22話 フラウは行動する/春巻龍は動かない
F-4エリアには警察署が存在していた。
しかし今は勤務する警官の姿は一人も無く、その役割は全く果たしていない。
果たせるとすれば、殺し合いの参加者達が身を隠すのに使う拠点としての機能、であろう。
「それじゃあ、春巻さんはこの殺し合いに教え子が何人か居るんですね?」
「そうだちょー」
一階のオフィスにて、学生服姿の狐獣人少女、フラウは、
署内で出会った男、春巻龍と会話していた。
春巻はフラウに自分が小学校教師だと言う事、この殺し合いに教え子が数人呼ばれている事をフラウに話し、
その名前や特徴等も一緒に伝える。
一方のフラウも、この殺し合いに呼ばれている自分のクラスメイトの名前と特徴を春巻に話した。
「フラウはこれからどうするつもりだちょ?」
一通り互いの知り合いの事を話終わった頃、春巻がフラウに尋ねた。
「さっきも言ったけど、殺し合いをする気は有りません。
何とかして、殺し合いを潰したい……その為にまず、殺し合いに乗っていない人を見付けて仲間にしようと思ってます」
「でも、そんなに上手く行くかホイ?」
「正直難しいと思います……でもだからって、殺し合いを肯定する事は出来ません」
「そりゃまあそうだけど……」
「春巻さんはどうするんです?」
今度はフラウが春巻に訊く。
「俺は余り動きたくないちょ……死にたくない」
「でも、教え子が居るんじゃ……」
「アイツら、みんな結構強いちょ。多分放っておいても大丈夫だと思うホイ。それに俺アイツらに嫌われてるし」
「ええ……」
とても教師たる者の言葉とは思えないとフラウは呆れる。
同行しても貰えなさそうなので、フラウは単独で行動する事にした。
「それじゃあ私は行きます。春巻さん気を付けて。
本当にいつ、命が危険に晒されるか分かりませんから」
「分かった……フラウも気を付けて行けホイ」
フラウは春巻の返しに対し頷くと、自身に支給された大型自動拳銃・デザートイーグルを右手に持ち、
警察署の玄関へと歩いて行った。
その背中を、春巻はぼーっと見送った。
「行っちゃった……はぁ、どうしてこんな事になったんだちょー」
頭を抱え、自分の現状に嘆息を漏らす春巻。
どうしてこんな、バトルロワイアル――殺し合いなどと言う理不尽なゲームをしなければいけないのか。
今まで散々問題を起こしてきた自分にバチが当たったとでも言うのか。
確かに自分は今まで散々、厄介事を招いてきた。
自宅アパートを火事で失い、担任クラスの教室に住み着いて生徒から顰蹙を買ったり、
空腹に耐えかね八百屋をやっている生徒――この殺し合いに呼ばれている鈴木フグオ――の家を襲って、
野菜を強奪したり(言うまでも無く立派な窃盗及び器物破損である)、
紙飛行機作りにはまってありとあらゆる紙を紙飛行機に作り変えて同僚から咎められたり、と、
少し思い出しただけでもかなり有る。
だが、もしバチが当たってこうなったのだとしてもすんなりそれを受け入れる程春巻は人が出来ていない。
人が出来ているのなら前述の問題など起こさなかっただろうし、
そのような往生際の良い人間なら今まで何度も彼を襲った遭難で、彼は生き延びる事など出来なかっただろう。
(殺し合いはしたくない、でも生きたい、死にたくないちょ……。
しばらくここに留まっていよう、下手に動かなければきっと安全だちょ)
春巻は教え子達を捜しに行く事はせず、今居る警察署に留まり己の安全を優先させる事に決める。
身勝手な行動に思われるかもしれないが、教え子達――大沢木小鉄、西川のり子、鈴木フグオ、金子翼――は、
いずれも普通の小学生とは比較にならない体力、耐久力が有る。
特に大沢木小鉄に至っては超人とも言って良い程、例え殺し合いに放り込まれたとてそう簡単に死にはしないだろう。
そう春巻は考えていた。彼なりの考えは一応有るのである。
「何か食べるホイ……」
春巻は自分のデイパックから基本支給品の食料を取り出し、軽い食事を始めた。
【深夜/F-4警察署一階】
【春巻龍@漫画/浦安鉄筋家族】
[状態]健康
[装備]???
[所持品]基本支給品一式、???
[思考・行動]基本:自分が生き残る事を優先する。でも一応小鉄達の事も心配ではある。
1:しばらくは警察署に留まり動かないようにする。
[備考]※少なくとも元祖!にて再び小鉄達の担任となった後からの参戦です。
※フラウのクラスメイトについての情報を得ました。
◆◆◆
狐の少女・フラウは、現在参加している物とは別の、
クラスメイト同士の殺し合いにおいて一度死を迎えた身である。
どうやって死んだ筈の自分が生き返ったのか、
何の因果で再び殺し合いをさせられているのか、それはいくら考えても分からない。
確かなのは生き返っただけで以前と置かれている状況は然程変わっていないと言う事と、
今回の殺し合いにはクラスメイト以外の人間も参加していると言う事、
そして今回の殺し合いの運営に携わる連中も、以前の殺し合いでラトの首輪を見せしめで吹き飛ばした若狭と同様、
冷酷極まりない性質なのだと言う事、であろう。
(名簿見たけど、英人や由佳ちゃん、ケトルは居ないみたいね)
名簿に載っていたクラスメイトの名前の中にフラウの親しい人物は居なかった。
前回の殺し合い、フラウは友人の玉堤英人、間由佳の為に、殺し合いに乗るとまでは行かないが、
危険人物を排除すると言うスタンスを取っていた。
当初は純粋に二人の為だったのだろうが、しかし、殺し合いと言う異常状況下のせいか、
彼女の自覚が無い内にその思いは妄執とも言えるものへと変貌していった。
そして、とある出来事が切欠で遂にフラウは錯乱し、その時傍に居た友人のケトルに対し危害を加えるような事をしてしまい、
それが彼女の死に繋がる結果となってしまった。
(冷静になった今だからこそ言えるのかもしれないけど、あの時の私、もしかしなくてもどうかしてた……)
前回の殺し合いでの己を省みるフラウ。
(英人もきっと、理由が有ったんだと思うし……ケトルは何も悪くないのに、
あんなに追い詰めてしまって、結局それで私は……本当に申し訳無い事をしたわ。
この殺し合いには居ないから、会って謝る事も出来ないけど……。
……今、私が出来る事は……)
フラウは今回の殺し合いで自分に出来るであろう事を考え、見出した。
ごくごく純粋かつ簡単、この殺し合いを潰す事にした。
その為にはまず、殺し合いに乗っていない参加者を集める事が上策だろうとフラウは考える。
但し先程の春巻龍のように、乗ってはいないが全く行動する気の無い者は避けた方が良いとも思った。
【深夜/F-4警察署一階】
【フラウ@パロロワ/自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]筋肉のデザートイーグル(7/7)@アニメ/クレヨンしんちゃん
[所持品]基本支給品一式、デザートイーグルの弾倉(3)
[思考・行動]基本:殺し合いはしない。
1:ゲームに乗っていない、かつ能動的に反抗する意思の有る参加者を探す。
2:クラスメイトについては保留する。
[備考]※本編死亡後からの参戦です。
※自分が以前に殺し合いをしていた事、一度死んでいる事は春巻龍には話していません。
《支給品紹介》
【筋肉のデザートイーグル@アニメ/クレヨンしんちゃん】
劇場版「電撃!ブタのヒヅメ大作戦」においてSMLのエージェントの筋肉(コードネーム)が所持していた、
イスラエル製の大型自動拳銃。劇中においてひろしがこれを持って筋肉を威嚇したが、
直後にあっさり奪われ羽交い締めにされた。
最終更新:2014年08月19日 00:32