~レムリア大陸・EGO本部~
ピピピ!
オウリギンに通信が入る。
オウリギン「なんだ?」
アージ『オウリギン!
エミス…奴はなんなんだ!』
オウリギン「前にも言っただろう。あれはハイヒューマンであるお前を完全なる存在にするために造ったクローンの一体だ。それが天十也たちの脱走の際に紛れて逃げ出したのだ」
アージ『奴は物質の変換を行った!たかだかクローンにそんな力が…』
オウリギン「能力は望んで得るものではない。たまたまその個体がそのような力を発揮したに過ぎない。エミスがそのような力を発揮したのも偶然だ」
アージ『…なにか僕に隠してはいないだろうね?』
オウリギン「私が述べているのは事実だ」
アージ『ならいいさ。僕はこれから本部に戻る。部隊を再編したら今度こそ奴を…』
アージとの通信が途切れる。
オウリギン(ハイ・ヒューマン…ネオが造り出した新たなる人類を自称する存在か)
自身のデスクに置かれたパソコンを眺めるオウリギン。
オウリギン(奴の情報提供には感謝している。おかげでエミスを造り出すことができたのだからな。自己修復機能に未元粒子を集約して武器として使える力。大したものだ。だが所詮はそれも人間が造り出したもの。人形が創造者を超えることなどできぬ。だからこそ私は…)
ヒルデ「失礼します」
オウリギンの部屋に入ってくるヒルデ。
ヒルデ「
ガドゥさんより頼まれていた駆動鎧が完成いたしましたのでお持ちいたしました」
オウリギン「例のやつか」
ヒルデ「えぇ。グリフ大陸支部の駆動鎧の戦闘データをもとにそのあらゆる戦術パターンに対応できるよう遠近全てにおいて弱点のない最強の駆動鎧です。ただこれを使いこなせるほどのデバイサーがいるのかは問題ですが…」
オウリギン「発注した時点でガドゥはデバイサーにふさわしいものを見込んでいるはずだ。その点は問題ない」
ヒルデ「そうですか。では今後ともカミナ工業を御贔屓に」
オウリギンの部屋を後にするヒルデ。
オウリギン(タウガス支部は黄龍からの連絡がない。反逆者たちに篭絡されたか。だが奴らも動きだした。私の計画はいまだ揺るぎはしない。この流れを掴んで見せる)
~レムリア大陸~
エミス、結利、
にろくの前に現れた
ジョルジュ。
ジョルジュ「混沌の世界。今こそわれらが神の力によって世界は平定される!『レムリアの地へ眠る静寂なる世界の守護者。その力をもって世界へ慈愛を取り戻したまへ!』」
ゴゴゴゴ!!
地震のような地鳴りがあたり一帯に起こる。
にろく「なんだ…」
結利「なになに!?」
ジョルジュ「目覚めよ(コネクト)!『カルマ―トアマービレ』!!」
バゴォン!!
地面を突き破り現れる石像。
エミス「鳥の…石像?」
ジョルジュ「守護者カルマートアマービレよ!世界を混沌へ導く愚者どもを討ち滅ぼせ!」
アマービレ「……」
バサッ!!
翼を大きく羽ばたかせ空へと飛びあがるアマービレ。
結利「あの人ってどこかでみたような…」
にろく「アンモライシティでの闘技大会の決勝戦…あそこにいたやつだ。なぜあいつがここに…それにこの石像は奴の能力なのか…」
ジョルジュ「我らが主の命によりこの地に巣くう人間を排除する!」
エミス「人間を排除?なにを…」
にろく「お前は何者だ?お前の仲間は闘技大会で
ディックを狙っていた…ディックと何か関係があるのか?」
ジョルジュ「ディック=ピッド。あやつは我らとは思想の反するもの。その異端なる存在は許容できぬ!」
ディックの名を聞いた途端、怒りを露わにするジョルジュ。
にろく「ディックを知っているということは…お前はもしや」
ジョルジュ「察しのとおりだ。我は地縛民ジョルジュ!この世界を導く神へ仕えるもの!」
結利「地縛民!?それってたしか…」
自身の記憶を思い起こす結利。
結利「グリフ大陸の民族だよね。なんでレムリア大陸にいるの?」
にろく「こいつの発言にそのヒントはありそうだ」
エミス「どういうことですか?」
にろく「前にディックに聞いたことがある。地縛民は
シャカイナという神を信仰してると。そのシャカイナを今すぐにでも復活させようと、ことを急ぐ連中…強硬派というやつらがいるとな」
結利「こいつがその強硬派ってこと?」
にろく「おそらくな」
ジョルジュ「なかなかいい推理だ。だが真理にはたどり着けてはいない」
にろく「なんだと?」
ジョルジュ「今この世界の状況こそ神が顕現するのにふさわしい!」
バサッ!バサッ!
上空でアマービレがその翼を激しくはためかせる。
フュォォォ
アマービレの翼から粉が地上にばら撒かれる。
にろく「なんだこれは…」
突如にろくたちを強烈な睡魔が襲う。
結利「なんだか…眠く…」
ドサッ!
その場に倒れ眠る結利。
エミス「結利さん!」
ジョルジュ「慈愛に包まれ、永遠の眠りにつくがいい」
シュン!
そういうとジョルジュはその場を後にした。
にろく「だ…めだ。意識が…」
ドサッ!
にろくも意識を失い倒れてしまう。
エミス「にろくさんまで…いったいどうすれば…」
エミスの持つ剣では上空にいるアマービレに攻撃を仕掛けることすらできない。
エミス「僕にはあの石像の粉は効果がないみたいだ。でも僕にはあの石像に攻撃する術がない」
アマービレ「……」
アマービレはの翼から発生していた粉が消える。
アマービレ「……」
先ほどよりも激しく翼をはためかせるアマービレ。アマービレの動きに呼応するように風が強く吹く。
バサッ!バサッ!
その翼から発生する風が次第に強くなっていく。
ビュォォ!!
エミス「くっ!」
エミスたちに突風が降り注ぐ。その場に立っているのもやっとの程の強さだ。
アマービレ「…」
バサッ!
翼を大きくはためかせたかと思うとアマービレは翼を折りたたみ自身の体をできる限り小さくし、そのままエミスへと向かってものすごい速度で突進してくる。
エミス「この突風では避けるのは不可能…D=E=R(ディス=エクスペリエンス=レコード)!
背中に背負った黒い大剣を自身の前に盾のように構えるエミス。
ヒュォォォ!!
上空から降下してくるアマービレ。
ガキン!!
アマービレがエミスの大剣へと衝突する。
ガガガガ!!
アマービレに押されながら地面を後退し、攻撃を受け止めるエミス。
エミス「ぐぅ!このままじゃぁ…!」
アマービレ「…」
エミスの両足に入る力が次第に弱くなっていく。
エミス「もう…これ以上は…」
ガキッ!!
態勢を崩し、剣を弾かれるエミス。
エミス「うっ!だめだ…」
アマービレ「…」
アマービレはその攻撃の手を休めることなくそのままエミスを貫こうとする。
「粒子光弾!!」
ババババ!!
無数の粒子の弾がアマービレへと打ち込まれる。それによりエミスから逸れ、地面へと突進するアマービレ。
ゴゴゴゴ!!
地面をえぐりながら進むアマービレ。ある程度地面をえぐるとアマービレは翼をはためかせ、空へと舞い上がり自身に攻撃を加えたであろう人物の方向に顔を向ける。
ゲイン「動く石像か。さらに飛行するとはこちら側の技術にも恐れ入るな。」
エミスの前に現れたのは両腕に駆動鎧の腕部を装着した男、ゲインだ。
エミス「あなたは?」
ゲイン「俺は
ゲイン・ブレイズ。死にぞこないの兵士さ。見知ったやつらが見えてな」
地面に打ち振すにろくと結利に目をやるゲイン。
ゲイン「まぁそれはどうでもいい。目の前の脅威、それに対処するのが先だ。こいつはなんだ?EGOの新兵器か?」
エミス「地縛民が召喚した兵器みたいです。能力で生み出した石像かもしれません」
ゲイン「地縛民?」
それはゲインには馴染みのない言葉だ。彼のいた世界にはそのような民族は存在していなかった。
ゲイン「ん?…そうか、なるほど」
なにかひとりで会話してる様子のゲイン。
ゲイン「大体わかった。こいつを倒し、すぐに先へ向かう!」
構えるゲイン。
アマービレ「…」
アマービレは翼をはためかせる。
バサッ!バサッ!
その翼から再び粉が舞い散りあたりに拡散する。
ゲイン「なんだこの粉は?」
エミス「まずい!この粉を吸ったらにろくさんたちのように眠ってしまいます!」
ゲイン「人体に作用する幻惑効果のある粉か…」
ゲインの周囲を覆う粉。だが…
ゲイン「ん?」
ゲインは一向に眠くならない。
エミス「あなたも効かないんですか?」
ゲイン「そうみたいだな。これも死にぞこなったおかげか。こいつがな」
エミス「これなら戦えますね。でも問題は空にいるあいつにどうやって攻撃するか…」
ゲイン「それならいくらでもやりようはある!」
バッ!
右腕を前へと突き出すゲイン。
ゲイン「轟迅弾!!」
ボン!!
アーヴァヘイムの碗部ユニットが勢いよく射出される。射出された腕部はアマービレに向かって一直線に飛んでいく。
ガキン!
アマービレの羽に直撃する腕部。
アマービレ「…」
その一撃によりアマービレは態勢を崩す。
ガン!
射出された腕部がゲインの右腕に再び装着される。
ゲイン「硬いな。この程度では大したダメージは与えられんか」
エミス「僕もなにか力になれれば…」
敵が空中にいるのでは、大剣しか持たないエミスにはなす術がない。
ゲイン「適材適所だ。お前にはお前の為すべきことがある。そこで寝ている2人を守れ」
エミス「わかりました!」
アマービレ「……」
アマービレは態勢を立て直すとその翼を激しくはためかせる。
バサッ!バサッ!
アマービレの翼から発する風が次第に強くなっていく。
アマービレ「ギュォォ!!」
口を大きく開き叫ぶアマービレ。それに呼応するように風がゲインとエミスを狙うかのように吹きすさぶ。
ビュォォ!!
エミス「くっ!」
ゲイン「これは!」
ダン!
地面に打ち付けられる2人。
エミス「体が…うごかない」
ゲイン「立ち上がることもできないか…くぅ!」
あまりの強風にどんなに体に力を入れてもその場から身動き一つできない2人。
アマービレ「ギュォォ!!」
シュゥゥ!!
アマービレの口元に風が渦巻く。
ゲイン「風を圧縮して撃つつもりか」
エミス「この状況じゃなにもできない!どうすれば…」
ゲイン「…仕方がない。へレティス6!」
「かしこまりましたの」
シュン!
エミスとゲインの前に突如白髪の少女が現れる。
エミス「え?だ、だれですか?」
ティスシス「私はティスシス。そこにひれ伏しているゲインのパートナーですの」
エミス「パートナー?」
ティスシス「はい!公私ともにですの!」
その少女はこの暴風の中で平然にその場に立っている。というか少し浮かんでいる。
ゲイン「御託はいい!」
ティスシス「久々の登場だというのに冷たいですのねゲイン。でもゲインがこうして私の前にひれ伏しているのを見るのはなんだかいい気分ですの」
ゲイン「あいかわらず調子が狂うな…」
エミス(なんだろう…ゲインさんの印象がだいぶ変わってしまった気がする)
ティスシス「それで私はあの鳥の石像をどうにかすればいいんですの?」
ゲイン「そういうことだ。俺たちはこの風で動くことすらままならない。頼むぞ」
ティスシス「わかりましたの」
フワッ
ティスシスは上空へと浮かんでいく。アマービレの眼前に立ちはだかるティスシス。
ティスシス「いきますの」
どこからともなく取り出した日本刀風の長刀を構えるティスシス。
アマービレ「…」
アマービレはその口をティスシスへと向ける。
バシュゥゥ!!
アマービレの口から放たれる圧縮された空気の弾。
バシン!!
だがそれはティスシスの前に壁でもあるかのように弾かれる。
ティスシス「こちらの番ですの」
長刀をアマービレへと振り下ろすティスシス。
ガキン!
ティスシス「硬い…ですのね」
アマービレ「…」
ティスシスの攻撃にびくともしないアマービレ。
ティスシス「でしたら少し本気で行きますの」
ジャキ!
長刀の刃を上に向けアマービレに向かってその剣先を向ける。
ティスシス「面でダメなら点で行きますの」
ブン!
長刀を槍のように突き出すティスシス。
ズッ!
アマービレの羽に突き刺さる剣。
ティスシス「次々いきますの」
ザク!ザク!
アマービレに何度も剣を突き刺すティスシス。
アマービレ「…」
ザク!
アマービレの羽に剣が突き刺さった瞬間、その羽を勢いよくはばたかせるアマービレ。
ガキン!
その衝撃でティスシスの長刀が折れる。
ティスシス「この程度の攻撃では効果がありませんのね。では!」
フワッ!
軽やかに宙を舞うティスシス。そのままアマービレの上に周る。
ティスシス「これならどうですの?」
アマービレへと右手をかざすティスシス。
グググ!!
ティスシスの右手に押されるようにアマービレの体が徐々に下がっていく。
ティスシス「この世界で得た能力。これも使いようですの」
ドドドド!!
ティスシスに押されるように地面へと降下していくアマービレ。ティスシスもアマービレと距離を保ちながら地面へと落下していく。
ドン!
地面へと打ち付けられるアマービレ。
ティスシス「後はまかせましたの」
ゲイン「上出来だ」
エミス「行きます!」
それぞれに武器を構える2人。
ゲイン「轟覇砲(ごうはほう)!!」
エミス「レコードブレイカー!」
バゴォン!!
2人の攻撃がアマービレに撃ち込まれる。
エミス「どうですか?」
ゲイン「まだだ!」
アマービレ「…」
アマービレはその体を起き上がらせる。
ゲイン「しぶとい奴だ」
ティスシス「どうしますのゲイン?このまままた飛ばれればこちらは…」
ゲイン「そうはさせん!リミット解除!」
アマービレ「……」
地面を削りながら翼を大きく広げるアマービレ。辺り一面に土埃が舞い上がる。
エミス「くっ!」
ゲイン「奴の姿が見えん」
土埃がやんだと思うと、そこにはもうアマービレの姿はなかった。
ゲイン「逃がしたか」
ティスシス「どこかにとんでいったようですの」
ゲイン「まぁいい。俺たちの目的はこいつではない。本来の目的に戻るぞ」
ティスシス「わかりましたの」
シュン!
姿を消すティスシス。
エミス「あのゲインさん!」
ゲイン「なんだ?」
エミス「あなたもEGOと戦っているんですか?」
ゲイン「…お前たちと道が交わればまた逢うこともあるだろう。お前は、お前たちは己の為すべきことをしろ」
エミス「わかりました…。また逢いましょう」
その場を後にするゲイン。レムリア大陸のいずこかへ彼は去っていった。
エミス「にろくさんと結利さんの回復をまって僕もウルズさんたちの後を追わないと」
to be continued
最終更新:2019年08月13日 16:14