あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ内検索 / 「萌え萌えゼロ大戦(略)-38」で検索した結果
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萌え萌えゼロ大戦(略)
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萌え萌えゼロ大戦(略)-38
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) 西暦1942年6月5日。北太平洋の小島であるミッドウェイ島を巡る日米 両海軍の戦いは、アメリカ合衆国の勝利で終わった。 後に『ミッドウェイ海戦』と呼称されるこの海戦に敗北した大日本帝国は 戦争の主導権を失い、敗戦への道を転がり落ちていくことになる―― 大日本帝国の鋼の乙女を束ねる要であった空母型鋼の乙女あかぎは、 今時海戦において米軍の最優先攻撃目標とされた。アメリカの鋼の乙女を 束ねる空母型鋼の乙女、CV-6エンタープライズ・ルリは、彼女を沈めるため 一計を案ずる。果たしてその計略は効を奏し、空母加賀とともに主力艦隊から 孤立させられたあかぎはルリと艦上偵察爆撃機型鋼の乙女、SBDドーントレス・ ハイネ率いる米海軍艦爆隊の猛攻撃の前に武運つたなく沈んだのだった。 機能を停止し、冷たいミッドウェイの海に... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-10
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) 「……こ、これが『破壊の杖』……?」 ルイズが箱の中に納められていたものを手にとって――この非常時に一瞬固まった。 それは確かに『杖』のようだった。後ろにラッパか漏斗の様なものが取り付けられた 白く細長いそれは小脇に抱えられるくらいに太く、全長もルイズの両腕の長さくらいはある ……が、問題はその杖の先端が見たこともない動物、白い毛で覆われているが耳と鼻と目の 周りが黒い毛になっている生き物――もしもルイズがそれを知っていれば 『パンダ』と答えただろう――の顔で、しかもそれが微妙に憎らしげな笑みを 張り付かせているのだ。その奇妙な造形がいかなる理由でなされたものなのか、 ルイズには理解できなかった。 「……でもそんなことは今気にすることじゃないわ! さあ魔法を出して『破壊の杖』!」... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-08
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) 「『アンロック』!」 ピンクブロンドの落ちこぼれ令嬢が唱えた失敗魔法の爆発、そしてそれに続く使い魔の ガーゴイルが撃った本塔を貫くほどの銃撃――厳重な『固定化』と『強化』をかけられ、 連日の『錬金』でも太刀打ちできなかった宝物庫の壁があっけなく崩れ、穴が開く。 「なっ……? 何なのあの魔法、それにあの銃。私でも手に負えない頑丈な宝物庫の壁を破壊するなんて」 ふがくとロレーヌの決闘が行われている場所から少し離れた物陰で、翠の髪の女が 目の前の現実に驚愕の表情を浮かべていた。 「――何はともあれ、これはチャンスね。あの大きさの穴なら十分通れるわ……」 ずいぶんと運が向いてきたじゃないか――薄く笑みを浮かべた翠の髪の女、フーケは 全員が状況を理解する前に行動を起こす。『錬金』で30メイルのゴー... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-35
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) 「……起きろ、あかぎ」 もう目覚める必要がないかと思っていた自分に、懐かしい声がかかる。 状態を休眠から起動に移行させ、ゆっくりと目を開ける。ルリちゃんに 『固定化』をかけてもらってはいたものの、それなりに時間が経って いたのだろう、体がきしむ感じがした。 「あふ……。おはよう、武雄さん」 ガラスの棺から目覚めたあかぎの前に立っていたのは、この世界に 迷い込んでから出会い、そしてずっと側にいてくれた人。武雄はそんな 彼女に肩を落とすが、すぐに真剣な表情に戻った。 「相変わらずのんきだな、お前は。 ……村が襲われてる。アニエスやエミリーも頑張っちゃいるが、手練れの 連中に苦戦してる状況だ。今の俺たちはそうそうこっちに干渉できねえからな。 村人を逃がすので手一杯だ」 「あらあら。エミリーちゃん、銃士隊に入っ... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-02
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) トリステイン魔法学院で執り行われた春の使い魔召喚の儀式から明けた朝――ふがくは 自分を取り巻く景色が変わっていないことにちょっとした絶望感を味わっていた。 「……あーあ。目が覚めたら『元の世界』に戻ってた、なんて期待した私がバカだったわ……」 ふがくは学院女子寮の屋根の上で、目に映る景色に大きくため息を漏らす。夜空を 彩っていた天空に浮かぶ蒼紅の双月は今は見えないが、昨日激しい痛みで叩き起こされて からのことがすべて現実だとそろそろ認めなくてはならないとも思い始める…… ――『ダイニッポンテイコク』?聞いたことないわね。どこの田舎よ?―― ――元に戻すなんてできないわ!『サモン・サーヴァント』は呼び出すだけだもの―― 昨夜、ルイズと名乗った桃色髪の生意気な少女が言った言葉がこれだ。 「火」... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-31
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) タルブの村が緊張に包まれていた時刻より時をさかのぼり…… まだ太陽が中天にある頃。トリステイン王国の王都トリスタニアにある 王宮。その大会議室は喧噪の中にあった。 「アルビオンへの即時派兵ですと?港の封鎖だけでは不十分だと おっしゃるか!」 「……貴族派の兵力が壊滅状態にあるとは、到底信じられませぬな」 居並ぶ貴族たちからアンリエッタ姫が提出した議案への反論が続く。 その多くは『レコン・キスタ』に懐柔された内通者。だが、彼らは その尻尾を見せることなく、ゆっくりと自らの祖国を破滅へと導こうとする。 アンリエッタ姫は彼らの剣幕に臆することなく、落ち着いた口調で言葉を 発する。 「ギンヌメール伯爵率いる竜騎士隊第二大隊が継続して強行偵察を続けている 結果から導き出した結論です。 ニューカッスル城郭周辺... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-33
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) 「本当にうまくいくんですかねぇ」 薄暗い船倉で男はつぶやいた。言葉とは裏腹に、その口調は軽い。 まるで朝食に向かうかのようなそれに、目元に大きな火傷の痕がある男、 メンヌヴィルが答える。 「今回もやることは同じだ。殺し、焼き尽くす。それで報酬を得る。 簡単だろう?」 そう言って、メンヌヴィルはにやりと笑う。彼らのいる船倉には、 メンヌヴィルを筆頭に十数名ほど。歴戦を語る激しく汚れた革のコートを まとい、危険な雰囲気をまとった彼らは、重槍騎兵一個大隊にも匹敵する 威圧感を持っていた。 「違ぇねぇ」 男は軽く口笛を吹く。メンヌヴィル小隊――『白炎』のメンヌヴィルと いえば、傭兵の世界で知らぬ者はない。残虐で狡猾……そして有能。 彼に率いられた小隊は、彼らが去った後には消し炭しか残らないと 言われていた。 ... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-16
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) トリステイン魔法学院は、その日、その時、厳かな空気に包まれていた。 学院長を筆頭に教師、生徒が揃って盛装し物音すら立てることなく直立不動で迎える様は、 そうそう見られるものではない。彼らが待っているのは、正門の外に見えている1台の豪奢な 藤色の馬車。 やがて馬車はゆっくりと正門をくぐり、学院長オスマンが待つ学院本塔入り口から伸びる 深紅の絨毯にその扉をぴったりと合わせて停止する。それはお召しの馬車を御する御者の 腕の見せ所。そして彼はその責務を完璧にこなして見せた。 「トリステイン王国アンリエッタ姫殿下!! ならびにマザリーニ枢機卿!」 先だって幻獣グリフォンから降りた、立派な羽飾りのついた緑の帽子をかぶり同色の マントを身につけた立派なあごひげを生やしたメイジが馬車の前でそ... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-07
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) 石造りの部屋に堆く積まれた、がらくたとしか思えない数々の中で、コルベールはうなっていた。 「……これは……真鍮のようだが、この精度は……信じられない……」 彼が手にしているのは、ヴェストリの広場で行われた決闘で、ふがくが『ワルキューレ』 撃破に使った機関短銃の薬莢だ。ばらまかれた薬莢は丹念に探すことでそれなりに 見つかったが、弾丸はかなり深く地面にめり込んだか、炸裂してしまったのか、見つから なかった。 なお、ボトルネック式の弾薬(カートリッジ)などこのハルケギニアにはほぼ存在しない。 しかも、残った薬莢だけでも真鍮に別の材質でメッキが施され、金色に鈍く光っている。 薬莢底部の中央にあるへこみは、おそらくこの薬莢に込められていた火の秘薬を爆発 させるための起爆装置――小さなハンマーのようなものか... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-37
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) 「ふがく!入るわ……よ……?」 「ちょ、ルイズ?まだ入っちゃダメー!」 その日の夕方。シエスタたちとは離れた場所に庵を編んでいるルーリーを 呼んでのふがくの整備中。自分だけ蚊帳の外に置かれたルイズはちょっとした 悪戯心と興味本位であかぎの部屋の扉を開けて――すぐに回れ右した。 勢いよく閉まった扉を見て、あかぎの部屋の壁に立てかけられた デルフリンガーがカタカタと鍔を鳴らす。 「……あーあ。娘っ子、しばらく肉食えねーぞ、ありゃ」 「失礼ね!整備中だって言ってるのに勝手に入ってくる方が悪いのよ!」 首も動かせないふがくが声を荒げる。そんな掛け合いにあかぎは微笑んだ。 「仕方ないわよね~。ルイズちゃんも相手にしてくれなくて寂しいのよ~。 ……ところでルリちゃん、そっちはどう?」 「お前さんのと勝手が違うが、こ... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-06
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) ルイズたちがアルヴィーズの食堂の厨房に現れたとき、そこはちょっとした騒ぎになった。 何しろ、貴族が厨房に現れることは少ない。ましてそれが6人も一度に会することなど、 滅多にないことだからだ。 「お邪魔するわね」 ふがくがそう言って厨房に入る。すでに夕食の支度の真っ最中であり、料理長を筆頭に 戦場の様相を呈している。そんな中、ふがくに最初に気づいたのは、昼食時に出会った あの黒髪のメイドだった。 「これはミス・フガク……それにミス・ヴァリエール、ミス・ツェルプストー、ミス・タバサ、 ミスタ・グラモン、ミス・モンモランシ…… み、皆様おそろいでいったいどのようなご用でしょうか?」 明らかに黒髪のメイドは気後れしていた。 「そんなに気を遣わなくても。私は貴族じゃないし、ふがくでいいわよ... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-32
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) ルイズが『始祖の祈祷書』を受け取った頃、エレオノールもまた、 竜籠で急ぎトリスタニアの研究室に戻っていた。それほどの期間を留守に したわけではないが、部屋に入ったとたんに落ち着いた気持ちになった のは、そこが自分の城であるためか。 エレオノールは、ブルドンネ街の骨董市で見つけたお気に入りの年代物の ゆったりとした椅子に深く腰を下ろし、その手に金属製の筒をもてあそぶ。 それはルイズとカトレアが食べたパイン缶だったが、その真ん中には 撃ち抜いたような同じ大きさの穴がいくつも開いていた。 「……まったく。こういうものを食べるときは、わたしも呼びなさいよね……」 エレオノールは渋面を隠さない。妹たちだけで滅多に手に入らない おいしいものを食べたということで、いささか寂しい思いをしていたの だった。 そうしている... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-26
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) 「……これは……想像以上ですな……」 そう言ってガリア南薔薇騎士は口元を押さえる。ここはアルビオン王国―― いや、王党派なき今は『レコン・キスタ』によって神聖アルビオン共和国と なった国の北部、ニューカッスル。王党派最期の地として知られることになる この地は、やがて昔語りとなる王党派による貴族派将兵への苛烈な反撃から まだ三日目を迎えたばかりであり、城郭の外には、屍肉をついばむ鳥や 獣すら近寄らぬ、誰とも分からぬ、物言わぬ黒こげの骸が一面に広がっていた。 口元を押さえる南薔薇騎士の横で、従軍看護婦の装束に身を包んだ 貴婦人が次々と運ばれてくる骸に祈りを捧げている。彼女の名は モリエール夫人。このガリア南薔薇騎士団の騎士団長である。 モリエール夫人は祈りを中断して立ち上がると、側にいる騎士に問う。 「王党派は見... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-34
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) 「わたしの教え子から、離れろ」 硬い表情で杖を構えるコルベール。その声を聞いて、メンヌヴィルは 何かに気づいたように顔を上げた。 「お、お、おお……お前は……お前は!お前は!お前は!」 歓喜に顔をゆがめ、何かに取り憑かれたようにわめくメンヌヴィル。 「これぞ捜し求めていた温度!お前は……お前はコルベール!懐かしい! なんと懐かしい、コルベールの声か!」 コルベールの表情は変わらない。その視線はかたくなにメンヌヴィルを 見据えていた。 「オレだ!忘れたか?メンヌヴィルだよ隊長どの!久しい……久しいな!」 メンヌヴィルは両手を広げ、嬉しそうに叫ぶ。その様子にコルベールは 眉をひそめた。その顔が、昏い何かで覆い隠されていくのを、ルイズは 感じた。 「貴様……生きていたのか」 「そうとも!二十年前、ダングル... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-01
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) 西暦1945年2月16日――大日本帝国の東の要衝硫黄島に鋼の嵐が吹き荒れた。 敗色濃厚な大日本帝国に残された起死回生の秘密兵器、大日本帝国本土からアメリカ 合衆国本土への直接爆撃を可能とする超重爆撃機型鋼の乙女「フガク」の完成を阻止 するため、アメリカ合衆国は持てるすべての鋼の乙女を総動員して未だ目覚めぬ「フガク」が いる硫黄島千鳥飛行場を制圧するべく兵を進めたのだ。 硫黄島東海岸数カ所から攻め上がるアメリカ軍に対して、大日本帝国もまた稼働可能な すべての鋼の乙女を主力と思われる東海岸中央部からの上陸軍へと差し向ける。だが、 もはや戦術ですらない最後の抵抗も、千鳥飛行場をその戦場として終焉の時を迎えようと していた―― 「敵機はこれで最後だ。地上の掃討はエイミーに任せる。ネコ、ハイネ、オレたちは千鳥... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-04
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) 「……いいだろう。ヴェストリの広場で決闘だ!」 黄金色に輝く青銅のバラの造花の杖を掲げて高らかに宣言するギーシュ。その様子に ふがくの横にいる黒髪のメイドはおろおろとふがくとギーシュの間に視線を行き来させる。 本来ならばこの責めを受けているのは自分のはずなのだ。そんなメイドの視線を受けても、 その小さな体に不釣り合いなほど大きな胸を張り、ふがくはいささかも自信を失わない。 「いいわ。教育してあげる。この私、ふがくの辞書に『敗北』という言葉は載ってないのよ!」 「……うーむ。大変なことになってしまったのう……」 「よろしいのですか?『眠りの鐘』で止めた方が……」 ふがくとギーシュが決闘を決めたまさにそのとき。舞台であるアルヴィーズの食堂の様子を 『遠見の鏡』に映して思案している二人の男がいた... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-12
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) 『破壊の杖』を取り戻した日の夜は意外に早く更けた。やはり疲れが残っているのか、 ルイズもあっという間に眠りの世界へと引き込まれていく―― ――ん……ここは……―― 気がつくと、ルイズは見たこともない建物の廊下に立っていた。壁も、天井も、見たことの ない材質で造られ、天井にはランプとは違う、揺らめく炎もない細長い白い明かりが まっすぐに規則正しく並べられている。そこに、寝ていたはずなのにネグリジェではなく 学院の制服を着ている自分。 その廊下には真っ白い上着を羽織った、いかにも頭脳労働担当という印象の男女が ひっきりなしに出入りしているが、誰もルイズに気づくことがなかった。 「……どこかしら?ここ」 ルイズがきょろきょろと見回しながら廊下を歩く。規則正しい同じような風景が続... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-13
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) 「はい。まいどありがとうございます。少し待ってくださいね」 年季の入った一本物のカウンターに、透き通った琥珀色の液体が入ったガラスの 瓶が置かれる。ワインと並ぶタルブの名産品、秘薬ミジュアメの瓶だ。その贈答品に 使われるような、ちょっと洒落たデザインの瓶を、すでに壮年も過ぎ老年の域に 入った女性が丁寧に袋に詰めていく。 「どうぞ。ちょっとおまけしておきました。新製品のドロップ、ぜひ食べてみて ください」 「ありがとう。みんな喜ぶわ」 そう言って袋を受け取るのは、翠の髪を下ろしたまだ若い女性―― ミス・ロングビルこと、マチルダ。あの『破壊の杖』騒動の翌日、早速アルビオンへ 帰る前に、血のつながらない妹や、彼女と一緒に暮らす子供たちへのお土産を 買うために、アルビオン行きのフネが出る港町ラ・... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-03
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) 「さっきの爆発……何だったのかなぁ?」 「スゴかったなー!」 生徒たちがまだ煙の立ち上る塔を見上げて言う。やがて煙は収まったが、それでも 生徒たちはこの事態の元凶の名をいつものように口にしていた。 「どうせ今回の爆発も……」 「ああ、アイツの仕業だ!」 爆発のあった教室からは、すでに気絶した教師、ミセス・シュヴルーズも医務室へと 運ばれ、ほとんどの生徒たちも移動を終えていた。そこに残っていたのはこの事態を 引き起こした張本人、ルイズと、その使い魔であるふがくだけだった。 「あーん。お風呂入りたーい」 「アンタねぇ!自分でやっといて何サボってるのよ!まじめに片付けなさいよ!」 ルイズがとりあえず引き起こした教卓に腰掛けたまま言う。その姿にふがくが怒りを あらわにするが、当のルイ... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-39
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) ハルケギニアの人間たちが『聖地』と呼ぶ場所――そこは荒涼とした 砂漠だった。見渡す限りの荒れ地と砂の海。時折見受けられるオアシス だけが、この地に恵みと潤いを与えている。 照りつける太陽の下、砂に埋もれた大理石の柱の側に、一人の女性が 倒れている。長く黒い髪に白い千早と朱色の短い袴――大日本帝国の 鋼の乙女、あかぎだ。あかぎは無意識下で行われる再起動後の自己診断を 終えると、意識を取り戻してゆっくりと体を起こす。 「……私、生きてる……?」 そんなはずはない。それが正直な感想だ。自分は、あのミッドウェイの 海で、米軍の鋼の乙女ルリとハイネ率いる艦爆隊の猛攻にさらされ沈んだ はずだ。ハイネの必殺技とルリの攻撃を受けた傷は……その痕すら残して いなかった。 その思考を中断させたのは、周囲に感じた気配。電探が... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-15
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) 「……はあ……はあ……まずったわね。こりゃ……」 トリステイン王国の空海の玄関口、港町ラ・ロシェールの裏通りで、一人の若い女が 苦痛に喘いでいた。そこは汚水と埃の臭いが立ちこめ、間違っても若い女がいるような 場所ではない。 流れ落ちる紅い命の雫とともに薄れゆく意識の中、若い女――マチルダはどうして こうなったのか考えていた。 「……は……袖にしないで片棒……担いでおけば……良かったのかねぇ……」 先のトリステイン魔法学院への『土くれのフーケ』襲撃事件の褒賞としてもらった休暇 ――彼女にしてみれば自作自演の結果なのだが――を使って義理の妹たちが待つ浮遊 大陸アルビオンへ行った帰りの道中、マチルダは港町ラ・ロシェールで白い仮面を かぶったメイジの男に声をかけられた。 夜中を走ることに... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-05
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) トリステイン魔法学院の中央本塔の中に、とりわけ厳重に施錠された扉がある。学院の 秘宝を納めた宝物庫の扉――その扉の前に、指揮棒のような杖を手にした翠の髪の女が 立っていた。 「……扉にかけられし戒めを――……解き放て」 何も起こらない。女は小さくため息をつく。 「やっぱりこっちは駄目か。鍵穴は飾りだし鍵自体に相当強力な『固定化』の呪文が かけられているわね。 私の得意な『錬金』の呪文でも開かないとは……厄介だわ」 全く手間ばかりかかる――女は独りごちる。 「やっぱり……あの子たちに協力してもらうしかないかしら?」 「そこで何をしているのですか!」 女の後ろ姿がランプの明かりに照らされる。そして誰何の声。女が振り向くと、そこには 眼鏡をかけた頭のやや寂しい中年のメイジ、... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-29
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) アルビオン空軍工廠の街ロサイスは、首都ロンディニウムから南に向かい、 さほど離れていない場所に位置している。『革命戦争』と彼らが呼び慣らわす 内戦に勝利した貴族派『レコン・キスタ』がこの国の主となる前から、 ここは王立空軍の工廠だった。 王党派の撤退時に工廠としての機能を喪失したこの街も、貴族派による 『解放』の直後から急ピッチで復興され、今も先の戦争で傷ついた艦隊が その傷を癒していた。 その中心部。『レコン・キスタ』の三色旗が誇らしげに翻る赤煉瓦の 大きな建物は、王軍時代から変わらず空軍の発令所である。そこの窓から 見えるのは、乾ドックに入渠した天を仰ぐばかりの巨艦。 雨避けのための布が、巨大なテントのように巨艦――アルビオン空軍 本国艦隊旗艦『レキシントン』号を覆っている。全長二百メイルにも及ぶ ... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-25
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) 「見えた。魔法学院よ」 王都トリスタニアからわずか数分の旅。空から見る五芒星を象った 塔の並びは、ルイズにはとても懐かしく思えた。 授業中らしく外に人気はない。ふがくは二人を抱えたまま、一番目立たない ヴェストリの広場にするりと降り立った。学院に足をつけて、ルイズは 力が抜けたようにへたり込む。 「……帰ってきた……のね」 「ああ。僕たちは帰ってきた。この魔法学院に」 ギーシュの言葉にも感慨深さがにじみ出る。わずか二日半。けれど、 その間に見たことは、あまりにも多すぎた。ルイズが何とか脚に力を 込めて立ち上がろうとしたとき、広場に三人のメイジが現れた。 「……お帰り。ルイズ」 ルイズに手をさしのべ、そう言葉をかけたのはワルド。その後ろでは エレオノールが眼鏡のフレームに指をかけて怒りを抑えている。 ... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-30
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) ラ・ヴァリエール城に逗留する最後の夜。そろそろ眠ろうと思っていた シエスタのところに、予期せぬ来客が現れた。 「……奥様!?」 シエスタは驚きに目を丸くする。そこにいたのは公爵夫人。カリーヌは シエスタが傅こうとするのを制止し、部屋にある唯一の椅子に腰掛ける。 シエスタは、床に座るのも失礼になりそうだったので、やむなくベッドに 腰掛けた。 「久しいですね。シエスタ。あなたが魔法学院に奉公に出てから一度も 顔を見ることがありませんでしたから、心配していましたよ」 シエスタがカリーヌと最後に会ったのは、もう一年以上も前のこと。 カリーヌはカトレアの薬としてシエスタの育ての曾祖母が調合した特製の ミジュアメを譲り受けるため、毎月タルブの村を訪れていた。 なお、曾祖母が眠りについてからもその調合はシエスタの母へと... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-36
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) タルブの村に鎮魂の鐘と空砲の音が鳴り響く。 メンヌヴィル小隊の襲撃は、駐留している銃士隊に大きな被害をもたらした。 駐留五個小隊中二個小隊が壊滅し、他の二個小隊も損耗が激しい。 だが、ほとんどの隊員が初めての実戦、しかも完全な奇襲にもかかわらず 村人の死者は一人もいないという功績がなしえたことは、記録されなければ ならない。 しかし、この戦いの記録を知る者は、そこに奇妙な記述があることに 気づくだろう。 そう。最初の奇襲で居住区を警邏していた第五小隊が自らの命を省みず 村人を守る中、そして休養中だった第四小隊が即時集結して反撃と占拠された 村長の館などの奪還を試みる中、彼女たちを陰から支える異国の軍服に 身を包んだ男たちの姿があった、という記述に―― 「やっぱり、掩体壕... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-21
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) 「申し上げます!先程ニューカッスル城に再び翼人が舞い降りました!」 ニューカッスル城郭を睥睨する巨大戦列艦『レキシントン』号の指揮所に 伝令が飛び込んだ。プープデッキ(船尾楼甲板)にある指揮所は、旗艦設備を 有する『レキシントン』号だけあって並のフネの数倍の広さを誇る。 伝令に真っ先に反応したのは、艦長のサー・ホレイショ・ネルソンだった。 「また翼人か……王党派は先住魔法にすがるつもりかね?」 そう言ってネルソンはそのでっぷりとした腹を揺らす。ネルソンは もとより貴族派に心酔しているわけではない。ただ単に上官が貴族派に 寝返り、それに従って彼も『レコン・キスタ』の三色旗の下で戦うことに なったに過ぎない。レキシントンの戦いにおいて本国艦隊の巡洋艦の 艦長だった彼は、その戦略と勇気をもって空を駆... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-20
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) 「……にわかには信じられませんわね。これは」 学院長室でテーブルに置かれた砕けた煉瓦を前にして人差し指を額に 当てるエレオノール。その煉瓦はオスマンの言葉を信じなかった彼女に 真実を伝えるもの――厳重な『固定化』と『硬化』が施されていながら 中心を貫く一条の穴から真っ二つになっている。トリステイン王国が誇る 魔法研究の最先端を自負する王立魔法研究所、通称『アカデミー』の 主席研究員であり、そこで土魔法の研究を行っているエレオノールには、 それが常軌を逸する結果としか思えなかった。 「お前さんもアカデミーの主席を務めるならいい加減理解せんかい。 お前さんの妹が呼び出した使い魔の持っとる銃は、スクウェアメイジが 束になってかかっても防げん。ワシが生徒を傷つけんよう約束させとらん かったら、決闘... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-11
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) ルイズたちが暮らすトリステイン王国から遙か東、そこに人々が『聖地』と呼ぶ場所がある。 『聖地』とは、始祖ブリミルがハルケギニアに降臨したとされる地。そこは伝説に包まれ、 ブリミル教の最終目的地でもある。同時に、そこは一部のハルケギニアの人間にとって 奪還すべき約束の地だった。 聖地へと至る途中にある『サハラ』と呼ばれる砂漠地帯は、エルフと呼ばれる、人間と 近く、そして異なる種族によって支配され、それが故に聖地への道は閉ざされている。 そしてサハラを抜ければ、そこは聖地、さらにその先には『ロバ・アル・カリイエ』と呼ばれる 東方の地。誰もがそこに行くことを望み、あるものはそのために生涯を費やす。しかし、 それが叶わぬ理由もある。 ――そのサハラにあるオアシスの一つが、今、燃えていた―... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-18
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) 「はわわ~。なんや?こんなところでなんで重爆撃機のエンジン音が 聞こえるんや~?」 港町ラ・ロシェールにある貴族向け最上級の宿『女神の杵』。そこで 料理人として働いていたベローチェがここで聞くはずもない音に飛び起きる。 音は星空を東から西へと飛び去る。ベローチェは鋼の乙女としての並外れた 目でその姿を追うが……残念ながらこの世界のフネよりも高い高度を 両脇に人を抱えて飛ぶその乙女の後ろ姿は、彼女の記憶になかった。 「結構高う飛んどるな~。鋼の乙女……誰やろ?うちが知らん乙女や……」 ベローチェだけではない。その夜。トリステイン王国の空の玄関口である 港町ラ・ロシェール上空に、今まで誰も見たことがないものが現れたのを 多くの人が目撃した。それは低くくぐもった音を伴った、赤青白の三つの ... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-09
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) 『雪風』のタバサの使い魔、風竜シルフィードは、その実、既に絶滅して しまったと言われている伝説の韻竜の末裔である。 風の精霊をその友として、大空を自由に駆け巡る、人語を解する高等生命体 ――その彼女は、今大変不機嫌であった。 ……バババババ……グゥィィーーーーン…… シルフィードの左側を後ろから濃緑色の鉄の翼を持つものが今まで聞いたことも ないような羽音を立てて追い抜いていく。そしてある程度前に出ると今度は反転して シルフィードの右側を通り過ぎていく。そのままある程度後ろに回ると、 また左側を通って前へ――自分の周囲をくるくると回りながら飛行経路に合わせて 移動していくそれは、彼女の主人の友人の使い魔だった。 「……きゅいぃ……きゅいぃ!」 シルフィードが悲壮な声... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-28
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) 「……これは……なんということだ」 夜闇のニューカッスル上空。高度6000メイルの高空に、風竜に騎乗し、 漆黒の装束に身を包んだ一人の竜騎士がいた。 彼の名はギンヌメール伯爵。トリステイン王国竜騎士隊第2大隊の隊長である。 トリステイン王国の航空戦力でも唯一『風の門』付近まで達する高高度と、 風竜以上の速度を想定した高速度の敵に対応できる訓練を積んだ彼の部隊は、 銃士隊隊長アニエスがラ・ロシェールに派遣された直後に極秘裏に アンリエッタ姫よりニューカッスルの強行偵察を命じられていた。 そこで、隊長である伯爵自らが将校斥候として先頭に立っていたのだった。 逆を言えば、彼を含め数人の騎士くらいしか、この任務を無事達成できる 見込みがなかったとも言える。 ガリア南薔薇騎士団による埋葬が昼夜の別なく行われているそこ... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-14
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) 「ルイズったら、いったい何をしに街へ出たのかしら?っていうか、あたしたちにも 声かけてくれればいいのに友達甲斐のないったら!」 実家が不倶戴天の仇敵同士なのを棚上げしたキュルケがシルフィードの背中から 目を皿のようにしてルイズとふがくの姿を捜す。あれだけ目立つ風体のふがくが いるのだからとたかをくくってはいたものの……いざ捜すとなると簡単には 見つからなかった。 「――いた」 「え?どこ?」 「中央広場」 自身の使い魔、風竜シルフィードとともにふがくの姿を捜していたタバサが 先にふがくの姿を見つける。その視線の先には、ルイズとふがくが並んで歩いている 姿が映る。 「……どこに行くつもりかしらね?それにふがくが手に持っているのは……剣かしら?」 「あっちには確かヴァリエール家御... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-43
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) 西暦1944年10月20日。かつての敗北から捲土重来したアメリカ軍は 大挙してレイテ島への上陸を開始した。 この日を予測した南方軍司令官寺内元帥は、秘密裏に満州から決戦兵器を レイテ島に移動させ、山下大将隷下で決戦に備えさせていた。 鋼鉄の旋風が吹き荒れ、血を血で洗う激しい戦いが繰り広げられる。 この戦いで、大日本帝国陸軍はその南方軍戦力のほとんどをすり減らす 事態となった。 二ヶ月にわたる戦いの末、アメリカ軍はレイテ島における日本軍の 組織的抵抗の終結を宣言することになる。だが、そのとき、帝国陸軍の 決戦兵器の姿はどこにも見当たらなかった。そう、その痕跡すらも―― 失われたはずの試製二脚歩行型超重戦車『キョウリュウ』は、今、 ハルケギニアの大地を猛進していた。胸部に搭載した原子力機関を包む 厚... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-53b
前ページ萌え萌えゼロ大戦(略) (シンさんはMI6にいたわけじゃないはずだけど……) エミリーは内心そう思ったが、だからといって諜報活動ができない わけではない。それでも、今までシンにそういう任務を与えていたのも、 このタイミングで秘密にしていた小隊を白日の下にさらしたのも、 間違いなく目の前のアンリエッタ姫。その理由が、エミリーには理解 できなかった。 そして、シンはエミリーの質問には完全な答えを出さなかった。 「そのことはノーコメント。でも、ボクが今日この村に到着すると 知らせたから、姫殿下はこうして足を運んでくださったわけで」 「そうなのですか?それではどうしてアニエス隊長にも内密に事を 進めたのですか?」 「後顧の憂いを絶つ絶好の機会だから、ですわ。それに、わたくしの 師であるあかぎさまが目覚めたと聞いてご挨拶にも伺わないとは失礼に... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-48
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) その夜――タルブの村の墓場の森にうごめく影は二つあった。 傍目には青い髪の姉妹に見えたその二人――隠密というにはいささか 騒がしく、それでいて、それなりに慎重ではあった。 「きゅい~おなかすいたのね……」 背の高い少女がそう言って木陰から飛び出そうとして……もう一人の 小柄な少女に襟首を掴まれる。無理矢理引き戻されたことに彼女は その整った可愛らしい唇をへの字に曲げた。 それはタバサと、そしてかりそめの人の姿の影を見せる彼女の使い魔 シルフィード。ふがくが探知したノイズの正体であり、またその姿故に、 ふがくがノイズと捉えた理由であった。 タバサは一度タルブの村を離れた後、ひそかにここに舞い戻った。 先の襲撃によって手薄になった銃士隊の警護をかいくぐり、知らず障害物を 利用してふがくとあかぎの電探... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-27
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) 「……ねえ、ギーシュ。正直に話してくれない?」 ふがくたちがラ・ヴァリエール領に向かった翌日。トリステイン魔法 学院では一人の男子生徒が複数の女生徒に問い詰められていた。 「な、なんのことだい?モンモランシー」 「とぼけないで!この三日間、ルイズと二人でどこ行ってたの?」 「……そのルイズの様子も何か変だったわね。お姉さんに引っ張られて 帰っちゃったからちょっとしか見てないけど、妙に気を張っていたというか。 タバサはどう思う?」 ギーシュに詰め寄るモンモランシーの横で、キュルケは横で本に没頭 している親友に問いかける。その返事は素っ気ない。 「確かに変。たとえるなら、何かの罪に怯えているような感じがした」 タバサの言葉に、ギーシュは小さく肩をすくませ、遠くを見るような 目をする。 「罪……か。あれを罪だ... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-44
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) 「それはどういういことアルか?」 出撃の直前。燕は自分の耳を疑った。 「お前たちは、もう日本やドイツには帰らないアルか?どうしてアル?」 信じられないという顔の燕。そんな彼女に、あかぎや、武内少将たちは 優しく笑ってみせる。 「……私は、ミッドウェイで沈んだはずだからね」 「ワシと加藤はニューギニアの陸軍に補給物資と少年兵を送り届けた後、 佐々木らを驚かせてやろうとラバウルに向かう途中で、じゃったな」 「そのとおり。まさか佐々木少尉がこっちにいるとは思いもしませんでしたが」 「私はベルリンに侵攻したソ連機甲部隊を攻撃し、敵戦爆連合に突撃したな」 「……オレも沖縄に向かう特攻隊を護衛した後、任務を終えた母機を 逃がすために米艦上機の群れに突っ込んだ」 「私は、『震電』の完成が間に合わなかったために散っていった... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-47b
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) 「では、これより骨髄移植手術を開始します。 手順は先程打ち合わせたとおり。まずは二人に眠ってもらって、 それからカリーヌさんの拒絶反応を滅失。その後ルイーズさんの腸骨から 骨髄液を採取して、これを腕からの静脈点滴としてカリーヌさんに移植します」 「……まったく。そういうことなら先に話を通してくれても良かったんじゃ ないですか?」 部屋の扉が閉まり、あかぎが用意した道具を前にしての説明を聞きながら、 ラルカスは小さく溜息をついた。 「ごめんなさいね。でも、これはトリステインの最重要機密事項なの。 少なくともあと三十年、できれば死ぬまで内緒にして欲しいわね」 「……仕方ないですね。吹聴したところでこちらに益はないですし。 わかりました。それでは、始めますか」 「ええ。ド・モンモランシ夫人、お願いします」 あ... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-19
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) ルイズたちがニューカッスルへ到着した頃、トリステイン魔法学院では―― 「……遅いな。もう出発する頃だと思うんだが……」 学院の正門前。そこに一人の羽帽子をかぶったメイジが幻獣グリフォンを 連れて立っていた。彼の名はジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。 トリステイン王国の子爵にして、精鋭の魔法衛士隊グリフォン隊の隊長 でもある。 「……もう夜が明ける。僕のグリフォンでもあまり遅くなると今日中に ラ・ロシェールに着くのが難しくなるんだけどな……」 「……なーにをやっとるんですかの?ワルド子爵は?」 払暁の魔法学院。その中央本塔の最上階の窓からオールド・オスマンが せわしないワルド子爵を見下ろしている。 「……そういえば、ワルド子爵には、昨夜ルイズ・フランソワーズの護衛を ... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-49
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) どこまでも抜けるような青空の中、二機の『竜の羽衣』と鋼の乙女が飛ぶ。 飛行高度は二千メイル。今までとは違い、トリステイン空軍にも、 陸軍にも、何ら遠慮することはない。 高度を上げないのは、ルイズが乗っているからだ。専門の訓練を受け、 日常的に鍛えている少女たちとは違い、また鋼の乙女ふがくに抱かれて 飛んだときとも違い、高度差による気温の低下と大気圧の低下は、ルイズには あまり良いものではなかった。それに加えて触っても動作しないようには されていても後付けの操縦桿とフットペダルなどがある後席の圧迫感は、 慣れないルイズにはあまり居心地の良いものではない。 「それにしても、マミの髪型は前の方が絶対良かったよ」 『それがね、本来銃士隊に入隊したら髪を切らないといけないの。 ただ例外があって、上官の許可を得れ... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-47a
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) 「……なっ!?」 トリステインの王宮にてフィリップ三世が書簡を開く二日前。ガリア 王国の王都リュティス。その中心にあるヴェルサルテイル宮殿の巨大な 王城『グラン・トロワ』の謁見の間で、トリステイン王国の密使である 一人の竜騎士が絶句した。 「そ、それでは我が国には何の利益もないではありませんか!」 「……そんなことはないだろう?卿の言ったとおり、貴国の生ける伝説、 『烈風』どのを治療することができる。それ以上のことは何も書かれて いないぞ」 絶句する竜騎士を、玉座に座するガリア王、ルイ一三世が肘をついたまま その王権の証である整えられた青い顎髭をなでつつ見下ろす。その顔には 絶対的な強者の笑みが浮かんでいた。 「我が忠臣は貴国の望みを叶えるだろう。他に何か言いたいことはあるか?」 先代のロベスピエール三... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-42
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) トリステイン王国の王都トリスタニアにある王城の西の塔は、特別な 理由で監禁されることになった王族や貴族のための座敷牢になっている。 座敷牢、といっても下手な貴族向けの宿の部屋よりも広く、ベッドや 机も用意されている。違いは窓に鉄格子がはめ込まれ、扉が分厚い鉄で あることくらい。貴人を監禁するため、囚人の牢獄とは雲泥の差なのだ。 そこに、ガリアから件の鉄の竜の情報を持ち帰った商人が収監されていた。 最初こそ大声で叫んでいたものの、やがて諦めたのかおとなしくなり、 今では食事を運ぶ衛士と一言二言言葉を交わすくらい。それすらも、 今日はなかった。最近髪の毛が抜け、体に紅斑が浮き出し、嘔吐と下痢を しているようなので、精神的な重圧があるのだろうと、衛士たちは 思っていた。実際、報告をして『水』メイジに診察してもらった... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-23b
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) 「ルーデル!?ルーデル!?」 呼び続けるふがく。だが、応答はない。そのとき、背中に背負った デルフリンガーが叫んだ。 「相棒!上だ!!」 「え?」 デルフリンガーの叫びに体ごと上を向くふがく。そこに銃弾の雨が 襲いかかった。 「うああっ!」 「ふがく?!」 『イーグル』号の艦橋でふがくが銃撃されるところを目の当たりにした ルイズが叫ぶ。そのまま甲板に銃撃する何か。その姿は……服の色以外を 鏡写しにしたような双子の少女―― 「バ~~~カ!くすくす♪」 「あら?まだ飛んでるわ。さすがフガクね、姉さん。くすくす♪」 それはニューカッスル攻防戦開始直前にひそかに『レキシントン』号から 離れていた、クラレンスとアリスのライトニング姉妹だった。 一航過でふがくを『イーグル』号から引き離すことに成功した双子は... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-52
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) 「……それじゃあ、皆さんシンさんと戦って?」 港町ラ・ロシェールからタルブの村へ向かう道すがら。 チハはハーマンの昔話にそう尋ねる。 大型の高速乗合馬車で移動するシンたち四人とティファニアとチハたち 大所帯は、彼女たちだけでほぼ馬車を占有する状況だった。シンたちは 馬で移動する手段もあったが、ティファニアの護衛という観点から、 一緒に馬車で移動することを選んだのだ。馬車にはティファニアたちの 大きな荷物だけでなく、シンが背負っていた無機質な金属製の箱なども 積み込まれ――過積載だとして追加料金を請求されたのだが、シンが なにやら書状を馬主に見せるとそれで話はお仕舞いになっていた。 「まあね。あたしとカルナーサは賞金稼ぎだったし。シーナは違ったけど、 立場の相違って似たような理由でシンと対... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-23a
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) 太陽が中天に昇る頃。ニューカッスル城郭に鎮魂の鐘が響き渡る。 本来は脱出の準備が進められていなければならないが、それに優先する形で 河に流れ着いた遺体の埋葬が行われていた。 流れ着いた遺体は、ほとんどがまだそれが貴族だったのか、平民だったのか 判別することが可能だった。背中や腕、顔に火が燃え移った時点で河に 飛び込んだのだろう。だが、焼夷弾に用いられた焼夷剤であるテルミットは 燃え尽きるまで待つしかなく、油脂や黄燐は下手に水をかけると逆に 激しく燃え上がる。そのため、遺体はどれも酷く損傷しているところと そうでないところの差が激しかった。それでも、まだ河に飛び込めただけ、 彼らは幸運だったのだ。 ルイズとギーシュは黒い雨に濡れた体を湯で濯ぎ、新しい制服に着替えて 教会での葬儀に参列した。ここに埋葬されるのは... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-41
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) オレは……沖縄で死んだはずだ 桃山飛曹長は混乱していた。かつてソロモン上空で高田司令長官が乗る 一式陸攻を撃墜した憎き米国陸軍航空隊を叩き、単機で特攻を命じられた 櫻花とそれを運搬する一式陸攻を護って、敵空母航空隊の只中に突撃したはずが―― 気がつくと見知らぬ砂漠を飛んでいた。しかも、被弾も自身の怪我も、 すべてなかったかのように。 桃山飛曹長は、愛機である深紅の紫電改を北西に飛ばす。理由は分からない。 何故かこっちに友軍がいるような気がしたのだ。その途中、広大な森の 上空にさしかかったとき、彼は異質なものを見た。 「……何だ?恐竜?そんなバカな」 雲の隙間から見えたそれは子供向けの冒険小説のようだった。巨大な 肉食恐竜に、飛竜に乗った騎士たちが立ち向かう――高度差から、こちらには 気づいていない... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-53a
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) 「ミスタ・ラルカス?」 ふがくたち、それに遅れること一日で学院に戻ったコルベールたちから さらに遅れること一日。魔法学院に戻ったばかりのタバサは、戻るなり ルイズに捕まった。 「そう。三十年前にガリア王国南薔薇花壇騎士だったって聞いたから。 タバサはガリアの出身でしょ?だからどこにいるか聞いたことがないかな?って…… 有名な人だった、って聞いたし」 ルイズは言葉を選びながらタバサに問いかける。この間のタルブの村の 一件で多少距離が縮まったとはいえ、まだタバサの纏う雰囲気はルイズに 打ち解けてはいない。突き放しはしないが親身でもないその態度は、 ルイズにも緊張を強いる。 しばしの沈黙。思わず息を呑むルイズに、タバサは静かに告げた。 「……その人に会うのは諦めて」 「え?」 いきなり何を言い... -
萌え萌えゼロ大戦(略)-40
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) 「あなた……日本人ね」 そう言って微笑むあかぎに、武雄は信じられないものを見るような顔をした。 「まさか、君……いや、あなたは……」 武雄はあかぎと面識はない。開戦前から聯合艦隊司令長官の副官を 務めていたあかぎと、開戦後に少尉任官してラバウルに進出した武雄では、 接点がなかった。しかし、彼女のことを知らない帝国海軍軍人はいない。 それだけではない。公式には事実を偽りミッドウェイ海戦で重傷を負い 戦線を離脱したとされているが、鋼の乙女であるということは防諜上の 理由で日米開戦まで伏せられて(そのために日本最初の鋼の乙女は制式 採用前に日華事変に参加した零式艦上戦闘機・レイだと思われていた) いても、優秀な能力と同性ですらうらやむ美貌とスタイルを兼ね備えた 彼女の名は、報道機関などを通じて日本中が知るところだっ... - @wiki全体から「萌え萌えゼロ大戦(略)-38」で調べる