「石田…とらまち」
「トラジっすよ、せんせー…」
ああむかつく。
小学校の頃からこれで何…何百回目だ?
お袋も親父も、なに考えてこんな名前にしやがったんだか。
「……つーことで、何か俺にいいアダ名ないっすか?先輩」
「お前、石田虎侍…だよな。虎で…侍か……こ…じ…」
「おおっ、何か出てきそうっすか?」
「トラ…サムライ…”とらざむらい”とかでどうだ、はは」
「勘弁してくださいよ…ん?”こじ”?」
そのあだ名は勘弁だけど――
いいヒントにはなったっすよ、先輩。
「そうだ、俺の事――これからは”コジロー”って呼んで下さいよ!どうっすか?」
「小次郎ねえ…そいじゃってえと、俺は武蔵か」
「そうっすそうっす、でもいずれ俺の方が強くなりますけどね!」
「言ってろよ、コジロー……一丁やるか!」
「おうっス!」
~そして時代は流れて、8年後~
「センセー、センセー?」
「ん、何だよ…千葉」
上の苗字で呼ぶと、頬がぷくっと膨れる。
そう言えばこいつ、初対面の時からなんかややこしい下の名前で呼べってウルサイんだよな。
呼び方なんか……どうでもいいだろうに。
「先生の名前って、なんて読めばいいの?先生の事、なんて呼んだらいいかわからなくて」
「…いしだとらじ、だが――別に呼び方なんか何でもいいぞ、でもまあ取りあえず”先生”はつけろな」
「石田虎侍……虎、侍……こ…じ…?」
―――おいおい。
「コジロー先生」
自分で言った言葉ににやける――
えと、何だっけ……そうだ。キリノ。
「”コジロー先生”!どうっすか?」
「うん、まあ……お前がいいんなら、それでいいよ、”キリノ”」
そのままにへへ、と満面の笑顔で笑い出す――キリノ。
―――変わった、奴だな。
最初はそんな感じの……馴れ初め、だった。
最終更新:2008年04月28日 09:02