――ザザッ。
テレビが灰色の画面になって、煩い音を立てた経験は誰でもあるだろう。丁度、そんな感じの音が聞こえた。
『――ご機嫌麗しゅう皆様方…ですぅ』
まだ幼さを残す少女の声が辺りに響き、放送が始まったことを知らせる。その後に続いたみろるんの挑発的な言葉に、ゼルガディスは舌打ちした。
デイパックから名簿と筆記用具、そして地図を取り出す。禁止エリアと死亡者の発表が行われるのだ。
発表された禁止エリアは「G1、A4、B4」の3つ。それぞれが地図に禁止エリアとなる場所になんらかの目印をつける。幸い、この付近ならまだ安全そうだ。
繰り返さないと言いつつ、2回繰り返した禁止エリア発表を聞き終える。――次は、死者の発表だ。
発表された死亡者は、地図のように名簿に目印をつけていく。
(コトナは――死んではいないだろうか)
ゼルガディスは一回湖に突き落としてしまった、謝るべき相手のことを思い浮かべる。例え湖から助けられたとしても、彼女は一般人だ。もしかしたら――ということもある。
しかし、“長月コトナ”の名前が呼ばれることはなかった。ゼルガディスは安息の息を吐く。……そして放送が終わった。
「そんな……8人も……」
レベッカが今にも泣きそうな顔で震えているのを、霊夢が宥めている。そう、彼女は医者だ。“ゲーム”が始まって6時間で、8人もの人間がその命を失ったのだ。レベッカのショックは大きいだろう。
放送が来る度に彼女はまた、悔しさと悲しみで震えるのだろうか。
* * *
数分後、レベッカがようやく落ち着いた。ところで、リシェルはある興味を抑えられずにいた。その対象は、ゼルガディスだ。
一見岩肌に見えるそれは本当に岩で出来ているのか? だとしたら、重さはどのぐらいだろうか。溢れる疑問は収まることを知らない。
ふと、湖に視線が行く。――もし、彼が本当に岩で出来ているのだとしたら、浮き上がらずに沈むのだろうか。
「下手したらそれ死ぬんじゃね?」とかそういったことは全く考えず、彼女は考えを行動に移した。誰にも気づかれないようゆっくりゼルガディスに近づき、そして事故を装ってわざとらしく――躓いた。
「な――!?」
次の瞬間、大きな音と飛沫を上げてゼルガディス=グレイワーズは湖に落ちた。……計画通り。レベッカが慌てるのを横目に、リシェルはニヤリと笑った。
……彼女の名誉の為に一応言っておくが、彼女にゼルガディスに対する殺意は全くない。ただただ好奇心のまま行動しただけである。
その後、なんかもう必死で這い上がろうとするゼルガディスを彼の支給品である伝説のおたまを使い、なんとか3人がかりで引き上げた。「死ぬかと思った」と小さく呟いた時の彼の表情を一生忘れることはないだろう。
「ごめんなさい。私としたことが、うっかり転ぶなんて……」
「……い、いや……いい。気にするな……」
そう答えるのが精一杯なのか、本当に「気にするな」と思っているのか。おそらく前者だろう。どこか凹んでいるように見える。
しかしそんなゼルガディスに追い討ちをかけるように、霊夢がある衣服を持ってゼルガディスの前に立った。……輝かしいぐらいの笑顔で。
「ねえ、ゼル。びしょびしょじゃ何かと不便よね? ほら、この服着ましょうよ」
「い、いやしかしだな……」
「ゼルガディスさん、そのままの格好だと風邪を引いてしまいます」
「いや、だから……」
「風邪は万病の元なんですよ」
レベッカの方は素で風邪をこじらせることを心配しているのだろう。しかし、霊夢は違う。明らかに楽しんでいる。
慌ててリシェルに助けを求める視線を送る。しかしリシェルはどこかニヤニヤした表情でゼルガディス達を見ている。……彼女もまた、楽しんでいた。
「ちょ、ちょっと待て! 俺は男だぞ!」
「そうね。それがどうかしたの?」
「あのなぁ! お前達には恥じらいってもんがないのか!?」
「あ、私なら大丈夫ですよ。医者ですから、男の人の裸とか見慣れてるんです」
「私はそういうの気にしないから安心しなさい」
霊夢が服を持ってじりじりと近寄ってくる。……高確率で切れそうな頼みの綱だが、ないよりはマシだ。リシェルに再び助けを求める視線を送る。
「あら、私も気にしないわよ」
頼みの綱は、あっさり切れた。
* * *
「クソっ、なんで俺がまたこんな……!」
「だ、大丈夫ですよゼルガディスさん! に、似合ってます!」
『そうそう! 似合ってる似合ってる。ププッ』
「そうよ、似合って……ブフッ」
そこには、出来れば黒歴史にしたかった“あの衣服”を纏ったゼルガディス(もしくはルル)が立っていた。その近くには懸命にフォローを入れるレベッカと笑いを堪える霊夢がいた。
一部始終を見ていたリシェルはといえば、「全身岩肌なのね」とか「それじゃあ沈んでも仕方ない」とか考えていた……らしい。
しかも霊夢の悪乗りで化粧まで施され、やや青みのかかった岩肌は白く染まっていた。途中でレベッカが止めたお陰で、口紅はせずに済んだが……。
「大丈夫よ。まさか女装だなんて誰も思わないわ」
「それはそれでかなり虚しいんだが……」
「お洋服が乾くまでですから! ね?」
そんな中シャルティエは笑いを必死に堪えているようで、堪えるような笑い声がコアクリスタルから漏れていた。
「……さて、そろそろこれからどうするか決めましょうか」
自然を装って話を切り出したリシェルを、ゼルガディスはキッと睨みつけた。しかし、リシェルはそれすらも全く気にしていなかった。
【E4 湖のほとり 昼過ぎ】
【名前・出展者】レベッカ@テイルズオブジアビス更なる悲劇
【状態】疲労(戦闘に支障はない)、僅かな迷い
【装備】ソーディアン・シャルティエ@テイルズオブディスティニー
【所持品】魔理沙の箒@東方 アクアマリンの指輪@テイルズオブファンタジア 基本支給品一式
【思考】
基本:あの子(ララ)の遺志を継ぎ、この状況を打破する
1:出来れば触れない方がいいのかも……
2:これからの方針を話し合う
3:シャルティエをリオン・マグナスの元へ届ける。また、レニーファを探す
4:出来ればクロにはもう会いたくない
※クロのことは話していません。また、話すつもりはありません
※譜術の効果が減少するのではないかと推測しています
【名前・出展者】博麗 霊夢@東方Project
【状態】健康
【装備】鉈@ひぐらしのなくころに
【所持品】支給品一式
【思考】基本:主催者打倒の為の仲間を探す
1:似合ってる似合ってる。何も問題ないわよ
2:コトナを探す
3:ゲームに乗っている奴はぶっ飛ばす
※:リシェルがゲームに乗っている事には気付いていません
【名前・出展者】ゼルガディス=グレイワーズ@スレイヤーズ
【状態】やや疲労、右足に火傷(ある程度治療済み)、ルルさんセット着用中
【装備】万能包丁@テイルズオブデスティニー2
【所持品】支給品一式、お料理セット@テイルズオブデスティニー2、ロリポップ@テイルズオブジアビス
マジカルポット@テイルズオブデスティニー2、ルルさんセット@スレイヤーズ
【思考】基本:不明(少なくともマーダーではない)
1:ああ、前にもこんな目にあったような……
2:今後の方針を決めたい
3:コトナに会って謝りたい
4:あの子供(フレイア)の使っていた術も、まさか……
※リシェルがコトナと会っていて、攻撃を仕掛けた事は知りません
※洋服は付近の木に干してあります
【名前・出展者】
リシェル・メルゲンハイム@PQR
【状態】逃走と移動でのちょっとの疲労
【装備】手榴弾×75個ぐらい エメラルドリング@テイルズオブシリーズ
【所持品】基本支給品一式
【思考】基本:ゲームに乗って生き残る
1:なるほどねぇ
2:方針を決める。ただしG3方面には行かない
3:霊夢とゼルガディス、レベッカを利用して生き残る
4:主催者を倒すのも選択肢の一つかしら
※:コトナに遭遇して攻撃を仕掛けた事は伝えていません
【名前・出展者】ソーディアン・シャルティエ@テイルズオブデスティニー
【思考】
1:それにしても坊ちゃんは何処だろう
2:坊ちゃーん
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最終更新:2008年11月27日 18:28