~
シャカイナの搭前~
サフォー「あなたたちは勘違いをしているのではないですか?」
メハネス・セオスの中から聞こえるサフォーの声。
ディック「なにが勘違いだ!」
サフォー「私は地縛民だけでなくこの星に住まう全ての人類を救済しようというのですよ」
ゲイン「救済か…引っかかる物言いだな」
サフォー「なにも勘繰る必要はありません。私の救済は世界を平和に導くもの」
十也「ならお前はどうやって平和をもたらすきなんだ?」
サフォー「世界の全ての武力を私と眷属が破壊する」
アポロン「それは力による統治と変わらない」
サフォー「いいえ。そうではありません。それが一個人や組織で行われることならば人々は恐怖を覚えるでしょう」
エミス「どういう意味ですか?」
サフォー「これは神による審判。救いを求める人々への救済を行うのです」
そのサフォーの声からは微塵も迷いや嘘は感じられない。
十也「狂っている…」
アポロン「本当に神にでもなったつもりか…」
サフォー「つもりではありません。私が神なのです。神の愛は平等に与えられるのです。すべての人類に救済を」
ディック「なんなんだよいったい!さっきまでとまるで様子が違う」
アポロン「奴の言っていた太極の因子の影響なのかもしれん」
虚ろながらも太極の因子の力を感じるアポロン。
ゲイン「人の心をも変えてしまう力…だとすれば恐ろしいものだ」
サフォー「神の加護を否定する愚かな者たちよ。あなたたちには神罰を与えましょう」
ディック「地縛民のみんなをお前の支配から解放する!」
十也「それは力による支配と変わらない!お前の目を覚まさせてやる!『ブラスト・リンカー』!」
鎧を纏う十也。
エミス「十也さん!援護します!」
ゲイン「お前の望む世界はまやかしだ。虚構の神による統治などディストピアでしかない」
サフォー「神の世界を受け入れられない者たちには裁きを」
バッ!
両掌を開き十本の指を十也たちへ向けるメハネス・セオス。
サフォー「『プリオミーレ』」
バシュン!
十本の指から放たれる光の弾。
ドシュン!ドシュン!
地面を砕きながら、十也たちに向かって次々と放たれる光の弾。
アポロン「真理を持って、我人事を全うす!森羅万象の一幕を紡ぎださん!『パルティシオン=サルバロール』!大地よ!」
アポロンのタクトに応じるように地面が隆起する。
ディック「おれもいくぜ!『土固賽(トゥグゥサイ)』」
アポロン「合わせるぞディック」
ボコココ!!
地面から隆起した土が十也たちの目に巨大な壁として形成される。
ボボボボ!!
巨大な土の壁に撃ち込まれる光の弾。
サフォー「神の裁きを防ぐとは愚かな」
十也「こんどはこっちの番だ!ブレオナク!」
槍を構える十也。
エミス「DE(ディス・エクス)ブレイカー」
背中に背負った黒い長剣を構えるエミス。
ディック「
リョウガ!」
リョウガ「おう!」
双剣を構えるリョウガ。
アポロン「『パルティシオン=サルバロール』!風よ!」
体が浮く3人。3人は武器を構えメハネス・セオスへと空を飛びながら突撃する。
サフォー「神に歯向かうとは…」
ギン!!
十也「なんだ!?」
メハネス・セオスの前に見えない壁があるかのように攻撃を阻まれる3人。
エミス「攻撃が通らない!」
リョウガ「ちっ!バリアか!だったら!」
グッ!
双剣に力を籠めるリョウガ。
リョウガ「はぁぁ!」
双剣をバリアに突き刺すリョウガ。
ジジジジ!!
双剣を突き刺した箇所にバリアの穴が開く。
リョウガ「いまだ!」
エミス「スラッシュ・ロアー!」
エミスの鎧に装着されたユニットが粒子の刃を展開し、ブーメランのように飛んでいく。リョウガが造ったバリアの抜け穴をすり抜けメハネス・セオスへと突き刺さるスラッシュ・ロアー。
ザシュ!
だがあまりの巨体の石像であるメハネス・セオスには蚊に刺された程度のダメージ。
サフォー「神の障壁を超えるとは驚きましたが、無意味な行為でしたね」
十也「にやりっ!」
リョウガ「そうでもないさ」
エミス「やりました!これで!」
グッ!
メハネス・セオスの下半身からなにかが飛び出す。
ボン!
ティスシス「ありがとうございますの」
サフォー「まさか最初から彼女が狙いだったのか」
エミス「そういうことです」
ゲイン「へレティス6…」
ティスシスが無事で安堵するゲイン。
アポロン「奴の障壁を破壊せねば勝機はない」
ゲイン「へレティス6!頼むぞ!」
ティスシス「わかりましたの!」
ダッ!
上空へと飛ぶティスシス。メハネス・セオスの眼前に立つティスシス。
サフォー「やらせはしません」
両手をティスシスへ向けるメハネス・セオス。
エミス「スラッシュ・ロアー!」
エミスの声に応じるように粒子の刃を回転させながらメハネス・セオスの指に突き刺さるハウリング・ユニット。
サフォー「邪魔を…」
ティスシス「もらいましたの!」
どこからともなく取り出した日本刀風の長剣を構えるティスシス。
ズン!
メハネス・セオスの胴体に突き刺さるティスシスの長剣。
ビキキキ!!
その長剣はメハネス・セオスの中にある何かを狙いすましたように捉えた。長剣が突き刺さり、ひびが入るその物体。
パリン!
メハネス・セオスを覆うバリアが砕け散る。
十也「やった!」
アポロン「これで奴を覆う障壁は消えた」
サフォー「なぜだ…なんで」
様子のおかしいサフォー。
ディック「なんだ?」
サフォー「私を否定するのだ。私は民の安寧を求めただけなのに。縋るものを失い途方に暮れ、行く当てもない彼らの支えになろうと身を粉にしてきた私は…間違っていたというのか」
アポロン「ソナタは長く生き過ぎたのだな」
サフォー「それは彼らが…地縛民が迫害されない未来を掴むため…」
ディック「それがお前の真意なら…」
スゥゥ!!
息を大きく吸うディック。
ディック「サフォー!もうお前が縛られる必要はないんだ!」
サフォー「なにを…」
ディック「お前が行ってきた生贄の儀は到底俺には許せるものではない…」
リョウガ「ディック…」
ディック「だけどやり方はどうであれお前は地縛民のことを思って行動してきた。そんなお前を俺は尊敬するよ」
サフォー「ディック…そなたに託してもよいのか」
ディック「地縛民は…俺たちは自分の足で歩いて行ける!もう楽になれサフォー!地縛民の未来は俺が…俺たちが紡ぐ」
サフォー「私は神を造り彼らを導くことこそが最善だと信じて進んできた。だが…」
ディックを見据えるメハネス・セオス。
サフォー「もう私が…彼らを導く必要はないのかもしれないな。そなたのような存在が現れたのなら…彼らの未来を託しても…」
ディック「サフォー…」
キュィィン!!
メハネス・セオスの中の何かが光り輝く。
サフォー「ぐっ!」
十也「なんだ!?」
サフォー「わたしは…神。世界を…」
ゲイン「また奴の様子がおかしいぞ」
ティスシス「これが太極の因子ですの…」
ディック「そんな…せっかく分かり合えると思ったのに…」
サフォー「ディック…」
ディック「サフォー!」
サフォー「あなたに頼むわ。私を…メハネス・セオスを倒して…」
ディック「それがお前の望みか」
サフォー「もう…わたしの意識はもたない…『慈愛の嫉魚』に飲まれる…頼んだわディック…」
ブン!
メハネス・セオスの目が光る。
サフォー「神の裁きを!」
バサッ!
背中の翼をはためかせるメハネス・セオス。
アポロン「もう彼女の意思はない。この巨像に飲まれたのだな」
ディック「あぁ…サフォー。お前の意思、願いは俺が継ぐ!地縛民たちは必ず俺が!」
グッ!
拳を握るディック。
ティスシス「あの巨体をどうやって倒しますの?」
いつの間にかディックの横にふわふわと佇むティスシス。
ディック「う、う~ん。そういわれると…」
ゲイン「バリアは破壊したがあの巨体を倒す方法か…」
アポロン「それならば勝機はある」
十也「聞かせてくれアポロン!」
アポロン「先ほどのティスシスの攻撃でバリアが破壊されたように奴にはその体を動かすコアがあるはず。そこを突けば倒せるはずだ」
十也「なるほど!わかったいくぞ!」
エミス「待ってください十也さん。コアの位置がわかりませんよ!」
十也「あっ!そういえば!」
リョウガ「コアの位置がわからなければ倒しようがないってことか」
アポロン「その点は問題ない」
スッ!
メハネス・セオスの頭部を指さすアポロン。
アポロン「あそこに奴のコアがある…はずだ」
ディック「勘かよ!」
アポロン「いいや違う…だがなんと形容していいのか」
アポロンにもわからない感情。だが彼には確実にメハネス・セオスのコア『慈愛の嫉魚』はそこにあると確信できるのだ。
ゲイン「眉唾じゃなければいいがな」
十也「俺はアポロンを信じる!」
リョウガ「他にないならやるしかないか」
エミス「ですね」
ティスシス「じゃあ目標は決まりですの」
ディック「メハネス・セオスの頭部!そこをぶっ壊す!」
アポロン「信じてくれて礼を言う。ではいく!『パルティシオン=サルバロール』!」
フォン!
風に乗り体が浮かぶ一同。
ディック「メハネス・セオスを倒し、サフォーを開放する!いくぞ!」
ディックの掛け声と同時にメハネス・セオスへと飛ぶ一同。
十也「これがラストバトルだ!いくぞ地縛神!」
サフォー「神に抗う無謀さをその命をもって償いなさい」
フォン!
メハネス・セオスの羽の一枚一枚が変形していく。
ガシュン!
ゲイン「石像か」
石像に変形する羽。
リョウガ「神の尖兵ってか」
エミス「露払いは僕が!」
バシュゥゥン!!
ブラストロアーの両肩、両下腿部に装着されているスラッシュロアーから展開される粒子の奔流が光の翼となる。
エミス「スラッシュ・ロアー!」
ボボボボ!!
光の翼で次々と石像を破壊していくエミス。
ガキン!
DEブレイカーに装着されるスラッシュ・ロアー。
エミス「DER(ディス・エクス・ロアー)!粒子コントロール!」
キュィィン!!
粒子の光がDERを包み込む。
エミス「最大出力!!」
ヴン!
粒子の光が刀身の先端から溢れ出る。溢れ出た粒子は巨大なエネルギーの刃を形成する。
エミス「はぁぁ!!」
ドドドド!!
巨大な粒子の剣で次々と石像を薙ぎ払っていくエミス。
エミス「今のうちに!」
エミスを残し、メハネス・セオスの頭部に向かい空を飛ぶ十也たち。
バッ!
その前にまた石像たちが立ちはだかる。
ゲイン「ここは俺たちが」
ティスシス「引き受けますの」
バッ!
両腕を交差するゲイン。
キュィィィン!!
ゲインの腕部ユニットに装着されている球体が光り輝く。
ゲイン「リミット解除!『粒子光弾』!」
ババババ!!
手から放たれる粒子の弾が周囲の石像に放たれる。
ティスシス「しんがりはまかせてもらいますの」
ゲイン「意味が違うぞ。勉強しなおせ」
ティスシス「あら、そうでしたの?」
軽口を叩きながら石像を倒していくゲインとティスシス。二人に石像たちを任せ、先へと進む十也、アポロン、ディック、リョウガ。そして…
十也「メハネス・セオスの頭部…」
ディック「たどり着いたぜ」
アポロン「ここにあるはずだ」
リョウガ「こいつのコアか」
サフォー「神の遣いたちをすり抜けここまでくるとは…」
ディック「お前を…止める!」
サフォー「それは叶わぬ妄想。思い上がったその思い。糺してあげましょう」
ボゴン!
メハネス・セオスの頭部から現れる石像。それは先ほどまでの石像とは違い、屈強な姿をしている。明らかに強大な力を持っていそうだ。
サフォー「このセオスがあなたたちを葬る」
セオス「…」
セオスと呼ばれる石像はその右手に持つ槍を十也たちに振るう。
ブン!
十也「ぐっ!なんてパワーだ!」
ブレオナクで槍を受け止める十也。
サフォー「さぁその命の終わりを受け入れなさい」
ディック「終わりなんて受け入れない。俺たちは未来を掴む!そうだろ!」
リョウガ「そうだ!ディック、見せてやろうぜ俺たちの力を!」
ディック「あぁ!」
バッ!
構えをとるディックとリョウガ。
ディック「はぁ!」
セオスに飛び掛かるディック。
セオス「…」
セオスがそれに反応し攻撃を仕掛ける。
シュン!
姿を消すディック。
リョウガ「こっちだ」
攻撃を仕掛けるリョウガ。
セオス「…」
セオスがリョウガに槍を振るう。
シュン!
リョウガの姿が消える。
サフォー「なにを…」
次々と攻撃をしようとしながら姿を消すを繰り返すディックとリョウガ。
バッ!
姿を現すディックとリョウガ。
ディック「こんなもんか」
セオス「…」
セオスと対峙する二人。
セオスが二人に突撃しようとする。
ゴッ!
何かに体を捕えられるセオス。よく見ると空気で作られた糸がセオスを取り囲むように張り巡らされている。
リョウガ「ふっ!」
リョウガの双剣の柄の下に空気の糸が張り付いている。セオスの周囲を糸を張り巡らすようにディックとリョウガは動いていたのだ。
ディック「『風糸(フォンシェン)』。風を収束させ糸のように操る魔導だ。これだけなら何の意味もなさない。だけど!」
ビッ!
手に持った空気の糸を引くディック。
ビシン!!
周囲に張り巡らさられた空気の糸がセオスを捕える。
セオス「…」
グググ!!
糸に体を拘束され身動きが取れないセオス。
ディック「魔導を交えた象形技!くらえ!」
リョウガ「いくぜ!」
リョウガの双剣とディックの拳が拘束されたセオスを襲う。
ザシュン!!
ディック・リョウガ「果倉部流象形拳『蜘蛛の拘撃(こうげき)』!!」
ピン!
糸を持つ手を放すディック。
ディック「これでフィナーレだ!」
グググ!
パン!
セオスを拘束していた糸が解放され、鞭のように暴れセオスの体を襲う。
バシン!バシン!
次々とセオスの体にたたきつけられる風の糸…いやその重みは鞭と言って差し支えないだろう。
ブン!
最後の一発がセオスに叩きつけられる。
バシィン!
セオス「…」
ビキキ!
ひびが入るセオスの体。
ボコン!
崩壊し石の塵と化すセオス。
サフォー「セオスが…」
ディック「終わりだ!十也!アポロン!あとはたのむ!」
アポロン「任された」
十也「あぁ!」
タクトと槍を構える二人。
サフォー「私を…神を撃つというのか。それがどういうことかわかっているのか?」
アポロン「サフォーよ…『慈愛の嫉魚』に飲まれたそなたを今解放する」
十也「ブレオナク!いくぞ!」
バキン!
メハネス・セオスの頭部が破壊される。
十也「神なんて必要ない!未来を決めるのは自分自身だ!」
アポロン「我が祖先の残した遺恨は断ち切るだけだ」
サフォー「ば…かな」
ゴゴゴゴ!!
メハネス・セオスの体が大地に落ちていく。メハネス・セオスが造り出した石鬼と石像の尖兵たちも消滅していく。
サフォー「これで…解放される…ありがとうディック…アポロン…十也…」
サフォーの魂が天に昇っていく…そんな光景が3人には見えた気がした。
ズン!!
大地に落ちるメハネス・セオス。
アポロン「我らも降りるぞ!」
シュッ!
地面に足を突く3人とリョウガ。
ディック「これで終わったんだな」
アポロン「地縛神が倒れた今、地縛神との戦いは終焉を迎えた」
エミス「みなさん!やったんですね!」
ゲイン「終わったようだな」
ティスシス「やりましたのね」
エミスたちが十也たちの元へ駆け寄ってくる。
十也「あぁ全部終わったんだ」
ディック「これからは俺が地縛民をしっかり引っ張っていかないとな」
新たに決意を固めるディック。
リョウガ「たのむぞディック!」
ディック「あぁ!」
「その必要はない」
十也たちの元に現れる人物。
アポロン「だれだ!?」
「天十也。おまえたちなら必ずここまでやってくれると信じていたぞ」
十也「おまえは!なんで生きている!?」
「この時を待っていた。ついに訪れたこの時!私は勝ったのだ!賭けに!」
高笑いを上げる人物。それは…全ての元凶。この戦いを引き起こした彼はこの時が訪れたのを至福の笑みで向かい入れる…
オウリギン「さぁ時はきた!真の終幕と行こうじゃないか!」
to be continued
最終更新:2020年04月29日 23:12