「はぁーっ……」
大きなため息を、ひとつ。
その中に込められている怠惰、嫌悪、怒り、全てが表に出ていく。
「よりによって、この僕とはね」
銀髪の青年、浅葱は皮肉めいた笑いを浮かべ、一人つぶやく。
最後の一人しか生き残れないと言う前提の、殺し合い。
浅葱にとって、それは初めての経験ではない。
その恐怖に怯えるもの達を見て、楽しむ側の人間だった。
何の因果か、今度は自分が殺し合う側の人間になった。
今頃、あのルイとかいう人間が薄ら笑いで浅葱のことを見つめているのだろう。
「気に食わないね」
他人を笑う事は好きでも、他人に笑われる事は好きじゃない。
ましてや、誰かの言いなりなんて言語道断である。
ここでホイホイと人殺しになってしまえば、それは屈服と同じ。
「人を殺さなければ、生き残れない」という恐怖に打ち負けたことになる。
かつてそれを見て楽しんでいたからこそ、男の目的もうっすらとは見える。
真実はそうではなかったとしても、遠からず近からずな点は突いているだろう。
「となれば、どうしようかなっ」
袋の道具を確認して使えるものを備えながら、浅葱は今後の振る舞いについて考える。
殺しに乗らない、と決めたはいいものの、じゃあどうするかという所までは正直言って考えていない。
正義の味方ぶって、人を殺す人間を殺すか? それは"人殺し"となんら大差はない。
ただ宛もなくフラついているか? いいかもしれないが、なんかムカツク。
先陣を切って行動し、この殺し合いに抗うものたちを集めるか?
そう、まるで更紗のように――――
「あ」
そこで、思い出したように声を出す。
初めの場所から、偶然にも彼女だけは見える場所にいた。
他の知り合いがいるかどうかまでは、判断できなかったが。
「更紗、大丈夫かな」
かつて、こんな殺し合いに牙を立てた少女。
世界を巻き込み、その中心で大戦乱に終止符を打った革命者"タタラ"その人。
「……ああ見えても、ただの女の子だからねぇ」
だが、浅葱はそうではない姿も知っている。
"タタラ"ではなく、"更紗"を知っている。
こんな状況でも、彼女のことを大丈夫だとは思っていられるのは、彼女が"タタラ"だから。
でも、もう"タタラ"は死んでいる、今生きているのは"更紗"なのだ。
「……大丈夫だよね」
それでも、浅葱の頭に"嫌な予感"はよぎらない。
浅葱は知っている、"タタラ"ではなく"更紗"を知っている。
それは、"更紗"の強い部分も、知っているということだ。
案ずることは、何もない。
「まっ、まずは自分の身かな」
姿勢を整え、袋に入っていた一本の棍棒を取り出し、足を慣らす。
出来れば使い慣れた刀剣類を手にしたかったが、贅沢は言ってられない。
お世辞にも武器とは呼べない物の中で、唯一戦える物はこれだったのだから。
そして、間をおかずに浅葱はその棍棒に頼ることになる。
ピリッ、と張りつめた殺意が、背中を撫でたから。
間合いは十分離れている、逃げ出すことは不可能ではない。
「どーしても、やる?」
でも、浅葱はそれをしない。
目の前に現れた女性が、何を隠し持っているかわからないから? それもある。
無様に逃げ出した後ろを、弓矢か何かでザックリというのは考えられる。
下手に隙をさらけ出すのは、得策ではない。
だがそれ以上に、浅葱を駆り出すもの。
だって彼はなにより――――
「じゃあ、遠慮なくッ!」
売られた喧嘩は、買いたいタチなのだ。
先に一手を仕掛けたのは、浅葱だ。
持ち前の俊敏性を生かし、瞬時に間合いを詰めて一撃を放っていく。
襲撃者は女性だった、年でいえば群竹くらいだろうか。
奇抜な格好の割には、戦いになれているらしく、浅葱の一撃をかわしていく。
「あーもうっ!!」
思うように自由が利かない武器に、苛々しながらも確信する。
相手は、近接戦闘が苦手であるということを。
もとより、自分に襲いかかろうとしているのに武器の一つも持っていなかった。
自分がふるう棍棒に対処しなければいけないというのに、せめて受け止めるくらいは出来そうなモノは構えてもいいというのに。
それをせず、勢いよく飛び退いたということは、受けきれる自信がないということ。
一撃を当てれば、自分のペースが作れる。
それがわかった以上、攻め手を休める理由はない。
相手が殺意を醸し出している以上、手を抜けば自分がやられるのだから。
再び距離を詰め、使い慣れない棍棒を振るう――――
「……ッ!」
間際に何とか体をひねり、女から離れていく。
なぜ、浅葱は攻めの手を止めたのか。
「なっ、にそれ! ズルくない!?」
それは、襲撃者の片手に巨大な雷の塊が発生していたからだ。
受け止められないなら、わずかにリーチの長い武器を叩き込めばいい、そういうことだろうか。
近接戦闘は苦手、という意識を浅葱は急いで消していく。
もう一度下手に近づけば、あの雷に飲み込まれるのは必至だ。
そもそも自然現象であるはずの雷を、どうやって扱っているというのか。
どこかの誰かのようなペテンではない、となればどうやって……?
「考えてる暇は無い、ねっ!!」
頭の中がパニックになる前に、浅葱は動き出していく。
近接戦闘が苦手ではない、けれども卓越しているわけではない。
相手の反応を上回れば、あの雷に呑まれる前に一撃を叩き込むことが出来る。
迷うことなく、棍棒を持って浅葱は風になる。
襲撃者の前、後ろ、左、後ろ、右、素早く足を動かし、攪乱していく。
ここまでの仕込みをしても、チャンスは一度。
完全に虚となっている角度を、絶妙のタイミングで叩く。
間違えれば、雷の餌食だ。
その一瞬を作るために、浅葱は素早く駆け続けていく。
だが、攪乱行動を続けているうちに、襲撃者に異変が起こる。
と、いうのも、浅葱の姿を目で追うのを諦め、何かを取り出していたからだ。
隙をさらして、何をしているのだろう。
そう思いながら浅葱は瞬時に詰め寄っていく。
それが、判断ミス。
雷にだけ、気を取られすぎていた。
すっと延びたのは、一丁の銃。
銃というモノが何か知らない浅葱でも、それが危ないということは本能でわかる。
身を捻る、間に合わない。
軽い破裂音と共に、赤い花が咲いた。
立て続けに、破裂音が鳴り響く。
まるで雑巾のように、浅葱の体がふわりと浮いた。
「……あんた、どこまでもズルいね」
だくだくと血が流れ、血が失われていく。
どう足掻こうが、もう生き延びることは出来ないだろう。
次第に体はふるえ、呼吸は短くなっていく。
「アンタの、目……ムカつく、ことに、知り合いに、似てる、んだよね」
だから、最後に足掻いていく。
「ああ、そっくりだ、その、ムカツク目、ほんっ、と、アイツ、そっくりだ」
傷になるかどうかもわからない、傷を植え付けていく。
「でも、断言できるよ、"更紗"は、アンタなん、か負けない、ってね」
ムカツク、たったそれだけの感情を糧に、浅葱は精一杯の皮肉を吐く。
「あー、くそ、もっ、と生きた……」
そして、フッと笑いながら、うずくまるように眠った。
「別に、私が勝てなくてもいいわ」
目の前の少年が生き絶えた後、彼女は言う。
「ただ、彼の負担を減らしてあげなくちゃいけない」
彼女は、かつて世の全てを破壊し"中立"させた男のパートナー。
「悪魔も、神も、魔王も、人も、全て手に掛けてきた」
前線に立ち、破壊の限りを尽くす彼を支える柱だった。
「そして、その手で全て壊してきた」
だから、誰よりも知っている。
「まだ壊せというの? まだ彼に何かを押しつけようというの!?」
"中立者"の痛みを、叫びを。
「……耐えられない、もう。彼が苦しみながら何かを壊すのを、見ているのが!!」
"英雄"の名を着せられた、彼の本当の気持ちを。
「だから、私が一つでも多く壊す」
もう、壊れていくところを、見たくはない。
「彼の負担を、少しでも和らげるために」
だから、彼女は進む。
かつての彼と同じ、破壊の道を。
【浅葱@BASARA 死亡】
【杉並区/一日目・深夜】
【ヒロイン@真・女神転生】
[状態]:消費(小)
[装備]:メギドファイア(弾:銀の弾丸)@真・女神転生
[道具]:基本支給品*1、ハート様気絶用棍棒@北斗の拳、不明支給品0~3、
[思考・状況]
基本行動方針:彼のために、壊す
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| ゲームスタート |
浅葱 |
GAME OVER |
| ヒロイン |
[[]] |
最終更新:2013年06月05日 01:32