18話 それが私のアイデンティティー
「
ヴェロニカちゃん、やっぱり服着た方が良いと思うんだけど……」
「嫌! 私の裸が見て貰えなくなる!」
エプロン姿の女性と、裸ニーソに翼と尻尾、角がある少女が港の倉庫が立ち並ぶ場所を歩いていた。
エプロンの女性、笹倉礼子は裸ニーソのサキュバス少女、ヴェロニカに、
全裸だと男の子の目に毒だし防御力にも問題があるから服を着た方が良いと忠告するも、
ヴェロニカは頑として聞き入れない。
「何度も言ってるでしょう、笹倉さん。
私は裸を見て貰って男の人に欲情して貰って、思う存分犯して貰って、気持ち良くなって貰うための存在……。
このお尻も、胸も、太股も、あそこも、男の人に気持ち良くなって貰うためのもの。
それを服なんかで隠したりしたらもう私は私で無くなるんです」
「そ、そのアイデンティティーの構築の仕方は、間違っているんじゃないかしら……」
「間違っている、笹倉さんはそう思いますか。
それでも良いんです、理解を求めている訳ではありません。
私がそう思うからそうなんです、私の中では」
「はあ、分かったわ、もう言わないでおこう」
かなり意味不明なアイデンティティーを熱弁するヴェロニカに、
これは説得不可だと察し礼子は服を勧めるのをやめた。
「仲間に男の人が来たら、やっぱり誘うの?」
「そりゃあ勿論。でも相手が嫌がったり断ったら、流石にやめますよ。
まあそう言う人でも、後で襲ってくる事が結構あるんですけどね、勿論性的な意味で」
「本当にエッチな事好きなのね……」
「サキュバスですから」
「まあそれはそれとして……誰もいないのかなこの辺には」
礼子とヴェロニカは、自分達と同じように殺し合う気が無い参加者を求め歩いていた。
出来れば機械知識のある人物が欲しかった。
首にはめられた首輪を何とかして外しでもしない限り、この殺し合いから脱出など不可能である。
「武器も探さないといけないし」
「私も笹倉さんも、ろくな物支給されてませんしね」
二人の支給品には武器になりそうな物は無く、武器の確保も重要事項の一つであった。
そんな二人の背中に視線を送る人物がいた。
倉庫の建物の陰に隠れていた彼は、短機関銃、イングラムM11のグリップを握り締める。
口元がにやりと歪む。
次の獲物を見定め、陰から飛び出し、少しでも命中率を上げるために、
抜き足で二人に背後から接近する。
そして距離が6、7メートルまで縮まった所で、彼は、イングラムの銃口を二人の背中に向けた。
「――!!」
二人の内一人が背後からの気配に気付いたのか彼の方を振り向いたが、
「もう遅い」と勝利を確信した彼は笑みを浮かべながら、引き金を引いた。
ダダダダダダダダダダダッ
港に銃声が響いた。
◆◆◆
「はぁ、はぁ」
ヴェロニカは灯台の最上階にある電灯室で、息を切らしながら座り込んでいた。
港で、背後から急襲された時に咄嗟に上空を飛び上がった。
直後に銃声が響いた。
しかし様子を詳しく確認する余裕も無く、無我夢中で飛び去り、辿り着いたのが灯台の電灯室だった。
同行していた笹倉礼子は、恐らく生存は絶望的だろう。
「笹倉さん、ごめんなさい……」
不可抗力だったかもしれないが同行者を見捨てて一人逃げてきた事への罪悪感を、ヴェロニカは感じていた。
「暗くて良く見えなかったけど、多分男ね……さっきの襲ってきた人。
でも問答無用で、殺しに掛かってきてたし……エッチ誘うのは流石に……ん?」
呼吸を整え気持ちが少し落ち着いた所で、
ヴェロニカは血の臭いがするのに気付く。
恐る恐るそれを辿ると、誰かが倒れているのを発見した。
デイパックから懐中電灯を取り出しそれを照らす。
「!!」
直後に照らした事を後悔する。
人間の少女の死体だ。胴体と、頭を撃たれて死んでいる。
特に頭部の損壊が酷い。脳漿が飛び散っている。
死体は過去幾つか見た事はあるヴェロニカだったが、それでも子供の死体は精神的に来るものがあった。
持物は殺害者に漁られたのだろうか、基本的な物以外は無くなっているようだった。
「……私、いつ死ぬか分からないなぁ。
せめて一回ぐらいは、気持ち良い事したい」
いつ襲われいつ落命するか分からない状況なのだと言う事をヴェロニカは改めて実感した。
せざるを得なかった。
◆◆◆
「ちっ、入浴剤とお徳用割り箸とか、しけてんな」
港にて、撃ち殺した女性の所持品を漁る少年、
下斗米規介。
しかし役に立ちそうな物、特に彼の好きな銃は無く、入浴剤と割り箸を放り捨てる。
「しっかしすげぇぜサブマシンガン、蜂の巣になるって表現は本当なんだなーあっはは」
短機関銃の威力に惚れ込む規介。
さながらそれはRPGなどのゲームで新しい武器を手に入れてその威力に喜ぶ様子と酷似していた。
「だけど、もう一人に飛んで逃げられたのは残念だったな。
まあ翼持ちなのは遠目でも分かったし多少は考えてもいたけど……。
まあ良い、次だ次!」
もはやここには用は無いと、規介は次の獲物を探し始める。
全身に穴が空き血溜まりの中に倒れる女性の死体が残された。
【笹倉礼子 死亡】
【残り51人】
【黎明/F-4/灯台最上階電灯室】
【ヴェロニカ】
[状態]疲労(中)
[装備]???
[持物]基本支給品一式、???(1~2、武器になるような物は無し)
[思考]1:殺し合いには乗らない。
2:殺し合いに乗っていない参加者を捜す。出来れば機械知識を持っている人が望ましい。
3:気持ち良い事をしたい。せめて一回ぐらいは。
[備考]※下斗米規介の容姿は詳しく把握していません。
【黎明/F-5/港】
【下斗米規介】
[状態]高揚感
[装備]イングラムM11(15/32)
[持物]基本支給品一式、シグザウエルP226(13/15)、シグザウエルP226の弾倉(3)、イングラムM11の弾倉(5)
[思考]1:どんどん人を撃ち殺したい。
2:獲物探しだ。
[備考]※ヴェロニカの容姿は詳しく把握していません。
《参加者紹介》
【名前】笹倉礼子(ささくら れいこ)
【年齢】32歳
【性別】女
【職業】専業主婦
【性格】明るく気さく、周囲への気配りが上手
【身体的特徴】黒髪の穏やかな雰囲気の美人
【服装】トレーナーとジーンズの上にエプロン
【趣味】ダンス
【特技】揚げ物を作るのが得意
【経歴】23歳の時に結婚し、子供が一人いる
【備考】ごくごく一般的な主婦。
家族仲も良好で幸せに暮らしている
【名前】ヴェロニカ
【年齢】外見年齢10代後半
【性別】女
【職業】無職
【性格】淫乱でマゾ
【身体的特徴】淡い紫髪のサキュバス。爆乳で蝙蝠のような翼と悪魔のような尻尾、角がある
【服装】裸ニーソ
【趣味】自慰、獣姦、輪姦される事、読書、お菓子作り
【特技】多少空を飛べる、状態異常系の魔法を使える
【経歴】それなりに長い年月を生きているとの事
【備考】「自分は男を気持ち良くするための存在」と認識するマゾ。
服を着るのが嫌いでニーソ以上はまず着ない。
服嫌いの理由は「自分の全裸で男の人に欲情して貰うため」らしい。
淫乱でマゾな事を除けば善良な性格である
最終更新:2013年10月30日 12:15