雨の荒野を抜けると、そこには一面の緑が広がっていた。
大地に根を張る巨木から可憐に咲く小さな花、果ては野菜やら果物やらまでおよそ整合性の欠片もなく様々な植物
が好き放題に茂っている。
誰かが手当たり次第、そこかしこに種を蒔いた―――そんな有様だ。
「お、こりゃ美味そうじゃん!ちょうど腹ペコだったんだよな、オレ」
「よせよ、城之内。冥府の物を食べると地上に戻れなくなるって話があるんだぜ?」
げっ、と城之内は手にした果物を放り投げた。
「城之内、オリオン、二人とも気を抜くな。恐らくはここにも冥府の番人が潜んでいることだろう」
「番人…あの仮面の人や女の子の例からすると、まともな人格は期待できないわね」
「まともな奴が、冥府の番人なんかやらねえだろ」
「まあそうだよね…ん?皆、静かに。何か聴こえない?」
遊戯に促され、一同は口を閉ざして耳を澄ませる。
大地に根を張る巨木から可憐に咲く小さな花、果ては野菜やら果物やらまでおよそ整合性の欠片もなく様々な植物
が好き放題に茂っている。
誰かが手当たり次第、そこかしこに種を蒔いた―――そんな有様だ。
「お、こりゃ美味そうじゃん!ちょうど腹ペコだったんだよな、オレ」
「よせよ、城之内。冥府の物を食べると地上に戻れなくなるって話があるんだぜ?」
げっ、と城之内は手にした果物を放り投げた。
「城之内、オリオン、二人とも気を抜くな。恐らくはここにも冥府の番人が潜んでいることだろう」
「番人…あの仮面の人や女の子の例からすると、まともな人格は期待できないわね」
「まともな奴が、冥府の番人なんかやらねえだろ」
「まあそうだよね…ん?皆、静かに。何か聴こえない?」
遊戯に促され、一同は口を閉ざして耳を澄ませる。
「ラ~ラ~恋心(スウィーツ)…甘い果実(スウィーツ)…ラ~ラ真っ赤な果実(フルーツ)…」
何やら歌を口ずさんでいるような女性の声。どうやらこの先から聴こえてくるようだ。遊戯達は気を引き締めて足を
進めていく。
―――そこには、一人の娘がいた。年の頃は、ミーシャと同じくらいだろう。右手でせっせと種を蒔きつつ、左手で
如雨露で水を撒いている。腰には小さな草刈り鎌を差していた。
「うふ…もっともっと甘く育ってね、私の果実…あら?」
彼女は遊戯達に気付いた。うっすらと微笑み、頭をぺこりと下げる。
「いらっしゃいませ。侵入者の皆様ね?言うまでもなく私は冥府の番人が一人―――<収穫者>と呼ばれているわ。
どうぞよろしく」
番人を名乗りながら、襲いかかってくるような気配がないのが逆に怪しい。遊戯達は警戒し、注意深く観察する。
「…あの、敵同士とはいえ挨拶くらいしない?親しき仲にも礼儀あり、親しくないなら猶更でしょう」
敵に礼儀を説かれた。何故か負けた気分だった。
「ま、いいや…じゃ、さっさとかかってこいよ」
「はい?」
「はい?って…アンタ、番人なんだろ?オレ達と闘うためにここにいるんだろ」
「あら。あなた達、少し勘違いしてるわね。私は別に、闘う気はないわ」
娘はあっさりとそう言った。
「だから、あなた達を止めはしない…先に進みたいなら、さあどうぞ。ここをずっとずっと真っすぐに行けば、我等
の主であるタナトス様がおられる冥王神殿に辿り着けるわ」
「…じゃあ、行くぜ。後からやっぱダメなんて言うなよ」
しかし、娘はその場から動こうともしない。微笑みを浮かべたまま、去っていく遊戯達を見送っていた。どうも釈然
としない気分のまま、歩を進めていく。
―――やがて、前方に一際大きな樹が見えてきた。生っている果実も、それに見合った大きさだ。小さめのスイカと
同じくらいの大きさだろうか?それが見えるだけでも数十個、樹にぶら下がっている。
どこか歪な形の果実は、真っ赤に染まっていた。そう、その果実はまるで―――
「…ねえ…まさか、あれって…」
遊戯は顔面を汗だくにしながら呟く。かたかたと歯が鳴るのを止められない。
「まさか…じゃ、ねえよ。ちくしょう。悪趣味にも程があるぜ」
オリオンも顔を青くしながら、どうにか言葉を絞り出した。ミーシャはもはや声も出せない。レオンティウスも顔を
厳しく引き締めていた。城之内は泡を吹いて気絶していた。
血で真っ赤に染まった無数の果実―――否。それは紛れもなく、人間の生首だった。
苦痛と恐怖に醜く歪み、生前の人間としての尊厳など微塵もない単なる物体として、それは枝に突き刺さっていた。
「―――!くっ!」
背後からの一撃に反応出来たのは、レオンティウスだけだった。首筋に迫っていた鋭い刃を槍で受け止め、力任せ
に押し退ける。
「あら、残念…あと一秒で、何が起こったのかも分からないまま、静かに死ねたのに」
いかに眼前の凄惨な芸術に気を取られていたとはいえ、いつの間にそこまで来ていたのか―――収穫者を名乗る
娘が立っていた。腰に差していた草刈り鎌は、両手でやっと抱えられるほどの大鎌に変化している。
黒ずんだ血がこびり付いたそれで、彼女は一切の躊躇いなく、後ろから首を狙って斬りつけてきたのだ。
彼女の言葉通り、後ほんの少しでも対応が遅れていれば、遊戯達も血塗れの果実と化していたことだろう。
「いい度胸じゃねえか…闘わねえなんて、堂々と大嘘つきやがって」
「嘘なんて言ってないわ。だって私は闘う気なんてなくて、あなた達の首を刈り獲るだけのつもりだったもの」
娘は、悪びれもせずに言ってのけた。
「だから苦しまないように、怖い思いもしないように、油断したところを一瞬ですぱっといく予定だったのに…そう
すれば、手荒な真似なんてしなくてすんだのに…」
けど、しょうがないわね。娘は大鎌を頭上高く掲げた。
「少しだけ、苦しくて怖い思いをしてもらうわ。そして…あなた達の首を貰う」
恍惚の笑みを浮かべ、娘は頬を紅潮させる。
「魂は安らかに眠らせてあげる…でも、身体は死んだら唯の肉塊だもの。別に問題ないわよね?」
「大ありだよ、カワイコちゃん」
ダンッと勢いよく地を踏み付け、オリオンが前に進み出る。
「悪いけど、アンタにやるモンは何もねーよ…アンタの物はアンタの物でいいけど、俺の物は俺の物だ」
強い視線で、睨み付ける。
「遊戯―――お前らは先に行け。俺はこいつを倒してから追いかける」
「オリオン…」
「こうしてる間にも、地上じゃどんどん死人が増えてるかもしれねえんだぜ。だったら全員ここで闘うよりは、一人
だけ残して他は早いとこ先に進んだ方がいいだろ」
オリオンはそう言って、ウインクしてみせた。
「―――ま、ここは海馬のヤローの真似事をしてみるさ」
「うん…頼んだよ、オリオン!城之内くん、起きて!走るよ!」
パンパンと頬を叩くと、やっとこ城之内は正気に戻った。
「―――え?あれ?何だ、おい。オレは何だかとてつもなく恐ろしいモンを見た気がするんだが?」
「いいから走って!ここはオリオンに任せるよ」
「お、おお…頑張れよ、オリオン!」
慌ただしく駆け出していく遊戯達。その中の一人に、言い忘れていた事を一つだけ伝える。
「ミーシャ!折角だから、今ここで言っておくことがある!」
「え?」
ミーシャは振り向き、その言葉を待った。オリオンは少しだけ照れ臭そうに笑い、人差し指を向ける。
「アイラビュー。アイニージュー―――返事は全てが終わってからでいいぜ!」
「なっ…何を言ってるの、バカ!」
ミーシャは顔を真っ赤にして某イタリア赤緑兄弟のBダッシュ的な勢いで走り去っていく。それを呆れたように横目
にして、収穫者はオリオンに向き直った。
「可愛い彼女と青春するのはいいけれど、あなた、死相が思いっきり出てるわよ」
「はっ…おバカちゃんめ。この俺が、こんな所で死ぬほど間抜けに見えるかい?」
「見えます」
「見えるなよ…まあいいさ。さっさと済ませちまおうぜ」
「では逝きましょう…裂いてあげる、挽いてあげる。薙いであげる、剥いであげる。斬ってあげる、刈ってあげる。
飾ってあげる、愛でてあげる―――殺めてあげるわ」
不気味に笑い、大鎌を構える収穫者。
「やってみな。ただし、その時にはテメエは俺に射ち堕とされてるだろうけどな」
どっかで聞いた様なセリフで弓を構えるオリオン。
互いに一歩も引くことなく、死闘は幕を開けた―――!
進めていく。
―――そこには、一人の娘がいた。年の頃は、ミーシャと同じくらいだろう。右手でせっせと種を蒔きつつ、左手で
如雨露で水を撒いている。腰には小さな草刈り鎌を差していた。
「うふ…もっともっと甘く育ってね、私の果実…あら?」
彼女は遊戯達に気付いた。うっすらと微笑み、頭をぺこりと下げる。
「いらっしゃいませ。侵入者の皆様ね?言うまでもなく私は冥府の番人が一人―――<収穫者>と呼ばれているわ。
どうぞよろしく」
番人を名乗りながら、襲いかかってくるような気配がないのが逆に怪しい。遊戯達は警戒し、注意深く観察する。
「…あの、敵同士とはいえ挨拶くらいしない?親しき仲にも礼儀あり、親しくないなら猶更でしょう」
敵に礼儀を説かれた。何故か負けた気分だった。
「ま、いいや…じゃ、さっさとかかってこいよ」
「はい?」
「はい?って…アンタ、番人なんだろ?オレ達と闘うためにここにいるんだろ」
「あら。あなた達、少し勘違いしてるわね。私は別に、闘う気はないわ」
娘はあっさりとそう言った。
「だから、あなた達を止めはしない…先に進みたいなら、さあどうぞ。ここをずっとずっと真っすぐに行けば、我等
の主であるタナトス様がおられる冥王神殿に辿り着けるわ」
「…じゃあ、行くぜ。後からやっぱダメなんて言うなよ」
しかし、娘はその場から動こうともしない。微笑みを浮かべたまま、去っていく遊戯達を見送っていた。どうも釈然
としない気分のまま、歩を進めていく。
―――やがて、前方に一際大きな樹が見えてきた。生っている果実も、それに見合った大きさだ。小さめのスイカと
同じくらいの大きさだろうか?それが見えるだけでも数十個、樹にぶら下がっている。
どこか歪な形の果実は、真っ赤に染まっていた。そう、その果実はまるで―――
「…ねえ…まさか、あれって…」
遊戯は顔面を汗だくにしながら呟く。かたかたと歯が鳴るのを止められない。
「まさか…じゃ、ねえよ。ちくしょう。悪趣味にも程があるぜ」
オリオンも顔を青くしながら、どうにか言葉を絞り出した。ミーシャはもはや声も出せない。レオンティウスも顔を
厳しく引き締めていた。城之内は泡を吹いて気絶していた。
血で真っ赤に染まった無数の果実―――否。それは紛れもなく、人間の生首だった。
苦痛と恐怖に醜く歪み、生前の人間としての尊厳など微塵もない単なる物体として、それは枝に突き刺さっていた。
「―――!くっ!」
背後からの一撃に反応出来たのは、レオンティウスだけだった。首筋に迫っていた鋭い刃を槍で受け止め、力任せ
に押し退ける。
「あら、残念…あと一秒で、何が起こったのかも分からないまま、静かに死ねたのに」
いかに眼前の凄惨な芸術に気を取られていたとはいえ、いつの間にそこまで来ていたのか―――収穫者を名乗る
娘が立っていた。腰に差していた草刈り鎌は、両手でやっと抱えられるほどの大鎌に変化している。
黒ずんだ血がこびり付いたそれで、彼女は一切の躊躇いなく、後ろから首を狙って斬りつけてきたのだ。
彼女の言葉通り、後ほんの少しでも対応が遅れていれば、遊戯達も血塗れの果実と化していたことだろう。
「いい度胸じゃねえか…闘わねえなんて、堂々と大嘘つきやがって」
「嘘なんて言ってないわ。だって私は闘う気なんてなくて、あなた達の首を刈り獲るだけのつもりだったもの」
娘は、悪びれもせずに言ってのけた。
「だから苦しまないように、怖い思いもしないように、油断したところを一瞬ですぱっといく予定だったのに…そう
すれば、手荒な真似なんてしなくてすんだのに…」
けど、しょうがないわね。娘は大鎌を頭上高く掲げた。
「少しだけ、苦しくて怖い思いをしてもらうわ。そして…あなた達の首を貰う」
恍惚の笑みを浮かべ、娘は頬を紅潮させる。
「魂は安らかに眠らせてあげる…でも、身体は死んだら唯の肉塊だもの。別に問題ないわよね?」
「大ありだよ、カワイコちゃん」
ダンッと勢いよく地を踏み付け、オリオンが前に進み出る。
「悪いけど、アンタにやるモンは何もねーよ…アンタの物はアンタの物でいいけど、俺の物は俺の物だ」
強い視線で、睨み付ける。
「遊戯―――お前らは先に行け。俺はこいつを倒してから追いかける」
「オリオン…」
「こうしてる間にも、地上じゃどんどん死人が増えてるかもしれねえんだぜ。だったら全員ここで闘うよりは、一人
だけ残して他は早いとこ先に進んだ方がいいだろ」
オリオンはそう言って、ウインクしてみせた。
「―――ま、ここは海馬のヤローの真似事をしてみるさ」
「うん…頼んだよ、オリオン!城之内くん、起きて!走るよ!」
パンパンと頬を叩くと、やっとこ城之内は正気に戻った。
「―――え?あれ?何だ、おい。オレは何だかとてつもなく恐ろしいモンを見た気がするんだが?」
「いいから走って!ここはオリオンに任せるよ」
「お、おお…頑張れよ、オリオン!」
慌ただしく駆け出していく遊戯達。その中の一人に、言い忘れていた事を一つだけ伝える。
「ミーシャ!折角だから、今ここで言っておくことがある!」
「え?」
ミーシャは振り向き、その言葉を待った。オリオンは少しだけ照れ臭そうに笑い、人差し指を向ける。
「アイラビュー。アイニージュー―――返事は全てが終わってからでいいぜ!」
「なっ…何を言ってるの、バカ!」
ミーシャは顔を真っ赤にして某イタリア赤緑兄弟のBダッシュ的な勢いで走り去っていく。それを呆れたように横目
にして、収穫者はオリオンに向き直った。
「可愛い彼女と青春するのはいいけれど、あなた、死相が思いっきり出てるわよ」
「はっ…おバカちゃんめ。この俺が、こんな所で死ぬほど間抜けに見えるかい?」
「見えます」
「見えるなよ…まあいいさ。さっさと済ませちまおうぜ」
「では逝きましょう…裂いてあげる、挽いてあげる。薙いであげる、剥いであげる。斬ってあげる、刈ってあげる。
飾ってあげる、愛でてあげる―――殺めてあげるわ」
不気味に笑い、大鎌を構える収穫者。
「やってみな。ただし、その時にはテメエは俺に射ち堕とされてるだろうけどな」
どっかで聞いた様なセリフで弓を構えるオリオン。
互いに一歩も引くことなく、死闘は幕を開けた―――!
―――タナトスは、微笑む。
「フム…期セズシテ、一騎打チトナッタネ」
さてどうするか、と顎に手を当ててしばし思考する。
「ヨシ、決メタ」
精神を集中させて、残る番人に思念を送った。すぐに向こうの思念が返ってくる。
<何事かな、我等が王>
<―――タナトス様、どうされました>
<―――タナトス様、どうされました>
<命令ヲ少シ変更スル。小サナ仔ト、星女神ノ巫女ニハ手出シシナクティィ。其ノ二人ハ通シテクレ>
<ふむ…命令なら従いますが、何故に?>
<分かりかねます>
<分かりかねます>
<大シタ事ジャナィヨ。タダ…彼等トハ、少シダケ話シテミタィンダ>
それだけ言って、一方的に思念を打ち切る。そして、一人呟く。
「ソゥ。彼等ニ、話シ相手ニナッテホシィンダ」
そうすれば。
「何カガ、ドゥニカナリソゥナンダ」
タナトスは自分の胸がざわめくのを感じていた。もはやこの感覚は、確信に近い。
運命への絶望感と閉塞感。それは、神であるタナトスにも人間と同じように与えられたものだった。
―――彼等との交わりはきっと、この苦しみから自分を解放してくれる。
タナトスは、そう信じて疑わなかった。
「フム…期セズシテ、一騎打チトナッタネ」
さてどうするか、と顎に手を当ててしばし思考する。
「ヨシ、決メタ」
精神を集中させて、残る番人に思念を送った。すぐに向こうの思念が返ってくる。
<何事かな、我等が王>
<―――タナトス様、どうされました>
<―――タナトス様、どうされました>
<命令ヲ少シ変更スル。小サナ仔ト、星女神ノ巫女ニハ手出シシナクティィ。其ノ二人ハ通シテクレ>
<ふむ…命令なら従いますが、何故に?>
<分かりかねます>
<分かりかねます>
<大シタ事ジャナィヨ。タダ…彼等トハ、少シダケ話シテミタィンダ>
それだけ言って、一方的に思念を打ち切る。そして、一人呟く。
「ソゥ。彼等ニ、話シ相手ニナッテホシィンダ」
そうすれば。
「何カガ、ドゥニカナリソゥナンダ」
タナトスは自分の胸がざわめくのを感じていた。もはやこの感覚は、確信に近い。
運命への絶望感と閉塞感。それは、神であるタナトスにも人間と同じように与えられたものだった。
―――彼等との交わりはきっと、この苦しみから自分を解放してくれる。
タナトスは、そう信じて疑わなかった。
―――遂に辿り着いた、冥王の住まう神殿。その入口で、遊戯達は一人の男と対峙していた。
赤く燃えるような髪に鳶色の瞳。手にした重厚な造りの大剣。鎧に覆われていても隠しきれない、鍛えられた肉体。
「ふ…名乗らせて頂こう。俺もまた冥府の番人に名を連ねる者―――<緋色の騎士>と、今はそう呼ばれている」
刃を突き付けながら、騎士は太い笑みを見せた。己の力量に絶対の自信を持つ者だけが持ち得る、武人の笑みだ。
「こいつは、分かりやすくていいぜ…この世界に来てから初めてかもな、こんな正統派な敵は」
城之内はどことなく嬉しそうだった。はっきり言ってこの時代の連中は変態のオンパレードだったので、敵とはいえ
それなりにまとまな奴がいたというのは、彼にとって喜ばしい事実だったのだろう。
「…緋色の騎士か。冥府にも、お前のような男がいたとはな」
「ふむ…貴様は確か、雷の獅子―――レオンティウスといったか。ふふ…」
よかろう、と騎士は首肯する。
「雷の獅子…貴様に、一騎打ちを申し込む」
「話が早くて助かる。私もそうするつもりだった」
レオンティウスは槍を掲げ、風車のように振り回す。
「聞いての通りだ。私はここで、この男と闘う。キミ達は冥王の元へ急げ」
「…………」
何だろう。この背筋が寒くなるような悪寒は。
遊戯と城之内、そしてミーシャは、まるで逃げるように神殿の中へと入っていった。
残された二人の男は、ニヤリと笑い合う。
「分かっているな、雷の獅子」
「当然だ、緋色の騎士」
二人は、出会った時から解り合っていた。それは、趣味を同じくする者同士の共振と言ってもいい。
「この勝負、勝った方が…!」
「負けた方を…貫く!」
性的な意味で。何故そうなるのかは言うまでもない―――彼等は、いい男なのだから。
いい男同士に、言葉も理屈もいらないのである。
「「いざ、尋常に…勝負!」」
詳細はとても書けない、ある意味最も恐ろしい闘いが始まったのであった…。
赤く燃えるような髪に鳶色の瞳。手にした重厚な造りの大剣。鎧に覆われていても隠しきれない、鍛えられた肉体。
「ふ…名乗らせて頂こう。俺もまた冥府の番人に名を連ねる者―――<緋色の騎士>と、今はそう呼ばれている」
刃を突き付けながら、騎士は太い笑みを見せた。己の力量に絶対の自信を持つ者だけが持ち得る、武人の笑みだ。
「こいつは、分かりやすくていいぜ…この世界に来てから初めてかもな、こんな正統派な敵は」
城之内はどことなく嬉しそうだった。はっきり言ってこの時代の連中は変態のオンパレードだったので、敵とはいえ
それなりにまとまな奴がいたというのは、彼にとって喜ばしい事実だったのだろう。
「…緋色の騎士か。冥府にも、お前のような男がいたとはな」
「ふむ…貴様は確か、雷の獅子―――レオンティウスといったか。ふふ…」
よかろう、と騎士は首肯する。
「雷の獅子…貴様に、一騎打ちを申し込む」
「話が早くて助かる。私もそうするつもりだった」
レオンティウスは槍を掲げ、風車のように振り回す。
「聞いての通りだ。私はここで、この男と闘う。キミ達は冥王の元へ急げ」
「…………」
何だろう。この背筋が寒くなるような悪寒は。
遊戯と城之内、そしてミーシャは、まるで逃げるように神殿の中へと入っていった。
残された二人の男は、ニヤリと笑い合う。
「分かっているな、雷の獅子」
「当然だ、緋色の騎士」
二人は、出会った時から解り合っていた。それは、趣味を同じくする者同士の共振と言ってもいい。
「この勝負、勝った方が…!」
「負けた方を…貫く!」
性的な意味で。何故そうなるのかは言うまでもない―――彼等は、いい男なのだから。
いい男同士に、言葉も理屈もいらないのである。
「「いざ、尋常に…勝負!」」
詳細はとても書けない、ある意味最も恐ろしい闘いが始まったのであった…。