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カグランジ - (2023/05/06 (土) 09:28:02) のソース

** カグランジ / 生きてこそ~特別版~ / あさき

&ruby(せんぺん){千変}し &ruby(ばんか){万化}し 枯れてなお
ちぎれちぎれも たかだかと
その川 &ruby(いささ){聊}かの&ruby(かきん){瑕瑾}なく
すりすり すりすりと&ruby(こす){擦}れ合ふ
枯れてなお 枯れてなお

&ruby(さえぎ){遮}るもの無き名月 はんなり
立派なおべべに 赤帯垂らして
恥らうことなく山から川へと
ころころ 転んで
みんみんの声 届けてくれたのさ

ぴょんぴょん跳んではそうぞうしいが
ぴんとひらめいた かしこい彼は言う

「大きな声ではいえないけれど
小さな声では聞こえませんの!」

&ruby(げっしょく){月蝕}は刻々とすすんでいる
&ruby(よぜみ){夜蝉}が鳴いている
死にたくはなしと鳴き叫んでいる
&ruby(しかばね){屍}には&ruby(らくよう){落葉}が積もり
川となり 海となる
すべては千変し 万化し
その輪郭をぼかしながら
天高く遠く一片の雲に過ぎず

だが生きてこそ

呪われた&ruby(おにご){鬼子}と 呼ばれ
&ruby(つば){唾}を吐かれて 泥をなげられて
それでも &ruby(もろて){諸手}かざして
&ruby(そうてん){蒼天}の&ruby(るる){縷々}を&ruby(つづ){綴}る

望まれずに生まれて
愛を知らず枯れていく
愛を 誰か彼に愛を

枯れてなお

----
** 生きてこそ / あさき
- long ver. (アルバム「天庭」収録)

―前編―

&ruby(せんぺん){千変}し &ruby(ばんか){万化}し 枯れてなお
ちぎれちぎれもたかだかと
その川&ruby(いささ){聊}かの&ruby(かきん){瑕瑾}なく
すりすりと&ruby(す){擦}れ合ふ
すりすり すりすり
枯れてなお 枯れてなお

この川の どこへ行く
いづくより &ruby(うま){生}れて いづこ

ねんねこに沈み 弾け飛び ぴゅっぴゅ

ぴゅっぴゅ ぴゅっぴゅ

蝉のような鼻をしたおかあさん
「このひとでなし!」

蝉のような口をしたおじいさん
「あいや おかしな なあ」

ぷんぷん! ぷんぷん!

蝉のような耳をしたおばあさん
「わあ ちんちくりん!」

ぷんぷんぷん!

蝉のような顔をしたおとうさん(代表者でもある)
「あいや みにくいもの におう におうぞ」

&ruby(さえぎ){遮}るもの無き名月 はんなり
立派なおべべに赤帯垂らして
恥じらうことなく山から川へと
ころころ 転んで
みんみんの声 届けてくれたのさ

ぴょんぴょん跳んではそうぞうしい(後ろ前である!)が
ぴんとひらめいた かしこい&ruby(か){彼}は言う

「大きな声ではいえないけれど
小さな声では聞こえませんの!」

それを聞いていた 彼の歩幅にあわせて
ぴょんぴょんと跳びまわる かわいらしい生き物たち
「わっはっは! あっはっは!
なんとも機知に富んだ 物言いであることか!」

ここには&ruby(あまた){数多}の
動物のような姿をしたものたちがいるようだ

うさぎのような長い耳を持つ ひと がいる
かめのような固い甲羅を持つ ひと がいる
たぬきのような挙動を見せる
抜き差しならない ひと もいるし
きつねのような 実に&ruby(ようえん){妖艶}な ひと もいる
大きな 象のような
ついぞない鼻をもった ひと までもがここにいるのだ
なんともはや! すばらしい!

皆一様に跳ねまわっている
実にほほえましい光景だ!

その素敵な会合を 木の上より&ruby(ふかん){俯瞰}する
蝉のような鼻をしたおかあさん
「あのひとでなし!」

その素敵な会合を 木の上より俯瞰する
蝉のような口をしたおじいさん
「あいや 不潔な なあ」

ぷんぷん! ぷんぷん!

その素敵な会合を 木の上より俯瞰する
蝉のような耳をしたおばあさん
「うそつきぼうや!」

ぷんぷんぷん!

その素敵な会合を 木の上より俯瞰する
蝉のような顔をしたおとうさん(代表者でもあるのだ)
「あいや あな おそろしや」

こうして毎日
呼吸も忘れて身とも影ともつかずが&ruby(じゅうじょう){重畳}
そこから わんさと 子を積む &ruby(だし){山車}出て
&ruby(げんしゅく){厳粛}に おごそかに 真っ赤な&ruby(きょうきゃく){橋脚} 垂直に

のぼる!!

赤色の肌をちらりとみせる 立派な&ruby(ひげ){髭}をもつ聖人
「いいかい諸君よ わたしは高きを恐れず進み
汚いものを無くそうと思うのだが

どうか!」

小さなつぶねたち
「お――!」

自身の立派な象徴を直視しながら
蜃気楼のような背中を震わせる聖人
「う う ううーん!」

どうやら彼はもう一声ほしいようである

「ど ど どど どどど どどどど

どうか!!」

大きなつぶねたち
「おお――――――!!!」

彼らの賛同に 聖人様はひどくご満悦なようで
仰向けになりながら
お天道さまに向けて黄ばんだ液体を吐き
こう叫んでいる

「おい貴様ら!
無価値で無様で&ruby(こっけい){滑稽}な&ruby(せみ){蝉}どもめが!
見ているか!
やったぞやったぞうやったのだ!
とうとうは私はやったのだー!」

彼の顔面は 自身で吐いた
黄ばんだお勤めに覆われている
彼はどうやら ついにやり遂げたらしい

おめでとう!

おめでとう!
赤い肌を見せる名も無き聖人よ!
貴殿はとうとうやったのだ!

私のような下々の者には
到底理解できない類の偉業であるが
彼はおそらく何かをやりとげたのであろう

おめでとう!

玉の緒溜まり 鳴き&ruby(どよ){響}もす

ころり ころり ころころ ころり

&color(MediumSlateBlue){どこからか}
何か 鉄をこすりあわせた音のような
不愉快な音が聞こえる

前から後ろから聞こえる

天と地の和解の証なのだろう
そう思いたい

精一杯だ 皆一生懸命だ 

誰が為に 誰の為に 

ここは何処だ
お前は誰だ
お前はどこに立っている

&ruby(くだん){件}のおかあさん
「うーん」

件のおじいさん
「ううーん」

件のおばあさん
「うーんうーん」

件のおとうさん(かつて代表者であった)
「ううーん ううーん ううーん」

苦しんでいる
何故かは分からないが
(本当は知っているのだが 教えることは出来ない)
苦しんでいる

遮るもの無き少年 ころころ
立派なおべべに赤帯垂らして
恥じらうことなく &ruby(そで){袖}から袖へと
ころころ ころころ ころころ ころころ
ころころ ころころ ころころ ころころ
ころころ ころころ ころころ ころころ

後ろ前だが かしこい聖人が言う
「大きな声ではいえないけれど
小さな声では聞こえませんな!」

皆
「わははは! ちがいないちがいない!
君は実に&ruby(おもむ){趣}き深いなあ!」

くらがりの中で&ruby(うごめ){蠢}くひかりをあつめて
こぼれて あつめて

子を&ruby(す){棄}つる&ruby(やぶ){藪}は在れど 身を捨つる藪は無し

―そうこうしているうちにも―

&ruby(げっしょく){月蝕}は刻々とすすんでいる
&ruby(よぜみ){夜蝉}が鳴いている
死にたくはなしと鳴き叫んでいる

&ruby(しかばね){屍}には&ruby(らくよう){落葉}が積もり
川となり 海となる
すべては千変し 万化し
その輪郭をぼかしながら
天高く&ruby(す){透}く一片の雲に過ぎず

&color(MediumSlateBlue){嗚呼 だが生きてこそ}

呪われた &ruby(おにご){鬼の子供}と呼ばれ
&ruby(かがりび){篝火}の影絵をなりて
&ruby(つば){唾}を吐かれて 泥をなげられて
それでも
&ruby(もろて){諸手}かざして
&ruby(そうてん){蒼天}の&ruby(るる){縷々}を&ruby(つづ){綴}る

望まれずに生まれて
愛を知らず枯れていく
ああ 愛を
誰か彼に愛を

&color(MediumSlateBlue){枯れてなお}

いろいろなものに&ruby(せっぷん){接吻}をしながら
赤い背中をした彼は言う
「言われていたのだ! 言われていたのだ! 言われて!
彼は呪われた子であり!
全くもって■■■■■である!

実際

彼に価値はない!
彼には何の価値はない!
彼の存在を喜ぶ者もいない!
彼は圧倒的にひとりだ!
彼の周りには誰もいない!
彼にはまるで希望がない!
&ruby(みじん){微塵}の可能性もない!

そうだ彼は無意味だ!

無意味で無価値で無様で滑稽だ!

絶望的だ!

本当に笑えるだろう!
おわらいぐさだ おわらいぐさ!
わらえるぞ あいつを見てみろ
みんな! 見ろ! みんな! あやつを見てみろ!
わらえるぞ わっはっは ああ わらえる
わらえるわらえるわらえてしかたがない」

誰のことを指しているのだろうか
皆 首を三百六十度 こてこてと&ruby(かたむ){傾}けてはみるものの
ちいとも想像がつかない
とにかく騒ぎに便乗することにしたようだ

うしろまえの動物たち
「しかたないしかたない! しかたがない!」

皆嬉しそうだ

「そうだろう!」

全身が焼けただれた男
「どうだ! それが私だ!」

真実を知り ひどく驚いた役者たち
「ぎゃあ! ぎゃふん! ぴゅっぴゅ!」

皆の口からは大量の
&ruby(こはくいろ){琥珀色}の火虫が吹き出している
のたうちまわっている
喉を掻きむしっている
顔の大部分は凍りつき 崩れ落ち 剥がれ落ち
背中は炎に包まれている

かなしいことだ

もう誰も救われない

おめでとう! おめでとう&ruby(か){彼}のひと!
してやったり! だ!

&color(DarkGray){&ruby(りよく){離欲}と&ruby(しんじょうねん){深正念}と &ruby(じょうえ){浄慧}とをもつて&ruby(ぼんぎょう){梵行}を&ruby(しゅ){修}し &ruby(むじょうどう){無上道}を&ruby(しど){志求}して &ruby(しょてんじん){諸天人}の師とならん}
&color(DarkGray){たとひ身をもろもろの&ruby(くどく){苦毒}のうちに&ruby(お){止}くとも}
&color(DarkGray){我が&ruby(しんぎょう){心行}を知らしめん}

&color(DarkGray){&ruby(しゅう){衆}のために&ruby(ほうぞう){法蔵}を開きて 広く&ruby(くどく){功徳}の&ruby(ほう){宝}を&ruby(せ){施}せん}
&color(DarkGray){つねに大衆の中にして 法を&ruby(と){説}きて&ruby(ししく){獅子吼}せん}
&color(DarkGray){願はくは我が&ruby(くえ){功慧}の力 この&ruby(さいしょう){最勝}の&ruby(そん){尊}に等しからん}
&color(DarkGray){この&ruby(がん){願} もし&ruby(こっか){剋果}すべくば &ruby(だいせん){大千}まさに感動すべし}

&ruby(てきぜん){的然}として日の下
目を開く ひと
しんがりで&ruby(つ){吊}る ひと
&ruby(しょうがく){正覚}とすがる ひと

&ruby(がしつ){我執}に&ruby(く){喰}われ 枯れていく 其のひと

そうだ
これこそが真実だ
そうだ まさに真理

気がつくと誰も居ない
何者もいない
あれほどの騒ぎが嘘のようだ

ただ
夜空の中心で凍りつく
透明な川の &ruby(じゅんぼく){純朴}なせせらぎだけが聞こえる

全ては夢だった
全て夢の中の出来事

ほんとうに かなしいことだ

千変し 万化し 枯れてなお
ちぎれちぎれもたかだかと
その川聊かの瑕瑾なく
すりすりと&ruby(こす){擦}れ合ふ
すりすり すりすり
枯れてなお 枯れてなお
枯れてもなお

そこに何の意味があろうか

私にはわからない
誰にもわからない
もうここには誰もいない

                天の庭 樹のひと曰く


―後編 本編―

おぼろげに&ruby(おぼろ){朧}の橋を渡っていると
&ruby(そら){宙}を呼ぶ声が聞こえる

&ruby(じゅかい){受戒}せんと数多の落葉たちの

「宿報である」と言う叫びだ

その声は次第に&ruby(けぶつ){験仏}の代弁として
眼下 月光あまねし大河を ひた流れる&ruby(げんみ){現未}と結び
灼熱の虹へと姿を変えていく

「いずくより ああ 生れて いずこ」


―天の庭へ―

&ruby(あま){天}つ日の&ruby(ふじょう){不請}の清く
彼のひとの&ruby(あわい){間}をすり抜ける
あまりにも まぶしすぎて 
誰も 気がつくことは無い

かなしいことだ
ほんとうに
おそろしいことだ
ほんとうに

&ruby(あんたん){暗澹}たる中天を&ruby(また){跨}ぐ灼熱の&ruby(はしご){梯子}に
群がる落葉たちが口々に叫んでいる

「枯れ■■■■し! 朽ち■■■■し!」

呪われた鬼の子供は&ruby(よど){澱}み
日輪の大つぶに揺れながら
流れ木の&ruby(つが){鎖}りをれかへる
&ruby(せ){塞}きる&ruby(ろくしき){六識}の縷々と綴り

今日も生きてこそ
明日も生きてこそ
枯れてなお
影の地につきささる
灼熱のたばしり朽ちてなお

&color(MediumSlateBlue){「いいか 小さなものも 大きなものも}
&color(MediumSlateBlue){皆 必ず 救われない}
&color(MediumSlateBlue){絶望的だ」}

&color(DarkGray){あまねく &ruby(むりょう){無量}・&ruby(むへんこう){無辺光} &ruby(むげ){無碍}・&ruby(むたい){無対}・&ruby(こうえんのう){光炎王} 清浄・歓喜・&ruby(ちえこう){智慧光} 不断・&ruby(なんじ){難思}・&ruby(むしょうこう){無称光} &ruby(ちょうにちがっこう){超日月光}を放ち &ruby(じんせつ){塵刹}を照らす}
&color(DarkGray){一切の&ruby(ぐんじょう){群生} &ruby(こうしょう){光照}を&ruby(こうむ){蒙}る}

それでも
生きてこそ

生きてこそ
なにくそ こなくそ
生きてこそ
それでこそ

今日もまた 生きてこそ
一秒先を生きてこそ
二秒先を生きてこそ
三秒先を生きてこそ
今日も明日も明後日も来週も来月も来年も
生きてこそ

「そうだ そうだ!
俺はお前を愛してやるぞ!
俺だけはお前を愛してやるぞ!」

             天の庭にて 赤い背中の男曰く

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(編者注) &color(MediumSlateBlue){この色}の部分は歌詞カードに記載はないが(ほぼ確定で)歌っている部分です。
(注2) &color(DarkGray){この色}の部分も歌詞に記載はなくほとんど聞き取れないものの、「仏説無量寿経」および「顕浄土真実教行証文類」からの引用でないかと推測されている部分です(該当コメントがあった動画: https://youtu.be/KzpYPWecJHI)。
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