言でシャフトを睨み付ける。 『神』の力すら及ばぬ別の宇宙で出会った因縁の男・・・。 偶然の一言で片付けられる事態では無かった。 「それを説明するには まず私という人間を知って貰わねばならないな ユダ博士のことは覚えているかね? 十三使徒の裏切り者の・・・ 実は 私も彼と同類 裏切り者なのだよ! ただし 私は彼よりもずっと強欲で 自分勝手な人間だがね」 ― 人が他人を裏切るとき、その行動には二つの要因が存在する。 一つは他者との理想の違いや、組織内での孤立などから自らの心身を守るための - 『自衛』のための裏切り。 もう一つは、より積極的に他者を踏み台にしてのし上がろうという - 『悪意』... -
ゼロの魔獣-34
前ページ次ページゼロの魔獣 箱舟の甲板から 天まで届かんとする炎が吹き上がる。 ただならぬ不吉な予感に、ルイズは機体を旋回させ、箱舟に向けて加速する。 「どうしようってんだ!? 娘っ子?」 「決まってるじゃない!! シンイチを助けるのよ!」 「無理に決まってるだろうが!! この船にはもう 弾が残っちゃいねえ!!」 「五月蠅いわね!! アンタも武器を探しなさいよ!」 言いながら、ルイズがコックピット廻りのスイッチを手当たり次第に押していく。 「・・・! その中央の赤いスイッチはどうだ!?」 「赤いスイッチ・・・? これね!!」 ルイズは躊躇いなく、赤いスイッチの隣・・・『ピンクのスイッチ』を押した。 ― 瞬間、前方の亀甲模様のガラスが激しく光り、操縦席ごと二人が後部に運ばれていく。 イーグル号が大きく... -
ゼロの魔獣-26
前ページ次ページゼロの魔獣 ― 時間にすれば、僅か三分足らず。 だが、互いの全てを出し尽くした死闘は、手負いの獅子に軍配が上がった。 拮抗した実力を持っていたハズの二匹の獣は、いつしか捕食者と餌に分かたれていた・・・。 身を焦がす野望のためならば、腕一本失う事すら恐れてはいないワルドではあったが 奪われた左手を、目の前で貪られる事態までは覚悟していなかった。 「・・・へ へへ ハ ハハハ・・・ 2対1だぜぇ・・・ どうする? 色男・・・」 「俺を忘れんじゃあねえ!」 壁に突き刺さりながら抗議するデルフを尻目に、慎一が歩を進める。 膝が崩れ、大きく体が揺らぐ。 思わず、ワルドが後ずさる。 深刻なダメージを負っているのは、明らかに勝者である慎一の方だった。 あるいはここで、ワルドが気力を奮い反撃に転... -
ゼロの魔獣-27
前ページ次ページゼロの魔獣 アルビオンへの隠密行から一週間―。 狂乱の四日は思い出の彼方へと過ぎ去り、呆けたような日常が戻ってくる。 アルビオン王家の滅亡、『レコン・キスタ』の台頭、呉越同舟のトリステイン・ゲルマニア・・・。 政治屋にとっては最高の売り込み時であり、歴史屋ならば「嵐の前の静けさ」と評する動乱期であろうが とかく一介の学生にとっては退屈な日々が続いていた。 もっとも、あれだけの死闘を繰り広げてきたのだ。何一つ変化が無かったわけではない。 螺旋階段を上るが如く、慎一の周囲にも徐々に変化が見られていた。 先ず、慎一を見る周囲の目が変わった。 ギーシュが大々的に自らの手柄話を語った結果、 『最優秀助演男優賞』 の慎一にも好奇の視線が向けられるようになった。 この頃には、初めの頃の慎一が持っていた、抜... -
ゼロの魔獣-14
前ページ次ページゼロの魔獣 アルヴィーズ食堂2階 一夜にして舞踏会場となったそのホールでは、思い思いに着飾った貴族の子弟たちが会話に花を咲かせている。 その中を、ひときわ注目を集める華が、縫うようにして進んで行く。 キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。 『微熱』の二つ名を持つ彼女は、近寄る男たちに愛想を振りまきながら、ある人物を探していた。 「ねぇ タバサ 彼のこと知らない?」 「・・・・・・・・」 美しく着飾った青い髪の少女は、目の前の料理の山と格闘中だった。 キュルケが言葉を繋ぐ。 「シンイチよ あのヴァリエールの使い魔はどこに入ったの?」 キュルケはあの日以来、慎一にぞっこんであった。 数多くの貴族の子弟と浮名を流したキュルケだったが、あれ程までに野性味溢れる『面白い』男を彼... -
ゼロの使い魔人-10
前ページ次ページゼロの使い魔人 『土くれ』のフーケ……。 今やトリステインに住まう貴族達の間では、畏怖と憤激を込めてその名を囁 かれるメイジの盗賊である。 正体は元より、性別も経歴も不明。 その手口としては、強力な『錬金』の魔術を駆使し、防犯対策として予め施さ れた『固定化』の魔術……経年劣化ないし酸化や腐敗による物体の破損を防止 する特性を持つ……をも無力化せしめ、それが掛かった壁や扉を只の土へと還 し侵入するという物であり、其れゆえの二つ名である。 そして一度、目的の場へと侵入すれば各々の貴族等が所蔵する至宝や逸品の悉く を掠め取り、盗み出すのみならず、時には下手な城郭程の高さを持つ巨大ゴーレム を伴い目的の物を強奪し、駈け付けた治安組織の追っ手をも軽くあしらい、蹴散ら してのけるという傍若無人ぶりを阻む者は無く、被害者の数と被害総額は日々、 右肩... -
ゼロの魔獣-23
前ページ次ページゼロの魔獣 慎一の中の『目のいいヤツ』は、ようやく桟橋を行く二人の姿を捉えていた。 船は海を行くもの・・・という先入観が、目標の発見を遅らせたのだ。 「こんな夜更けに木登りとはオツじゃねえか ―船が飛ぶっつーのは先に言っとけ」 「? 船が飛ぶのは当たり前でしょ! こんな峡谷に海があると思う?」 「・・・こっちにも心の準備があるんだよ」 確かに目の前の巨大樹、その枝先には、船のような物がぶら下がっている。 慎一にとっては、地球での戦いを思い出させる、まったく気に入らないデザインである。 「こっちだ!」 吹き抜けになった巨大樹の内部、目当ての階段を見つけたワルドが叫ぶ。 「先行する」 慎一は短く言うと、階段を風のごとく駆け上っていく。 階段の先に、フーケを脱獄させたであろう『黒幕... -
ゼロの魔王伝-01
前ページ次ページゼロの魔王伝 ゼロの魔王伝1 煌々と灯された魔法の明かりがゆらゆらと揺れる夜だった。 深い紫の色合いを混ぜた闇の天蓋には、白い星の光が幾万も輝き夜に生きる者達の影を地に投げかけていた。 蒼と赤とに輝く双月の美しい静夜。 ある者は思った。こんな夜はなにかいい事があるに違いない。 またある者は思った。こんな夜はなにか良くない事が起きるに違いない。 月の美しさが夜に潜む魔性を目覚めさせるのか。人の心を揺さぶり、奥底に眠る狂気の肩を揺するのか。月達は己らの美しさを誇るばかりで答える事はない。 固く閉ざした寝室の扉越しに、地を駆ける野の獣の遠吠えが風に乗って聞こえるような、そんな夜であった。 ハルケギニアと呼ばれる大陸の、ガリアと呼ばれる王国の宮殿。草葉の陰に隠れた虫たちの鳴き声も、風に揺れて楚々と奏でられ... -
ゼロの魔獣-10
前ページ次ページゼロの魔獣 「クッ! ヴァリエールは 一体何をやっているのよ!?」 キュルケが叫ぶ。 シルフィードの上からは、ルイズの間近に迫るゴーレムがハッキリ見えた。 「女は度胸よ! やって タバサ!!」 タバサは頷き、シルフィードを動かす。 風竜の翼が空を切り、一躍ゴーレムの眼前に迫る。 キュルケが敵の顔面に火球を浴びせる。 土人形相手では効果は望めないが、陽動には成功した。 煩わしそうに振るわれた左手をかいくぐり、シルフィードが自由落下する。 激突寸前で体勢を立て直し、そのまま地面スレスレを飛行する。 「ルイズッ!」 キュルケが両手を伸ばし、すれ違いざまにルイズを受け止め、一気に飛び去った。 「イヤアアァァァ!! マリアが! マリアがッ!?」 半狂乱で腕を振り払おうとするルイズを見て、ツェルプストー家の... - @wiki全体から「ゼロの魔人-02」で調べる