「殺し合い、殺し合い、殺し合い……」
初めて聞いた言葉を懸命に記憶しようとする幼児の様に、ザ・ヒーローは同じ言葉を何度も繰り返した。
「殺し合い、殺し合い、殺し合い……」
殺し合い、その言葉を繰り返す度にザ・ヒーローは心の中の何かが冷えていくのを感じた。
此処にいる僕が成そうとすることと、東京にいた僕が成したこと、一体何が違うっていうんだ?
僕はワルオを殺した。
悪魔と合体してさえも、彼は……
──……これは夢……
──だったのか……
──悪い夢……いや……
──良い夢……だった……
カオスヒーローなんかじゃなくて、僕の親友だった。
僕はヨシオを殺した。
神の操り人形となってさえも、彼は……
──僕は……
──神に選ばれし者では……
──な……無かったのか……
──神にささげられし……
──そうか……
──僕は……
──いけにえに……
──すぎなかったのか……
ロウヒーローなんかじゃなくて、僕の親友だった。
僕は母さんを殺した。
僕はゴトウを殺した。
僕はトールマンを殺した。
僕はフツコを殺した。
僕はアリスを殺した。
僕はゆりこを殺した。
僕は、オリアス、アマノサクガミ、ドウマン、アルケニー、ベリアル、ネビロス、
カズフェル、ハニエル、ヤマ、ニオウ、ラドン、エキドナ、ヴィシュヌ、ラーヴァナ、インドラジット、ベルゼブブを殺した。
僕は大天使を殺した。
ガブリエルもラファエルもウリエルもミカエルも殺した。
僕は魔王を殺した。
アリオクもアスタロトもスルトもアスラ王も殺した。
──絶対のバランスを維持した天秤の世界
神のための世界ではなく、悪魔のための世界ではなく、
だけど、人間のための世界でもないだろう。
それは全てが救われた世界、あるいは何も救われぬ世界。
僕がミカエルを殺さなければ、メシア教徒は救われたのだろう。
僕がアスラ王を殺さなければ、ガイア教徒は救われたのだろう。
でも、それじゃあ……どう足掻いても只の人間に救われる道が無い。
神も悪魔も信じずに、己の足で進んできた人間が救われる道がない。
僕も……隣に居る君も救われる道がない。
皆が皆、救われる道は僕が母さんを救えなかった時点で失ってしまった。
たった一人の人間を救えない時点で、救世主は救うべき世界を失ってしまった。
だから、だから、せめて…………
全ての人間に平等を与えたかった。
それは悪平等と呼ばれるものだろう、
悪魔も天使もない荒廃した世界で生きられるほど、人間は強くはないだろう。
信じた者を殺された世界は、人間が生きるには辛すぎるだろう。
けれども、マシだ。
力あるものだけが救われる魔界よりはマシだ。
選ばれし者以外が救われぬ千年王国よりはマシだ。
誰かが救われて誰かが救われないよりは、誰もが救われないほうがマシだ。
いや…………綺麗事はやめよう。
僕は、こう思っている。
「全員、呪われろ」
僕は英雄なんかじゃない、僕は救世主なんかじゃない。
僕は、どこまでもただの人間だった、誰一人救えない、ただの人間だった。
力にすがりつけるガイア教徒が妬ましい。
神に祈ることの出来るメシア教徒が憎らしい。
僕は人間だから、それは決して出来ない。
この世界を変えることの出来ない、本当にちっぽけな感情だとしても、
僕は混沌にも、法にも、自分の意思を投げ捨ててしまいたくはなかった。
だから縋ったりはしない、例えこの殺し合いを開いたルイ・サイファーにさえも。
縋られることもしない、例えこの殺し合いを打破しようとする者にも。
全てを殺して己の足で進もう、帰るべき東京へ。
心の天秤は、凍りついて動くことすらしない。
【千代田区/一日目・深夜】
【ザ・ヒーロー@真・女神転生】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品1~3
[思考・状況]
基本行動方針:皆殺し
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最終更新:2013年05月30日 03:25