僕の修羅が騒ぐ

13話 僕の修羅が騒ぐ

――優勝すれば好きな願いを一つだけ叶える――

坊主頭、小学生とは思えない目付きの悪さ、額の星印が特徴的な少年、
土井津仁はイベントホール内の控室の一つ、その中で椅子に座りながら思考する。
開催式の時にまひろが言っていた優勝者の特権について。

仁の質問「何でも叶えてくれるのか」に対しまひろは「死者の蘇生、大金等」と回答した。

死者の蘇生はともかく、大金を得られると言う話は、
仁にとっては少なからず魅力的であった。
彼の家は「超」の字が付く程の「貧乏」である。
自宅は廃屋と間違われ廃墟特集の本に写真が載ってしまう程のあばら家。
父親は飛び降り自殺し母親と二人暮らしをしているが、
その母親は性格に問題が有り何か仕事を始めても短期間で離職してしまう。
従って慢性的に金欠であり、家の隣の墓、寺からお供え物や電気を盗む、
友人に食事や金銭を無心するといった生活を余儀なくされていた。
夏になれば冷房など無いので家は灼熱地獄と化し、冬になれば冷房も無いので家は極寒地獄と化す。
命の危機に瀕した事も一度や二度では無い。

「お金が有れば」と、一体今まで母親と共に何度思ったか分からない。

優勝すればどんな大金でも手に入れられるのか?
それこそ、自分と母が一生を過ごせられるような。
だが優勝するという事はこの殺し合いに自分と同じように呼ばれている友人達や、先生が全員死ぬという事。

友人達の死と引換に大金を得たとしても素直に喜べるのか?

「小鉄っちゃん、みんな……」

考え、悩み抜いた末、仁が出した結論は――――。


◆◆◆


イベントホール施設内、幾つか有るホールの一つ。
少女、吉良邑子は自身の支給品を確認していた。

「むぅ……」

出てきた物は、瓶入りのカルピス原液三本。不満顔をする邑子。
カルピスが好きな訳でも飲みたい訳でも無い。そもそも原液のままよこされても困る。
原液のまま飲む者も居るには居るだろうが少なくとも彼女はそういう趣味は無かった。

吉良邑子が今欲しいのは武器。
この殺し合いで戦い勝ち残り、優勝する為の。

「武器を探さなきゃ……優勝して英人様の元へ戻らなきゃいけないのだから」

熱に浮かされたように邑子は呟く。
マゾヒストの気が有り「主人」を追い求めていた彼女は、所属するクラスでの修学旅行に出掛けた際、
今行っている物とは別の殺し合いに巻き込まれた。
その殺し合いの最中、とある男子生徒を「主人」と定め、以来、奉仕するという名目でその男子生徒の指示を仰ぎその通りに行動していた。
とは言え、指示を多分に曲解していたのだが。

そして結局の所、邑子は落命してしまう。
だが蘇生し、現在の――二回目の殺し合いのプレイヤーと化した。

邑子の今回の殺し合いでの目的は、優勝し「主人」の元へ帰還する事。

「英人様、絶対、貴方様の元へお戻りしま――――」

ガチャ。

「!」

ここには居ない「主人」への決意を口にしていたその時、ホールの扉が開いた。
開いた扉の方へ向く邑子。
そこには、小学生ぐらいと思われる坊主頭の少年の姿が有った。
手には箒と思しき物を持っている。

(子供……? 小学生かな)

自分は今、ろくな武装を持っていないが、小さい子供程度なら何とかなるのではと邑子は考える。

しかし次の瞬間、その少年は物凄いスピードで邑子に向かって走り出した。

突然の事に驚く邑子。
身構えようとした時にはもう手後れだった。

強烈な一撃が邑子の脳天に入り、辺りに箒の破片が散らばる。
致命傷に至る程では無かったが衝撃はかなりの物で邑子の意識は揺らいだ。
そんな中、細い腕が自分の首に巻き付くのを感じた。
それが邑子の感じた最期の知覚となる。

ボキッ

鈍い音と共に、吉良邑子の意識は途絶え、二度と戻る事は無かった。


【吉良邑子@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル  死亡】

【残り  46人】



◆◆◆


――ついにやった。自分は人を、殺した。


首の骨をへし折って殺害した、中高生と思われる女性の死体を見下ろし、
土井津仁は自身がしでかした事を彼なりに、必死に、現実として受け止めようとしていた。

心臓の鼓動が今までに無い程早い。
脂汗が額から染み出してくる。
口の中が異常に乾く。
これが「人殺し」を犯した者の心情なのかと仁は思う。

しばし深呼吸し、気持ちを落ち着かせる。
とは言っても余り落ち着けはしなかったのだが。

「もう後戻りは出来ないんだ」

自分に言い聞かせるように、仁は呟く。
彼は考え、悩み抜いた末に、殺し合いに乗り、優勝を目指す事を選んだ。
友人達と先生の死を乗り越え、もしも遭遇したのならその手に掛ける事も厭わないつもりである。

母と何度も夢見た、一生を安寧に過ごせる程の金を手に入れる為に、土井津仁は戦いに身を投じる。


【深夜/D-5イベントホール第二小ホール】
【土井津仁@漫画/浦安鉄筋家族】
[状態]健康
[装備]無し
[所持品]基本支給品一式
[思考・行動]基本:優勝し、大金を得る。
       1:武器になりそうな物を探す。
       2:小鉄っちゃん達に会っても容赦する気は無い。
[備考]※少なくとも「元祖!」にて金子翼登場後、彼と親しくなった後からの参戦です。
    ※支給品はポセイドンの箒@漫画/浦安鉄筋家族でしたが、損壊した為放棄しました。


《支給品紹介》
【カルピスの原液@漫画/浦安鉄筋家族】
現実のカルピス原液と同じだが、浦安鉄筋家族のキャラ、鈴木フグオの好物なので当該作品の出典として扱う。
フグオは原液のまま飲んだり、また、点鼻薬や目薬にしたりもしている(本人曰く何にでも効くらしい)。

【ポセイドンの竹箒@漫画/浦安鉄筋家族】
激怒神社の神主、ポセイドン笠原の箒。彼の武器でもある。至って普通の箒。


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最終更新:2014年07月22日 23:58