瞳は色褪せて、何も見つけられなくて

21話 瞳は色褪せて、何も見つけられなくて

日本は千葉県、浦安市に住む小学生の少年、大沢木小鉄は、
有り得ない程の元気さ、タフさ、そして馬鹿さを持っていた。
遊びはいつでも全力投球、夏休みの時などは睡眠を殆ど取らずとも全く平気で居られる驚異的な体力と行動力を有し、
また、脳天に鉛筆が刺さる、自動車に撥ねられる、火災現場に突っ込むなど命の危機に瀕してもその都度、
人並み外れた回復力を発揮し後遺症も全く無く生還を果たしてきた。
いじめっ子気質な面は有ったものの基本的には快活な性格で、友達も多い。
そして大抵の事に物怖じしない胆力も持っていた。

そんな彼でも今回巻き込まれた殺し合いゲームには、流石に恐怖を感じていた。

「どうしてこんな事になっちまったんだ?」

温泉旅館の客室の一つ、座卓の前に座り、大沢木小鉄は自分の置かれた状況に疑問を呈する。
つい昨日まで何も変わらないいつも通りの日常を送っていた筈だと言うのに、
突然見知らぬ場所に居て、爆弾付きの危険な首輪をはめられ、殺し合いをしろと謎の男二人に命令されたのだから、
不満を覚えない方がおかしい。

首輪の威力を見せる為だと称し、男二人――じゅんぺいとまひろは、
殺し合いの参加者である家族の目の前で年端もいかない赤ん坊を爆殺した。
その光景は小鉄も目撃しており、今まで自分が死にそうになったり他人が死にかけたりするのは何度か覚えが有り見てもきたが、
本当に人が死ぬ所は初めて見た。

「ふざけんなよ……殺し合いなんて出来る訳ねぇだろ」

怒りを込めて小鉄が言う。

「のり子にフグオ、仁、金子先生、春巻も居るみてぇだしな。
あいつらを殺す事なんて出来ねぇよ……勿論他の人達もだ」

恐怖は感じていたし、死にたくないと言う気持ちも有る。だが、殺し合いを肯定する事は出来ない。
大事な友達を殺すなんて出来る訳が無い。当然の事だ。
春巻は別段友達では無いしむしろ嫌いな部類に入る人物だったが、
流石に本気で死んで欲しいとまでは思っていない。

ランダム支給品は、ローバーR9と言う小型の自動拳銃。
説明書と、予備のマガジンが三つ、セットで小鉄に支給された。
当然、本物の拳銃の使い方など小鉄は知らない。
説明書が添えられていたが、彼には理解出来る代物では無く、結局装備する事は叶わなかった。

「とにかくのり子達を探さなきゃな……。
この旅館の中でも見て回るか」

小鉄は自分の荷物を持って客室を出た。

◆◆◆

テトはようやく温泉旅館に到着した。
長時間雪原を歩いたせいで身体は冷え切り、足はびしょ濡れになっており、一刻も早く暖を取って休みたかった。
旅館玄関の自動ドアをくぐり抜けると、綺麗に掃除された落ち着いた雰囲気のフロントが彼女を出迎える。
靴を脱いでそれを片手に持って上がると、絨毯敷きの床に濡れた足跡がくっきりと残った。

「客室は……」

案内図を見て客室が有る場所を探すテト。

「!」

しかし案内図を指でなぞっていた時、テトは微かに人工的な物音を聴く。
普通の人間ならば聞こえなかったであろうそれは、獣人であり人間より聴力の優れる彼女には確かに聴こえた。

「誰か居るの?」

音のした方向へテトは声を掛ける。

「待ってくれ、俺は殺し合いには乗っていない」

通路の角から出てきたのは丸刈り頭の小学生と思われる少年だった。

「俺、大沢木小鉄って言うんだ。この旅館の中を見て回ってたんだけど……」
「そうなの……私はテト。ずっと雪の中歩いてきて、この旅館にやって来たの。
私も……殺し合いには乗っていないわ」
「おーそうか。ねえちゃん着ぐるみ着てるのか? 猫みたいな見た目してんな」
「え? 着ぐるみ? いやそんな物着てないよ?」
「じゃあ本物なのか? すげえ!」
「……? 獣人ぐらい知ってるでしょ?」

違和感を感じ、テトは尋ねる。
テトの世界において獣人は既に一般認知されており、小鉄の反応は彼女にとって妙であった。

「じゅう、じん? 何だそれ? 聞いた事ねぇぞ」
「ええ??」

真顔で答える小鉄にテトはますます困惑する。
嘘を吐いているようには見えない、そもそも嘘を吐く理由も無いだろうが。

(いや、そんな事より今は……)

ここでテトは当初の目的を思い出した。

「ああ、話の途中で悪いけど客室探さなきゃ……」
「そうか姉ちゃんずっと歩いてきたって言ってたもんな。ごめんよ。
客室ならあっちの方だぜ、案内してやるよ」
「ありがとう」

テトは小鉄に案内され客室へと向かい始める。

「テトのねーちゃん、おっぱいでけーな。俺のねーちゃんよりずっと」
「いっ!? どこ見てんのよ!」

胸の事を言われて赤面するテト。
もっとも小鉄はいやらしい気持ちでは無く単純に驚いている様子だったのだが。
その後、客室の一つに入りようやくテトは落ち着く事が出来た。
小鉄は引き続き旅館内を探索する、また来ると言い残して客室を後にした。
備え付けのヒーターを点けて靴と靴下を干し、座卓に伏すテト。

「はぁ……疲れた。さっきの小鉄って子、獣人の事知らないって言ってたけど……後で詳しく聞いてみよ」

小鉄には後程詳しく話を聞くと決め、次にクラスメイトの事について考え始める。
名簿に有るクラスメイトの名前は自分を除き14人。
その内自分と関わりが深いのは六人。
愛餓夫、壱里塚徳人、太田太郎丸忠信、ラト、貝町ト子、吉良邑子だ。
ラト以外は殺してやりたいとテトは思う。
自分を辱めた太田達は元より、自分を裏切って太田達に売ったト子も同様。
ラトに関しては複雑であり、会いたい気持ちも会いたくない気持ちが半々である。
それ以外のクラスメイトについては保留する事にした。

「……ちょっと寝よう」

疲労感と、暖房の温もりからか、テトを眠気が襲う。
少し眠っても罰は当たるまいと、テトは座卓に伏したまま目を閉じた。
程無く、寝息を立てテトは眠りについた。


【深夜/E-6温泉旅館客室】
【テト@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]疲労(大)、睡眠中
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:今の所は殺し合う気は無い。
       1:(睡眠中)
       2:しばらく旅館で休む。後程小鉄君に詳しく話を聞く。
       3:太田達及び貝町ト子は殺してやりたい。ラトは複雑。他のクラスメイトについては保留。
[備考]※本編終了後からの参戦です。
    ※超能力の制限については今の所不明です。
    ※参加者のラトが自分が蘇らせたラトでは無い事に直感的に気付いています。
    ※大沢木小鉄を自分と同じ世界の人間だと思っています。


【深夜/E-6温泉旅館のどこか】
【大沢木小鉄@漫画/浦安鉄筋家族】
[状態]健康
[装備]無し
[所持品]基本支給品一式、ローバーR9(6/6)@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター、ローバーR9の弾倉(3)
[思考・行動]基本:殺し合いには乗らない。のり子達を捜す。
       1:旅館内の探索。後でテトねーちゃんの様子を見に行く。
[備考]※少なくとも「元祖!」にて金子翼登場後、彼と親しくなった後からの参戦です。
    ※旅館内を探索しており正確な現在位置は不明です。
    ※テトを自分と同じ世界の人間だと思っています。


《支給品紹介》
【ローバーR9@オリキャラ/エクストリーム俺オリロワ2ndリピーター】
アメリカのローバー社が開発した小型自動拳銃。
航空機用のアルミ複合材をフレームに採用し、総削り出し加工で製作する等「高級」な小型拳銃となっている。
但しとある銃器誌のレポートでは「購入直後は装填不良に悩まされた」とされ信頼性に難が有るとも言われている。
元ロワにおいて皆川宏介に支給されるがすぐにヴィヴィアン・ルークに奪われ、その後クローイの手に渡るが、
結局一発も発砲しないまま出番を終えた。


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最終更新:2014年08月04日 13:18