カボチャは、有用植物の一種である。普通熟した果実や種子を食用にする。
科名:ウリ科カボチャ属
学名:Cucurbita.sp
原産地:南北アメリカ
生態:つる性一年草
科名:ウリ科カボチャ属
学名:Cucurbita.sp
原産地:南北アメリカ
生態:つる性一年草
解説
カボチャは南北アメリカ大陸が原産地の植物で、一口に「カボチャ」と呼称しても様々な品種がある。
- セイヨウカボチャ(Cucurbita maxima)
- 二ホンカボチャ(C.moschata)
- ペポカボチャ(C.pepo)
- クロダネカボチャ(C.ficifolia)
- ミクスタカボチャ(C.argyrosperma)
このうち、わが国で栽培されるのはセイヨウカボチャ、二ホンカボチャ、ペポカボチャである。
まず我が国に最も早く渡来したのは二ホンカボチャで、室町後期にポルトガル船が豊後(大分県)に漂着した際、領主の大友宗麟にカボチャを献上したのが嚆矢である。九州地方でカボチャを「ボーブラ」と呼ぶのは、ポルトガル語のAboboraが語源で、このカボチャ献上に由来するという。日本では当初観賞用であった。当時医学界の権威書であった「本草綱目」にカボチャの図が収録されているが「有毒である」と記されており、なかなか食用としては利用されなかった。しかし、江戸時代前期の元禄10年(1697年)になると、農学者・宮崎安貞によって「農業全書」が出版されたが、その書物にはすでにカボチャが登場しており、さらに同時期に本草学者・貝原益軒による生物百科事典「大和本草」にもカボチャに関する紹介がみられることから、このころにはすでにカボチャが人口に膾炙する者になっていたことは想像に難くない。こうして、「鹿ケ谷」「三毛門」「内藤」「干潟」「居留木橋」「鶴首」などの地方独特の品種が数多く作出されていった。
次いでセイヨウカボチャは幕末期(1863年)にわが国に入ってきたが、当初は東北や甲信越、北海道などの冷涼な地域で栽培されていた。当初はHubbardという果実の大きい品種があったが、この品種は果皮が硬く、マサカリか斧を使わないと割れなかったため、「マサカリカボチャ」の名称で呼ばれていた。さらに同時期にDeliciousという品種も導入されていた。これはHubbardほど果皮が硬くなく、また果肉の甘みが強いことから「カステラカボチャ」の名前で親しまれていた。しかし、在来のカボチャと異なり、やはり果実が大きいことがネックとなっていた。
そこで、昭和5年(1930年)には宮城県出身の農家が「芳香青皮栗」という品種を開発したところ、たちまちヒット商品となった。小ぶりな果形が人気を呼んだ。ほぼ近い時期には赤皮の「打木赤皮甘栗」が登場している。
やがて、日本は2度の世界大戦を経験したが、戦後にはカボチャ類は嫌われ者の野菜となっていた。食糧不足にさいなまれた過去を想起させるもののとして、一時は忌避の対象だったが、戦後10年たてば、食卓において欠かせない野菜となっていた。
1964年にはセイヨウカボチャの初のF1(一代交配)の品種・えびすが作出された。それまでの「芳香青皮栗」などの品種は本来の栽培時期をずらして栽培していたが、果形がゆがむという問題があった。この「えびす」とカボチャのいう品種は抑制・促成栽培の課題を解決し、しかも食味もずば抜けてよい品種だった。こうして、えびすカボチャは現在に至るまでロングセラー品種として君臨し、「えびす」作出から15年後には「みやこ」が作出され、「えびす」と共に利用され続けている。
そこで、昭和5年(1930年)には宮城県出身の農家が「芳香青皮栗」という品種を開発したところ、たちまちヒット商品となった。小ぶりな果形が人気を呼んだ。ほぼ近い時期には赤皮の「打木赤皮甘栗」が登場している。
やがて、日本は2度の世界大戦を経験したが、戦後にはカボチャ類は嫌われ者の野菜となっていた。食糧不足にさいなまれた過去を想起させるもののとして、一時は忌避の対象だったが、戦後10年たてば、食卓において欠かせない野菜となっていた。
1964年にはセイヨウカボチャの初のF1(一代交配)の品種・えびすが作出された。それまでの「芳香青皮栗」などの品種は本来の栽培時期をずらして栽培していたが、果形がゆがむという問題があった。この「えびす」とカボチャのいう品種は抑制・促成栽培の課題を解決し、しかも食味もずば抜けてよい品種だった。こうして、えびすカボチャは現在に至るまでロングセラー品種として君臨し、「えびす」作出から15年後には「みやこ」が作出され、「えびす」と共に利用され続けている。
ペポカボチャのわが国での本格的な普及は明治時代から大正時代とされているが、江戸時代前期(1608年)に再建された北野天満宮の蟹股の部分に、「金冬瓜」という植物の果実の木彫りがある。この「金冬瓜」はペポカボチャの一種であると牧野富太郎氏に推定されている。この「金冬瓜」は現在はほぼ見かけないが、当時はこれの味が薄くてまずいため、観賞用にしていたという。「牧野日本植物図鑑」にて特徴をうかがい知ることができる。
明治から大正にかけて中国から「攪糸瓜」という野菜が導入されているが、これが「金糸瓜」、いわゆる「ソウメンカボチャ」である。1970年代後半から欧米諸国からズッキーニが導入され、1980年代以降は日本でも栽培されるようになった。現在では市場に言ってズッキーニを見かけない日はないほど広く普及している。
明治から大正にかけて中国から「攪糸瓜」という野菜が導入されているが、これが「金糸瓜」、いわゆる「ソウメンカボチャ」である。1970年代後半から欧米諸国からズッキーニが導入され、1980年代以降は日本でも栽培されるようになった。現在では市場に言ってズッキーニを見かけない日はないほど広く普及している。
品種
セイヨウカボチャ
セイヨウカボチャは、葉は切れ込みの浅い丸みを帯びた掌状葉で、茎は円柱形で果梗は太く、コルク質である。
- 黒皮栗カボチャ
現在の主力の品種。偏球形で、果皮は黒緑色。果肉は濃い黄色で、果実の表面は少し凹凸があるか、つるりとしている。「えびす」「みやこ」「味平」など多くの品種が作出されている。以下の品種にも共通するが、果梗はコルク状で太い。
- 赤皮栗カボチャ
果皮が赤みの強いオレンジ色の品種。果実の重さは1㎏未満で、日持ちはあまりしない。果肉はほくほくとした食感と、しっとりとした食感を併せ持っている。食用のみならず、ハロウィンの提灯を作るのにも向く。「打木赤皮甘栗」「べにくり」「紅爵」などの品種がある。「打木赤皮甘栗」は頭頂部が尖る。
- 白皮栗カボチャ
果皮が灰色ないしは純白の品種。果肉の色も白みがかっていることもあるが、蔕が枯れていればよく熟しているサインである。甘みも強く、ホモ地もかなり良く、翌年の早春まで保存できることもある。「雪化粧」「白爵」「夢味」などの品種がある。
- 青皮栗カボチャ
果皮が灰緑色の品種。果実は編球形で、薄い縦溝が走る。果重は1kg内外で、家庭菜園でも栽培しやすい。白皮栗カボチャほどではないものの、保存性は高く、年内まで保存できる。
- 宿儺カボチャ
岐阜県の飛騨高山で栽培されてきたカボチャで、果実の形状はヘチマのように細長く、果皮は緑がかった灰色である。果実はほくほくとして甘く、ポタージュやお菓子にするとよい。皮が薄いため切りやすく、形をいかした調理がしやすい。
- コリンキー
打木赤皮甘栗カボチャとオーストラリアの品種を交配した品種で、形状は打木赤皮甘栗カボチャに似ている。本種は若いうちに収穫した黄色い果実をサラダやピクルスにする、いわゆる「サラダカボチャ」である。果実は熟すと赤くなり、ジャムにする。
- バナナスカッシュ
アメリカの伝統的な品種で、果皮はピンク色である。果実が長細いのが特徴だが、バナナのように曲がることはあまりない。名称の由来はその甘さであろう。現地ではスープやパイにして食べるという。ちなみに、新潟県上越市の伝統野菜に「ばなな南瓜」と呼ばれるものがあり、こちらも特徴が非常に似ているが、同一種かどうかは不明。
- オカメカボチャ
「ターバンスカッシュ」とも呼ばれる。セイヨウカボチャのなかでも異色で、子房が飛び出て帽子を被った男性の頭や巨大なきのこのような珍しい形状になる。原産地のアメリカでは果実をピューレやスープにして食べるが、ほくほく感はあまりなくて水っぽいため、日本人の口には合わないと思われる。我が国では果実の下部におかめやひょっとこの顔を描いたり、もしくはそのままで観賞用にする。
- ミニカボチャ
核家族向けに作出された品種で、果重は400kg以上1kg未満。家庭菜園でも支柱に這わせれば育てやすい品種である。「坊ちゃん」「栗っプチ」「ほっこり姫」「くり姫」「栗てまり」などさまざまな品種がある。栄養分も、普通のカボチャの4倍含まれており、味も普通のカボチャに比べて濃いという。
- アトランティックジャイアント
コンテスト用あるいは観賞用の品種で、オレンジ色の果実は100kgをゆうに越え、過去には1tにまで成長したという記録を持つ巨大カボチャ。多くは自重でひしゃげたような形状になり、きれいな球形に近いものは珍しいという。果実の味は薄いため、食用には向かない。ただし、種子はローストすると酒のつまみとして食べることができる。
二ホンカボチャ
ニホンカボチャはやや切れ込みの深い葉を持ち、葉の表面には白い散らし模様が入ることがある。茎は全体的に角ばっており、果梗は木質化し、果実と癒着して「座」ができる。
- 菊座カボチャ
上から見ると菊の花のような形状で、「カボチャ」と聞くと真っ先に思い浮かべるイメージに近いカボチャの品種である。果実は扁球形で、縦溝が走る。果皮は当初は緑色だが、熟すと褐色になり、表面に粉を吹いたようになるが、これは果糖がロウ状物質となったもので害はない。
「内藤カボチャ」は東京伝統野菜のひとつで、以前は消滅の危機にあったが、現在では地産地消の取り組みにより栽培面積が増加しつつある。こうした菊座系カボチャの伝統的な品種に「勝間南瓜」「三毛門」「白皮砂糖」などがある。
これ以外にも果実が全体的に小ぶりな「小菊」や黒ずんだ緑色の「日向14号」や「富津黒皮」、緑地に黄色い絣模様のはいる「会津早生」「土田」、蔓が延びない矮性の「鴻池蔓無」がある。
「内藤カボチャ」は東京伝統野菜のひとつで、以前は消滅の危機にあったが、現在では地産地消の取り組みにより栽培面積が増加しつつある。こうした菊座系カボチャの伝統的な品種に「勝間南瓜」「三毛門」「白皮砂糖」などがある。
これ以外にも果実が全体的に小ぶりな「小菊」や黒ずんだ緑色の「日向14号」や「富津黒皮」、緑地に黄色い絣模様のはいる「会津早生」「土田」、蔓が延びない矮性の「鴻池蔓無」がある。
- 縮緬カボチャ
菊座カボチャと形状や性質は似ているが、菊座カボチャより溝が浅いか、ほとんどない場合もある。表面は溶岩のような細かいいぼで覆われ、果肉は緻密な風味である。「愛知縮緬」「備前黒皮」がこれに該当する。
- 鹿ヶ谷カボチャ
もとは菊座型のカボチャであったが、栽培を重ねるにつれて突然変異を起こし、ヒョウタン型になったものである。果実は普通ヒョウタン型で、縦溝や多少のこぶがあるものの、果実の実る蔓の部位によって多少の差異が生じ、こぶの不鮮明なものや溝がないものもできることがある。種子は果実の下部に入っており、種子の入っていない上半分は、牛肉などの味の濃い食材と一緒に煮物にする。
- 鶴首カボチャ
首の長いヒシャクのような形状をした品種で、果皮は濃い緑色で黄色い絣のような模様があるが、熟して果皮が黄色ないしは柿色になってくると模様は目立たない。もともとは中国から伝わってきた品種であると推測されており、福岡県や宮崎県、愛知県で古くから栽培されている。二ホンカボチャの在来種の中では最も甘みが強く、てんぷらや煮物にはもちろん、菓子作りにも向く。沖縄県の島カボチャ(現地名はナンクワー)はヒシャク型ではなくひょうたん型だが、果皮の模様はよく似ている。
- バターナッツ
近年家庭菜園での栽培が増えている品種で、アメリカで作出された品種である。ヒョウタンと見まがうような形状で、果皮はベージュ色で、表面はつるつるしている。日本の在来種と違って水分が多く、煮物には向かず、ポタージュスープに向く。
- 韓国カボチャ
韓国名でエホバㇰ(エは若い、ホバㇰはカボチャの意)とも呼ばれ、若い果実をズッキーニのように調理して食用にする。本場韓国では輪切りにしたものを卵につけて焼くジョンという料理が人気である。熟すと表皮がクリーム色になり、風味はバターナッツに近くなる。
ペポカボチャ
葉は手のひら状に深く切れ込み、普通は模様はないがズッキーニや観賞用の品種は葉に白い模様が入ることが多い。果梗は木質化するという点では二ホンカボチャに似るが、果実と癒着する「座」ができない。
- ズッキーニ
若どりカボチャの代表格的品種で、果実はキュウリのような形状で、味はナスに似ている。果実はふつう黒みの強い緑色だが、黄色のものや緑色と薄緑色の縞模様のもの、薄緑色のものがある。果形はふつうキュウリ型だがテニスボール大の丸形の品種や円盤型の品種、鶴首型の品種がある。生食よりは洋風の煮物や焼き物、炒め物に向く。
- UFOズッキーニ
円盤型をしたズッキーニで、黄色や黒緑、黄緑色や白色がある。風味は普通のズッキーニと変わらない。熟して硬くなったものは観賞用にする。
- 鶴首ズッキーニ
鶴首型をしたズッキーニで、英語ではcrockneck squashと呼ばれる。果皮は鮮やかな黄色で、熟すとオレンジ色になる。果実の表面は細かいこぶがあってデコボコしている場合もあるが、このこぶがないこともある。
- ソウメンカボチャ
果実は俵型で、一見するとマクワウリを二回り大きくしたように見える。表面は黄色ですべすべしており、こぶや溝はない。まれに生育環境によっては緑色やオレンジ色の縦じま模様が入ることがあるが、食味に影響はない。果実を輪切りにして種子やワタ(胎座)を取り除き、15分強ゆでて冷水で冷やすと果肉がソウメンのようにほぐれてくる。このため、ソウメンカボチャないしは金糸瓜の名称で呼ばれる。ゆでた果肉をつけ汁で食べるほか、パスタソースをかけてもうまい。海外ではSpaghetti squashの名称で呼ばれる。
- オモチャカボチャ
小型の果実をつける園芸品種の総称である。果実の形状は丸形、ひょうたん型、菊座型、円盤型など多彩である。
果実の色合いも黄色や緑色、白身の強い黄色や橙色、黄色と緑のツートンカラーなどである。
果肉は繊維質で味は悪く、食感もぱさぱさとしているうえ、果皮がかなり硬いため食用にはせず、もっぱら観賞用やお盆のお供えとする。
果実の色合いも黄色や緑色、白身の強い黄色や橙色、黄色と緑のツートンカラーなどである。
果肉は繊維質で味は悪く、食感もぱさぱさとしているうえ、果皮がかなり硬いため食用にはせず、もっぱら観賞用やお盆のお供えとする。
種間雑種カボチャ
利用方法
果肉を煮たり、ポタージュスープにしたり、揚げ野菜やてんぷらとして食べるほか、炒め物や菓子の材料にされる。また、ゆでたものをつぶしてポテトサラダならぬカボチャサラダにするのもよい。
若い果実はキュウリのように漬物やサラダにする。種子はよく炒ったものの殻を外して塩を振って酒のつまみにするほか、乾燥させて虫下しやおできの薬に用いる。
また、食用にならない品種は観賞用やイベントの展示に利用する。おもちゃカボチャや「アトランティックジャイアント」はその利用法に最も向く品種である。
東南アジアでは葉や蔓の先、花を青菜の代わりに食していたという。わが国でもつるや葉を食用にすることはできるが、若干苦みがあるためしっかり加熱するのがよい。
若い果実はキュウリのように漬物やサラダにする。種子はよく炒ったものの殻を外して塩を振って酒のつまみにするほか、乾燥させて虫下しやおできの薬に用いる。
また、食用にならない品種は観賞用やイベントの展示に利用する。おもちゃカボチャや「アトランティックジャイアント」はその利用法に最も向く品種である。
東南アジアでは葉や蔓の先、花を青菜の代わりに食していたという。わが国でもつるや葉を食用にすることはできるが、若干苦みがあるためしっかり加熱するのがよい。