15話 Imitation Soul
灰色の毛皮を持った猫獣人の美少女、テトは、銀世界の中を一人歩いていた。
「寒い……」
降雪こそしていないが、とにかく寒い。
少なくとも薄手の学生服で歩いて平気で居られるような環境では無い。
息は当然白くなり、風も刺すように冷たく、雪の積もった地面は歩く度に小気味良い音を立てて足跡が付く。
履いている靴と靴下が雪で容赦無く濡れ、足先に不快感が募る。
「……はぁ、何でこんな事になってるんだろう」
今自分が置かれている状況にテトは納得がいかなかった。
テトは、クラスメイトのラトと言う黒猫獣人の少年に好意を抱いていた。
ある日、ラトに告白しようとしていた時、友人の貝町ト子から急に呼び出された。
何の疑いも無く、テトはト子の元へ赴き、そして体育館の裏で――――。
クラスの男子三人、女子一人に、思い出すのも憚られるような、辱めを受けたのだ。
テトはラトが助けに来てくれると信じていたが、その思いは届かず。
身体と心をボロボロにされ、友人に、
好意を寄せていた相手に裏切られ――ラトに関しては些かテトの言い掛かりのようなものだが――テトの心に深い闇が生まれた。
そして、テトは三人の協力者を得て、とある狂気の計画を立て、実行した。
修学旅行に出たクラスメイト全員を拉致し、孤島に閉じ込め、殺し合いをさせる、バトルロワイアル。
そう、今現在自身がさせられているゲームと全く同じ物を、テトは主催していた。
目的は、自分を蹂躙した者達、裏切ったト子とラトへの復讐、そして、ラトを――自分だけのラトとして、生まれ変わらせる事。
結果的に、目的は全て果たされた。
テトは、用済みとなった協力者達を始末し、自分の望む姿のまま、自分が望む、自分がなすがままのラトと共に、
二人だけの時間を過ごしていた――――筈だったのに。
気付いたら、自分が殺し合いをさせられる側になっていた。
何も着ていなかった筈なのに、いつの間にか通っている高校の征服を身に着けていて。
開催式の時に、死んだ筈のクラスメイトの姿が何人か確認出来て。
そこには、憎い憎い太田太郎丸忠信や――――ラトの姿も有った。
しかしテトは直感的に分かっていた。
開催式の時に見掛けたラトは、自分が蘇らせたラトでは無い、と言う事を。
要するに、自分がクラスメイト全員を犠牲にしてまで成し遂げた事は、全て水泡に帰した。
そればかりか今度は自分が殺し合いをさせられる側となり、復讐相手も復活し、状況は悪くなっていた。
テトがそれを認識した時、どれほどの失望感に苛まれたかは想像にかたくない。
「……あれは」
前方に何かを発見するテト。
林の向こうに建造物が確認出来、そこから煙――いや、湯気と思しき物が立ち上っている。
地図を開いて確認する。
該当しそうな建物は、E-6エリアの温泉旅館。
「取り敢えずあそこに行こう……もう寒くて……」
温泉旅館なら暖を取れる筈。
先客が居るかもしれないがそんな事を気にしていたら行き倒れてしまうだろう。
テトは前方に見える温泉旅館を目指し、寒さと冷たさでかじかむ両足に鞭を打った。
【深夜/E-6温泉旅館付近】
【テト@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]寒さによる体温低下、両手両足先が寒さでかじかんでいる
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:???
1:温泉旅館で暖を取る。
2:太田やト子、ラトの事は……。
[備考]※本編終了後からの参戦です。
※超能力の制限については今の所不明です。
※参加者のラトが自分が蘇らせたラトでは無い事に直感的に気付いています。
最終更新:2014年05月29日 20:36