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1女史alternativ」を以下のとおり復元します。
810名前: 1投稿日: 2006/04/19(水) 19:13:34.05 ID:JTytwr9l0
でわ、>>808氏がやる前に投下をw 
設定は前回と同じ世界っていうことでw 






5月25日午後11時30分 

僕は暗い部屋の中に一人蹲っていた。 
不安と恐怖に苛まれながら必死に時間が過ぎるのを、ただひたすらに待っていた。 

部屋には、時計の針の音が響き続けている。 


825名前: 1投稿日: 2006/04/19(水) 20:00:08.02 ID:JTytwr9l0
ごめんね、食べるの遅くてごめんね、小学生の時よく先生に怒られてたからね 

 >>815-816 ありがとう (';ω;`)ウッ  ちょっと色々あって凹んでるんです・・ 

あ、訂正書きますね・・・ 



5月24日午後11時30分 

僕は暗い部屋の中に一人蹲っていた。 
不安と恐怖に苛まれながら必死に時間が過ぎるのを、ただひたすらに待っていた。 

部屋には、時計の針の音が響き続けている。 


826名前: 1投稿日: 2006/04/19(水) 20:07:56.70 ID:JTytwr9l0
5月15日午前9:00分 

アメリカ政府の発表から15日がたった。 
ネット上は相変わらず混乱していたけど、暮らしに変化はあまりなかった。(政府による通常通りの生活をおくるようにとの指示、加えて自衛隊の派遣のためでもあるんだろう) 

僕もいつもどおりの生活をおくっている。 
 ・・・空虚で意味など見出せない日常を。 
828名前: 1投稿日: 2006/04/19(水) 20:21:38.84 ID:JTytwr9l0
僕はいつもどおり朝食を作ると、テレビをつけ作ったそれを口に運ぶ。 

一人暮らしは気楽でいいが食事に関してはとてもめんどくさい。 
毎回の食事を作るとなるとかなり手間もかかる。 
僕はつまらないテレビを見ながら、もう昼飯は何にしようか考え始めた。こんなときに可愛い幼馴染がご飯を誘いにくれば良いのになw、気がつくと僕はあり得ない妄想に浸っていた。 
きっと、昨日2ちゃんでみた隕石スレのせいだろう。 
なんであの主人公はイラナイとか言ったんだろう?そんなことを考えながら僕は食器を片し、洗い始めた。 


そうだ、どうせなら休みだし外食にしよう、決めると僕は水道の水を止めた。 


835名前: 1投稿日: 2006/04/19(水) 20:35:30.19 ID:JTytwr9l0
5月15日午前10時06分 

「例の新型核爆弾は完成したのかね?」 
「はい、ネバダで行われた実験では完璧なデータをはじき出しました。」 
「人員の方は?」 
「そちらも万全です。現在、採掘のプロ、ハリー・B・スタンバーはじめ様々な分野の専門家を招集、訓練しています。あと5日もあれば実行に移せます。」 
「わかった。・・・ご苦労、下がってかまわんよ。」 
「は、失礼いたします、大統領。」 

係官が去った後、大統領は緊張が途切れたようにその場に蹲った。 
「・・・・・・・・・・・・・神よ、どうか我らの高潔なる行いを見守りたまえ・・・・。」 

彼は震えながら何度も何度も祈っていた。 


841名前: 1投稿日: 2006/04/19(水) 20:50:33.67 ID:JTytwr9l0
 >>837 乙です!!すごい!! 




5月15日午後2時10分 

昼食を終えて、店を何件か覗いてから僕はある場所に向かっていた。 

15分ほど町外れに歩くと到着した。 
そこは小高い街外れの、街が一望できる見晴らしのいい場所。昔から僕はこの場所によく来ていた。学校をサボって来たこともあったっけ。 


僕は適当な木の根元に座る。5月の、心地よい風が吹く。 
瞬間、背後に人の気配を感じた。ここにはめったに人は来ない、僕は驚いて勢いよく振り返った。 
845名前: 1投稿日: 2006/04/19(水) 21:04:22.57 ID:JTytwr9l0
そこには一人の女の子がいた。身長は高くはないが、細身で遠目からみてもスタイルの良さがわかった。 

こんなところに来るなんて・・・一体誰だろう? 
僕は声をかけようとして、すんでのところで躊躇した。 

彼女は青い目をしていた。 
栗色の髪の毛、整った綺麗な顔。 

が、外人さん!?ああ、英語の授業ちゃんと受けとけばよかった・・・orz 
僕が一人でテンパッっていると、彼女が話しかけてきた。 

「・・・・・・・・驚かせてしまって・・・ごめんなさい。」 
「お、おk~い!あ、あいむじゃぱにーず・・・ってあれ?」 

彼女は流暢な日本語を話してきた。 

特に表情を変えずに彼女は続けた。 
「・・・・日本語で・・・いいわよ?」 


852名前: 1投稿日: 2006/04/19(水) 21:22:54.76 ID:JTytwr9l0
「あ、そ、そうなんだ、あははは。」 
「・・・・・・・・・」 

やばい・・・女の子と話すのなんて久々だ・・・緊張する・・。 
また一人でテンパッていると彼女はズンズンと近づいてきた。 

僕の座っている所の隣まで来ると、彼女は僕の隣に座った。 

えええ?!な、何これ?????? 
彼女は僕の顔を覗き込んで話しかけてきた。 
「・・・・・・隣り・・・いい・・・・?」 
「う、うん・・・もちろん・・。」 
彼女の綺麗な髪がすぐ側を通る、同時にすごくいい香りがした。 

ドキドキとしていると彼女がきりだした。 
「・・・・・いい場所だね・・・あなたの場所・・・・なんだ」 
「僕のって訳じゃないけど・・・すごく好きな場所なんだ。」 
「そう・・・・・・。」 


それ以来ほとんど会話は無かったけど、なぜか僕はそれが気まずいとは思わなかった。 


856名前: 1投稿日: 2006/04/19(水) 21:38:31.30 ID:JTytwr9l0
どれくらいそうしていただろう?気がつくと日は傾いてきていた。 
不意に彼女は切り出した。 
「・・・・・・・・・・・・・・もう・・行かなきゃ・・。」 
「・・・・あ、うん・・。」 

彼女はふっとすばやく立ち上がると歩き始めた。 
そう言えば名前を聞いてなかった、僕は立ち上がると彼女の背中へ声をかけた。 
彼女が振り向く、 
「あの・・・名前は?・・・。」 
「私は・・・・・ハルカ・・・・・・・・・・・・あなたは?・・・・」 
僕も名乗る。 
「そう・・・・・・・いい名前・・・・ね・・・・」 
そう言うと、彼女は歩き出した。 

数歩歩くとまた振り返った。 
「・・・・・・・一緒にいてくれて・・・・・ありがとう・・・・。」 
「う、うん。・・・・・・・・また・・会える・・かな・・?」 
自然と僕はそんなセリフを言っていた。 
「・・・・・・・・そうね・・。」 
それだけ言うと彼女は歩きだした。 
もう振り返ることはなかった。 


885名前: 1投稿日: 2006/04/19(水) 22:52:22.18 ID:JTytwr9l0
な、なんか恥ずかしいなあ(*ノωノ) 

あの・・続き書きますね。 




5月15日午後10時45分 

445名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/15(土) 22:45:27.10 ID:lfd2wwq 
   あああああああああああああああああああああああああああああああああああ 
   ああああああああああああああああああああああああああああああああ 

446名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:20
06/05/15(土) 22:47:37.28 ID:ty40pb 
   いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい 
   いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい 

447名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/15(土) 22:49:33.09 ID:3yyjdp0 
   うううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう 
   ううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう 

448名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/05/15(土) 22:50:58:08 ID:lfd2wwq 
   がああああああああああああああああああああああああああああああ 
    みんな死ぬんだああああああああああああああああああああああ 
     ひゃははははははははははははははゲホッはははははははは 



888名前: 1投稿日: 2006/04/19(水) 23:05:56.75 ID:JTytwr9l0
5月16日午前8時39分 

いつものように僕は朝食を作って、食べて、かたずける。 

でもなぜか、僕はハルカのことが気にかかってしかたなかった。 
自転車に乗り、何かに堰かされるようにあの場所へと向かった。 


やっぱり彼女は居なかった。当たり前だ、約束したわけじゃない。 
「・・・・・・・・・・僕は何をやってるんだろう。」 
独り言と共に自嘲していた。 
「ふう・・・・。」 
僕は昨日の木の根元に腰を降ろした。朝早くに自転車」を飛ばしたせいだろうか、ウトウトとしているうちに僕は眠ってしまった。 

心地よい風は今日も吹き抜けていた。 


893名前: 1投稿日: 2006/04/19(水) 23:18:25.09 ID:JTytwr9l0
「・・・・・・・・・・・・・・・う、ううん・・・・。」 
どれくらい眠ってしまったのだろう、見上げると太陽はまだ低かった。時間にして一時間ぐらいといったところだろうか。 
横を向くとそこには僕を見つめるハルカがいた。 
「うわあ!」 
僕は驚いて声をあげてしまった。 
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おはよう・・・。」 
「あ・・・・・・ご、ゴメン・・・・・・おはよう・・・・・・・・。」 
ハルカは表情を変えずに淡々と挨拶をしてきた。 

「あの・・・・いつからいたの・・?」 
「・・・・20分くらい前・・・。」 
「あ、・・・そ、そうなんだ・・・。(恥かしい・・)」 

「・・・・いても・・・いい?」 
「あ、うん!・・でもなんでそんな事を聞くの?」 
「ここは・・・・あなたの場所のような・・・・気がしたから・・・・」


899名前: 1投稿日: 2006/04/19(水) 23:29:35.19 ID:JTytwr9l0
また僕達は昨日のように座っていた。 

しばらくすると僕は、ハルカに質問をしてみた。 
「えっと、ハルカさん・・?」 
「・・・・・ハルカ・・・でいい。」 
「そ、そう?んじゃあ、ハルカ?君はどうして最初ここに来たの?」 
「・・・・・・街が・・・よく見えたから・・・。」 
「街が?」 
「そう。」 
「へ~、景色の良いとこが好きなんだ?」 
「・・・・・・それも・・・あるけど・・・。」 
「?」 
「私・・あんまり・・・・行った事とか・・・ないから・・・・。」 


903名前: 1投稿日: 2006/04/19(水) 23:39:51.88 ID:JTytwr9l0
「え?」 
「・・・・・・・・・・・・・・・・」 

ハルカは黙ってしまった。僕はハルカに言ってみた。 
「ねえハルカ?街・・・行ってみる?」 
「・・・え?」 
言ったときは何の他意もなかったが、すぐに気がついた。 

これってデートに誘ってる?! 

僕はデートなんかしたことがなかったし、女の子と遊ぶなんてこともほとんどしたことがなかった。 
また僕は一人でテンパッていた。 
「い、いひゃ、嫌だったらいいんだ!うん!き、気にしないで!!」 

「・・・いいの?」 
「そ、そうだよね、あ、あははは。僕となんか行きたく・・・・・って、え?え?」 
「・・・行きたい。」 


909名前: 1投稿日: 2006/04/19(水) 23:56:54.33 ID:JTytwr9l0
僕はハルカを自転車の後ろに乗せると街中へとこぎだした。 
驚いたことにハルカは二人乗りをしたことがないという。 
初めての二人乗りに、ハルカは驚きながらも楽しんでいるようだった。(相変わらず無表情ではあったが) 

街中に着くと、自転車をおいてハルカと連れ立って歩いて行く。 
ハルカは見るもの全てが新鮮なようで、目をキラキラさせていた。 

しばらく歩いていると、カキ氷の屋台がでていた。 
「こんな時期にめずらしいなあ。」 
「・・?」 
「あ、っと、カキ氷って知らない?」 
「・・・・カキ・・ごおり?」 
「そっか・・・、よし!じゃあ食べよっか?おごるよ。」 
「・・・・・悪いから・・・いい・・・。」 
「いいよ、遠慮しなくて。ほら、行こう!」 

ハルカを引っ張って屋台へと連れて行く。屋台では色々なシロップのカキ氷があった。 
「ん~、僕はオーソドックスにイチゴでいこうかなwハルカは何がいい?」 
「同じので・・・いい・・。」 
「わかった。おじさん!イチゴ二つ!」 


911名前: 1投稿日: 2006/04/20(木) 00:01:37.76 ID:z9miNsK40
「う~ん、ウマイ!!今日はちょっと日差しが強いからぴったりだなwほら、ハルカも食べてみなよ。」 
少し躊躇していたが意を決したようにハルカも口に含んだ。 
「!!・・・・・・・・冷たくて・・・おいしい・・・。」 
「だろ?wwwwやっぱりこれだよなww。あ、でもゆっくり食べないと・・・・」 
言い切るまえにハルカはこめかみを押さえていた。 
「あ~あ、言わんこっちゃないww」 
「・・・でも・・・・おいしい・・・。」 
「・・そっか。」 


217名前: ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/20(木) 18:54:20.23 ID:5ztNA4Ol0
ベンチに座って二人でカキ氷を食べていると、小さな女の子と母親が連れ立って歩いて居るのが見えた。 
女の子は右手に赤い風船を大事そうに持ち、左手はしっかりと母親の手を握っていた。 
僕は特に気にもとめなかったが、ハルカはその様子を眺めているようだった。 
その時、不意に風が吹いた。 


218名前: ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/20(木) 19:00:00.51 ID:5ztNA4Ol0
女の子は不意の突風に驚いたのか風船を手放してしまった。 
風船は側の木に引っかかってしまっていた。 
女の子の泣き声に僕も気がついたが、引っかかっている枝の高さには僕も母親もとどきそうにない高さだった。 
ましてや、僕より身長の低いハルカではとどくはずもなかった。 


221名前: ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/20(木) 19:06:38.51 ID:5ztNA4Ol0
ハルカは突然立ち上がると、その木の方へ歩いていった。僕も後を追う。 

木の根元では母親が泣き続ける女の子を宥めていた。 
ハルカは女の子の目線にしゃがみ、 
「・・・・・・・・・・待ってて、今お姉ちゃんが・・・・取ってあげる・・・。」 
そう言うとスッと枝を見つめた。 


222名前: ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/20(木) 19:17:06.67 ID:5ztNA4Ol0
その瞬間、僕は我が目を疑った。 
ハルカは木を利用して、ほとんど音を立てずにジャンプをした。 
しかし、それは普通のジャンプではない、「跳ぶ」という言葉よりも「中を舞う」という言葉の方がぴったりだろう。 
ハルカのしなやかな四肢が舞う、僕は瞬きもせず見とれていた。 


223名前: ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/20(木) 19:31:53.98 ID:5ztNA4Ol0
風船を掴むと、ハルカは静かに着地する。 


女の子に風船を渡すと、女の子はハルカの手を握り何度も何度もお礼を言った。 
その時、ハルカの無表情な顔に僕は初めて微笑みを見た。 



その微笑みは、まるで絵画のような美しさだった。 


225名前: ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/20(木) 19:51:11.62 ID:5ztNA4Ol0
日もだいぶ傾き、僕たちはあの丘へと戻ってきた。 
またあの木の根元に腰を降ろす。 

ハルカは、しばらく街を眺めると僕に話しかけてきた。 
「・・・・今日は・・・・ありがとう・・・。」 
「あ、うん。・・・楽しかった・・・かな・・?」 
「・・・・ええ・・。」 

僕は、さっきの事が気にかかり、思いたって聞いてみた。 
「あのさ、その・・・さっきのは・・・」 
「・・・あのジャンプの・・・こと?」 
「う、うん」 
「・・・・・・・・・」 
「あ、嫌だったら話さなくて、」 
「私、」 
僕が言い切る前にハルカは続ける。 
「私・・・サーカスにいるの・・・。だから・・・。」 
ハルカの言葉に僕は納得した。あのジャンプはとても常人の動きではなかった。 
「・・・世界中を・・・回ってるの・・・・。今は・・・この街・・・・。」 
「そうなんだ!すごいんだね!!」 
「・・・・・・・・・わからない・・・。」 

ハルカの最後の言葉の時、僕は彼女が哀しそうな目をしたように見えた。 


226名前: ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/20(木) 20:02:56.40 ID:5ztNA4Ol0
別れ際、僕は昨日と同じことを聞いてみる。 
「また、会えるかな?」 
「・・・・・そうね・・・。」 
そう昨日と同じように言うと、ハルカは去っていった。 


空には星が光始めていた。 


254名前: ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/20(木) 22:00:44.47 ID:5ztNA4Ol0
5月16日午後11時18分 

ハリー・B・スタンバーは疲れた体をベッドに擡げた。 
訓練が始まってすでに6日が経っていた。中年の体には疲れが響いてくるころである。 
ポケットからタバコを取り出し、火をつける。 
咥えると、馴染んだラッキーストライクの味がひろがる。 

ぼんやりとタバコの箱を眺める。 
「・・・ラッキー・・ストライク・・・・・・フッ・・・・・・・皮肉な名前だな・・・・・・・・・・・・・・クソォッ!!」 
苛苛をタバコの箱にぶつけた、気がつくとタバコの箱は壁際に落ちていた。 
「ハア、ハア、ハア、・・・・・・・。」 
精神的にも疲労が蓄積されているのがわかる。無理も無い、外界と遮断された空間での訓練なのだ。彼の精神は擦り切れつつあった。 

再び体をベッドに擡げる。 
視線をずらすと、写真立てが目に入った。体を起こし、手に取る。 
そこには、彼と一緒に笑顔で写る娘の姿があった。 
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・グレース・・・・・・・・・・・・。」 

彼は写真を元の場所に置くと、ベッドに倒れこみそのまま眠った。 


259名前: ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/20(木) 22:28:20.05 ID:5ztNA4Ol0
5月17日 午後3時20分 

こんな非常事態でも学校は普通日課のまま授業が行われている。 
6時限目がようやく終わり、僕は帰り支度をしていた。 

「よお、ちょっと寄り道していかねえ?」 
振り向くと同じクラスの木田が声をかけていた。木田は中学のときからの友達、腐れ縁というやつだ。 
「なんだよ、どうせまたフィギア買いに行くとか言うんだろ?面倒くせえから嫌だよ。」 
木田は見た目は中々のイケ面だが、その実態はミリタリーフィギアオタクである。この趣味でさえなければ女の子の一人や二人いてもおかしくないはずだ。 
「そんなこと言うなよ~!今日はレアものが販売されるんだよ!な?頼むから!」 

結局僕は木田に押し切られショップへとついて行かされた。木田いわく、今回のフィギアでは装備のマップケースがbml社のものを忠実に再現されているらしい。僕には全く理解できない世界だ・・・。 

お目当ての品を買うと、木田は別れの挨拶もそうそうに嬉しそうに帰っていった。 


260名前: ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/20(木) 22:36:48.10 ID:5ztNA4Ol0
木田と別れて歩いていると、店に貼られたポスターに目が留まった。 
それはロシアのポリショイサーカスの公演予定だった。 

僕はハルカのことを思い出した。おそらく、ハルカのいるサーカスとはこれのことだろう。 
そう考えているうちに、僕は無性に彼女に会いたくなって来た。 
ポスターを見ると、ココから20分ほどで着く場所に来ているらしかった。 

僕は迷わず歩きだした。 


658名前: 1 ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/21(金) 19:58:16.66 ID:KRHZc+uu0
サーカスが来ているのは、街の中心地から少し離れた公園だった。 
公園といっても、ここら辺ではかなり大きな公園だ。昔は軍隊の駐屯地だったと、死んだじいちゃんが言っていたっけ。 

公園に着くとサーカスの巨大なテントが入り口からでも遠くに見えた。 
僕は遠くに見えるテントを目指して歩きだした。 


660名前: 1 ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/21(金) 20:13:02.37 ID:KRHZc+uu0
夕暮れの迫る公園には、遊んでいる子供達も散歩をしている人もいなかった。 
誰もいない遊歩道を僕は歩いて行く。 

テントを目指し歩いて行くと、すぐにサーカスのテント前に辿り着いた。 
政府から、大勢の人々を集める催しやスポーツなどを一時的に禁止する法令が出ているためか、人の姿は見えなかった。 
しかたなく、僕はテントのわきに見える宿営へと歩いていった。 

そこには団員達の暮らすタイヤのついた小屋や、動物達の暮らしているであろう檻、荷物の詰まったコンテナなどがたくさん設置されていた。 
人の暮らしているであろう小屋からは、夕食を作っているのだろうか、煙と共に良い匂いが上がってきていた。 


663名前: 1 ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/21(金) 20:20:19.78 ID:KRHZc+uu0
関係者以外立ち入り禁止の看板が立っていた為に、僕は奥に進むのを躊躇った。 
誰か人を見つけようとしたけれど、生憎出歩いている人はいなかった。 

どうしようか途方にくれていると、一人の男性が僕の方に近づいてきた。 
声をかけようと僕はその男性の姿を見てギョッとした。 


665名前: 1 ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/21(金) 20:31:27.96 ID:KRHZc+uu0
短く刈り上げられた頭髪、筋骨隆々のその四肢、身長は優に190を超えているだろう。 
どこかの国の外人部隊にいてもなんら違和感のない、そんな感じの白人男性が僕の目の前にいるのだ。 

僕は必死に足を動かそうと試みたが、足は動いてくれそうもなかった。 
グレーの瞳が睨む、同時に男性は両腕をすっと上げた。 


ダメだ、絞められる。血の気が引くのを、瞬時に感じ取った。 
僕は死を覚悟した。 



669名前: 1 ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/21(金) 20:43:35.64 ID:KRHZc+uu0
僕はぐっと目をつぶった。 

すると、目の前から気の抜ける感じの声が聞こえてきた。 
「あら~!!あなたもしかしてハルカが話していた子じゃない~??」 
目を開けると男性は両手を厚い胸の前で組みクネクネとしていた。 
「??????」 

状況が飲み込めないでいると、遠くからハルカの声が聞こえた。 
「団長!・・・・・・・・どこ・・・?」 
「今行くわぁ~!ほら!あなたも着いていらっしゃい!!」 

男性の太い腕に掴まれると、僕はなすがまま引きづられるように連れていかれた。 


672名前: 1 ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/21(金) 20:53:18.14 ID:KRHZc+uu0
奥の方の小屋の前まで引きづられていくと、小屋の前にハルカが立っていた。 
「団長・・・お電話・・。」 
「ありがとう、今行くわね。ハルカ、あなたにお客さんよww」 
「?・・!・・・あなたは・・。」 
団長と呼ばれた男性はぐったりとしている僕をハルカの前に出す。 
「・・・・・・・・・や、やあ・・・・・・。」 
僕は、必死に意識を保ちながらハルカに挨拶をする。 
「??あら?ごめんなさい!!強く引っ張りすぎちゃったかしら?とにかくゆっくりして行ってね。ガハハハハハハハハ!」 

男性は豪快に笑った。 


679名前: 1 ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/21(金) 21:13:07.02 ID:KRHZc+uu0
男性はハルカに何事か耳打ちすると、また豪快に笑いながら別の小屋に入っていった。 
ハルカは何故か顔を真っ赤にしていた。 

僕は何とか意識を持ち直すと、ハルカは小屋に招き入れてくれた。 
「・・・ふぅ・・・何か嵐みたいだったなあ・・・・・」 
「くすくすw」 
ハルカは楽しそうにくすくすと笑った。 
こんなふうに笑うハルカを、僕は初めて見た。 

「団長も・・・・きっと・・あなたに会えて・・・喜んでる・・。」 
「ふう~ん・・・そうなのかなあ?・・・・・・ん?、[も]?」 
ハルカは勢いよく椅子から立ち上がった。 
「お、お茶入れて・・くる!」 

そう言うと、ハルカは台所の方に行ってしまった。 


684名前: 1 ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/21(金) 21:25:11.32 ID:KRHZc+uu0
しばらくすると、ハルカはお茶を持ってきてくれた。 
僕はお礼を言うと一口含んだ。口の中にやわらかいロシアンティーの香りが広がった。 

お礼を言って以来、僕達に会話はなかった。 
それは気まずくは無かったけれど、ハルカは気のせいかそわそわしている様に見えた。 

そのまま、30分ほどが過ぎていった。 


687名前: 1 ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/21(金) 21:39:27.02 ID:KRHZc+uu0
僕はすっかりお茶を堪能し飲み干した。 
ハルカは僕が飲み干すのを見るとおかわりを促してきた。 
「おかわり・・・いる・・・?」 
「あ、悪いからいいよ。おいしかった、ありがとう。」 
僕がお礼を言うと、ハルカは慌てたようにカップを片付けた。 

ハルカが台所から戻ってくるのが見える。そのまま、机の側まで来た瞬間、ハルカが不意によろけた。 
僕はとっさにハルカの手を引いた。 


706名前: 1 ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/21(金) 22:11:45.34 ID:KRHZc+uu0
「あ、あら?ホントにお邪魔だったかしらぁ?」 
「い、!ち、違います!!これは・・・!!」 
その時、ハルカは勢いよく小屋を飛び出した。 
「あ!ハルカ!!」 
ハルカはそのまま走っていってしまった。 

僕はなんとか団長に説明した、決して故意では無かった事、もちろんハルカも故意でやったわけではないこと。 
団長はひととおり僕の話を聞くと、「やっぱりね」と言った。 
「わかっているわ、あの子もあなたもそんなことするような人間じゃない、そうでしょう?」 
「はい・・・・。ご迷惑をおかけしてすみませんでした。」 
「あなたが誤ることなんてないわ。私こそあの子に誤らないとねw 
今日はもう遅いわ、団員に送らせるからお帰りなさい、あの子には言っておくわから。いいわね?」 
「はい・・・・・。」 
「・・・・・・・・大丈夫よ、あの子は強い子だわ、それにあなたと出会ってからあなたのことを楽しそうに話しているの。無口なあの子があんなに喋るなんてこと今まで無かったんだから。今は私に任せて、ね?」 
「・・・。」 

僕は無言で頷くと、団員さんに送ってもらい帰宅した。 

ベッドに入っても、今日はしばらく寝れそうにはなかった。 


48名前: 1 ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/22(土) 09:59:09.47 ID:74s071sG0
5月17日午後9時42分 

1名前:以下、名無しにかわりましてVIPが世界を救います[] 投稿日:2006/05/17(月) 21:42:32.10 ID:pll23wq 
  おい!みんな見ろ!アメリカの迎撃作戦の内容が閲覧できるぞ!! 
  http://www.kfprl;sdk/tye.lo.ne.jp 

2名前:以下、名無しにかわりましてVIPが世界を救います[] 投稿日:2006/05/17(月) 21:43:12.44 ID:ttyppp09 
  すげえな!直接隕石に行って、核爆弾でドンッ!かwww 
  wktk     

3名前:以下、名無しにかわりましてVIPが世界を救います[] 投稿日:2006/05/17(月) 21:47:33.00 ID:wzqdf8b2p 
  アメさんGJ! 

4名前:以下、名無しにかわりましてVIPが世界を救います[] 投稿日:2006/05/17(月) 21:50:34.51 ID:mty3w4q0 
  なんか映画で見たような作戦だな。 

5名前:以下、名無しにかわりましてVIPが世界を救います[] 投稿日:2006/05/17(月) 21:55:094.45 ID:JRt0kaiw 
  >> 4   !!お前・・・隕石来る前に・・・死ぬぞ・・? 

4名前:以下、名無しにかわりましてVIPが世界を救います[] 投稿日:2006/05/17(月) 21:56:35628 ID:mty3w4q0 
  >> 5  
   IDがJR東海には言われたくない 


49名前: 1 ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/22(土) 09:59:55.28 ID:74s071sG0
↑間違えた、最後のは「6」です・・・ 


51名前: 1 ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/22(土) 10:16:32.01 ID:74s071sG0
5月17日午後9時54分 

荒れ果てていた2ちゃんにも、最後の砦のようになんとか残っている板やスレはあった。 
しかし、それも2ちゃん全土から見れば微々たるものでしかなかった。 

「・・・・・・・・いよいよvipもこことあと2つだけか・・・・・。」 
僕はため息をつきながら指を動かす。 
過疎化によって潰れてしまった板すらあると聞く、ならばvipは残っているだけましなのだろう、そう思いながらレスをつける。 
「・・・・J・・R・・・東海・・には・・言われたくない・・・・っと。」 

振り向くと、夕が紅茶を持ってきてくれていた。 
テーブルにつくと、夕は静かに微笑んでくれた。 
52名前: 1 ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/22(土) 10:28:28.01 ID:74s071sG0
5月18日午後1時00分 

五月晴れとはこういう天気の事を言うのだろう。空には雲ひとつなく澄み切っていた。 
僕は屋上のフェンスにもたれながら昼食のパンを口に含む。 

授業中も、僕はハルカのことばかり考えていた。そして今も。 

「おい、どうしたんだよ?」 
「ん?ああ・・・なんでもない。ただぼーっとしてるだけだよ。いつものことだろ?」 
「・・・・・そうか。なんか悩んでるように見えたからさ・・・。」 
「・・・・・そんなんじゃねえよ・・・。」 
「ならいいんだけどよ、ま、悩みなんかお前らしくないわなw」 
「フンッ・・・・お前、人のこと言えんのかよw」 

澄み切った空に、二人分の笑い声が響いた。 


55名前: 1 ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/22(土) 10:32:55.26 ID:74s071sG0
ちょっと間違えたので訂正を・・ 

5月18日午後1時00分 

五月晴れとはこういう天気の事を言うのだろう。空には雲ひとつなく澄み切っていた。 
僕は屋上のフェンスにもたれながら昼食のパンを口に含む。 

授業中も、僕はハルカのことばかり考えていた。そして今も。 

「おい、どうしたんだよ?」 
横から木田が声をかける。 
「ん?ああ・・・なんでもない。ただぼーっとしてるだけだよ。いつものことだろ?」 
「・・・・・そうか。なんか悩んでるように見えたからさ・・・。」 
「・・・・・そんなんじゃねえよ・・・。」 
「ならいいんだけどよ、ま、悩みなんかお前らしくないわなw」 
「フンッ・・・・お前、人のこと言えんのかよw」 

澄み切った空に、二人分の笑い声が響いた。 


33名前: 1 ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/22(土) 19:40:20.91 ID:74s071sG0
放課後、僕はあの丘へと向かっていた。 

ハルカに会いたかっただけじゃない、何故かあの場所に行きたくなったのだ。 
あの見晴らしのいい丘に。 

丘に着くと僕はいつもの木の根元に座る。 
夕暮れの迫る街は、赤く染まり始めていた。 

僕は朱色の街が蒼色に染まるまで眺め続けていた。 
ハルカが来ることは、なかった。 


81名前: 1 ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/22(土) 22:02:18.25 ID:74s071sG0
5月18日午後2時00分 

ハリー・B・スタンバーは自らの体を潰しにかかるGと必死に闘っていた。 
Gはどんどん上がっていく。 
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぐ・・・ぬ・・おおお・・!クソッタレええええええええ!!」 
思わず我慢していた声が漏れる。 

同時に気を失っていた。 


84名前: 1 ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/22(土) 22:10:06.16 ID:74s071sG0
「う・・・・・・・ぐ・・・・。」 
目を開けると、鮮やかな白色の天井が目に入る。白さが目に痛い。 
体を起こそうとするが、自分の体では無いかのように力がはいらない。 
「チッ・・・・・・・・Gにやられたか・・・・。」 
ハリーは悔しそうに呻いた。 

医師の説明によれば、体のダルさは一時的なものらしい。 
中年の男性があれほどまでのGに耐えられるのはあり得ない、と医師は感嘆をもらしたがハリーはそのほとんどを聞き流した。 


93名前: 1 ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/22(土) 22:18:48.63 ID:74s071sG0
止むをえずベッドで横になっていると部屋のドアが開いた。 

「義父さん!大丈夫ですか!?」 
若い男はハリーに声をかけながら慌しくドアをあける。 
「うるせえ!黙れこのタコ!!」 
ハリーはそっけなく答えた。 
「あ、大丈夫そうですね!良かった・・・・。」 
若い男は心底安心したように安堵のため息をついた。 


101名前: 1 ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/22(土) 22:29:31.08 ID:74s071sG0
ハリーが訓練に出発する前日、彼は娘にある男性を紹介された。 
「はじめまして、自分は合衆国空軍JJ=フロスト中尉であります!」 
そこまではまだよかったのだが、続いた言葉にハリーは激高した。 

娘さんを僕にくだ・・・、最後まで言わないうちにハリーはJJをぶん殴っていた。 


105名前: 1 ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/22(土) 22:39:54.29 ID:74s071sG0
その日はグレースと喧嘩して出て行ってしまった。 
それ以来グレースとは連絡をとっていない。(とることができないのでもあるが) 

訓練の初日、参加メンバーの自己紹介が行われた。 
メンバーは2列に別れ、向かい合わせに並ぶ。 
ハリーは緊張しながら列に並んだ。 
(こういうのは最初のイメージが重要だよな・・・・ドキドキ・・・よし!) 
ハリーは笑顔を作ると、向かいの相手の顔を見る。 

そこに並んでいたのはJJだった。 
ハリーは笑顔のままJJをぶん殴った。 


112名前: 1 ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/22(土) 22:48:39.33 ID:74s071sG0
「あれぐらいでどうかなるかってんだ!!つーか義父さんはやめろ、殴るぞ。」 
「すみません・・・。でも本当に良かったです。」 
「・・・けッ・・・・・。」 

JJはそう言うと部屋を出て行った。 




「・・・・・もしもの時は・・・頼むぞ・・。」 
一人の父親は、静かに呟いた。 


117名前: 1 ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/22(土) 23:05:55.23 ID:74s071sG0
5月19日午後4時20分 

僕はサーカスの宿営に来ていた。 
ハルカにどうしても会いたい、そんなことばかり考えていた。 

入り口の辺りにいると、団長さんが迎えてくれた。 
「あらwいらっしゃい!!良く来たわねえwブハハハハハハハ!」 
団長さんのテンションに飲まれないように注意しながら聞いてみる。 
「あの・・・ハルカは・・?」 
「ごめんなさぁい、今出掛けてしまっているのよぉw」 
僕は瞬時にある場所が浮かんだ。 

お礼を言うと、僕はあの場所へ向けて走り出した。 


120名前: 1 ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/22(土) 23:13:37.14 ID:74s071sG0
「ハルカ!!」 
僕は着くなり声をあげる。 
しかし返事はない。 
僕は声をあげながら辺りを見回してみる、人の姿は見当たらなかった。 


立ち尽くし、あの木の根元に腰を降ろす、街には明かりが灯り始めていた。 


122名前: 1 ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/22(土) 23:24:45.08 ID:74s071sG0
「・・・・・・ただいま・・・。」 
「あらwおかえりなさいwwwもうすぐごはんよww」 
「・・・うん。」 
ハルカが帰ってくると、フリフリのエプロンをつけた団長が出迎えた。 

「今日はハルカの大好物の花丸ハンバーグよwwグハハハハハハ!」 
テーブルには、太く頑強な指から作られたとは思えないほど可愛らしい料理の数々が添えられている。 


127名前: 1 ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/22(土) 23:29:56.36 ID:74s071sG0
台所から団長が尋ねる、 
「今日はどこに行ってきたの?」 
「・・・内緒・・・。」 
「フフwまったく、最近いつもそうなんだからww」 

団長は、本当に嬉しそうに言う。 


128名前: 1 ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/22(土) 23:35:50.92 ID:74s071sG0
ハルカはあの丘に行っていた。昼間の間、ずっと。 
あの木に腰を降ろし、ただ街を眺めていた。 

やがて日が暮れると、腰をあげ一人帰り道へ向かった。 

最後まで、あの人が現れることはなかった。 


387名前: あかり ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/23(日) 22:09:29.88 ID:sEZCtUgW0
5月20日午前2時47分 

大統領による演説が終わった。 
大統領はなにやら沢山喚いていたが、はっきり聞いていた者はほとんどいなかった。 

シャトルへと向かう為、廊下を」歩く。 
皆、重重しく口を噤み、喋っている者はいなかった。 

ハリーはJJを呼び止めた。 
JJは振り返ると同時に左頬を思い切り殴られた。 
不意の一撃に倒れこむ。 

「グ・・・ガハッ・・・・な、何をするんですか!」 
倒れこんだままJJは呻く。 
「うるせえ!殴りたいから殴った、それの何が悪い!」 
何か言おうとしたJJを遮り、ハリーは続ける。 
「良いか!?俺を殴りたかったら帰ってきてからにするんだな!!」 
「え・・・?」 
「いいから行くぞタコ!!」 


男達は、宇宙(ソラ)へと続く廊下を歩いていった。 


391名前: あかり ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/23(日) 22:17:47.80 ID:sEZCtUgW0
カウントダウンが終わると、シャトルは空へと向かっていった。 
空を越え、シャトルは重力と闘う。 

やがて凄まじい衝撃を耐え切ると、そこは宇宙であった。 

誰もが感嘆の声を上げ、その広さに見入っていた。 
しかし、その感動はすぐに緊張へと変わった。 

漆黒の宇宙に漂う隕石、その姿はあまりにも大きかった。 

小さなシャトルは隕石の地表へと向かう。 


394名前: あかり ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/23(日) 22:27:00.13 ID:sEZCtUgW0
今回の作戦は、隕石の中心深く穴を掘り、そこで新型核爆弾を爆発させるというものだった。 

隕石の地表に降り立つとすぐさま作業を始める。 
作業は訓練通り進んでいった。 

何もかもが完璧だった。 

核爆弾の設置を終え、時限式の起爆スイッチを押す。 
何秒たっても、操作パネルの数字はそのままだった。 

誰かが残ってサブスイッチを押すしかない、まるで映画のワンシーンのような状況になっていた。 


398名前: あかり ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/23(日) 22:39:39.39 ID:sEZCtUgW0
結局、即興で作ったくじ引きで決めることになった。 

当たりくじを引いたのは、JJだった。 
「・・・・・・・・・・・へへッ!・・・自分は昔からくじ運だけはいいんですよw」 
JJはおどけた調子で振舞うと、シャトルの外へと向かった。 
ハリーもJJに付き添い外へ向かう。 

「もうここら辺でいいです。ありがとうございました。」 
JJはハリーに敬礼をする。ハリーはその隙を逃さなかった。 

JJの鳩尾に強烈な一撃を加える。 
JJはその衝撃にシャトルの入り口へと吹き飛ばされる。 
「あばよ!息子!」 

浮上を開始し閉まるハッチから見えたハリーの口は、確かにそう言っていた。 


400名前: あかり ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/23(日) 22:47:16.75 ID:sEZCtUgW0
JJは中年のパイロッに詰め寄る。 
「マークさん!なんで!!なんで浮上したんですか!!今すぐ戻してください!!戻せええええええええ!!」 
JJは鬼のような形相でマークと呼んだ中年に声をあげる。 
「・・・・・・・・・・・・・・・。座れ。加速を開始する、副キャプテン。」 
マークは淡々と答える。 
「なんで、なんでだよ!!答えろおおおおおおおおおおお!!!」 
「・・・・・・・・・・・・お前に何がわかる・・・・。」 
「え?」 
「お前に、ハリーのなにがわかるッ!!」 

マークは声を張り上げた。その瞳からは涙が流れていた。 


402名前: あかり ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/23(日) 22:56:54.27 ID:sEZCtUgW0
「ハリーは・・・本当に喜んでいた・・・。あいつはずっと息子がいればと言っていた。」 
「・・・・・・・・・・。」 
「やっとグレースに婿さんが来てくれたと・・・本当に喜んでいた。」 
「やっとグレースが幸せになれる、家族の暖かさを知るだろうと・・・本当に喜んでいた。」 
「・・・・・・・・・・・。」 
「お前に、ハリーの何がわかる・・・。」 

見回せば、メインキャプテンのマークの他は、皆若い男達のクルーであった。 
JJはやっと理解した。 
ハリーはたとえ誰がくじに当たろうと、自分が行っただろうと。 


シャトルは、加速を開始し宇宙ステーションミールへとむかった。 
403名前: あかり ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/23(日) 23:03:03.69 ID:sEZCtUgW0
「さてと・・・やっと行ったか。」 
ハリーはシャトルが爆発に巻き込まれない地点まで行ったのを確認すると、静かに腰を降ろした。 

地球が恐ろしく綺麗に見えた。 
ハリーはそっと微笑む。 

「ローズ、グレースはもう大丈夫だ。今、お前のところに行くな。」 



ハリーはスイッチを押し込んだ。 


405名前: あかり ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/23(日) 23:08:07.95 ID:sEZCtUgW0
シャトルの遥か後方に閃光が走った。 
隕石は見事に爆散した。 

シャトルはミールに向かう。 





「ミール、聞こえるか?作戦は失敗した。繰り返す、作戦は失敗した。」 


409名前: あかり ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/23(日) 23:17:56.66 ID:sEZCtUgW0
5月20日午前13時30分 

「今日もいい天気ねw」 
グレースは庭に出ると、晴れきった空を見上げ静かに微笑んだ。 


同時に、リビングの写真立てが、一つ倒れた。 
そこには笑顔で彼女と写る、ハリーがいた。 


573 名前: あかり ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/24(月) 11:06:46.09 ID:QWgKqkxUO
5月21日午前10時12分 

ハルカは今日もあの丘へと向かうため歩いていた。 
しかし、今日はあまりにもタイミングが悪すぎた。 
アメリカ政府より、迎撃の失敗が発表されたことにより、各地で小規模ながら衝突や問題行動が起こっていたのである。(それらは21だけで終息したが) 

ハルカの前に数人のDQNが立ちはだかる。 
気持ちの悪い薄ら笑いを浮かべながらDQNはハルカにせまる、ハルカは咄嗟に後方を振り返り逃げ出そうとするが、後ろもDQNに囲まれてしまった。 
DQNはハルカの腕を掴み連れていこうとする、ハルカも必死に抵抗するが、いくら運動神経の良いハルカと言えども、若い男の力に適うはずはなかった。 


670名前: あかり ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/24(月) 21:58:15.66 ID:SlSLEzv20
ハルカは冷たい路地裏に倒された。 
必死にDQNを睨みつける。 

「こんな時に一人でお出かけって事は、こいつ誘ってんじゃねえ?」 
DQN達の笑い声が響く。 
ハルカは立ち上がろうとするが二人のDQNに押さえつけられた。 
「は・・・離せ・・!」 
正面からDQNが近づく。 
「はーい怖がらなくても大丈夫でちゅよ~w・・・・・・・ハァ・・ハァ・・すぐに気持ち良くしてやる!!」 

そう言うと、DQNはポケットからナイフを取り出しハルカの服を破いていく。 
ハルカの白い肌が現れる度、DQN達はいやらしい言葉を浴びせたり、食い入ったように見ていたりした。 


ハルカは、ただ震えているしか出来なかった。 


685名前: あかり ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/24(月) 22:34:22.29 ID:SlSLEzv20
「お前らッ!ハルカを離せッ!!」 
DQN達は不意の声に驚き振り返る。ハルカも怯えた目を声の方に向けた。 

「なんだあ?彼氏の登場かよッ!!」 
DQN達の笑い声が再び響く。 


687名前: あかり ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/24(月) 22:34:56.93 ID:SlSLEzv20
僕はDQN達を睨みながら数を確認する。 
(6人か・・・・。) 
自慢じゃないが、僕は1対1の喧嘩では負けたことがない。 
しかし6人が相手では分が悪すぎる。 
(1対1になれる路地まで行けば何とかなるけど・・・それだとハルカが・・・) 
見れば、ハルカは恐怖に震えていた。 

僕は刺し違えてでも闘う覚悟をきめ、DQNに挑みかかる。 


688名前: あかり ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/24(月) 22:40:52.36 ID:SlSLEzv20
1人目を殴ったのは良かったが、横のDQNから力任せに殴られた。 
マズい、このままだと袋叩きだ、そう思った瞬間後ろのDQNと買い物袋が飛んでいるのが見えた。 

691名前: あかり ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/24(月) 22:55:18.77 ID:SlSLEzv20
「貴様ら・・・五体満足でいられると思うな・・・・・ッ!!」 
そこにいたのは鬼のような形相をした団長だった。 

団長は獣のような咆哮と共に1人目のDQNに迫ると、DQNがガードする暇を与えず蹴りを放つ。 
DQNは自分の体にめり込んだ足に気がつくと、悲鳴とも絶叫ともわからぬ叫び声をあげ地面をのたうつ。 
2人目はナイフを振り翳しながら突っ込んできたが、団長は身のかわし際に鳩尾に凄まじい一撃を加える。嫌な音が響くとDQNは無言で倒れた。 
団長は落ちたナイフを拾うと、逆刃に構える。 
僕はこの時、軍オタの木田の言葉を思い出した。 
゛プロが持つナイフは、時にハンドガン以上の武器になる〟 

数分後、そこには無傷の団長が立っていた。 


693名前: あかり ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/24(月) 23:04:13.98 ID:SlSLEzv20
「ハルカ!大丈夫!?」 
団長はハルカの元へ駆け寄る。 
ハルカは僕の腕の中で泣いていた。 
「まあ!こんなに酷い格好にされて・・・かわいそう・・・・ぐおおおおおおおおおおおお!!」 
つられて、団長も豪快に泣き出した。 







僕はかける言葉を捜せず、ただハルカを強く抱きしめることしか出来なかった。 


622 名前: あかり ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/27(木) 13:00:14.11 ID:te4PCzmi0
5月22日午後5時20分 

眼下の街が朱色に染まっている。 
一体どれくらいの間ここに居たのだろう、もう何日もいるような錯覚にとらわれる。 
今日も僕はあの丘に来ていた。 
ハルカに会うために・・・。 

いや、本当に会いたかったならサーカスのほうにいったはずだ。昨日あんな事があってここに来るはずもない。 
僕は・・・・どうしたいのだろう・・・。

 
623 名前: あかり ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/27(木) 13:08:16.34 ID:te4PCzmi0
心地よい風が吹く、気温が高めの日だっただけになお気持ちがいい。 
僕はいつの間にか寝てしまっていた。 

肌寒い風が吹いた、僕はハッとめを覚ます。 
街は綺麗な夜景に変わっていた。 
僕はあわてて時計を見るようとする、 

「8時32分・・・・・。」 
真横から声が聞こえた。 


632 名前: あかり ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/27(木) 13:20:02.08 ID:te4PCzmi0
「おはよう・・・・・・・」 
横を見るとハルカがちょこんと座っている。 
僕は心臓が止まりそうになった。 
「お・・おお・・・おはよう!!」 

「・・・・・・・・・・・」 
「・・・・・・・・・・・」 
無言が続く。 
不意にハルカが切り出した。 
「昨日は・・・・ありがとう・・・・。」 
「いや、いいよ。当たり前のことしただけだし・・・・。」 
「・・・・・・・・でも・・ケガ・・・してる・・・。」 

ハルカの細い指が僕の頬に触れる。 


641 名前: あかり ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/27(木) 13:33:10.87 ID:te4PCzmi0
「痛い・・・よね・・・?」 
ハルカの指が優しくバンソウコウをなぞる。 
「だ、大丈夫だよ!これぐらい・・・・痛ッ!」 
「ご、ごめんなさいッ!!」 
「だ、大丈夫だから・・・。たぶん三日もあれば治るよ。」 
ハルカは潤んだ目で心配そうな顔をする。 
その顔に僕はドキッとした。ふだん無表情な分すごく可愛らしくみえる。 


658 名前: あかり ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/27(木) 13:50:38.71 ID:te4PCzmi0
「あ、もう遅いし帰らないとね・・・。でもココからだとサーカスのところまで遠いよね・・・・。」 
僕は必死に冷静を装いながら言う。 

「そうだ、サーカスの人に迎えに来てもらったら?電話持ってる?」 
ハルカは首を横に振る。 
「じゃあ僕のを貸して・・・・・・・・・・・・・、?」 
ポケットを弄ってみたものの見つからない、ハッと家に忘れていた事に気がついた。 
「ご、ごめん・・・・・家に忘れてきたみたい・・・・。」 
「いい・・・・・・帰れるから・・・。」 
「ダメだよッ!夜道は危ないし・・・・・・そうだ、とりあえず僕の家来なよ!ここから近いし・・・・。」 
ハルカはコクンとうなずいた。 


675 名前: あかり ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/27(木) 14:17:43.43 ID:te4PCzmi0
家に入ると、ハルカはもの珍しそうに辺りを見回す。 
そしてひとつ見つける度に質問してきた。 



 ・・・・・・・・・・・よかった、部屋片付けといてorz 



ハルカは電話すると、少し話した後僕に受話器を渡してきた。 
電話の相手は団長さんだった。 
「ごめんなさいね~・・こないだも今日もハルカがお世話になちゃってえ。」 
「いえ・・・そんなことないです。」 
「悪いわねえ・・・・・。それで迎えのほうなんだけど、深夜外出禁止時間帯(政府による規制)に入ちゃって行けないのよ~。」 
「え?」 
時計を見るともう9時を回っていた。 
「明日の朝にはいけると思うから今日はお願いできるかしら・・・・・?」 
「え!で、でも・・・」 
「ハルカも了解してるし・・・・。あなただったらきっと心配ないわwこれでも私、元傭兵よw人を見る目だけは確かなんだからw」 
「(あ・・・・・・・やっぱり・・・)はあ・・・・わかりました・・・。」 
「本当にごめんなさいね、じゃあハルカをお願いねw」 
ガチャン・・・・ツーツー・・・。 


682 名前: あかり ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/27(木) 14:28:25.42 ID:te4PCzmi0
あい変わらずハルカは部屋中を眺めていた。 
よほど珍しいのだろうか、その表情はまるで子供のようだ。 

僕はお茶を入れるとハルカに聞く、 
「夕ご飯は何食べたい?・・・・ちょっと遅めだけど・・。」 
「・・・・なんでもいい・・・」 
「ん~、困ったなあ・・・・。」 

悩んでいると、ハルカはまた質問してきた。 
「これ・・・なに?」 
「ああ、これは即席ラーメンだよ。食べたことない?」 
ハルカは首を縦に振る。 
「そっか・・・・・じゃあ今日はラーメンにしよっか!?おいしい作り方があるんだ!!」 
「うん・・・・」 


693 名前: あかり ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/27(木) 14:38:16.19 ID:te4PCzmi0
台所で具材を刻んでいると、ハルカが近寄ってきてスソをクイクイと引っ張る。 
「ん?どうしたの?」 
「・・・・なにか・・・手伝う・・・?」 
「あ、いいよ。ハルカはお客さんなんだから座ってお茶でも飲んでて。TV付けててもいいから。」 
「・・・・わたし・・・・おきゃくさん・・・?」 
「そうだよ!だからゆっくりしてってよ!」 
ハルカは嬉しそうに微笑むと戻って行った。 

またドキリとした僕が残された。 

704 名前: あかり ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/27(木) 14:47:49.43 ID:te4PCzmi0
出来上がったラーメンを持っていくと、ハルカは僕が食べ始めるのを待ってから食べだした。 
「おいしい・・・・w」 
「あ、ラーメンはね、音を出して食べていいんだよ。ほらこうやって・・・・・・ズルズル」 
ハルカは少し驚いたようだったけどすぐに真似した。 
「・・・・・・・・・・・・・・・ズル・・・・・ズル・・・」 
「そうそうwうまいうまいww」 

僕が片付けをしている間にハルカにはお風呂に入ってもらった。 
 ・・・・・・・まだあのDQN達のようにはなりたくないので、雑念を振り払い必死に皿を洗う。 

714 名前: あかり ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/27(木) 14:58:37.63 ID:te4PCzmi0
汗だくになって皿を洗っていると、また後ろから引っ張られた。 
「あ、ハルカ上がっ・・・・・・・て、ええええええええ!」 
そこには、僕のスソを掴むバスタオル一枚のハルカがいた。 
「どど、ど、どうしたの?」 
僕は視線を逸らし何とか見ないように努める。 
「・・・・着替え・・・ない・・・。」 
「あ、そっか・・・じゃあ僕のTシャツとズボン貸すね・・・。」 

ハルカが着てきたものの、ズボンはジャージの短パンで何とかなったが上のTシャツはダボダボだった。 
「ご、ごめんね・・・やっぱり大きいよね・・・。」 
「大丈夫・・・動けるし」 
ハルカはクルリと回ってみせた。 
ダボダボのTシャツがすごく愛らしい・・・・。 


719 名前: あかり ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/27(木) 15:07:42.28 ID:te4PCzmi0
悶々とした気持ちを抑え、僕も風呂入る。 
湯船に浸かりながら、一人つぶやく。 
「・・・・・・・女の子を部屋に入れるのも初めてなのに・・・。」 
つぶやくと、急に恥ずかしくなってきた。湯船に顔を突っ込む。バシャンと音が響いた。 

上がると、ハルカに紅茶を出した。 
紅茶の良い香りが部屋に漂う。


743名前: あかり ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/27(木) 16:35:54.15 ID:te4PCzmi0
静かな時間が流れる。 

カップを置き、ゆっくりとハルカが切り出した。 
「わたし・・・」 
「ん?」 
「わたし・・・・孤児なんだ・・・・。」 
「うん・・・。」 
「わたしが小さい頃・・・・お父さんもお母さんも・・・・戦争で死んじゃった・・・・。」 
「・・・・・・・。」 



920名前: あかり ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/27(木) 22:29:33.80 ID:uEEnpmYF0
「・・・・一人になちゃったとき、前の団長さんに拾ってもらって・・・」 
「・・・・・・・。」 
「それからはずっと・・・・・今の団長に・・育てて貰ったの。・・・・・お父さん、お母さんのことは・・・ほとんど覚えてない・・・」 
ハルカはカップを口に運び、一口飲みこむと言った。 
「わたしには・・・・・・・本当に帰るところなんて・・・・ないのかな・・・・・・。」 


ハルカの言葉を聴き終え、僕はようやく気がついた。 
この、どこか哀しげな雰囲気を持った少女に引かれた理由に。 


931名前: あかり ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/27(木) 22:37:42.99 ID:uEEnpmYF0
父親は病に苦しむ母さんの元には来ず別の女のところに行き、ただ金だけを送ってきた。 

母さんが死んだ時も、あの男は来なかった。 
いつもと変わらず、ただ金だけを送ってきた。 

それ以来、僕は一人だ。帰る場所など無く、世界中でたった一人だ。 


936名前: あかり ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/27(木) 22:50:05.22 ID:uEEnpmYF0
僕とハルカはよく似ている。 
違うのは、ハルカには帰りを待っててくれる人がいる。 


僕とハルカは、ただ傷を舐めあうことしかできないのだろうか・・。 


937名前: あかり ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/27(木) 22:56:52.71 ID:uEEnpmYF0
一人そんな思案に耽っていると、テーブルの対面にいたハルカがスッと立ち上がった。 
そのまま僕の横まで来ると、静かに腰を降ろした。 

ハルカは少しもじもじとして、こう言った。 
「あなたのことが・・・・・好き・・・・なんだと思う・・・。」 



944名前: あかり ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/27(木) 23:12:04.19 ID:uEEnpmYF0
僕はいきなりの告白に驚いた。 
ハルカは続ける。 

「わたしには・・・うまく言えないけど・・・。あなたは・・・わたしにとって・・・友達じゃなくて・・・」 
「・・・・・・・・・。」 
ハルカは必死に言葉を捜す。 
「・・・・あなたがそばにいると・・・・・すごく・・落ち着くの・・・。」 
「・・・・・・・・・・・・・・・・それは僕らの境遇が似ているから?」 
「違うの!・・・・・・・・・・・・・あなたは・・・あなたは、わたしにとって必要な人・・・世界中でたった1人だけの。」 




その言葉は、今まで僕が聞いたことの無い、暖かい響きの言葉だった。 


949名前: あかり ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/27(木) 23:26:51.16 ID:uEEnpmYF0
今まで、僕は他者の言葉を信じることが出来なかったんだと思う。 
だから潜在的に他者のことを信じず排斥してきたんだろう。 
あの男もしかり、学校の友達もしかり。 

でも、今僕の目の前にいる、あまりにも必死で、ひたすらに暖かいハルカの言葉と姿は、 
僕にとって充分すぎるものだった。 


僕の頬に、一筋の涙が流れた、泣いたのは母さんが死んで以来だった。 
僕は、ハルカをぎゅっと抱きしめた。彼女が話してくれた言葉に負けないように、ぎゅっと。 


487名前: あかり ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/28(金) 22:26:07.95 ID:sH/Gx5Wp0
5月23日午前7時03分 

窓枠に鮮やかな朝日が差し込む。 
僕は日差しを避けるように寝返りをうつ。 
重い瞼を片方だけ開け、隣にいるはずのハルカを探す。 

しかし、そこにハルカはいなかった。 


490名前: あかり ◆ZbWnaJs1.6 投稿日: 2006/04/28(金) 22:30:37.01 ID:sH/Gx5Wp0
驚いて、僕はガバっと身を起こす。 
確かに、昨日ハルカと寝た

復元してよろしいですか?

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