カグランジ / 生きてこそ~特別版~ / あさき
ちぎれちぎれも たかだかと
その川
すりすり すりすりと
枯れてなお 枯れてなお
立派なおべべに 赤帯垂らして
恥らうことなく山から川へと
ころころ 転んで
みんみんの声 届けてくれたのさ
ぴょんぴょん跳んではそうぞうしいが
ぴんとひらめいた かしこい彼は言う
ぴんとひらめいた かしこい彼は言う
「大きな声ではいえないけれど
小さな声では聞こえませんの!」
小さな声では聞こえませんの!」
死にたくはなしと鳴き叫んでいる
川となり 海となる
すべては千変し 万化し
その輪郭をぼかしながら
天高く遠く一片の雲に過ぎず
だが生きてこそ
呪われた鬼子 と 呼ばれ
唾 を吐かれて 泥をなげられて
それでも諸手 かざして
蒼天 の縷々 を綴 る
それでも
望まれずに生まれて
愛を知らず枯れていく
愛を 誰か彼に愛を
愛を知らず枯れていく
愛を 誰か彼に愛を
枯れてなお
生きてこそ / あさき
- long ver. (アルバム「天庭」収録)
―前編―
ちぎれちぎれもたかだかと
その川
すりすりと
すりすり すりすり
枯れてなお 枯れてなお
この川の どこへ行く
いづくより生 れて いづこ
いづくより
ねんねこに沈み 弾け飛び ぴゅっぴゅ
ぴゅっぴゅ ぴゅっぴゅ
蝉のような鼻をしたおかあさん
「このひとでなし!」
「このひとでなし!」
蝉のような口をしたおじいさん
「あいや おかしな なあ」
「あいや おかしな なあ」
ぷんぷん! ぷんぷん!
蝉のような耳をしたおばあさん
「わあ ちんちくりん!」
「わあ ちんちくりん!」
ぷんぷんぷん!
蝉のような顔をしたおとうさん(代表者でもある)
「あいや みにくいもの におう におうぞ」
「あいや みにくいもの におう におうぞ」
立派なおべべに赤帯垂らして
恥じらうことなく山から川へと
ころころ 転んで
みんみんの声 届けてくれたのさ
ぴょんぴょん跳んではそうぞうしい(後ろ前である!)が
ぴんとひらめいた かしこい彼 は言う
ぴんとひらめいた かしこい
「大きな声ではいえないけれど
小さな声では聞こえませんの!」
小さな声では聞こえませんの!」
それを聞いていた 彼の歩幅にあわせて
ぴょんぴょんと跳びまわる かわいらしい生き物たち
「わっはっは! あっはっは!
なんとも機知に富んだ 物言いであることか!」
ぴょんぴょんと跳びまわる かわいらしい生き物たち
「わっはっは! あっはっは!
なんとも機知に富んだ 物言いであることか!」
ここには数多 の
動物のような姿をしたものたちがいるようだ
動物のような姿をしたものたちがいるようだ
うさぎのような長い耳を持つ ひと がいる
かめのような固い甲羅を持つ ひと がいる
たぬきのような挙動を見せる
抜き差しならない ひと もいるし
きつねのような 実に妖艶 な ひと もいる
大きな 象のような
ついぞない鼻をもった ひと までもがここにいるのだ
なんともはや! すばらしい!
かめのような固い甲羅を持つ ひと がいる
たぬきのような挙動を見せる
抜き差しならない ひと もいるし
きつねのような 実に
大きな 象のような
ついぞない鼻をもった ひと までもがここにいるのだ
なんともはや! すばらしい!
皆一様に跳ねまわっている
実にほほえましい光景だ!
実にほほえましい光景だ!
その素敵な会合を 木の上より俯瞰 する
蝉のような鼻をしたおかあさん
「あのひとでなし!」
蝉のような鼻をしたおかあさん
「あのひとでなし!」
その素敵な会合を 木の上より俯瞰する
蝉のような口をしたおじいさん
「あいや 不潔な なあ」
蝉のような口をしたおじいさん
「あいや 不潔な なあ」
ぷんぷん! ぷんぷん!
その素敵な会合を 木の上より俯瞰する
蝉のような耳をしたおばあさん
「うそつきぼうや!」
蝉のような耳をしたおばあさん
「うそつきぼうや!」
ぷんぷんぷん!
その素敵な会合を 木の上より俯瞰する
蝉のような顔をしたおとうさん(代表者でもあるのだ)
「あいや あな おそろしや」
蝉のような顔をしたおとうさん(代表者でもあるのだ)
「あいや あな おそろしや」
こうして毎日
呼吸も忘れて身とも影ともつかずが重畳
そこから わんさと 子を積む山車 出て
厳粛 に おごそかに 真っ赤な橋脚 垂直に
呼吸も忘れて身とも影ともつかずが
そこから わんさと 子を積む
のぼる!!
赤色の肌をちらりとみせる 立派な髭 をもつ聖人
「いいかい諸君よ わたしは高きを恐れず進み
汚いものを無くそうと思うのだが
「いいかい諸君よ わたしは高きを恐れず進み
汚いものを無くそうと思うのだが
どうか!」
小さなつぶねたち
「お――!」
「お――!」
自身の立派な象徴を直視しながら
蜃気楼のような背中を震わせる聖人
「う う ううーん!」
蜃気楼のような背中を震わせる聖人
「う う ううーん!」
どうやら彼はもう一声ほしいようである
「ど ど どど どどど どどどど
どうか!!」
大きなつぶねたち
「おお――――――!!!」
「おお――――――!!!」
彼らの賛同に 聖人様はひどくご満悦なようで
仰向けになりながら
お天道さまに向けて黄ばんだ液体を吐き
こう叫んでいる
仰向けになりながら
お天道さまに向けて黄ばんだ液体を吐き
こう叫んでいる
「おい貴様ら!
無価値で無様で滑稽 な蝉 どもめが!
見ているか!
やったぞやったぞうやったのだ!
とうとうは私はやったのだー!」
無価値で無様で
見ているか!
やったぞやったぞうやったのだ!
とうとうは私はやったのだー!」
彼の顔面は 自身で吐いた
黄ばんだお勤めに覆われている
彼はどうやら ついにやり遂げたらしい
黄ばんだお勤めに覆われている
彼はどうやら ついにやり遂げたらしい
おめでとう!
おめでとう!
赤い肌を見せる名も無き聖人よ!
貴殿はとうとうやったのだ!
赤い肌を見せる名も無き聖人よ!
貴殿はとうとうやったのだ!
私のような下々の者には
到底理解できない類の偉業であるが
彼はおそらく何かをやりとげたのであろう
到底理解できない類の偉業であるが
彼はおそらく何かをやりとげたのであろう
おめでとう!
玉の緒溜まり 鳴き響 もす
ころり ころり ころころ ころり
どこからか
何か 鉄をこすりあわせた音のような
不愉快な音が聞こえる
何か 鉄をこすりあわせた音のような
不愉快な音が聞こえる
前から後ろから聞こえる
天と地の和解の証なのだろう
そう思いたい
そう思いたい
精一杯だ 皆一生懸命だ
誰が為に 誰の為に
ここは何処だ
お前は誰だ
お前はどこに立っている
お前は誰だ
お前はどこに立っている
「うーん」
件のおじいさん
「ううーん」
「ううーん」
件のおばあさん
「うーんうーん」
「うーんうーん」
件のおとうさん(かつて代表者であった)
「ううーん ううーん ううーん」
「ううーん ううーん ううーん」
苦しんでいる
何故かは分からないが
(本当は知っているのだが 教えることは出来ない)
苦しんでいる
何故かは分からないが
(本当は知っているのだが 教えることは出来ない)
苦しんでいる
遮るもの無き少年 ころころ
立派なおべべに赤帯垂らして
恥じらうことなく袖 から袖へと
ころころ ころころ ころころ ころころ
ころころ ころころ ころころ ころころ
ころころ ころころ ころころ ころころ
立派なおべべに赤帯垂らして
恥じらうことなく
ころころ ころころ ころころ ころころ
ころころ ころころ ころころ ころころ
ころころ ころころ ころころ ころころ
後ろ前だが かしこい聖人が言う
「大きな声ではいえないけれど
小さな声では聞こえませんな!」
「大きな声ではいえないけれど
小さな声では聞こえませんな!」
皆
「わははは! ちがいないちがいない!
君は実に趣 き深いなあ!」
「わははは! ちがいないちがいない!
君は実に
くらがりの中で蠢 くひかりをあつめて
こぼれて あつめて
こぼれて あつめて
子を棄 つる藪 は在れど 身を捨つる藪は無し
―そうこうしているうちにも―
死にたくはなしと鳴き叫んでいる
川となり 海となる
すべては千変し 万化し
その輪郭をぼかしながら
天高く
嗚呼 だが生きてこそ
呪われた 鬼の子供 と呼ばれ
篝火 の影絵となりて
唾 を吐かれて 泥をなげられて
それでも
諸手 かざして
蒼天 の縷々 を綴 る
それでも
望まれずに生まれて
愛を知らず枯れていく
ああ 愛を
誰か彼に愛を
愛を知らず枯れていく
ああ 愛を
誰か彼に愛を
枯れてなお
いろいろなものに接吻 をしながら
赤い背中をした彼は言う
「言われていたのだ! 言われていたのだ! 言われて!
彼は呪われた子であり!
全くもって■■■■■である!
赤い背中をした彼は言う
「言われていたのだ! 言われていたのだ! 言われて!
彼は呪われた子であり!
全くもって■■■■■である!
実際
彼に価値はない!
彼には何の価値はない!
彼の存在を喜ぶ者もいない!
彼は圧倒的にひとりだ!
彼の周りには誰もいない!
彼にはまるで希望がない!
微塵 の可能性もない!
彼には何の価値はない!
彼の存在を喜ぶ者もいない!
彼は圧倒的にひとりだ!
彼の周りには誰もいない!
彼にはまるで希望がない!
そうだ彼は無意味だ!
無意味で無価値で無様で滑稽だ!
絶望的だ!
本当に笑えるだろう!
おわらいぐさだ おわらいぐさ!
わらえるぞ あいつを見てみろ
みんな! 見ろ! みんな! あやつを見てみろ!
わらえるぞ わっはっは ああ わらえる
わらえるわらえるわらえてしかたがない」
おわらいぐさだ おわらいぐさ!
わらえるぞ あいつを見てみろ
みんな! 見ろ! みんな! あやつを見てみろ!
わらえるぞ わっはっは ああ わらえる
わらえるわらえるわらえてしかたがない」
誰のことを指しているのだろうか
皆 首を三百六十度 こてこてと傾 けてはみるものの
ちいとも想像がつかない
とにかく騒ぎに便乗することにしたようだ
皆 首を三百六十度 こてこてと
ちいとも想像がつかない
とにかく騒ぎに便乗することにしたようだ
うしろまえの動物たち
「しかたないしかたない! しかたがない!」
「しかたないしかたない! しかたがない!」
皆嬉しそうだ
「そうだろう!」
全身が焼けただれた男
「どうだ! それが私だ!」
「どうだ! それが私だ!」
真実を知り ひどく驚いた役者たち
「ぎゃあ! ぎゃふん! ぴゅっぴゅ!」
「ぎゃあ! ぎゃふん! ぴゅっぴゅ!」
皆の口からは大量の
琥珀色 の火虫が吹き出している
のたうちまわっている
喉を掻きむしっている
顔の大部分は凍りつき 崩れ落ち 剥がれ落ち
背中は炎に包まれている
のたうちまわっている
喉を掻きむしっている
顔の大部分は凍りつき 崩れ落ち 剥がれ落ち
背中は炎に包まれている
かなしいことだ
もう誰も救われない
おめでとう! おめでとう彼 のひと!
してやったり! だ!
してやったり! だ!
たとひ身をもろもろの
我が
つねに大衆の中にして 法を
願はくは我が
この
目を開く ひと
しんがりで
そうだ
これこそが真実だ
そうだ まさに真理
これこそが真実だ
そうだ まさに真理
気がつくと誰も居ない
何者もいない
あれほどの騒ぎが嘘のようだ
何者もいない
あれほどの騒ぎが嘘のようだ
ただ
夜空の中心で凍りつく
透明な川の純朴 なせせらぎだけが聞こえる
夜空の中心で凍りつく
透明な川の
全ては夢だった
全て夢の中の出来事
全て夢の中の出来事
ほんとうに かなしいことだ
千変し 万化し 枯れてなお
ちぎれちぎれもたかだかと
その川聊かの瑕瑾なく
すりすりと擦 れ合ふ
すりすり すりすり
枯れてなお 枯れてなお
枯れてもなお
ちぎれちぎれもたかだかと
その川聊かの瑕瑾なく
すりすりと
すりすり すりすり
枯れてなお 枯れてなお
枯れてもなお
そこに何の意味があろうか
私にはわからない
誰にもわからない
もうここには誰もいない
誰にもわからない
もうここには誰もいない
天の庭 樹のひと曰く
―後編 本編―
おぼろげに朧 の橋を渡っていると
宙 を呼ぶ声が聞こえる
「宿報である」と言う叫びだ
その声は次第に験仏 の代弁として
眼下 月光あまねし大河を ひた流れる現未 と結び
灼熱の虹へと姿を変えていく
眼下 月光あまねし大河を ひた流れる
灼熱の虹へと姿を変えていく
「いずくより ああ 生れて いずこ」
―天の庭へ―
彼のひとの
あまりにも まぶしすぎて
誰も 気がつくことは無い
かなしいことだ
ほんとうに
おそろしいことだ
ほんとうに
ほんとうに
おそろしいことだ
ほんとうに
群がる落葉たちが口々に叫んでいる
「枯れ■■■■し! 朽ち■■■■し!」
「ここは寒い ここは熱い」
「腸 が凍る! 腸が燃える!」
「ここは寒い ここは熱い」
「
呪われた鬼の子供は澱 み
日輪の大つぶに揺れながら
流れ木の鎖 りをれかへる
塞 きる六識 の縷々と綴り
日輪の大つぶに揺れながら
流れ木の
今日も生きてこそ
明日も生きてこそ
枯れてなお
影の地につきささる
灼熱のたばしり朽ちてなお
明日も生きてこそ
枯れてなお
影の地につきささる
灼熱のたばしり朽ちてなお
「いいか 小さなものも 大きなものも
皆 必ず 救われない
絶望的だ」
皆 必ず 救われない
絶望的だ」
あまねく 無量 ・無辺光 無碍 ・無対 ・光炎王 清浄 ・歓喜 ・智慧光 不断 ・難思 ・無称光 超日月光 を放ち 塵刹 を照らす
一切の群生 光照 を蒙 る
一切の
この川の 何処へ行く
いづくより 生れて いづこ
いづくより 生れて いづこ
それでも
生きてこそ
生きてこそ
生きてこそ
なにくそ こなくそ
生きてこそ
それでこそ
なにくそ こなくそ
生きてこそ
それでこそ
今日もまた 生きてこそ
一秒先を生きてこそ
二秒先を生きてこそ
三秒先を生きてこそ
今日も明日も明後日も来週も来月も来年も
生きてこそ
一秒先を生きてこそ
二秒先を生きてこそ
三秒先を生きてこそ
今日も明日も明後日も来週も来月も来年も
生きてこそ
「そうだ そうだ!
俺はお前を愛してやるぞ!
俺だけはお前を愛してやるぞ!」
俺はお前を愛してやるぞ!
俺だけはお前を愛してやるぞ!」
天の庭にて 赤い背中の男曰く
(編者注) この色の部分は歌詞カードに記載はないが(ほぼ確定で)歌っている部分です。
(注2) この色の部分も歌詞に記載はなく聞き取りが困難であるものの、「仏説無量寿経」および「正信偈(正信念仏偈)」からの引用と推測されている部分です(指摘コメントがあった動画: https://youtu.be/KzpYPWecJHI)。
(注2) この色の部分も歌詞に記載はなく聞き取りが困難であるものの、「仏説無量寿経」および「正信偈(正信念仏偈)」からの引用と推測されている部分です(指摘コメントがあった動画: https://youtu.be/KzpYPWecJHI)。