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魚氷に上り 耀よひて - (2023/05/08 (月) 16:09:08) のソース

* &ruby(うおひ){魚氷}に上り &ruby(かが){耀}よひて / あさき

嵶やかに泳ぐ
あさひに焦がれ

あまりにも深く
いとましき

その口より曰く 虹を吹いては

「昇るものよ 沈むものよ これが現実だ!」

と還り散る

欲しいままに生貪る
緋色の珊瑚礁
そそり歌をのせて 狭霧
深く遠く鳴り

ああ 誰か光をくれ
さまよう 人
そぞろ泳ぐ

手を取り合い 泡と詠み
明日をつなぐ輪をくぐって

あまひに舞ふ赤い雲に問ふ

「一天の深きよ」

答えはない

泣き響むか 浮き沈むか

もうわかっているのだろう
もう気がついているのだろう

そうだ
もう光はこない
永遠に だ



----

** Long ver.


&ruby(たお){嫋}やかに泳ぐ
あさひに焦がれ

あまりにも深く
いとましき

ざわめき
あたもろとも
波にさらわれ

笑うものよ
&ruby(いた){悼}むものよ
皆等しく
ひいわりと

&ruby(だんがい){断崖}に沿って
だんぶと落ちて
&ruby(たま){珠}に似た&ruby(しぶき){飛沫}
かこちをり

その口より曰く
虹を吹いては

「昇るものよ 沈むものよ これが現実だ!」

と

&ruby(かえ){還}り散る

なんと つらいことだ
あまりにも つらいことだ

欲しいままに&ruby(せい){生}&ruby(むさぼ){貪}る
&ruby(ひいろ){緋色}の&ruby(さんごしょう){珊瑚礁}
そそり歌をのせて &ruby(さぎり){狭霧}
深く遠く鳴り
ああ 誰か光をくれ

&ruby(さまよ){彷徨}うひと そぞろ泳ぐ
手を取り合い 泡と&ruby(なが){詠}み
明日をつなぐ輪をくぐって

あまひに舞う 赤い雲に問う

一天の深きよ!

&ruby(こた){応}えはない

泣き&ruby(とよ){響}むか 浮き沈むか

もうわかっているのだろう
もう気がついているのだろう

そうだ ここに光は来ない
永遠に だ

光は幻想だ

まやかしだ

なんと 馬鹿馬鹿しいことだ

夢を見てはいけない
夢を見るのは愚か者だ

ひとりで泳いでいけ
たったひとりで泳いでいくのだ
そしてひとりで果てるのがよい

ああ ささくれては
&ruby(ぎょう){行}に&ruby(しの){偲}び
地を削り流れを変える

が

そうだ
その通り
結局のところ

ここに在らず
そこに在らず
&ruby(ゆえ){故}に
道もなく

くるしい
くるしくない
許せない
許してやろう
くるしい
くるしくはない
たすけてほしい
たすけてやろう
ここは寒い
ここは熱い
地獄だ
そうだここは天国だ

孤独だ

くるしい
くるしいな
助けてくれ
助けてやるよ
憎い
憎いかな
愛している
愛してはいない

つかれたか
そうか

ふと見上げると
&ruby(みなも){水面}が割れていた
その割れ目から
真っ白な いや &ruby(こはくいろ){琥珀色}の
泥のようなものが降ってくる
おそろしいことだ
これは 大変に 本当に おそろしいことだ

尻の穴を見せあっている醜い魚たちが
「我こそが我こそが」
とつぶやいている
早口で
早口で!
早口で早口で早口で!

は や く ち で!

&ruby(あえ){喘}ぎながら&ruby(せい){生}&ruby(むさぼ){貪}る
白い珊瑚礁
息ができぬと任せては
深く深く 慰め合い
ああ &ruby(かしま){姦}しく鳴り
跡形もなく

溶けて

波にさらわれ

この素晴らしい世界を隅々まで
あますところなく巡った後

また

堂々巡り

未来&ruby(えいごう){永劫}

同じことの繰り返し

ひとりで泳ぐ
そびらに春を
&ruby(あさひ){旭}を浴びて
泡に消える

そんな夢

なあ
いやになっちゃうよ
毎日毎日いやになっちゃうよ

&ruby(さまよ){彷徨}うひと &ruby(せん){先}に昇る
信じたもの 愛したひと
&ruby(へきらく){碧落}にあるべくとして

昇る ひと
それに続き
また 昇る ひと

千は百になり
百は十になり
十は一になり
一が&ruby(つも){積}り千となる

&ruby(これ){是}まさに 堂々巡り

あぶれ&ruby(いと){厭}ふ 深海と&ruby(まが){紛}う
&ruby(なお){波折}りの深さよ

深くて 暗い 泥の海の おはなし

&ruby(あまい){天井}はない
そして 底もない

故に

光差す道理など無く

ああ
並み居ている
見ろ あの&ruby(ながめ){長雨}を

深海で降り続く&ruby(こはくいろ){琥珀色}の
日影にも似た&ruby(か){彼}の雨を

&ruby(あまね){遍}し日よ
光をくれ 誰か

曰く
「幼いころ 子守唄に 母が歌ってくれた歌があって
かわいらしい 迷い子の歌なのだけれど
今は自分で 自分のために歌ってる」

毎日毎日 &ruby(ごうか){業火}で焼かれていやになっちゃうよ

眺め&ruby(や){遣}る 迷い子
&ruby(うたかた){泡沫}の消えては&ruby(な){生}る

思い出
もう今は思い出

昔の思い出
大切な思い出

──後日談──

&ruby(あしもと){足下}が燃えている
熱くて 痛い 熱くて 息が出来ない

どうしようもない

空が凍っている
寒くて 痛い 寒くて 息が出来ない

どうしようもない

誰もが どうしようも! ない!
と ただ泣いている

ここは地獄だ
ここは天国だ
ここは天国さ
ここは地獄さ

信じたものの 虹の先には何もなく
振り返っても何もない

それでも

今日も明日も明後日も
来週も来月も来年も
十年先も
そして

尽きた その後も

ひとはきっと

泳いで泳いで泳いで泳いで泳いで泳いで
泳いで泳いで泳いで泳いで泳いで泳いで
泳いで泳いで泳いで泳いで泳いで泳いで
泳いで泳いで泳いで泳いで泳いで泳いで

&ruby(たお){嫋}やかに

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