30話 殺戮の風
明るくなったため、呂車と
金剛英理奈は隠れていた軍事施設を出て、
飛行場を訪れていた。
飛行場にはセスナやヘリがあったが、二人は操縦出来ない。
出来たとしても首輪のせいで会場からは逃げられないのだが。
「誰かいないかな……?」
「あそこノ事務所ニ行ってミるか」
二人は事務所と思しき建物へと近付く。
「……?」
その時呂車は窓の向こうで何か影が動くのを目撃した。
「待て英理奈、誰カ中にいる」
「え? 本当?」
「お前ハここデ待て、俺が中に行っテ確かめる。
10分経っても俺が戻らなかったら逃げろ」
そう言うと呂車は56式自動歩槍を手に事務所の中へと進んで行った。
「大丈夫かな……」
呂車の事を心配しつつも、英理奈はおとなしく待つ事にする。
◆◆◆
事務所に入った呂車は銃を構えながら奥へ進む。
「……」
呂車の鼻が何かの残臭を捉える。
雄の臭いと、雌の臭い。
誰かがここでまぐわったらしかった。
(こんな状況で、良く出来るものだ)
ここで行為をしたであろう誰かに呆れながらも感心する呂車。
その呂車の背中に殺気立った視線を送る少女。
少女の手には刺身包丁が握られている。
隠れていた机の陰から飛び出し、前方の灰色竜の背中に向け一気に突進する。
刺身包丁をその背中に突き立てるべく、だが。
ガスッ
「!?」
しかし、突然の左頬への打撃にそれは中断させられ、少女は地面に伏した。
口の中が鉄錆の味のする液体で溢れ返る。
歯が数本折れたかもしれない。いや、もしかしたら頬骨にもヒビが入った可能性がある。
それぐらい強い衝撃だった。
その衝撃の正体は、灰色竜が振り向きざまに持っていた突撃銃の銃床で、少女の左頬を殴打した事によるものだった。
「〈いきなり後ろから刃物を持って突進するとは、明確な殺意を持っていると言う事で間違い無いな?〉」
「え……なん、て……」
灰色竜の口から出た言語が中国語だと言う事は、少女にも理解出来たが意味までは分からない。
だが、声や表情、そして持っていた突撃銃の銃口を自分に向けている事から、
これから自分に対し報復行為を行おうとしている事は容易に想像出来た。
「ご、ごめ、ごめんなさい、ごめんなさい」
先程まで殺そうとしていた事も忘れ少女は必死に許しを乞う。
「〈……駄目だ〉」
だが灰色竜は承諾しなかった。
ダダダダダッ!!
銃声が響き、少女の頭部と胸元が弾け肉片と血が飛び散り、少女は絶命した。
「〈謝るぐらいなら最初から襲おうなんて考えなければ良いんだ。
自分が不利と分かるや否やさっさと降参しようなんて虫が良すぎるんだよ〉」
撃ち殺した少女に吐き捨てるように言うと、灰色竜、呂車は英理奈の元へ戻ろうとした。
ダァン!
「〈今の銃声、外……!?〉」
唐突に外から銃声が聞こえ、呂車は駆け出す。
◆◆◆
ジャスティーナ・オールドカースルは、森で一人を殺害した後、軍事施設跡へ向かったのだが、
道中森で迷う羽目になり、やっと軍事施設跡に到達したのはスタートから三時間以上経った頃だった。
疲労のため休息し、その後しばらく施設跡を探索した後、飛行場を目指し歩き出した。
そこで見付けたのは、事務所の中へ入って行く灰色竜と、
一人恐らく待機を命じられたと思われる少女。
「……やるか」
自分の武器である自動拳銃H&K VP70を手に、ジャスティーナは気付かれないように少女へ近付く。
そして十分狙える位置にまで移動する。
少女はたまに周囲を警戒するためであろう、辺りをきょろきょろと見ていたが、
ジャスティーナには気付いていないようだった。
タイミングを見計らい、ジャスティーナは行動を起こした。
隠れていた物陰から飛び出す。
「え!?」
少女はここでようやく自分を狙う雌獅子の存在に気付いたが時既に遅し。
少女に狙いを定め、ジャスティーナは拳銃の引き金を引く。
ダァン!
VP70の銃口から放たれた9ミリの弾丸は、少女の首を抉った。
鮮血を辺りに撒き散らし、首元を押さえながら、少女は地面に崩れ落ちる。
恐らく頚動脈が損傷したが故の出血、ならばもう助かるまい。
次は事務所の中にいる灰色竜を始末しなければ、そう考えたジャスティーナは事務所の方へ視線を向ける。
事務所の扉が開き、灰色竜が出てきた。
◆◆◆
「〈何て事だ……!〉」
呂車が外に出た時には既に遅かった。
英理奈は血だまりの中にうつ伏せに倒れピクリとも動かない。
傍目から見ても生きているようには見えなかった。
そしてすぐ近くに拳銃らしき物を持った獅子獣人の女性の姿。
状況からして英理奈を襲ったのは獅子女性と見て間違い無い。
呂車は56式自動歩槍を獅子女性に向け、引き金を引いた。
ダダダダダダッ!!
7.62ミリの弾丸が獅子女性に向かって火の雨となり襲いかかる。
「!?」
しかし、呂車は瞠目する。
獅子女性は横に飛んで回避した。
女性までの距離はおよそ10、15メートル程、そのような至近距離で突撃銃の銃撃を回避されるとは、
呂車は思っていなかった。
ダァン! ダァン!
「うぐぅ!?」
胸に鋭い痛みが走った呂車は銃を落として胸を押さえその場に崩れ落ちる。
まともに息が出来ず、口から血の泡が溢れる。
胸を押さえた手を見れば、真っ赤に染まっていた。
肺を撃たれた、と呂車は思った。
「……あ」
気付けば、銃口が眼前に来ている。
「〈くそ……〉」
終わりだ、と、呂車は思った。
それが呂車の最期の思考となる。
銃声と共に彼の脳髄は弾丸によって貫かれ、彼は命を落とした。
◆◆◆
ジャスティーナは灰色竜の持っていた突撃銃と予備弾薬を回収した。
そして装備武器をその突撃銃に切り替える。
事務所の中に入ってみると、一人の少女が死んでいた。
至近距離で機関銃の掃射でも食らったのか、穴だらけになり酷い状態。
灰色竜が殺したのだろうか、とジャスティーナは思ったが、別段この少女が誰に殺されたかそこまで気になる訳でも無かったので、
少女の荷物を調べて特に大した物を持っていない事だけ確認し、事務所を出た。
「ここにはもう用は無い……別の所へ行こう」
ジャスティーナは飛行場を後にするべく歩き始める。
【幌延ゆうみ 死亡】
【金剛英理奈 死亡】
【呂車 死亡】
【残り41人】
【早朝/C-6/飛行場】
【ジャスティーナ・オールドカースル】
[状態]健康
[装備]56式自動歩槍(8/20)
[持物]基本支給品一式、56式自動歩槍の弾倉(5)、H&K VP70(13/18)、H&K VP70の弾倉(3)、暗視ゴーグル、脇差
[思考]1:殺し合いに乗り優勝を目指す。
2:目に付いた参加者を殺していく。
3:これからどこに行こうか……。
[備考]※特に無し。
《キャラ紹介》
【名前】
幌延ゆうみ(ほろのべ-)
【年齢】18歳
【性別】女性
【職業】高校生
【性格】明るい
【身体的特徴】明るい茶髪の美少女、貧乳
【趣味】料理
【特技】裁縫
【経歴】幼少時犬に噛まれた事がトラウマで犬が苦手
【備考】特にない
最終更新:2014年01月05日 23:21