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063

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063.笑顔と恐怖と


じりじりと照りつける太陽、熱を跳ね返す広大な砂漠。
そんな中を、足取り重く進む一つの影があった。

「うぅ…暑い」

支給品の中にあった水は半分まで減り、のどは渇きっぱなし。
赤Pも水分には違いないが、飲む気にもなれない。
そんな状況の中、♀モンクはぽつりと一人、呟く。
生死に関わる危険なゲームだとは思っていたが、まさか砂漠に落とされるなんて思わなかった。
これでは、殺し合い云々の前に野垂れ死んでしまう。

「…そんなのってアリ?」

ありだとしたら、かなり情けない。うっかり涙が出そうになった。
せめてオアシスか、そうでなくても休める場所があれば…。
とりあえず、この暑さはだめだ。頭がくらくらする。

――と。

♀モンクは前方に、何か黒い影を見つけた。

「洞窟だ!」

やっと日差しを避けて休める場所を発見したと、♀モンクは嬉しそうに洞窟へと走った。



洞窟の中は思ったよりも広く、砂漠にあるにしては、なかなか涼しく快適だった。
日の当たらない奥へと進んでから、落ち着いて休めそうな場所を探し、腰を下ろす。
ようやく安心できたとばかりに、♀モンクはふぅ、と息をついて目を閉じた。
そのときだった。

「きゃっ」
「わっ…」

突然、すぐ後ろで小さく叫ぶような声が聞こえたのだ。
思わずつられて、♀モンクも声を上げる。
見てみると、そこには両手で口元を覆い立ちすくんでいる♀アコライトがいた。
ずっと泣いていたのだろう、顔にはいく筋もの涙の後が見て取れる。

「ああ…なぁんだー。アコさんかぁ」

♀モンクは、心底ホッとしたように胸を撫で下ろした。
それを見て♀アコライトは、ぱっと顔を上げる。
ずっとこの洞窟に一人でいた彼女は、誰かに会いたくて仕方がなかった。
心細さと恐怖の中で、誰かにメッセージを送ってみようかという誘惑にもかられたが
結局誰を信じていいのか分からず、ここで一人蹲っていた。
そんなときに現れた、この♀モンク。おなじ聖職者だということもあり、
♀アコライトにとっては、まさに待ち望んだ人物だった。

「わ、わたし、ずっとここに一人で居て…すごく、怖かったんです。
 よかった、同じ聖職者の方に会えるなんて」

最後のほうは、ほぼ安堵のため息と同時だった。
対する♀モンクのほうは、そうかぁ、と♀アコライトを気遣い頷いてみせる。

「あたしもね、気が付いたら砂漠に一人で居て、心細かったんだ。
 おまけに暑いし喉は渇くし…周りも警戒しなきゃだし」

言って、♀モンクは憂鬱そうにため息をつく。
ほんとうに憂鬱なのは、目の前の♀アコライトすら信じることが出来ない状況なのだが。
現に、今でも彼女は警戒している。
弱気なこの♀アコライトが、突然襲い掛かってくる事だって、十分あり得るのだ。

「…GMの放送で変なのまで流れてきて、もう気が気じゃなかったよ」

♀アコライトは、大きく相槌を打って♀モンクの近くに座った。
その様子を、♀モンクが控えめに横目でちらりと伺う。

「ここから帰れるのかな…」

弱気に呟く♀アコライト。手は、首もとの冷たい金属を触っている。

「うーん、どうだろうね。生きて帰れればいいけど…
 あ、あんまりそれ触らないほうがいいよ。なんかヤバそう」

生きて帰れれば。その言葉を口にした時、散々迷っていた♀モンクは、ついに小さく決意した。
♀アコライトはそれには気づかず、こんな状況の中でも
あくまで楽天的な喋り方をする♀モンクを見て、思わず小さく笑ってしまう。

「ん?なになに?」

きょとんとした顔をしてみせる♀モンク。
普段なら一緒になって笑うのだろうが、今はそれどころではなかった。
正直に言うと、今目の前で笑顔を見せている♀アコライトが怖い。
どくんどくんと気分の悪い音を響かせる心臓を意識しながら、
彼女はそっと、自分の鞄の中に手を差し入れた。
なんでもないです、と笑いながら言う♀アコライトは、もちろんそれに気づかない。


「生きて帰るには…。二人一緒に帰れないのが残念だね…」


言うや否や、♀モンクは立ち上がり、手にしたメイスを♀アコライトの頭めがけて振り下ろした。
♀モンクの目には、戸惑いと怯え、そして高揚感が同時に現れている。
ついに、やってしまった。もう後には引けない。

「な…なんで…」

わけが分からずに泣き始める♀アコライト。
最初からずっと騙されていたのだろうか。おなじ神に仕えるものなのに…。

「…ゴメンね、あたし…」

言って、♀モンクは恐れを振り切るように目を強く閉じた。
♀アコライトの蚊の鳴くようなの呻き声は、もう彼女の耳には入らない。

「ごめんなさい、アコさん…神よ、お許しを…!」

♀モンクはそのまま二度、三度とメイスを打ちつけた。
痙攣していた♀アコライトの体が、完全に動きを止めるまで、何度も。

はっと我に返った♀モンクは、目の前の屍を見、震えながらずるずると後ずさる。
目の前が真っ黒だ。手には血の付いたメイスを持ち、体には大量の返り血を浴び…。

――こうするしか、なかったんだ。

真っ白になった頭の中で、呪文のように繰り返す。

――そうでなければ、こっちが殺されていたかもしれない――。

♀モンクは押し黙ったまま、ガクガクと震える手でアコライトの持ち物を自分の袋の中につめた。
食料系回復アイテムがたくさん手に入ったことにより、少しだけ安心する。
その中に猛毒の入ったものが含まれているとも知らずに。
物をすべて詰め終わると、♀モンクは逃げるように洞窟の外へと走っていった。


<♀アコライト死亡>
<♀モンク メイス1個、食料系回復アイテム各種(うち一つに猛毒入り)、小青箱2個、赤P、食料>

<残り39名>


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