こちらの作品は「Gambling with the Devil!」からの派生作品です。



そして道場についに勝負を決める足音が近づいてきた。。
ガラッ
「んっ?キリノ先輩、ど~してそんなうれしそうな目で俺を見つめるんだ~俺にはミヤミヤというハニーがいr(ry」
「ダン!おまえ、部活の前はしっかりひり出してから来いよっ!おまえのせいで俺の来週の生活が…」
「私の勝ちです、せんせー。」
「……ちっ…、約束は約束だからな。明日はつきあってやるよ。あーあ、ただでさえ腹減ってるっつーのに荷物持ちなんて…(ブツブツ)」

翌日

「せんせー!こっちですこっち!」
「しかしおまえはいつも集合の何分前に来…」
コジローの言葉が止まった。
「いいじゃないっすか。それより、せっかく一日せんせーを独り占めできるんです。さっさと行きましょう。」
「あ、あぁ…。」
コジローにとってキリノは普段の生活の中でももっともと言っていいほど顔を合わす人間だが、私服姿はなかなか新鮮だった。
だから一瞬でもコイツを可愛いと、見とれてしまったのはそのためだと思うことにした。
(コイツもやはり服装なんか褒められるとうれしいんだろうか…)
「なぁキリノ…。おまえの私服、なかなか似合ってんな。」
「!!…そうっすか?実はこれ、ミヤミヤから貰ったヤツなんすよ…。もう着ないからって。
ちょっと大きいけど、オシャレな服ってのをあんまし持ってないんで…テヘヘッ…。だから今日はその買い物っす。」
褒められた服装がもらい物だということを恥ずかしげに、だが正直にいうキリノを見て、逆になお可愛く見えてしまった。
「うっ…、そ、そういうことなら、さすがにプレゼントする金はねーけど、おまえに一番似合うヤツを選ぶの手伝ってやるよ…。」
「♪どーもっす。」

そして二人はファッションのブランドが集まっている、大きな建物の前についた。
「ん~、ここは全体的にちょっと高いからほとんど見るだけになるんすけどいいっすか?」
「今日の俺はおまえの付き人だからな。ご自由にどうぞ。」

中に入るとなるほどそれはコジローにとっては考えられないほどの額の服がショーウインドに並ぶ店ばかりだった…。
「たっけぇな、今時の女子高生ってのは服にこんなに金かけんのかよ。」
「いや、バイトしてないしおこづかいだけじゃ、さすがに高いお店のは無理っすよ~。でも古着屋さんも入っているのでそっちに行くつもりです。」
そう言いながらもキリノは目の保養と称して一つ一つの店のウインドを見ていく。
すると……
横を歩いていたキリノが急に足を止めた。
「んっ?どうした?」
「い、いや…、なんでも…。」
が、コジローの言葉に再び横まで走り寄ってくる。
(あの服がお気に入りか。ま、あんなのはさすがに買えねーわな。)
そうこうしている内にキリノが目当ての店を見つけた。

「あっ、あそこっすよ!」
「よし、一緒にいい服見つけようぜっ。。」
それからキリノとコジロー、それぞれがこれだと思う服を選び試着を繰り返した。
「じゃあ、私これにするっ!」
それはキリノが気に入ったと言いだした服だった。少し大人っぽすぎる気がするが、それなりに似合っているし、コジローも納得することにした。

と、急にコジローに服を一旦預け、後ろを向いてごそごそするキリノ。
「?」
「……せんせー、やっぱこれ、いいっす…。返してきます。アハハ…。」
「??」
何を思ってのことなのか理由がわからなかったが、コジローは直感からこの笑い方をするキリノは何か隠そうとしているキリノだということを感じとった。
(ここまで来てどうして…)

「じゃあ俺が元んトコに返しといてやるわ。」
そう言って受け取り、キリノから少し離れたところで理由がわかった。
古着ではあるが、この服の値段、少しばかり他の物と比べると高いのだ…。
(あの時、キリノは財布を見ていたんじゃないのか?それでおそらく足りなかった…。これくらいなら俺が少し…いや、だが明日すら見えない貧乏人…無理か…。)
「なぁキリノ、もう一回他の服も見てみないか?」
「えっ、いいっすよ。もう…。今日はやめにしときます。わざわざ付き合わせたのにホントすみません。あ、お詫びにご飯奢るっすよ。」

そう言って一刻も早く店から離れようとするキリノ。
(キリノのことだ。おそらくなぜキリノが急に服を買うのをやめたかの理由に俺が気付いたことにも気が付いたのだろう。)
キリノの恥ずかしさを考えるとそれは当然の行為だった…。
行く時程ゆっくりではなく、建物の出口にまっすぐ進むキリノ。
しかしやはり行きしなに気にしていた服の前で少し歩みが遅くなり、目もそちらに奪われてる。
そしてその一瞬を見逃さないコジロー。
(コイツの家は別に貧乏ってわけじゃない。こづかいも貰っているだろう、だが弟や妹がいる。
キリノなら必要以上にたくさんの額は受け取らないだろうし、
たとえばお菓子みたいな、彼らが欲しがったり、せがむ物なんかの為にいくらかは使ってやってるのかもしれない。
かと行って店の手伝いもしているからバイトもできない。)
ミヤからのもらい物の服だと恥ずかしそうに笑ったキリノ…。
店のレジ前で服を買うのをやめると笑いながら謝ったキリノ…。
そう思うと今日一日のキリノがいじらしく、尚、いとしく思える。
コジローは決心してキリノに声をかけた。
「あの服…気になるのか?いや、気になるんだろ?試着だけならタダだ、着てみろよ。」
「な~に言ってんすk(ry」
「俺はあの服来たおまえが見たい、着てくれ、いや、着ろ!」
そう言って強引にキリノを試着室へ。


「どうっすか…。」
試着室からでてきたキリノはおずおずと尋ねる。
その姿が今日見た服の中でも一番キリノらしい服で一番可愛らしく見えた。
「あぁ、いいよ。…すごく。」
正直な感想を述べ、気になっていた服をコジローにお披露目できて笑うキリノがさらにコジローを駆り立てる。
「カードで!!」
「せ、せんせ?」

…買ってしまった…。そうは思ったがコジローに後悔はなかった。

「なにやってるんすか…ホントにもう……、でも。。ありがとうございます…。絶対、絶対おこづかい貯めて少しずつだけど返します…。」
「いや、荷物持ちの約束したのに何も持たなかったら約束破ることになるだろ。俺はハナからここまで含めての賭けのつもりだったんだよ。」
「…でも。」
「どうしても納得できないんなら、俺のわがままを聞いてくれるか?もし呆れたなら何も言わなくていい。聞くだけで…。」
「??…はい…。」
「…今日になって初めて気付いた。今までいろんなキリノを見てきたけど、その中でも悲しい笑顔を見せるおまえだけはもう見たくないんだよ。
だからだな…その…なんつーか、あの、好き…だったみたいだわ俺…。おまえのこと…。前から。
…それだけだ。」
「……。」
(ダメだよな、俺。教師が生徒にコクるなんて…なにしてんだよ…。馬鹿か…。)

「…しもっすよ。」
「えっ?」
「私も、ずっと前からコジローせんせーのことが好き。今日一日で、もっと好きになった。ずっと一緒にいて。それで、私の笑顔を守って。」
そう言ってキリノがコジローの胸に顔をうずめると、もう二人に言葉は要らない様だった。コジローは恋愛という賭けには勝ったのだ。

「しかし、これで来月も貧困確定だな…。」
「なら…毎日毎日、絶対に忘れずにせんせーのお弁当作ってきます!…最初から私、実はあの賭け、勝ちでも負けでもよかったんです。」
どうやら、こちらの賭けもある意味勝ちと言ってもいいのかもしれない。


おわり
最終更新:2008年05月20日 23:22