ゴォォォ…
上空に浮かぶ巨大な天使の石像メハネス・セオス。
地縛民「おぉ…これが
ニコロ様と
ディック様が協力して生み出された我らの神」
地縛民「なんと神々しい…」
地縛民たちはその姿に目を奪われ、他のものが目に入らないほどに惹きつけられている。
ジョルジュ「素晴らしい…」
ニーノロータ「我が命が尽きる前にこの瞬間を目にすることができるとは感嘆なり」
モリコーネ「我らを救ってくだされ。神よ!」
ジョルジュたちも他の地縛民たちと同じく猛酔している様子だ。
ツバメ「地縛民たちの様子…なにかおかしいわ」
にろく「まるでなにかの術にでもかけられているような…」
メハネス・セオスを崇め、両手を合わせ拝むように佇む地縛民たち。その目はメハネス・セオス以外のものは映ってはいないかのようだ。
ニコロ「これが偉大なる神。地縛民を救い、導く…いや違うな。地縛民だけではない!この星を導く神!地縛神メハネス・セオスだ!」
十也「あいつだけは他の地縛民と違う…」
ウルズ「ならあいつがあの地縛神とかいうやつを動かしてるってことか」
エミス「でしょうね…でも」
ニコロと対峙したことがある
エミスには
ニコロの強力な力が目に浮かぶ。
エミス「あの
ニコロとかいう方はかなり強い能力を持っています。僕たちで勝てるかどうか…」
弱気になる
エミス。
昴「な~に弱気になっているのさ」
きゅっぱ「心配するな
エミス」
結利「そうだよ。いままで私たちは何度も強敵と戦ってきた」
ツバメ「そうよ。相手がどれだけ強大であろうと私たちは引くわけにはいかないわ」
エミス「みなさん…」
ニコロ「覚悟は決まったかい?地縛神の礎となる覚悟は」
十也たちに問いかける
ニコロ。
十也「あぁ。覚悟は決まった!」
ニコロ「そうか。なら…」
十也「だがそれはやられる覚悟じゃない!俺たちは!」
ジャキ!
各々に武器を構える一同。
十也「お前と地縛神に俺たちは屈しない!いくぞみんな!」
ニコロ「無駄なあがきだ。その思い上がった考えを僕が砕いてあげよう!」
右手を地面に向け、突き出す
ニコロ。
ニコロ「『縛懐(ばくかい)』!」
ドドドド!!
ニコロの右手から衝撃が地面を伝い、十也たちの足元を崩壊させていく。
ボゴッ!ボゴッ!
十也たちの足元の地面が崩れていく。
昴「うわっ!」
きゅっぱ「足が!」
突然の事態にバランスを崩す一同。
ツバメ「気を付けて!奴は複数の能力を使う。今の右手の破壊能力と左手で触れた能力を無効化する能力。それに相手の思考を読む能力よ!」
ウルズ「そんなの反則だ!」
にろく「複数の能力だと!そんなことがありえるのか…」
エミス「現に僕と十也さん、ツバメさんは見ています」
ゲイン「複数の能力…なにかからくりがあるはずだ」
ティスシス「でしたら私が!」
宙に浮いているティスシスには足場の崩壊は関係ない。長刀を構え
ニコロへと切りかかるティスシス。
ニコロ「レーヴェンズの生き残りか。おまえごときに僕は倒せない」
ダン!!
ドドドド!!
地面から無数の針が生えてくる。ティスシスに向かって針が襲い掛かる。
ガキン!
ティスシスの目の前で見えない壁に阻まれる針。
ティスシス「私には当たりませんの」
ニコロ「それはどうかな?」
グググ!!
ティスシス「うっ!」
ボッ!
ティスシスの表面の壁が針に押されるようにティスシスごと吹き飛ばされていく。
ニコロ「お前の能力は
モリコーネから聞いている。お前の発する斥力よりも強い力ならば防げはしない」
ティスシス「そのとおりですの。でも針は私の壁を貫通しませんの。どれだけ私を吹き飛ばそうとも…」
ドン!
何かにぶつかるティスシス。
ティスシス「なんですの?」
後ろを振り向くティスシス。次の瞬間…
ドボン!
ティスシス「あっ…」
メハネス・セオスの下半身に取り込まれるティスシス。ティスシスが吹き飛ばされた先はメハネス・セオスの下半身だった。
ニコロ「斥力の力ごときでは私のメハネス・セオスの力の前には無力だ」
ゲイン「へレティス6!」
十也「ティスシス!」
にろく「あいつも吸収されてしまった」
きゅっぱ「まずいね。こいつは…」
ニコロ「さて残るは君たちだ」
グッ!
バシュゥゥ!!
ニコロの右足から無数の綱が放出される。それは十字に張り巡らされ十也たちを取り囲む。
バサッ!
十也たちへ覆い被さる網。網に動きを阻害される一同。
ニコロ「これで身動きは取れまい。このまま君たちも地縛神の一部となってもらう」
十也「なんなんだ地縛神って?」
網に捕われながらもなんとか脱出しようとする十也。だがそれは叶わない。
ニコロ「君たちはこれからその一部となるのだから教えてやろう。もうそれを知ってもどうすることもできはしないがね」
結利「なんでこんなことを…」
ニコロ「なんでだと?お前たちにはわかるまい。僕の…私の数百年もの想いを…」
ゲイン「数百年の想いだと?」
ニコロ「そう。私は他の地縛民とは比べ物にはならないほどの年月を待ちわびた。この時が来るのを!」
ツバメ「どういう意味なの…」
ニコロ「地縛神の贄となるお前たちに冥土の土産として話してやろう。僕の…私の物語を」
~~
今からはるか昔、
シャカイナとメサイアたちの戦いはメサイアたちの勝利により幕を閉じた。
それからメサイアたちは各々の道を進んでいくことを決めた。
メサイア「
サフォー。そなたは彼らとともにいくのだな」
サフォー「えぇ」
サフォーと呼ばれる女性。彼女もメサイアと共に
シャカイナと戦った一人だ。
サフォー「シャカイナを神と崇めていた彼らはピエタ帝国で迫害されるでしょう」
シャカイナの降臨に惹かれた彼ら…シャカイナ亡き今彼らがこの国にいれば待つのは悲惨な未来。
サフォー「その信仰する存在がいなくなり彼らは路頭に迷っているわ。だれかが彼らの支えにならないといけない。それが
シャカイナを倒した私たちの責任でもあるわ」
メサイア「その道は険しいぞ」
サフォー「わかっているわ。それでも私はやってみせるわ」
メサイア「そうか。そなたが決めたことならば我も止めはしない」
サフォー「ありがとうメサイア。元気でね」
メサイア「あぁ」
メサイアと別れる
サフォー。
サフォーは彼らを連れピエタ帝国を後にする。
グリフ大陸のノワール地区を転々としながら
サフォーと彼らは日々を過ごす。
長い年月を各地を転々としながら遊牧民のように過ごす
サフォー達。その生活にも慣れた彼女たちだが長い年月を生きた人間は老いを重ねる。生命の終わりには逆らえない。
サフォー「ごほっごほっ…」
せき込む
サフォー。彼らの中で族長と呼ばれる人物が
サフォーを心配し看病している。
族長「
サフォー様。大丈夫ですか」
サフォー「えぇ。大丈夫よ…」
年を重ねた
サフォーはもうその寿命が迫っていた。そのことは本人が一番にわかっている。
サフォー「あなたたちはこれからも次の命を育みなさい。そうして次の世代につなげていけばあなたたちの歴史は語り継がれる。この地に生きる者として」
族長「
サフォー様…」
サフォー「もう私は長くはない…。あなたたちの未来に栄光があらんことを」
族長「なにか我らにできることがあればなんなりとお申し付けください!
サフォー様のためならば!」
サフォー「…そうね。できることならあなたたちの未来を…見届けたかったわ」
族長「
サフォー様…。あなたの意志は私の孫が引き継ぎます。必ずや!」
族長の脇にひょっこりと立つ少年。
少年「…」
サフォー「頼むわ…最後に私たちの未来を紡ぐその子の顔を…」
族長「はい」
少年が
サフォーの隣へと歩む。
サフォー「あぁ…この子が私たちの未来を…」
少年の顔に触れる
サフォー。
キュィィン!
ガクッ!
意識を失ったかのように倒れる
サフォー。
族長「
サフォー様!」
少年「えっ…これは…」
倒れる
サフォーの姿が自分の目に映っている。
少年「まさか…!」
自身の手足を見るとそれは子供の体。
サフォーはこの事態を把握する。
少年(
サフォー)(私がこの子の肉体に意識を転移したというの…これが私の力…)
族長「
サフォー様が亡くなられた…これからは我らが
サフォー様の導きを成す!いくぞ我が孫よ!」
少年(
サフォー)「はい。おじいさま(この力があれば私は肉体の寿命…人間の生命の限界を超越できる。永劫に民の生末をこの目で見届けることも導くことも…)」
それから数十年後。少年は成長し新たなる族長となり民を導く存在へとなる。そしてさらに時は立ち族長となった少年もその命の灯が尽きようとしていた。
族長(
サフォー)「これからの民を導いていくのはおまえだ」
新族長「族長…」
族長(
サフォー)「最後にお前の顔を…」
新族長「はい…」
スッ!
新族長の顔に触れる族長。
ガクッ!
族長は意識を失い倒れる。
新族長(
サフォー)「新たな肉体。素晴らしい。私の能力もわかってきたぞ。命が危機に瀕した時、対象に触れることで触れた対象にその意識を移すことができる。そして…」
ボォォ!
手から炎を出す新族長。
新族長(
サフォー)「その体の持つ能力も使用することができる。これが私の力。私は民を守るこの力で!」
それからさらに時は流れ数百年の時が立つ。放浪する彼らはいつしか地縛民と呼ばれるようになる。神であるシャカイナが降臨した地に縛られし民。それが彼ら地縛民。
地縛民と呼ばれるようになった頃から、彼らの神に対する想いも以前よりも大きなものとなっていった。その一つが神の復活のための生贄。強力な力を持つものを生贄にささげることで神への供物とする。
地縛民「今年の生贄は族長の息子だそうだ」
地縛民「ならばさぞ強力な力をもっていよう。神への供物にふさわしい」
生贄となった族長の息子は
シャカイナの搭地下の儀式の間へと通される。
~
シャカイナの搭地下・儀式の間~
儀式の間には黒いローブを身に纏った人物が族長の息子を待ち受けていた。
黒ローブの地縛民「そなたが今回の生贄か」
族長の息子「はい。我らが神の再臨のためこの命を捧げます」
黒ローブの地縛民「よい心がけだ。では生贄の儀式を執り行う」
族長の息子「はい」
スッ!
黒ローブの地縛民が族長の息子の顔に手を触れる。
キュィィン!
ガクッ!
黒ローブの地縛民がその場に倒れる。
族長の息子「なかなかいきのいい体だな」
族長の息子が自分の体を確かめるようにその体を動かす。だがそれはもう族長の息子ではない。その身に宿る魂は別者。
族長の息子(
サフォー)「さて…」
黒ローブの地縛民からローブを剥ぎ、その身にローブを着る
サフォー。
族長の息子(
サフォー)「前の体は有効活用させてもらう」
その場に倒れる地縛民の体を持ち上げる
サフォー。
サフォーは地縛民の体を担ぎ、儀式の間の奥へと進んでいく。するとそこには巨大な天使の石像が鎮座していた。
族長の息子(
サフォー)「死しても我が民の命は無駄にはならない。地縛神の糧になれ」
地縛民の体が石像の下半身に吸い込まれていく。
族長の息子(
サフォー)「このメハネス・セオスは民の希望。数多の能力を用いて創造した我らの神。この神が目覚めたとき、我らの…私の願いは果たされる」
数百年の時を体を乗り換え生き続けてきた
サフォー。それは体を乗り換えただけ、能力を使用できたことを意味する。様々な能力を用い、彼女は人造神を創り出した。それに付随する地縛征獣をも。
族長の息子(
サフォー)「焦る必要はない。私の寿命は無限だ。神を再臨させる時…その時を首を長くして待つのみ」
こうして
サフォーは生贄の儀式という形で体を乗り換えメハネス・セオスを強化していき、その体も乗り換えていった。そして今から数十年前、その時は訪れる。
スッ!
生贄の少年に手を当て体を乗っ取る
サフォー。
ニコロ(
サフォー)「これは…!」
その体を手に入れた瞬間、彼女はその体がもつ能力を理解した。
ニコロ(
サフォー)「この力があれば、メハネス・セオスを完全なるものにすることができる!ついに…私は手に入れた!!」
それからの生贄の儀式は有様が変わる。黒ローブを纏った
ニコロ(
サフォー)が生贄となるものを向かい入れる。
ニコロ(
サフォー)「君の能力は?」
地縛民「私の能力は『縛壊』。この右手で触れたものすべてを破壊する能力です。」
ニコロ(
サフォー)「そうか。では…」
ザシュ!
地縛民の右腕を切り落とす
ニコロ。
地縛民「うわぁぁ…!な、なにを…」
ニコロ(
サフォー)「君は用済みだ。神の贄となるがいい」
地縛民「えっ…」
フォン!
地縛民を光が照らす。
地縛民「あ…あぁ…」
光に吸い込まれるようにメハネス・セオスに吸収される地縛民。その場には彼の右手だけが残る。
ニコロ(
サフォー)「さて試してみるか…」
自身の右腕を切り落とし、先ほどの地縛民の右腕を移植する
ニコロ。
ニコロ(
サフォー)「右腕も違和感がなくなってきたな。試してみるか『縛壊』」
地面に向けて右手を当てる
サフォー。
ドゴォン!
砕け散る大地。
ニコロ(
サフォー)「実験は成功だ。これならば生贄の儀も無駄にはならない。この肉体の能力『縛想』は神を目覚めさせるのに不可欠な力。だが体を部分的に改造していけば他の能力も得ることができる。生贄の儀を用いてこの体を強力なものに!」
そして時代は今この時に戻る。
~~
ニコロ(
サフォー)「そして私は地縛民強硬派を組織し、メハネス・セオスを起動させるためにディスコネクトを世界中に展開。世界中の負念を『縛想』で集めメハネス・セオスに流し込んだ」
ツバメ「負念…負の感情」
ニコロ(
サフォー)「そうだ。神は人々の恐怖、恐れ、救いを求める感情に呼応し目覚める。だからこそEGOには感謝したいところだ」
結利「EGO?なんで?」
きゅっぱ「まさか…ちっ!そういうことか!」
ウルズ「恐怖…EGOによる世界中への武力行使が人々の感情をおまえの望む方向に向けたってことか」
ニコロ(
サフォー)「そうだ。おかげで地縛神は起動できたのだ」
昴「そんな偶然を利用して…なんて奴だい」
ニコロ(
サフォー)「偶然をつかみ取るのは必然。私は数百年の時を生きている。お前たちとは年季が違う」
にろく「メサイアが生きていた時代から生きていたなんて信じがたいが…」
十也「複数の能力が使えるなんて」
エミス「そのことをわざわざ話すということはそれだけ自身があるということですね」
ゲイン「そういうことだ」
ニコロ(
サフォー)「身動きが封じられたお前たちになすすべはない。おとなしく…」
ゴォォォ!!
to be continued
最終更新:2020年04月18日 23:19