39話 さあ進軍開始
「ん……あ、あれ……」
何時の間にか眠ってしまっていたようだ、と、南遊里は眠気の支配する意識を頑張って覚まそうとする。
「起きたか」
「添津さん……今、何時ですか?」
「午前8時10分……第一回放送はもう終わったぞ。安心しろ、私が聞いておいた」
「あ、はい……」
放送を聞いた同行者の獅子獣人軍医、添津武吉は、遊里に放送で得た情報を伝える。
17人の死亡者の名前の中には、遊里が座礁船で結果的に見捨てた竜錬アイの名前があった。
それを聞いた遊里は、ある程度覚悟はしていたとは言え罪悪感に襲われる。
「竜錬さん……」
「……君が言っていた石清水成道と狐閉レイナの名前は呼ばれなかった」
「そうですか……はぁ」
「この辺は禁止エリアにはなっていない。急いで移動する必要は無さそうだ……南さん」
「はい」
「あんまり自分を責めるな。見捨てたとしてもしれは仕方の無い事だ。下手すれば君も死んでいたかもしれないのだから」
落ち込んでいる遊里を励ます武吉。
それは多少なりとも遊里の救いとなった。
「……ありがとうございます」
そう言いながら、遊里はゆっくりと身体を起こし始める。
「大丈夫か?」
「ちょっと痛いですけど……ぐっ、何とか……」
「無理はするな」
「ですけど、いつまでも寝ている訳にもいきませんし……」
多少の痛みはあったが、武吉の適切な処置や長時間安静にしていた事もあり、
歩く事ぐらいは出来るようになっているようであった。
遊里は武吉の手を借りつつも、数時間ぶりに立ち上がった。
「流石に、ちょっと足が鈍ってますけど……歩けそうです」
「そうか、なら良いんだが」
「添津さんのおかげです、本当にありがとうございます」
「いやいや……礼を言われる程の事はしていないさ。
……歩けるなら、ここから移動しようと思うが、大丈夫か?」
「大丈夫です……」
既に17人も死んでいる。
首輪を解除出来る可能性のある狐閉レイナはまだ生きているらしいがいつ殺されてしまうか分からない。
それ以外にも殺し合いに抗う者や、首輪を何とか出来そうな者がいるなら仲間にしたいと、
二人は考えていた。故にやむを得なかったとは言え長時間動く事が出来なかったのは痛い。
遊里自身は、自分は何とか動けるようになったのだから、それなら少しでも先に進んだ方が良いと考える。
武吉は遊里を処置した当人だけあり彼女の傷の事を心配していたが、
遊里の気持ちを汲んでやる事にした。
武吉はコンパスを取り出し方角を確認する。
地図を見て遊里の話や周囲の様子から考えるに自分達のいる場所は地図で言う所の、
E-6或いはF-6の森と思われた。
とすれば北に行けば市街地に行けるはずである。
ただ、比較的近場のエリアD-5が禁止エリアに指定されているためここには注意しなければならない。
「行くか」
「はい」
武吉と遊里は、森を抜けて市街地へ行くべく北方向へ歩き出す。
【E-6/森/午前】
【南遊里】
[状態]腹部に被弾(処置済)、貧血気味、精神疲労(中)
[装備]無し
[持物]基本支給品一式、ゴボウ(10)
[思考]
基本:殺し合いはしない、生き残りたい。
1:添津さんと一緒にいる。
2:首輪を外せそうな人を捜す。狐閉レイナさんを特に。
[備考]
※狐閉レイナの情報を得ました。
※石清水成道を危険人物と認識しました。
【添津武吉】
[状態]健康
[装備]無し
[持物]基本支給品一式、医療キット
[思考]
基本:殺し合いはしない。脱出手段を探す。
1:南遊里を保護。
[備考]
※狐閉レイナの情報及び石清水成道の外見の情報を得ました。
最終更新:2013年03月28日 20:41