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 ああ、この状態はいったいどうしたらいいのか。
 あたしは大変なことに気づいてしまったのだ。
「どうしたのサヤ?」
 親友のキリノが、あたしの顔を覗き込む。この子にだけは気づかせるわけには行かない。
そう思って、そっとコジロー先生の顔を見た。ああ、やっぱり伸びてる。
そこには、黒々と一本の鼻毛が顔を出していた。
切り忘れか、抜き忘れかはわからないが、ともかく立派な鼻毛が一本見える。
 
(前からああだよ)

 キリノのコジロー先生に対する評価を聞いてから、アタシは考えていたことがある。
どう見ても、普段のコジロー先生はかっこよくなんかない。でも、キリノにはかっこよく見えているらしい。
ならば! その幻想を手助けしてあげるのが親友というものではなかろうか!
 その矢先に、鼻毛が伸びているというのはいかがなものか!
 アタシはキッとコジロー先生をにらみつけた。 駄目だ……へらへらしてて気づかない。
ああ、もうハサミを鼻に突っ込んで粘膜ごと切りきざんでやりたいわ!

 フーフーと息を切らせていると、コジロー先生はキリノに何やら話しかけだした。
「な、なあ。サヤがさっきからこっちをにらんでるんだが……」
「先生、何かしたんじゃないッスか」

 何もしないからイライラすんのよ、と叫びたい衝動をこらえるアタシ。
すると、キリノがにこっと笑ってコジロー先生に近づいた。

「あ、先生。鼻毛出てますよ。……えいっ!」
「イテッ! お前、いきなり抜くなよ。もう」
「いやー、だって気になるじゃないっスかー。でも、もう伸びてないっすね」
「ああ、最近忙しかったんで切り忘れてたのがあったんだろうな」

 あ、アレ? そんなあっさり終わっていいの?
アタシの心配は何? あ、そうか鼻毛出ててもかっこいいってことなのね。
ハ……ハハ……アタシってばなんだったのかしら……。
憎い! 鼻毛という存在そのものが憎いわ!

「あ、サヤ?」
 キリノがアタシに近づいてきた。いったい何。また、ノロケ?
「えいっ!」
「イタッ!」
「ごめんね……言いにくかったんだけど、サヤも一本だけ鼻毛伸びてたからさ。
昨日も徹夜しててお手入れサボったんでしょ? 可愛い顔が台無しだよ」


次の日、アタシは学校を休んだ。
最終更新:2008年09月17日 21:26