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水銀燈20 - (2006/01/31 (火) 07:54:54) のソース
<p>水「おはようぅ♪学校に遅れるわよぉ♪」<br> <br> 水「えっ、何でって?あなたの寝顔をみにきたのよぉ♪」<br> <br> 水「あっ!照れてるぅ!可愛いんだら~!」<br> <br> 水「朝食も用意したのよ!何だか新婚さんみたい♪」<br> <br> 水「冗談よぉ~!早く着替えてきてね!朝食が冷めないうちに!」<br> </p> <hr> 独りだけの教室<br> 誰もいない夕暮<br> 涙流す私の横に貴方はいた<br> この銀髪を褒め<br> 紅い瞳を綺麗と言い<br> 真っ黒なこの服をかっこいいと<br> <br> 右にならえの号令に貴方だけは左ならえ<br> <br> 私を守ってくれたひ弱なナイト<br> そんな貴方の側に私はいたい<br> それが昔、セピアになって<br> 姫のようになった今であっても<br> 私を守るのは貴方だけ<br> <br> 銀髪の姫を守る騎士は貴方だけ<br> <hr> <p>孤独だったの。<br> 皆、私には愛想笑い。<br> 銀色の髪をくゆらせてもため息ばかり。<br> 疲れてたの。<br> 私の心には穴が空いていて。<br> あなただけが優しかった。<br> あなただけが癒してくれた。<br> あなただけを好きになれる。<br> 二人での帰り道、私は彼の前を歩いて<br> くるりと回って夕日を背にして言うの。<br> 『あなたのことが大好き!』</p> <hr> <p> 整った顔立ち、均整の取れたプロポーション、銀糸を溶かしたような髪、全て申し分無い。<br> そして、何より僕を惹きつけるのが極上の紫水晶のような瞳、猫のように気まぐれな光が踊る瞳、彼女の瞳を覗く度、吸い込まれてしまいそうになる。</p> <p> その水銀橙は今、ベッドの上で一糸纏わぬ姿を晒したまま、僕の隣で微かな寝息をたてている。<br> 時折思う、何故こんなことになってしまったのか。<br> 答えは即座に浮かぶ、土砂降りの雨の中、傘も差さずにさまよい歩いていた彼女を僕が受け入れたからだ。<br> あの日、ジュン君が翠星石を選んだ日から僕達の関係は少しずつ狂っていった、歳を経た時計のように。<br> 雑然とした思考を歩かせながら、水銀橙の髪を一房手に取り玩ぶ。<br> 水銀橙はただ寂しかっただけなのだろう。<br> 寂しさを埋め合わせる相手にたまたま僕が選ばれたにすぎない、僕は心のどこかでそう確信していた。<br> 何故なら、僕もまた、寂しさゆえに彼女を抱いたから。<br> だというのに、このこみ上げる熱情は何だろう。</p> <p> 手に微かに力が篭る、力が動作を連れて来る、髪が引っ張られ、頭が動く、水銀橙の瞳が開く。<br> 「どうしたのぅ」<br> 「……ううん、なんでもない」<br> 「嘘が下手ねぇ」<br> 水銀橙が僕の肩に手を回し顔を近付ける。<br> 彼女の目に覗き込まれる。<br> 「私がいてもまだ寂しいのぅ?」<br> 彼女の目は優しい。<br> それが時折悲しい。<br> 「そんなこと無いよ」<br> 本心だった、嘘のようだけど。<br> 僕もまた、彼女の肩に手を回し、唇を奪う。<br> 「んっ……もう、強引ねぇ」<br> 「ねぇ、水銀橙。明日体育あったかな?」<br> 突然の口付けに微笑み、唐突な問いに小さく首を傾げる。<br> 「確かぁ……五限がそうよぅ」<br> そう、とだけ返事をし彼女の肌に舌を這わせる。唇から頬へ、頬から首筋へ。<br> 「やっ、あっ、くすぐっ……っー」<br> 強く吸う。<br> 「ちょ、ちょっと、跡がの、こるぅ」<br> 水銀橙の体がもがく、僕は体重をかけて押さえ込む。</p> <p> 「皆にさ、見せ付けてやろうよ、僕達は愛し合ってますってね」<br> 嘘だ。ただ、彼女が僕のモノだという印が欲しかっただけだ。<br> 征服感と欲情。<br> そして恐怖。そう、彼女がやがて僕の前から去っていくのではないだろうかという恐怖が僕をかきたてる。<br> 彼女の首筋に焼き鏝のように残る僕の唇の跡、耳に届く啜り泣き、降り注ぐ自己嫌悪。<br> 泣き顔すら、美しい。<br> 頬を流れる涙を舐める。砂糖菓子のように甘い気がした。<br> 「……ごめん」<br> 「良いのよぅ」<br> 彼女が微笑みは慈母の様で。<br> 僕は子供のように彼女の胸で泣いた。<br> いつか彼女が去っていくとしても、今は彼女に溺れていたい。<br> そして願わくば、この今が永遠でありますように。</p>