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翠星石10 - (2006/01/24 (火) 17:19:37) のソース
<p>「あんた○○○に落ちるわよ」</p> <p>~占いの館前~<br> 翠「ここですぅ~。」<br> J「占いなんて信じられんがなぁ…」<br> 翠「何を言うです。太木先生の占いは100発100中と専らの噂ですよ?」<br> J「でもなぁ…」<br> 翠「ならてめーは帰ればいいです。ふんっ!」<br> ガラッ 館の(とは名ばかりの駅前にあるような占い小屋)<br> 扉を開け、翠星石だけ中に入る。<br> 部屋内は黒いカーテンで光を遮られ、ローソクの頼り無い灯りだけが静かに揺れていた。<br> 太「いらっしゃい、お嬢さん。何を占って欲しいのかしら?」<br> 翠「え、と…その、翠星石はアリスに成れるでしょうか?」<br> 翠(JUMとの事を占って欲しいですけど、いざとなったら恥ずかしいです。)<br> 太「じゃあ、お名前と生年月日を教えてくださる?」<br> 翠「はい。」サラサラと紙に必要事項を書き込んでいく。</p> <p>太「……なるほど、ねぇ。」<br> 翠「終わったんですか?」<br> 太「ええ、……残念ながらあなたはアリスには成れないわね。」<br> 翠「っ!?そんな……」<br> 太「でも、とても幸せになるわ。」<br> 太「外で待っている男の子からずうっと離れなければね。」<br> 翠「えっ?それって?JUMは帰ったんじゃ…」<br> 太「あまり待たせちゃ悪いわ。……そのJUM君に幸せにして貰いなさい。」<br> 翠「はいっ!!」</p> <p>翠「有難うございました!」<br> 翠星石が部屋から出ると、JUMは入っていった時と変わらず扉の横の壁に背をつけ待っていた。<br> 暗い部屋から出たせいもあるが、それとは別の理由から翠星石にはJUMがとてもまぶしく見えた。<br> J「お前敬語使えるのな。」<br> 翠「あたりまえですぅ~。翠星石を何だと思っていやがるですかっ!」ぽかっ!<br> J「痛てっ、ごめんて。」<br> J「で?どうだったんだ?占いは。」<br> 翠「……アリスにはなれないと言われたですぅ……」<br> J「所詮占いだろ?気にするなよ。」<br> 翠「何を言うです馬鹿JUM!太木先生に失礼ですぅ!」<br> J「わ、分かったから怒るなよ。ほら冷えてきたからさっさと帰るぞ。」<br> そう言ってJUMは翠星石の手を取って歩き出した。</p> <p> 翠(アリスには成れないかもしれないですけど、お嫁さんには成れそうです。)</p> <p><br> ベ「どうですか先生?」<br> 太「これからがあなたの人生の地獄のようね。」</p> <hr> <p>翠「す…水銀燈!ちょっと話があるです」<br> 水「あらぁ、翠星石じゃなぁい。どうしたのぉ?」<br> 翠「これから買い物行くから付いてきたかったら一緒に来るといいです!」<br> 水「う~ん…そうねぇ。いいわぁ。一緒に行ってあげるぅ♪」<br> 翠「ならサッサと用意してくるです!」</p> <p>(並んで歩く二人)<br> 水「でも私を誘うなんてどういう風の吹き回しぃ?」<br> 翠「…実は水銀に頼みたいことがあるです」<br> 水「頼みたいことぉ?何かしらぁ?」<br> 翠「それは…私に似合いそうな服を見立ててほしいです」<br> 水「え?なぁんだ、そうなのぉ………でも何で私なのぉ?」<br> 翠「だって、真紅や薔薇水晶はいつも同じものしか着てないし、蒼星石はユニクロ信者だし、雛苺と金糸雀はお子ちゃまです!こんなこと相談できるのは水銀燈だけです!」<br> 水「うふふ。わかったわぁ」</p> <p>(デパートにて)<br> 水「うふふっ♪何買おうかしらぁ~」<br> 翠「あんたがはしゃいでどうするです!」<br> 水「あらあら、ごめんなさいねぇ~」<br> 翠「…じゃあ、さっそくお願いするです」<br> 水「わかったわぁ。<br> う~ん…翠星石はやっぱり『女の子』らしい服が似合うわよねぇ~」<br> 翠「お子ちゃまっぽいのは勘弁ですよ」</p> <p> 水「あ!ほらほらぁ!コレなんていいんじゃなぁい?」<br> 翠「ふむふむ…結構可愛いです。この上着は買いです!」<br> 水「うふふっ。よかったわねぇ♪」<br> 翠「さんきゅーです。<br> さ、次いくです!」<br> 水「わかったわかったぁ…私のお買い物も付き合ってねぇ~…」<br> 翠「わかってるです!」</p> <p>翠「今日はいろいろありがとです」<br> 水「いいのよぉ~可愛い妹のお願いですものねぇ」<br> 翠「これでJUMとのデートもばっちりです!」<br> 水「JUMとデートするのぉ~。よかったわねぇ♪」<br> 翠「べ…別にあのチビ人間がどうしてもっていうからデートしてやるだけです!」<br> 水「照れちゃってぇ♪可愛い♪」<br> 翠「////」<br> 水(…わたしもJUMとデートしたいなぁ…)</p> <hr> <p>翠星石の一日は早朝から始まる。弁当を作るためだ。<br> 昨日のうちにあらかた下ごしらえをしておいたのでそれほど時間が掛かる訳でもない。<br> いつも自分と双子の妹である蒼星石の二つしか作らないのだが今日は違う。<br> 大好きなあの人に食べて貰いたくて今日は三つ分作らなければならないのだ。</p> <p>蒼「ふぁ…おはよう翠星石。」</p> <p>後ろを見ると蒼星石が起きて来た。<br> 部屋で着替えたのか既に制服になっている。</p> <p> 翠「おはようです、蒼星石。朝ごはんはまだなので待ってろですぅ♪」<br> 蒼「うん…今日は朝から上機嫌だね。」<br> 翠「そ、そんなことねーですぅ。」</p> <p> 蒼星石が台所を覗くと其処にはえらく凝った弁当が三つもあった。</p> <p>蒼「ふ~ん、そういうことか…」<br> 翠「な、何がそういうことですか!?べ、別にこの弁当をチビ人間にあげようなんて考えてねーです!?(///)」<br> 蒼「翠星石…自滅してるよ…」</p> <p> 苦笑いしながら蒼星石はリビングに退却していく。いつもなら手伝いぐらいするのだが今回は手を出すわけにはいかない。<br> 退却する前に翠星石は大声で負け惜しみを言ったがあえて聞かない。</p> <p>翠「………♪」</p> <p>さっきまでの怒った顔は柔和に綻んでいる。</p> <p>そして登校…<br> 蒼星石と一緒に歩いていると前方にその人がいた。<br> 翠星石が声をかけようか躊躇ってるうちに蒼星石が声をかける。</p> <p>蒼「おはよう、ジュン君。」<br> ジ「ん、おはよう。蒼星石、翠星石。」</p> <p> 挨拶されたのだが変に緊張して翠星石はオドオドしていた。<br> 蒼星石が翠星石の肩を優しく叩く。</p> <p> 翠「お、おはようですチビ人間!翠星石と蒼星石と一緒に登校できるのですから有難く思いやがれですぅ。」<br> ジ「な、なんだよそれ。別に偶然出会っただけじゃないか。」<br> 翠「偶然だからですぅ。そんなこともわからんのですかチビ人間は。」</p> <p>いつもの軽口の叩きあいが始まる。<br> 翠星石は自分の軽口に付き合ってくれるジュンが好きだった。</p> <p> しかし、これだけ自分の気持を偽った翠星石にとってジュンに本心を曝け出すことは困難だった。<br> なので今日お弁当を作って少しでもその気持を伝えようとしている。</p> <p> 翠「そ、そーです。友達の少なそうなチビ人間のために今日は翠星石達が一緒にご飯を食べてあげるですぅ。」</p> <p>出来るだけ思いついたように振舞う。<br> 本当は昨日の夜から計画していたことなのだが…</p> <p>ジ「おま、僕はそんなに友達は少なくなんかない!」<br> 蒼「まぁまぁ、翠星石もそんな言い方しちゃ駄目じゃないか。本当は一緒に食べたいって言えばいいのに。」<br> 翠「そ、蒼星石は一言多いです!!(///)」</p> <p> 顔が熱くなる。きっと今自分は顔が真っ赤なのだろうと容易に分った。</p> <p> ジ「なんだ、そんなことか。なら別にいいけど。俺今日は学食だぞ?」</p> <p>まさに千載一遇のチャンスだと思った。<br> 神様がいるなら今だけは感謝してやりたい。</p> <p> 翠「しょ、しょーがないチビ人間ですね!そんなこったろうと思って翠星石がお弁当作ってやったです!有難く思えですぅ!(///)」<br> (い、言っちゃったですぅ…(///))<br> ジ「え、そうなのか?蒼星石から聞いたけどお前の弁当って美味いらしいからな、楽しみにしてるぞ。」<br> 翠「う、と、当然ですぅ…(///)」</p> <p> 先刻のジュンの言葉を聞いて翠星石は蒼星石を見る。蒼星石は何も知らないと言いたげに微笑んでいた。<br> そんな妹の気遣いを嬉しく思いながら三人一緒に学校へと歩いていく。</p> <p>そして昼…</p> <p> 翠「可笑しいです…ジュンの分のお弁当がないです。」<br> 鞄の中を探しても自分の分しかない。(蒼星石の分は蒼星石の鞄にある)</p> <p>蒼「どうしたの、翠星石?ジュン君待ってるよ?」<br> 翠「あぅ…蒼星石…ジュンのお弁当がないんですぅ…」<br> 蒼「え…今朝ちゃんと鞄の中に入れたの?」<br> 翠「入れたですぅ、けどないんですぅ。」</p> <p> 必死に鞄の中身を探し最終的には鞄の中身を全部出すがやはりない。<br> ジュンを一人で待たせては悪いので蒼星石には先にジュンのクラスに行って貰った。<br> ないものは仕方ない、この際一つの弁当を二人で分けようと思った矢先…</p> <p>女1「ねぇねぇ、あんたが探しのってこれじゃね?」<br> 翠「あ、帰して…」<br> 女2「別にいいけどさぁ…あんた昨日あたしらになんて言ったか覚えてる?」<br> 翠「え…」</p> <p> 思い出した。昨日蒼星石に嫌がらせをしていたので口論になった女生徒だった。<br> 蒼星石は色んな人に好かれてはいるがそれに比例して妬む人も多かった。<br> その嫌がらせは蒼星石の机の中にゴミを詰め込むという陰湿なものだったので止めただけだ。</p> <p> 翠「あれはオメー等が悪いです、翠星石も蒼星石も何も悪くないです!」<br> 女1「うるさい!あんたのそーゆー媚び売ってる口調もうぜぇんだよ!」<br> 翠「そんなことはどうでもいいですからお弁当返しやがれです!!」</p> <p> 女1に握られている弁当を奪おうと翠星石は進み出るが女2に阻まれる。</p> <p> 女1「ふん、あんたなんかが作ったこんな弁当なんてこうしてやる!!」</p> <p> 持っていた弁当箱を女1は力いっぱい地面に叩きつける。教室中に大きな音がしたのでクラスの皆がそれを見ていた。<br> 流石に罰が悪くなったのか二人の女生徒はそのまま退散して行った。</p> <p>翠「う…うぅ…っ」</p> <p>翠星石はその場に泣き崩れた。<br> せっかく蒼星石が応援してくれていたのに…<br> せっかく今朝頑張って作ったのに…<br> せっかく勇気を出して言ったのに…<br> 楽しみにしてるって言ってくれたのに…</p> <p>ジュン「す、翠星石…?」</p> <p> ジュンの声がして翠星石は涙を流したまま振り返った。<br> 遅い翠星石を心配してジュンは何時しか翠星石のクラスに来ていたのだ。</p> <p>翠「あ…う…っ」</p> <p> 走った。止めるジュンの声を振り切って翠星石は無我夢中に走った。そして何時も自分の世話をする薔薇園の前で壁を背にひたすら泣いた。<br> 嗚咽を吐いて、涙を流して、翠星石は泣くことしか出来なかった。</p> <p>翠「ヒック…グス…」</p> <p> もう駄目だ。ジュンが来たのはあの女生徒が出て行った後なので状況の知りようもない。<br> きっと誤解された。どうしてあの時説明もせずに逃げ出してしまったんだろう。</p> <p>「…せ…石」</p> <p>声が聞こえた。</p> <p>ジ「翠星石!」<br> 翠「ジュ…ン…?」<br> ジ「大丈夫か?」<br> 翠「あの…ごめんなさいです…ジュンに作った弁当ですがさっき見たとおり…うっかり落としちまって…」</p> <p>ジ「違うだろ、弁当箱投げられたんだろ。」<br> 翠「え…」<br> ジ「さっきクラスの奴に聞いたよ。翠星石が女子と口論になって弁当を滅茶苦茶にされたって。」<br> 翠「そ、それでもごめんなさいです…」<br> ジ「いいよ、それに…ホラ、ちゃんと持ってきたからさ。」</p> <p> そういうジュンの両手には翠星石の弁当と先ほど滅茶苦茶にされた弁当があった。<br> 無言で翠星石に弁当を渡し自分は滅茶苦茶になった弁当を食べる。<br> しかし翠星石は中々箸をつけない。</p> <p> ジ「この煮物お前が作ったのか?やっぱり美味いな…もぐもぐ」<br> 翠「嘘です…こんなにぐちゃぐちゃになったら味なんてわかりゃしねぇです…」<br> ジ「分るよ。」<br> 翠「え…?」<br> ジ「翠星石が心を込めて作ってくれたんだから…分らないわけないじゃないか。」<br> 翠「ど、どうしてそれを…(///)」<br> ジ「う~ん…実はさっき蒼星石から聞いてさ。」<br> 「今日は翠星石が嬉しそうに俺の分も弁当作ってくれたって…」<br> 翠「う…あ…(そ、蒼星石…また余計なことを…でもありがとうです…)(///)」<br> ジ「だから、さ…食べようぜ。翠星石が折角作ってくれたんだからさ。」<br> 翠「しょ、しょーがねぇです。なら一緒に食べてやるです♪」</p> <p>なんだかんだ言って今日は嬉しい一日でした…</p> <br>