アレン・ローズクォーツ。 ゼロス・ワイルダー。
リシェル・メルゲンハイム。
「戦闘開始…って」
「所よ」
互い、戦いの火蓋が切って落とされた――
「――あ、でもちょっと待ってくれないかしら?」
…と思った矢先、リシェルがふと思い立って声をあげる。 ガクッ! と勢いを削がれる様にゼロスがオーバーにずっこけた。
「あたた… 一体何さ、リシェルちゃーん」
「今、私の用事があるのは『コトナ』って子だけなの。 …そう言えば、隣のあなたはあの時一緒に居たわね。どこに居るか知ってるかしら?」
リシェルはアレンを指して尋ねる。
「…コトナさんは、今は小説家さんと一緒のはずです。 首尾よく、ゼルガディスさんと会えていれば良いのですが…」
アレンの回答を聞いて、リシェルは内心舌打ちをした。 …可能なら真っ先にコトナを発見して殺害し、証拠を消し去ってしまいたかったのだが。
「…そう。 なら、私がわざわざ単独で探しに来ることも無かったわね。 損したわ」
「単独……誰かと組んでいたんですか、あなたは?」
アレンの問いにリシェルは素直に頷いて見せ、続けて答えた。
「あの時命からがら逃げ出した先で、当の"ゼルガディスさん"とバッタリ遭遇したのよ。 …あなた達の居るこの町に戻ってきたのは、その為よ」
「…と言うことは、その為にコトナさんを探しに来たんですか?」
「ええ。 …どこに居るか知ってるなら、そっちに合流した方がいいかもしれないわね」
アレンに対して、そう促すようにリシェルは言う。
アレンはそれを汲んだようで、頷くと先導すべく先に駆け出す。
…が、アレンは足を止める。 ゼロスが行こうとしなかったのが気になったのだ。
「…ゼロスさん?」
「――ん、ああ、悪いアレン。 確かにコトナちゃんは心配だ」
どことなく煮え切らない様子のゼロス。 それを見てか、リシェルがアレンに申し訳無さそうに言った。
「あら…… ゴメンなさい、アレン…さん? ちょっと先に行ってて貰えるかしら。私はゼロスと一緒に行くわ」
急にそんな事を言い出したリシェルに、アレンはきょとんとした顔で反応を返してしまう。
「え? …いえ、でも一緒の方が……」
「…ゼロスとちょっと話があるの。 あの時は急に変な別れかたしちゃったから、色々と…ね?」
何が色々なのだろう?
…などと思ううちに、リシェルがゼロスに近付いて…いや、これは近付くと言うか寄って、身体を寄せて、むしろ抱き付いて――
「――あ、わ、わかりました。 じゃあ、二人ともお気をつけて… 先にコトナさんの所に行きますね」
アレンとて大人だ。 状況的に今それどころでないとは思いつつも、そういう状況だからこそそういう事もあるのだろうか… と、無理矢理納得して向こうへと走っていく。
あとに残ったのは、殆ど密着状態の二人。
「…でひゃひゃ、アレンには悪い事しちまったかな~」
「物分りのいい素直な人ね。 …騙され易そうで心配だけど、ちゃんと察してくれて安心したわ」
ゼロスの首の後ろに、リシェルが腕を回す。
「……で? なーに考えてるんだ、リシェルちゃん?」
少々の冷ややかさを含んだ声で、ゼロスがそう言った。 その片腕はリシェルの背に回しつつ、片手は腰に下げた光の剣に掛けて警戒している。
「何って…貴方に会いたかったから。 …なんて言って、納得したりはしないわよねぇ?」
「…それがもし本当なら、俺様嬉しくてもう一度リシェルちゃんと組んじゃうかも知れねーなぁ、でひゃひゃ!」
ゼロスがそういい終わるか終わらないかのうちに、リシェルの唇がゼロスのそれに重ねられていた。
「…件のゼルガディスが『コトナに会って謝りたい』って言い出したし、まさか彼女を手に掛けようとしたなんて言えないじゃない?」
わずかに重ねられた唇を離すと、呟くようにリシェルは言った。
「へーぇ……それでもしかして、バレない内にコトナちゃんを始末しようと単独でやって来たってのかな?」
「ふふ…結局、あてが外れちゃった様子だけど…ね。 今は少し途方に暮れてるわ。 どうしようかしら……」
そう言って、リシェルは体重を預けるようにゼロスにもたれかかる。
「…あの小説家にゃ、何かしら勝算みたいなのがあるみたいだけどな。 これがどうにかならない事には、生き残るのだってままならないだろうさ」
そう言ってゼロスは、リシェルの首に嵌められた首輪をトントンと軽く指でノックして示す。
小説家は――首輪を、何とか外そうと画策しているのか。 リシェルはそう受け取った。
「……どっちにしても、私は生存率の高い案を採りたいわ。 命あっての物種って、よく言うものね」
「ありゃ…そういう所はリシェルちゃんと俺様って、気が合うんだな~」
「どちらかと言うと、私と貴方は似ている気がするもの…。 すました顔で、心にも無い事が言えそうな辺りとか…ね?」
リシェルはそう言いながら、ゼロスの頬を撫でるように手を添える。
「…おー、怖いねぇ。 いつ後ろから吹っ飛ばされるかわかったもんじゃないな」
「その前に、貴方に私が斬られるかもしれないわね。 …でも心配いらないわ。こんな風にくっついてたら、私は下手に貴方に仕掛けられないし」
リシェルの攻撃手段は、手持ちの手榴弾と高出力のオリジナル魔法。 ゼロスどころか彼女自身を巻き込みかねないため、使えないのだ。
「今仕掛けても、私の生存率は低いわ。 もとより、私が直接手を下して私が不利益を被るなんて、全く御免よ。割に合わないわ」
「でひゃひゃ…そういう割り切った考え方も、俺様嫌いじゃないなぁ」
「ふふ… それに、私…」
「それに…?」
次の言葉を口にする直前に、リシェルは僅かに微笑んで見せた。
「…それに私、貴方みたいな男は嫌いじゃないもの。 会いたかったのも…全くの嘘じゃないのよ?」
「どうだかなぁ。 …それに万一本気にしたら俺様、狼になっちまうかもしれないぜ?」
「あら…… それなら、私は狼に抱かれた羊でも構わないわ。 …それとも、雌犬の方が良いかしら?」
「…で、結局どうすんのさ、リシェルちゃん?」
コトナは結局、目当てのゼルさんに会えただろうか。 二人連れ立って、彼らがいると思われる方向へ急ぐ。
「とりあえず、誠意を持って謝れば許してくれるのかしらね?」
ダメならゼロス、貴方と駆け落ち紛いに一緒に来てもらおうかしら。 そんなリシェルの呟きを、何となく複雑な面持ちでゼロスは聞き流していた。
【G3 街の電波塔入り口・夕方】
【名前・出展者】ゼロス・ワイルダー@テイルズオブシンフォニア ラタトスクの騎士
【状態】健康
【装備】光の剣@スレイヤーズ
【所持品】基本支給品一式
【思考】基本:適当に生き残る。打倒主催より、逃げる事を優先
1:さてさて、コトナちゃんは無事だろうかね
2:相変わらず気が抜けねーな、リシェルちゃんは。 妙な事しでかさないように気をつけないと
【名前・出展者】リシェル・メルゲンハイム@PQR
【状態】疲労(戦闘にはぎりぎり支障なし)
【装備】手榴弾×75個ぐらい エメラルドリング@テイルズオブシリーズ
【所持品】基本支給品一式
【思考】基本:生き残る。ゲームにも乗るが生存を優先
1:生き残る率の最も高い選択が大事よね…
2:ゼロスは味方につけて損は無いわね
3:コトナって子や他の連中に、果たしてまともに受け入れてもらえるかしら…?
4:首輪を外す事が出来たら、確かに生存率は飛躍的に上がるわね。 価値はあるわ
* * *
「おや、遅かったねアレン君… 君一人だけか」
アレンがそこにたどり着くと、真っ先に声を掛けてきたのは小説家だった。
「あ、ええと…… 一応、ゼロスさんは無事のはずです。 それより…?」
アレンが見れば、向こうにコトナとゼルさんらしき姿(あれ、でもあれ女物の服…?)の人物。
小説家はやや離れたところで見守っているような状況だった。
「見ての通り、お邪魔したら悪いと思ってね」
こっちもか… と、アレンは溜息をつかざるを得なかった。
【F3 ほぼ街の中・夕方】
【名前・出展者】アレン・ローズクォーツ@セイラ
【状態】けっこうな疲労
【装備】スレイヤーズ呪文の束@ゴキブリ 糸
【所持品】基本支給品一式
【思考】基本:出来る限りの人を救い、このゲームを終了させる
1:どうしてあっちもこっちもイチャイチャと…
2:…ゼロスさん、無事のはずだけど。
※アトワイトから晶術の知識を得ました
【名前・出展者】小説家@リアクション学院の夏休みエピローグ
【状態】所々に擦り傷(ほぼ直っている) 魔力切れ
【装備】魔血魂(デモン・ブラッド)のタリスマン@スレイヤーズ
【所持品】基本支給品一式 氷のフルート×10@みろるん
【思考】基本:主催を倒し、ゲームを終了させる
1:やれやれまったく
2:魔力が早く回復して欲しい
* * *
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最終更新:2008年12月16日 16:39