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失楽園




私たちは楽園から追い出された。

そこにあるものを食べてしまったから。

もはや、そこは楽園ではない。

私たちは、選ばれた命ではなくなった。


   ◆   ◆   ◆


一人の美女が居た。
柔らかな長髪を揺らしながら、肉厚の唇を開く。

「貴方は美しいのね」
「……」
「髪の先からつま先まで……妬ましいほど、美しいわね」

青年、キャシャーンは応えない。
キャシャーンは戸惑い、ただ、目の前の車椅子に乗った美女を眺めていた。
豪奢なドレスを身にまとった、脚の自由を失った美女。
彼女もまた溢れだした『滅び』の影響を受けたのだろうか。

キャシャーンが月という名の太陽――――ルナという存在を殺した時に溢れだした避けられない滅び。
滅びを退けたはずの身体を崩壊させていく現象を、キャシャーンは起こしてしまった。
己だけが不滅の身体を手に入れて、他者に滅びを押し付けた。
殺害はブライキング・ボスの意思であって、操り人形に過ぎなかったキャシャーンの意思ではない。
だが、罪はキャシャーンのものだ。
銀子の脚もまた自身の罪かもしれない、キャシャーンはそう考えたのだ。

「私は……銀子と申します」
「え?」
「押してくださらない? 見ての通りの脚だもの……誰かが居ないと生きられないのよ」

美女、銀子は優雅な所作で口元を抑えてキャシャーンへと問いかける。
天使の微笑みか、悪魔の微笑みか。
それを見極める眼力をキャシャーンは持たない。
人間性の見極めが人生経験というものに基づくのだとしたら、キャシャーンはその経験が圧倒的に不足している。

「天使みたいね……」
「貴方も、美しい」

ありがとう、と微笑みながら銀子は応える。
キャシャーンは僅かに警戒心を持ちながら、銀子の車椅子の取っ手を持つ。
キャシャーンが弱々しい両肩を眺めていると、銀子は言葉を続けた。

「私は人間よ」
「人間?」

どこか当たり前にロボットだと思っていたキャシャーンは、僅かに戸惑いの声をこぼしてしまう。
しかし、銀子はそんなキャシャーンの感情の色に反応を示さない。
ただ、前を向いて言葉を吐き出していく。

「無花果を食べてしまったの」
「無花果、かい?」
「食べてはいけない禁断の果実……食べなければ永遠に楽園で暮らせたのに」

銀子の言葉にはどこか投げやりな色が含まれていた。
それほどの感慨を含まない、まるで他人の話をしているような。
そんな、投げやりな色が。

「楽園からはみ出た哀れな人間は、どう思ったでしょうね?」
「……それでも、生きようと思ったんじゃないかな。
 たとえ不自由な場所でも、たくましく生きようと……少なくとも、そう『考え』はすると思う」

銀子の言葉にキャシャーンは穿った考えを抱かずに、ただ自分の考えを告げた。
脳裏によぎった幾人もの人間とロボット。
滅びの中で生きる幾つもの命だ。

「……強いのね、貴方は」
「身体だけだよ」
「いいえ、きっと心も強いわ……私は、そう思わないもの」

銀子の声に、妬みの感情が混じった。
キャシャーンへの嫉みが。

「暴力を振るわれた分だけ相手を傷つけたくなる……
 相手が強くて手を出せないのなら、自分を傷つけてでも暴力に走りたくなるわ。
 もしくは……自分を壊してでも全部壊したくなる」

銀子はそこまで言うと、キャシャーンへと振り返った。
キャシャーンと瞳を合わせると、柔らかく微笑んだ。

「私、弱いの……一緒に居てくださるかしら?」


【世田谷区/一日目・深夜】

【キャシャーン@キャシャーンsins】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品1~3
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いには乗らない。
1:銀子とともに行動する。

【銀子@BASARA】
[状態]:健康
[装備]:銀子の車椅子@BASARA
[道具]:基本支給品、不明支給品1~3
[思考・状況]
基本行動方針:?
1:キャシャーンとともに行動する。
[備考]
※殺し合いに乗ったか、乗っていないか。銀子の基本行動方針は後続に任せます。
※銀子は自身の車椅子を支給されていますが、ランダム支給品のカウントには含まれません。



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最終更新:2013年05月30日 03:26