あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ内検索 / 「ラスボスだった使い魔-07」で検索した結果
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ラスボスだった使い魔
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ラスボスだった使い魔-07
前ページ次ページラスボスだった使い魔 「ぐっ、あ、がぁぁぁああ……!!」 決闘直後の気絶より目覚めたユーゼス・ゴッツォは、苦痛に責め苛まれていた。 ……それは、彼のような人間が戦いに身を投じることによって生じる、宿命のようなモノ。 回避しようと思って回避が出来るモノではなく、また、これを経験しない人間はほぼいない、と断言が出来るだろう。 「っ、迂闊だった……!」 この可能性を考慮していなかったとは、自分らしくないミスである。 恨めしいのは、自分はこの苦痛を味わっていても、同じく対戦者であるギーシュ・ド・グラモンはまず間違いなく苦痛など味わっていない、という点だ。 「ぬぅぅううう……!」 何十年か振りに味わう痛み。 身体中が、軋みを上げる。 その痛みとは、すなわち――― ガチャッ 「筋肉痛は治ったの、ユーゼス?」... -
ラスボスだった使い魔-01
前ページ次ページラスボスだった使い魔 いずことも知れぬ、造られた空間……。 その空間を造り出した者と、そしてその彼が招いた者たちの戦いは熾烈を極めていた。 取り込んだ光の巨人の力は、同じ光の巨人たちの捨て身の行動によって相殺され、その大部分を失ってしまっている。 そして彼の前に立ちはだかる者たち。 機械でありながら人の心を持った兄弟、 兄と師との死別を乗り越え、最愛の女性と共に戦うキング・オブ・ハート、 任務という枷を振り払い、自らの意思で戦うことを選んだ少年たち、 一体どこから紛れ込んだのか、因果律を操るこの自分ですら全容を把握しきれないイレギュラーである日本一の男、 赤と青、そしてかつての友である白銀の宇宙刑事、 一歩でも間違えば諸刃の剣となりえる禁断の人型機動兵器に搭乗し、かの東方不敗をして『持てる力を全て引き出... -
ラスボスだった使い魔-09
前ページ次ページラスボスだった使い魔 ブルドンネ街から少し外れた、不衛生と言うにも少々生ぬるい路地裏。 そこにある武器屋の中で、ルイズとユーゼスは剣の見定めを行っていた。 「アンタ、この剣を使える?」 「無理だな」 『店主のお勧め』である、1.5メイルほどの大きさの頑丈そうな大剣を見て、ユーゼスは即座にそう判断する。 「ま、そうでしょうね。重そうだし」 「ふむ、これで『私にちょうど良い剣だ』などと言われたら、お前に対する評価を改めなければならないところだったぞ、御主人様」 「……それはどうも」 どのように改められるかは、今更考えるまでもない。 「やっぱり、こっちのレイピアの方が良いんじゃない?」 ルイズが片手で、細身の剣を差し出す。 それを見たユーゼスはアゴに手を当てて考えた後、否定の言葉を口にした。 「悪くはないが... -
ラスボスだった使い魔-05
前ページ次ページラスボスだった使い魔 「………」 ようやく2冊目を読み終えた。かなり遅いペースである。 そもそも、いちいち辞書を参照しながら専門書を読み進む―――という行為に無理があるようにも思う。 (ともあれ、焦る必要もないが……) 1冊目の本を読んでいる時に感じた『強烈な反応』に関しては、少なくともこちらからは絶対にアクションを起こさない、と決定している。『一ヶ月前の反応』も『一週間後の反応』も同様だ。 こんな未知数な存在を相手に、うかつに行動を起こすほど、自分は若くもなければ勇気もないのである。 今まさに調べている『魔法』のように、自分の興味を引く物であればその限りではないが、何せ精神年齢はもう70歳近く。 40年前のように、 (……地球人の凶暴性、ウルトラマン、そしてデビルガンダム……私の汚名を返上するには最高の素材だ... -
ラスボスだった使い魔-06
前ページ次ページラスボスだった使い魔 (石で構成された、大学の講堂……というところか) 魔法学院の教室を見た、ユーゼスの感想はそれだった。 このような空間は、やはり自分に馴染みがある。 銀河連邦政府の科学アカデミーにいた頃は、必死になって講師の話を聞いたり、研究室にこもって大気浄化の研究に打ち込んだものだった。 こちらにチラチラと向けられてくる視線や、クスクスと聞こえてくる笑い声を無視しながら教室をざっと見回すと、ルイズやキュルケと同じく黒いマントを身に付けた生徒の横にさまざまな動物たちが見える。 六本足の爬虫類、宙に浮かぶ眼球、……あとは形容し難いが、魚類に触手が付随したようなモノ。 これらはおそらく、ハルケギニア独特の生物なのだろう。惑星や世界の違いによって、生態系や動植物の差異があるのは当然だ。 ユーゼスが注目したのは、フクロウ... -
ラスボスだった使い魔-39b
前ページ次ページラスボスだった使い魔 翌日。 「…………身体中が痛い」 「そりゃ、アレだけ木の剣でやたらめったら叩かれてたら痛いでしょうけど……。それにしたって、あんな平民の女兵士くらい倒しなさいよ、もう」 「木剣ではガンダールヴのルーンが発動しないからな。いくら公爵夫人から訓練を受けたとは言え、素の状態の私ならあんなものだ」 「……アンタのその素直さって、けなすべきなのか褒めるべきなのかたまに判断に困る時があるわ……」 全身の痛みを訴えるユーゼスと、そんな自分の使い魔に呆れるルイズ。 主従二人は、教室で授業を受けるために席に付いていた。 また、席に付いているのはルイズたちだけではなく他の女子生徒たちも同様である。 「それにしても、てっきり授業は全部軍事教練に差し替えられるのかと思ってたわ」 「……そんな訳がないだろう。いくら王宮からの命令とは言え、... -
ラスボスだった使い魔-02
前ページ次ページラスボスだった使い魔 「ぐっ……!?」 けっこうな衝撃と共に、『呼ばれた先』の空間へと抜ける。 ……随分と乱暴な転移であるが、因果地平の彼方からおそらく通常空間へと顕現させるのだ。逆にこれくらいの衝撃があってしかるべきだろう。 そして周辺を見渡せば、 「……む」 抜けるような青空。 豊かな草原。 遠くには地球で言えば中世ヨーロッパを思わせるような石造りの建築物。 ついでに自分を物珍しそうに見ている、外見年齢15~18歳ほどの地球人タイプの人間が多数。 「………」 もっとおどろおどろしいシチュエーションとか、怨念などが渦を巻く異次元空間とか、物凄い力を秘めた超越的な存在とかを考えていたユーゼスにとって、この展開は拍子抜けだった。 とは言え、現状は確認しなくてはなるまい。 呼吸―――普通に出来る... -
ラスボスだった使い魔-03
前ページ次ページラスボスだった使い魔 少女が立ち去って一人残された部屋で、ユーゼスは思案にふける。 この部屋の主である少女―――草原での会話からするに、おそらく彼女が自分を呼んだのだろう。 あくまで彼女の召喚は『きっかけ』であり、実際に自分を必要としているのは彼女ではなく『この世界』そのものであるという線もあるが、自分が呼ばれた意味についてはひとまず保留しておく。 (さて……) クロスゲート・パラダイム・システムを起動させ、先程自分に施されたルーンとやらの詳細な調査を開始する。 ……既に自分の身体に張り付いたと言うか、組み込まれたと言うか、刻み込まれてしまっているため、今更消去したり改変するのはかなり困難だと言える。不可能ではないが。 理屈としては、物を造っている最中ならば、設計図の変更や製作自体の取りやめが容易であるが、完成してしまってから細部を変更... -
ラスボスだった使い魔-08
前ページ次ページラスボスだった使い魔 ユーゼス・ゴッツォがルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールによってハルケギニアに召喚され、使い魔として契約してから一週間ほど経過した。 その間、刻まれたルーンを分析したり、字を覚えたり、御主人様を着替えさせたり、魔法に関しての本を読んだり、何かとんでもないゲートの反応を検知したり、御主人様の下着を洗濯したり、御主人様の魔法を拝見したり、貴族と決闘したり、筋肉痛に苦しんだり、超神形態に変身したり、何故か出現したアインストと戦ったりしたが、また新たな事態が発生するようだった。 「アカデミーにいるエレオノール姉さまから、連絡が来たわ」 「ほう」 一週間程度で返答が来るとは、どうやらルイズはかなり早い段階で連絡を取ってくれたらしい。 「えっと、……あー、ここは飛ばして、と……」 「?」 冒頭の... -
ラスボスだった使い魔-04
前ページ次ページラスボスだった使い魔 ペラ。 ルイズの就寝より、1時間ほど経過した頃。 ペラ。 ユーゼスは、辞書と魔法の学術書とで何度も視線を往復させつつ、その内容を読み取っていく。 ペラ。 (魔法を使用するには媒体として『杖』が必須である。『杖』を使用せずに放たれる魔法は、エルフや妖魔などが扱う『先住魔法』であり、その威力・効果はメイジの使う魔法の比ではない) ペラ。 (五大系統―――火、水、風、土、失われた系統である虚無。 虚無は始祖ブリミルが使った系統とされているが、始祖以外に扱った者は確認できず、あくまで伝説とされ、実質は四大系統である) ペラ。 (コモンマジック。ごく簡易的、かつ基本的な魔法。いずれの系統のメイジであっても等しく使えるため、いずれの系統にも属さない) ペラ。 (メイジの能力は遺伝によっ... -
ラスボスだった使い魔-27b
前ページ次ページラスボスだった使い魔 チカは恐怖していた。 「ああ、シュウ、シュウ~!」 戻って来た主人がマチルダを抱えていて、彼女が眠りから覚醒するや否や、半裸で自分の主人に迫り出したから……ではない。 「下品ですよ、ミス・マチルダ」 それに対して、相変わらず極めてクールに対処している自分の主人に……でもない。 「やん、そんな『ミス』なんて他人行儀な呼び方はしないで、『マチルダ』って呼び捨てにしておくれよぉ……」 「では今後はマチルダと。 ……マチルダ。あなたも一応は私と同じ年齢なのですから、いくら惚れ薬で我を見失っているとは言え、もう少し慎みや品性という物を持つべきです」 『今のシュウとマチルダのやりとりを、ティファニアに報告しなくてはならない』という事実に対する恐怖である。 取りあえず、いくつかの報告のパターンをざっと脳内でシミュレーション... -
ラスボスだった使い魔-23b
前ページ次ページラスボスだった使い魔 アルビオン宣戦布告の報が入ったのは、それが行われた翌朝のことだった。 完全に不意を突かれ、王宮の上層部が大混乱に見舞われたために伝令が遅れたのである。 ルイズとユーゼス、そして何となく気まずそうなエレオノールは魔法学院の玄関先でゲルマニアへと向かう馬車を待っていた。 王女の結婚式ともなれば、当然トリステインの名門ヴァリエール家も(事情があって領地から出られない者を除いて)総出で出席しなければならない。 ならばルイズとエレオノールは一緒に向かった方が効率が良いだろう、という判断である。 しかし馬車はいつまで経ってもやっては来ず、代わりにやって来たのは慌てた様子の使者だった。 その使者は落ち着かない様子でオールド・オスマンの居室を訪ねると、全速力で駆けて行く。 「「「?」」」 3人揃って首を傾げるが、首を... -
ラスボスだった使い魔-15a
前ページ次ページラスボスだった使い魔 ある時は仮面の男と協力し、またある時は仮面の男と敵対した人物。 彼は『肉体が死に瀕している』というきっかけによって因果の鎖から解き放たれつつあり、それゆえに仮面の男の勧誘を受けていた。 「お前は因果律の呪縛から解き放たれた。もう、あの世界に未練はあるまい」 「………」 「準備は全て整った。私と来い。そして共に千年王国を築くのだ」 「……フ、フフ……断る。貴様の目論みは分かっておるわ」 「何……?」 「貴様の創ったデビルガンダムは……巨大な容器……。そう、光の巨人の力を満たすためのな……」 「………」 「貴様は、地球圏の支配など欲しておらん……。いや、すでに地球のことなぞ、どうでも良くなっておる」 「………」 「貴様の目的は……光の巨人の力を我が物にすることだ……」 病魔に冒... -
ラスボスだった使い魔-番外編02
前ページ次ページラスボスだった使い魔 ○番外編02:使い魔のお悩み 『レコン・キスタ』による内乱が終わった直後だと言うのに、今度はまたトリステインやゲルマニアとの戦争ムードが湧きつつあるアルビオン。 しかしアルビオンという国全体で見ればかなり危険なムードが漂ってはいるが、それでもまだ本格的な戦争が起こった訳ではない。 それに戦争が起こったとしても、国全体のそこかしこが戦場になる訳でもない。 むしろ全体から見れば、『戦場』の比率など一握りにも満たないだろう。 つまり、そんなものと無関係で平和な地点など、探せば幾らでもあるのだ。 「……ほう……、マチルダ姉さんが、惚れ薬を……」 「あ、あのー、ティファニア様?」 そんな平和な地点の一つである、のどかなウェストウッド村。 ワラぶき屋根の家の中で、その家の主である少女ティファニアは、居候の男... -
ラスボスだった使い魔-11a
前ページ次ページラスボスだった使い魔 ―――男は、目の部分が4つ存在する異形の仮面を使い、素顔を隠した。 そして『彼ら』について研究を始め、その素晴らしさに傾倒していく。 ……だが『彼ら』は、男が直接目にした時、直接目にした場所を最後に、その姿を消していた。 どうすれば『彼ら』にもう一度遭遇が出来るのか……。 どうしれば『彼ら』が存在した時点まで、時をさかのぼることが出来るのか……。 それだけを考えている内に、一つの転機が訪れた。 「フ、フフ……そういうことか……そういうことだったのか。何という偶然……これが因果律の成せる業か……。 私の全知識が急速に紡がれていく……それが結集して一つの形になる……私は知っている……。 ……デビルガンダムはこの私が創り出したモノだったのだ!!」 未来の自分から、過去の―――現在... -
ラスボスだった使い魔-26b
前ページ次ページラスボスだった使い魔 モンモランシーが図書館の中でユーゼスに『とある評価』を下してから、数日後。 そのユーゼスは、エレオノールと二人で自分の研究室にいた。 『二人で』と言っても、やることは始祖ブリミルや『虚無』に関しての内容が記述された本を熟読したり、考察や推察を行ったり、それに関して互いの意見を出し合ったりするだけである。 時折、ふとした拍子に二人の視線がかち合ったり、肩や腕や手がわずかに触れたり、妙に気まずい沈黙に支配されたり、その度にエレオノールがアワアワしたり顔を赤くしたりもしたが、特に問題はなく時間は流れていく。 ……そう、特に問題はないはずだったのだが……。 (おかしい……) エレオノールと共に考えている『虚無』の魔法。異分子であると思われるアインスト。プラーナコンバーターの調整のために明日またやって来る予定のシュウ・シラカ... -
ラスボスだった使い魔-43
前ページ次ページラスボスだった使い魔 襲い掛かってくる『アインスト』に対して、ニコラの判断は素早かった。 「第一小隊! てえーーーーーーーーっ!!」 号令がかかるや否や、銃兵たちは一斉に怪物たちへと火縄銃を撃ち込んでいく。 しかし……。 「き、効いてない!?」 「……いや、まるっきり効いてないんじゃなく、効き目が薄いんです!」 骨のアインストにはヒビが入ったり、ツタのアインストの触手は千切れかけていたり……と各種類ごとにダメージに多少の差はあるようで、中には銃撃を受けて動きを止めた個体もいる。 だが大部分は銃撃をものともせずに直進し、グラモン中隊へと襲い掛かった。 「うわぁぁああっ!?」 先頭にいるためにアインストの脅威に真っ先にさらされることになるギーシュ。 ハッと横を見てみれば、頼るべき副官はいち早く退避(と言っても数歩分に過ぎないが)し... -
ラスボスだった使い魔-12
前ページ次ページラスボスだった使い魔 「貴様がバディムの首領か! ここであったが100年目だ、覚悟しろ!!」 「どうやら予定より少々長居してしまったようだな……。……また会う機会があったら、その時は相手をしてやろう……」 かつて志を同じくした男が、あの時のまま―――自分だけが40年の時を経てしまったので当然だが―――真っ直ぐな視線で、男を射抜く。 男は諦観と、覚悟と、そしてほんの僅かの寂寥を覚えながら、その場を後にした。 「ウルトラ族を倒すには、ウルトラ族の力が必要だ。ETFのおかげで彼らの力を解明することが出来た。 ご苦労だったな、メフィラス」 「……わ、私を……ETFを……ウルトラ族の戦闘データを取得するためだけに利用していたというのか!」 それはお互い様だ、と男の傍らに立つ赤い異形が答える。 ……この存在は確か... -
ラスボスだった使い魔-53b
前ページ次ページラスボスだった使い魔 ―――最初の光景は、水だった。 緑色の水。 それで満たされた透明な容器の中に『その男』はいた。 (……?) 透明な容器ごしに、仮面を付けた何者かが『その男』のことを見ている。 エレオノールはその仮面に見覚えがあった。 確か最初に『声の主』から見せられた光景の中に、それと全く同じ、悪趣味な四つ目の仮面を被った男が出て来ていた。 でも、変だ。 あの時、自分はこの『仮面の男』に対して言いようのない強烈な違和感を感じたはずなのに、今はそんなに違和感を感じない。 むしろ妙な親近感のような、それでいて胸が苦しくなるような感覚さえ覚える。 (何なのかしら……?) だがそれについて考える暇などは与えないと言わんばかりに、場面は転換した。 「……またあの夢か……」 (えっ!?) 今度は、どこかの... -
ラスボスだった使い魔-17a
前ページ次ページラスボスだった使い魔 バラバラに散った、他のメンバーとワルドの『偏在』で作られた分身たち。 上手い具合にバラけて1対1の様相を呈してくれたのだが、ルイズが自分の近くを離れてくれなかったので、結局は2対2となった。 正直、ルイズは戦力としてカウントしていなかったので実質1対2か……と思っていたのだが、ルイズは戦闘開始直後にいきなりファイヤーボール(の出来損ない)をぶっ放し、分身はアッサリ消滅してしまう。 この調子でもう1体の方もお願いしたかったのだが、残ったワルドは瞬時にルイズにおどりかかり、ルイズは杖で強打されて気絶して戦闘不能に。 ―――結局、1対1となってしまった。 『ウィンド・ブレイク』や『エア・ハンマー』から(それがルイズの方に向けられないように)逃れながら、ユーゼスは思考する。 (このまま持ちこたえて、ミス・タバサやミス・ツェ... -
ラスボスだった使い魔-47a
前ページ次ページラスボスだった使い魔 メンヌヴィル率いる傭兵部隊の襲撃から三日後。 ユーゼスとエレオノールは、研究室の中で議論をしていた。 先の事件の影響で授業は全面的に取りやめとなり、生徒および教師は各自部屋にて待機ということになっているのだが、この二人は時間を無為に過ごすことを嫌ったため、だったら研究に当てようということになったのである。 なお、どのような議論をしているかと言うと。 「だ・か・ら! どうしてあなたはこう、とんでもない魔法の使い方を考えるのよ!?」 「そうか?」 「そうよ! 『人間の身体を干からびさせるポーション』なんて、異端とかどうとかいう以前に、人道的にどうかってレベルの発想じゃないの!!」 「……………」 今回、ユーゼスが提案した魔法の理論はこうだ。 『人間の身体は、多少の個体差はあれど約60%が水分で出来ている。 ... -
ラスボスだった使い魔-15b
前ページ次ページラスボスだった使い魔 その後、ルイズが持参した『水のルビー』と、ウェールズが持っていた『風のルビー』による虹の生成という『確認作業』により、目の前にいるのが本物のウェールズであると確信したルイズたちは、すぐにアンリエッタから預かっていた手紙をウェールズへと渡し、『ウェールズが持っている手紙』を回収すべくそのままアルビオンのニューカッスル城に移動する。 『大陸の底』から城に戻るという珍妙な帰還方法に、ルイズたちは驚くばかりであった。 そして出迎えの兵士たちに黒色火薬の原料である硫黄(輸送船の積荷である)を大量に調達してきたことを告げると、兵士たちはワッと歓喜の声を上げ、明日の正午の決戦に備え始める。 「これで王家の誇りと名誉を叛徒どもに示しつつ、敗北することが出来るだろう」 「栄光ある敗北ですな! この老骨、武者震いがいたしますぞ!」 ... -
ラスボスだった使い魔-32b
前ページ次ページラスボスだった使い魔 雨音に重なって、謳うようなルイズの詠唱が響き始める。 一体何だ、とギーシュたちは怪訝な顔でそんなルイズを見ているが、完全に詠唱に集中しきっている今の彼女にはそんな視線など何の意味もない。 何も聞こえないし、何も見えない。 ただ、自分の中で脈動する精神力を制御し、古代のルーンを唱えるだけである。 「……この子、どうしたの?」 首を傾げながら、キュルケがユーゼスに聞く。 それに対してユーゼスは面倒そうに答えた。 「分からん。御主人様のそれは、私にも不明な点が多いからな」 「?」 疑問符を浮かべるキュルケに構わず、トランス状態にある主人を一瞥するユーゼス。 そしてとうとう完成し、更にこちらに向かって迫ってくる水の竜巻を眺め、また考え込む。 「さて、それではアレをどうするか……」 「どうするかもこうするかも... -
ラスボスだった使い魔-36a
前ページ次ページラスボスだった使い魔 「……どういうつもりだ? 何故、このワシに刺客を放った?」 「……………」 「返答せぬつもりかっ!」 いつもの……と言うほど頻繁に見ているわけでもないが、それなりの頻度で見ている夢を、ルイズは見ている。 今回は『仮面の男』が登場しているが、それと対峙しているのは……。 「お前こそ、決別したはずの弟子に奥義を伝授して何を企んでいる」 「知れたこと! 強靭な肉体を持ったあやつを新たなコアとし、デビルガンダムを完全復活させるのだ!!」 「!!」 「そのために奥義を伝授し、ドモンを最強のファイターに仕立て上げたまでよ!」 (……確か、この……トーホーフハイって死んだんじゃなかったっけ?) ということは、また時系列が遡っているのだろうか。 どうせなら、キチンとした順番で見せて欲しいものである。 ... -
ラスボスだった使い魔-48b
前ページ次ページラスボスだった使い魔 ロマリア大聖堂。 祖王である聖フォルサテの名をとって『フォルサテ大聖堂』とも呼ばれ、トリステイン魔法学院を建築する際のモデルともなった建築物である。 その外観は壮麗かつ雄大で、まさにハルケギニアで広く信仰されているブリミル教の象徴にふさわしいと言えよう。 「……………」 そんな神聖な建築物の地下深く。 ある世界においては『ミルトカイル』と呼称される赤や青の結晶が深く根を張る、暗く湿った空間。 ロマリア教皇、聖エイジス三十二世ことヴィットーリオ・セレヴァレはそこにいた。 対面には彼が『召喚』した『使い魔』である異形の怪物……ヴァールシャイン・リヒカイトが直立している。 「それでは、あなたの負った傷はほぼ完治したということですか?」 「……そうだ……。……これで我は……十全に力を発揮することが……出来る……」 ... -
ラスボスだった使い魔-13
前ページ次ページラスボスだった使い魔 トリステインとアルビオンを繋ぐ港町、ラ・ロシェール。 峡谷に挟まれて日当たりの悪いこの町の、更に日当たりの悪い路地裏の一角に『金の酒樽亭』という居酒屋がある。 「私たちの話をこのハルケギニアの人間が理解出来るとも思えませんが、万が一……ということもありますからね」 「……密談に適している場所とも思えんがな」 その中では、お世辞にも品が良いとは言えない傭兵やガラの悪い男たちが、騒ぎながら酒を飲んでいた。 「むしろこのような雑然とした空間の方が、機密情報のやり取りには向いています。覚えておいた方が良いですよ」 「そんなものか」 ユーゼスはシュウに誘われるまま『金の酒樽亭』に入り、店内の隅の一角に腰掛けることになった。 ……正体不明の人間について行くなど、普通であれば考えられない。だがこの男が発した言葉... -
ラスボスだった使い魔-41b
前ページ次ページラスボスだった使い魔 「ぐはっ!!?」 神聖アルビオン共和国皇帝オリヴァー・クロムウェルは個室にて付き人のデブデダビデに殴られ、盛大に吹っ飛んだ。 そしてそのままゴロゴロと床を転がり、壁にドスンとぶち当たってようやく停止する。 「う、う、うぅ、ぐ……!」 呻き声を上げながら立ち上がるアルビオン皇帝。 その姿からは、威厳や風格といった類のものはカケラも感じられなかった。 「……あぁ、皇帝陛下? 俺の聞き間違いだったら悪いから、先程貴様が口にしたことをもう一度だけ言って貰えるか?」 「ヒ、ヒィ……!」 付き人に凄まれ、クロムウェルはガタガタと震えながらも再びその言葉を告げる。 「わ、私は……私は恐いのです、ミスタ! ミスタ・デブデダビデ!! あのアインストという正体不明のバケモノは我が国の各地に出没し、軍はその対応に手一杯! その上... -
ラスボスだった使い魔-11b
前ページ次ページラスボスだった使い魔 「……まったく、わざわざ挑発なんかしないで、最初から嘆願なり懇願なり切実な様子で訴えるなり、色々とやりようはあるでしょう!?」 「んー、でもルイズに対しては、アレが一番効果があると思うけど?」 タバサの使い魔である風竜シルフィードの背の上で、ルイズはプンスカ怒りながら使い魔の言動を非難する。 ルイズの文句を聞くキュルケは、からかいの口調でルイズに応じていた。 ―――あの後、タバサたちは作戦通りにタルの水を操作して鎧ゴーレムの足を泥化させ、倒れている隙に逃げ出した。 なお、ドカンドカンと爆発が移動していたので、ルイズとユーゼスを発見するのは非常に容易であった。 「……悪かったとは思うが、それにしてもやり過ぎだ、御主人様」 ユーゼスは倒れ伏しつつタバサの『治癒』を受けながら、ボロボロの身体の状態を確... -
ラスボスだった使い魔-14
前ページ次ページラスボスだった使い魔 ユーゼス・ゴッツォが、ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドに完膚なきまでに叩きのめされたのと、ほぼ同時刻。 マチルダ・オブ・サウスゴータは顔を洗うために水を汲もうとして、シュウ・シラカワと鉢合わせていた。 「おはようございます、ミス・マチルダ」 「……おはよう、えーと……そう言えば何て呼べばいいんだい?」 「お好きなようにお呼びになって結構ですよ。呼び捨てでも一向に構いません」 「それじゃ、シュウ。……アンタ、本当にティファニアをどうこうするつもりはないんだね?」 「それについては、信用していただくしかありませんが……」 この二人は、昨日からこのような調子であった。 どうにかしてシュウの腹の内を探ろうとするマチルダと、そのマチルダの追求をのらりくらりとかわすシュウ。 会話は平行線を描き続け... -
ラスボスだった使い魔-18
前ページ次ページラスボスだった使い魔 トリステインの王宮の門の前に、巨大なモグラをくわえた青い風竜が降り立つ。 その背に乗っているのは、5人。 桃色がかったブロンドの美少女、燃えるような赤毛の長身の女、眼鏡をかけた青い髪の少女、金髪の少年、そして……やたらと気分が悪そうな、銀髪の男である。 「ぐっ……き、気分が、悪……い……」 「あーもう、やっぱり酔ったか。もう目的地には到着したから、取りあえず深呼吸でもしたらどうだね?」 「……下手に深く呼吸をすると、むしろ……」 「これでよく吐かなかったよなぁ」 金髪の少年と銀髪の男のそんなやり取りが交わされている間に、幻獣……マンティコアにまたがった兵士たちが、彼女たちを取り囲んだ。 「杖を捨てろ!」 隊長らしきヒゲ面の男が叫ぶ。 彼女たちは少し相談した結果、言われた通りに杖を地面に投... -
ラスボスだった使い魔-35b
前ページ次ページラスボスだった使い魔 「……お前はいつも、よく分からない理由で私を攻撃するな」 「あなたはいつも、よく分からない言動で私の神経を逆撫でするわね」 軽く睨み合うユーゼスとエレオノールだったが、いつまでもそんなことをしているわけにもいかない。 よって、ユーゼスは早速カトレアに指示を出した。 「ではミス・フォンティーヌ。先程のエレオノールのように、あなたも脱いでください」 「え?」 「あ、やっぱりそうですか」 「ええ?」 いつも通りの態度でけっこう凄いことを言うユーゼスと、それに平然と了承するカトレア。 そんな妹とユーゼスを見て、エレオノールはうろたえる。 ……ちなみに、ユーゼスが土砂に埋まっている間にエレオノールは服を着直している。 「ちょ、ちょっと、どうしてカトレアが脱ぐのよ!?」 「お前に行った触診行為は、そもそもミス・フォン... -
ラスボスだった使い魔-29b
前ページ次ページラスボスだった使い魔 (アドレナリンやドーパミンの量を調節して、強制的にガンダールヴの効力を底上げさせる……駄目だな、理性を保てる保証がない。因果律を操作すれば何とかならないでもないが、調整を誤れば廃人になりかねんし……) こういう時、生まれつき特殊能力を持っているタイプの種族は悩まなくて便利だな……などと思いつつユーゼスが自分の強化方法について思考を巡らせていると、 「ユぅぅぅぅぅぅゼスぅぅぅぅぅうううううううっっ!!」 「!」 木陰から全速力でルイズが走って来て、悩んでいる最中のユーゼスに飛びついた。 そして『自分がユーゼスの言いつけ通りにやった』ことを、まくし立てるようにアピールする。 「ね、ね、ユーゼス。わたし、ちゃんと出来てたよね? ユーゼスに言われた通り、ちゃんと爆発起こしたよね? そのほかのこと、何にもやってないよね?」 「…... -
ラスボスだった使い魔-21
前ページ次ページラスボスだった使い魔 「あれ、使い魔さん? それにミスタ・グラモンも……」 「……お前は……」 「おや、確か学院のメイドじゃないか。どうしてこんなところに?」 タルブの村に到着するや否や、『貴族の方がおいでなすった』と村長を始めとする村の主要人物がエレオノールたち一行を出迎えたのだが、そこでユーゼスとギーシュは見知った顔と出くわした。 最近は洗濯を免除されたので顔を合わせていないが、それ以前はよく朝に洗濯するために洗い場で一緒になった……。 (……名前は、何だったか) 確かいつかどこかで名前を聞いたような気はするのだが、特に名前を呼び合う必要も、そもそも会話する必要すらなかったので忘れてしまった。 仮に他の人物との会話でこのメイドの話題が出たとしても『あの黒髪のメイド』で済んでしまうので、覚えようとする意欲そのものが湧かなか... -
ラスボスだった使い魔-26a
前ページ次ページラスボスだった使い魔 ルイズは眠りについた意識の中で、もはやお馴染みとなった感覚を味わっていた。 『ただ見ているだけ』だった最初の頃とは違い、今では感想を交えながら『観賞する』余裕さえある。 そして、今回の夢でルイズが第一に抱いた感想は『疑問』だった。 (……また、この夢?) てっきり前の『仮面の男の敗北』で終わりだと思っていたのに、どういうことなのだろうか。 (アレの続きなのかしら?) しかし、死んだ後の続きなんてあるんだろうか。 ……幽霊になった男の物語なんて、見たくはないのだが。 「40年前、ETFの攻撃によって瀕死の重傷を負った私は、皮肉にもそのETFのザラブ星人に助けられた……」 まだら色の空、銀色の地面。 重々しい口調で語る男と、それを聞く様々な人間たち。 (……コレって、あの『最後の戦い』の場面じ... -
ラスボスだった使い魔-47b
前ページ次ページラスボスだった使い魔 ユーゼスとエレオノールがそんな会話をしている壁一枚向こう側。 「……………」 朝だと言うのにカーテンを閉め切ってどんよりと暗い部屋の中で、ルイズはベッドの中に潜り込んだまま落ち込んでいた。 『――、―――?』 『――――――、――――――――――』 「…………ぅぅ」 布団を被って耳を塞いでも、ほんのわずかに隣の部屋の声が聞こえてくる。 何を話しているのかまでは聞き取れない……と言うか聞き取りたくもないが、何だか親しげというか、楽しげというか。 難しい言い回しをすれば『喋々喃々(チョウチョウナンナン)』というヤツだ。 「ぅぅううぅぅううぅ…………」 自分の使い魔と長姉がどんな顔で、どんなことを話して、どんなことをしているのかを考えてしまって、色々とグチャグチャになってくる。 中途半端に豊かな自分の想像力が... -
ラスボスだった使い魔-17b
前ページ次ページラスボスだった使い魔 (あ、何だか久し振り、この夢……) ルイズは、夢の中にいた。 とは言っても、いつもの『仮面を被った誰か』の夢ではなく、昔から良く見る夢である。 ラ・ヴァリエールの領地。中心に小さな島がある、中庭の池。 自分の『秘密の場所』。 叱られたり、落ち込んだり、悲しかったりした時に、ひっそりと一人でその痛みを癒すための――― (でも……) 小船の上で寝転びながら、ルイズは胸を痛める。 いつも夢の中で自分を慰めてくれた人は、自分を裏切った。いや、自分だけならまだ良い。あの男は姫さまを、ウェールズさまを、トリステインを裏切ったのだ。 もう自分を慰めてくれる人はいない、とルイズは涙を流す。 ……と、誰かが小船の上にいることに気がついた。 「誰?」 顔はよく見えないが、白衣を着ているということは分かった。そして銀... -
ラスボスだった使い魔-35a
前ページ次ページラスボスだった使い魔 時刻もそろそろ真夜中になろうかという頃、丘の向こうにぼんやりと城が見えてきた。 「……城?」 そう、城である。 夜なので細部までは分からないが、城壁や堀、幾つもの尖塔、そして何よりもその巨大さ。 これが城でなかったら、トリステインの宮殿すら城かどうか疑わしくなってしまう程の『城』だ。 (そう言えばエレオノールはことあるごとに『ラ・ヴァリエールはトリステインでも屈指の名門貴族』と言っていたな……) 今更ながらそんなことを思い出すユーゼス。 なるほど、これだけの領地とあれだけの城を持っているとなれば、トリステインでも屈指になるだろう。 ……と言うか、『トリステインの貴族はこれくらいが普通』とか言われてしまっては、リアクションに非常に困る。 「ふむ」 外観が見えてきたということは、もうすぐ到着するということだ... -
ラスボスだった使い魔-20
前ページ次ページラスボスだった使い魔 「う゛~~~~……」 ルイズは部屋の中で一人、唸り声を上げていた。 「う゛う゛う゛~~~~~……」 納得いかない。 どうしていきなり長姉がやって来て、自分の使い魔を強引に連れて行ってしまうのか。 どうしてあの馬鹿は、それに対して抵抗らしい抵抗もせず、ただ黙ってついて行ったのか。 姉が自分に対して命令口調で説明を行っている時、銀髪の男が黙って部屋の中を掃除していた記憶が頭をよぎる。 最近になって、自分の中で使い魔に対しての羞恥心が猛烈に湧き上がってきたので、洗濯や身の回りの世話はルイズが自分でやるようになっていた。 なので、使い魔の仕事が朝起こすことと髪を梳くこと、それと掃除くらいしかなくなってしまったのだ。 とは言え、残ったそれらの仕事に関しても、ルイズは微妙な気恥ずかしさを感じていたりするのだが……。 ... -
ラスボスだった使い魔-32a
前ページ次ページラスボスだった使い魔 『アンドバリ』の指輪で蘇ったアルビオン騎士たちの数は、十人ほど。 対するこちらは総勢六名。 決して巻き返せないほどの戦力差ではなかったが、こちらの陣営と敵とでは決定的な違いが一つだけあった。 「ううっ、攻撃してもすぐ傷が塞がって……!」 「向こうも精神力を節約するみたいだから、あんまり大きな攻撃はしてこないみたいだけど……このままじゃジリ貧よ!?」 自分たちは生きているが、敵は既に死んでいるという点である。 しかも、いくら傷つけようがその傷はあっという間に再生してしまうのだ。 つまり攻撃しても意味はなく、また攻撃したとしても敵はそれに対して防御や回避を行う必要がない。 ルイズが爆発を炸裂させようが、ユーゼスが剣で斬りかかろうが、タバサが氷の矢で貫こうが、ギーシュがワルキューレで殴りつけようが、『アンドバリ』の... -
ラスボスだった使い魔-36b
前ページ次ページラスボスだった使い魔 そんなユーゼス・ゴッツォと三姉妹の微妙なやり取りはさて置き、日当たりの良いバルコニーにてラ・ヴァリエール家の面々が勢ぞろいした朝食が始まった。 「……………」 使用人たちと並んでバルコニーの隅に立つユーゼスは、そんな朝食風景を感情のこもらない目で見る。 今日もまた無言の食卓が展開されるのか、などと思っていると……。 「まったく、あの鳥の骨め!」 ラ・ヴァリエール公爵は、かなり不機嫌な様子でそんなことを口走った。 (確かこの国の首相……いや、宰相がそのような呼ばれ方をしていたか) 本を買いにトリスタニアを歩いていた時に、道を行く人々からそのような単語を耳にした覚えがある。 トリステインの王家には、美貌はあっても杖はない。杖を握るは枢機卿。灰色帽子の鳥の骨―――という小唄があったような、無かったような。 まあ、... -
ラスボスだった使い魔-25
前ページ次ページラスボスだった使い魔 底部のジェット噴射口を駆使し、機体を敵艦隊の上空でホバリングさせる。 ルイズは開いた搭乗口から敵艦を見下ろしながら、詠唱を開始した。 「……エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ……」 「『虚無の魔法』か。どのような物なのか、詳細は書いていなかったのか?」 額に浮いた汗を手でぬぐいながら、ユーゼスはエレオノールに尋ねる。 「『エクスプロージョン』って言うくらいだから、多分爆発する魔法だとは思うんだけど……」 しかし、何しろ初めて見る魔法なので、エレオノールも推測や予想しか話せなかった。 「もしかしたら、今までの御主人様の『失敗』は、その『エクスプロージョン』の出来損ないなのか?」 「……かも知れないわね」 「……オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド……」 『ゼロのルイズ』が『虚無のルイズ』に... -
ラスボスだった使い魔-50a
前ページ次ページラスボスだった使い魔 ユーゼスは、空を飛ばされていた。 飛ば『される』。 受け身である。 「……………」 飛ばされながら考える。 なぜこうなったのだろう、と。 初めは部屋に閉じこもるカトレアの機嫌を何とかするため、その相談相手を探していただけだった。 エレオノールは屋敷にいない。 ルイズには既に相談済み。 ラ・ヴァリエール公爵とは、相談ごとを持ちかけられるほど親しくもなく。 屋敷の他の使用人もよろしくはあるまい。 ならば最後の手段、ということでラ・ヴァリエール公爵夫人ことカリーヌに対して、 『御息女にアクセサリーを贈ろうと思うのですが、何か良いものはないでしょうか?』 と尋ねた結果、公爵夫人は何とも形容しがたい表情となり。 その十数秒後、 『……なまっていないか見てあげますから、外に出なさい』 と彼女... -
ラスボスだった使い魔-24
前ページ次ページラスボスだった使い魔 タルブ一帯は、アルビオンの軍勢で埋められていた。 村は焼き払われ、村人の姿は見えない。広い草原は兵士や傭兵、メイジなどでごった返している。更にその上空には竜騎兵や戦艦が陣取っている。 彼らは、やがて来るであろうトリステイン軍との戦闘を今か今かと待ち構えていた。 少なくとも初手はこれ以上ないほど上手くいっている。 騙し討ちではあるが完全に敵の不意を突き、今頃あちらの本陣は大混乱だろう。この期に及んでこの大部隊に散発的な攻撃しかしてこないのがその証拠だ。 浮き足立ってロクに統率も取れていない集団など、物の数ではない。そう時間をかけずにこちらの勝利で終わる。 それがアルビオン軍のほとんどの人間が抱いている、この戦争の共通認識であった。 そして、彼らの中から『もうこちらからトリスタニアに攻め込んだ方が良いのではないか... -
ラスボスだった使い魔-22
前ページ次ページラスボスだった使い魔 ウェストウッド村。 浮遊大陸アルビオンの玄関口である港町ロサイスと、観光名所である古都シティオブサウスゴータを結ぶ街道から、少々外れた森の中にある小さな村である。 知名度は、ハッキリ言って低すぎるほどに低い。 何せ存在する家屋は小さなワラぶきの物が10件ほど、その住民はほとんど子供だらけ、最年長の人間ですら『少女』と形容して問題のない女性であり(今はその女性よりも年上の青年が居候しているが)、知っていてもほとんど意味がないのだ。 そしてその『最年長の女性』ことハーフエルフの少女、ティファニアは家の中で夕食の準備をしていた。 「♪~~♪」 最近はアルビオンもかなり危険な雰囲気が充満しつつあるのだが、それは大きな街や重要拠点の話である。こんな小さな村には、ほとんど関わりがない。 強いて言うなら、最近になってアルビオ... -
ラスボスだった使い魔-27a
前ページ次ページラスボスだった使い魔 トリステイン魔法学院の中庭、テーブルと椅子を並べて作られた即席のラウンジの一席にて。 「モンモランシー、君の前では水の精霊も裸足で逃げ出すんじゃないかな。ほら、この髪……まるで金色の草原だ。キラキラ光って星の海だ。ああ、僕は君以外の女性がもう、目に入らないよ」 ギーシュは、持っているボキャブラリーを総動員してモンモランシーを口説いていた。 最初は『バラのようだ』『野バラのようだ』『白バラのようだ』『瞳なんか青いバラだ』『恥らう姿はつぼみのバラだ』と自分の得意分野であるバラを全面に押し出していたのだが、ネタが尽きてきたのでモンモランシーの分野である水の精霊を引き合いに出し始めている。 「……………」 そんな風に立ったり座ったり身振り手振りを交えたりしながら熱心に口説かれると、モンモランシーとしても悪い気はしなかった。 ... -
ラスボスだった使い魔-10
前ページ次ページラスボスだった使い魔 ―――知らない場所の夢を見ている。 いつもの……普通の夢と違うのは、これが『夢だ』とハッキリ自覚が出来る点だった。 「私は地球で起きる怪奇現象を調査しています。 最近頻発する怪奇現象は、地球の環境汚染が原因だと思っています。大気を浄化し、環境を再生すれば……怪獣の出現も減るはずです」 妙な丸い兜を被り、黄色い服を着込んだ人々に、自己紹介をする男。 ……その顔にはまったく見覚えがないのに、その声は自分がよく知っている人間の声だった。 「そうか……また新たな『光の巨人』が現れたか。 私は運が良い……彼らの種族を2人も確認出来るとはな……」 夢を見ている自分の知識にない文字で書かれた、様々な観測結果。 それを見ながら、男は自分が『彼ら』に対して強く興味を惹かれるのを感じ... -
ラスボスだった使い魔-42b
前ページ次ページラスボスだった使い魔 「……ようやく着いたか」 もうしばらくしたら夜明けという時間帯になって、ユーゼスはトリステイン魔法学院に帰還した。 この銀髪の男は、夕方前のあたりからつい2時間前に至るまで、延々とエレオノールとの間にあった出来事をカトレアに語り続けていたのである。 しかも話が終了したのは『語り終わった』からではなく、『カトレアの体力が持たなくなって貧血で倒れた』からだった。 そしてゼエゼエ言いながら続きを促すカトレアをなだめ、更に寝室まで運んでベッドに寝かせるのに更に30分を費やした。 ちなみにその際、 「汗も随分とかいているな」 「え、ええ……まあ……。でも、このくらいは……慣れっこですから」 「……冬に汗まみれのままで眠れば余計に体調を崩すぞ。ただでさえ寝不足なのだから、汗のふき取りや着替えくらいはするべきだと思うが」 「... -
ラスボスだった使い魔-44
前ページ次ページラスボスだった使い魔 「なるほどな」 ユーゼスはコルベールから、現在魔法学院がどのような状況に置かれているかの説明を受けていた。 それによって判明した事実は主に三つ。 魔法学院が賊に占拠されていること。 賊は女子生徒や教師たちのほぼ全員を食堂に集めていること。 そして、その対処に銃士隊が当たっていること。 (……食堂から光が漏れている理由はそれか。そして私に襲い掛かってきた連中も、その賊とやらの構成員というわけだな) これで夜明け前という時間帯であるのに明かりが付いていた理由と、自分が戦っていた連中の正体が分かった。 しかし、まだ疑問はある。 「それで……お前はなぜここにいる、ミスタ・コルベール」 「なぜ、とは?」 この中年教師だ。 「お前とて魔法学院の教師だろう。その学院が危機に陥っているのならば、立ち上がって襲撃者と... -
ラスボスだった使い魔-38
前ページ次ページラスボスだった使い魔 ラ・ヴァリエール家の面々は、今日も一家揃って朝食を取っていた。 「……………」「……………」「……………」「……………」「……………」 日当たりのよいバルコニーで食べていると言うのに、誰も言葉を発さず、その空気は重い。 ちなみに先日までは食事の場に使用人たちと並んでユーゼス・ゴッツォが控えていたのだが、彼はルイズとエレオノール、そしてカトレアを起こした後、『これ以上体力を使う余裕がない』という理由でダウンしたために姿を見せていなかった。 (まったく、最近の若い者はこれだから……) そんなことを考えつつ、黙々とナイフとフォークを動かすカリーヌ。 なお『肉体年齢』はともかく『実際に生きてきた年数』で言うならばカリーヌはユーゼスよりも年下であるのだが、当然カリーヌはそんなことを知る由もない。 「……………」「……………」... - @wiki全体から「ラスボスだった使い魔-07」で調べる