マル様親衛隊の幹部のひとり。
パーティー内では
タンクを務めていた。
ハンドルネームはスタミナABURA丸。
スタミナABURA丸、本名田中洋子は都内在住のOLである。
目立った
スキルは何もない。容姿も地味である。そもそも名前からして地味だ。
会社でも目立った存在ではない。口数も多くなく押しも強くない、完全な空気。社内モブ。
そんな地味子・オブ・地味子の彼女が一目置かれ、活躍できる場所――それがブレイブ&モンスターズだった。
ブレモン最強ギルド、鬼の四人が一角。親衛隊の無敵たるを体現する、文字通り無双の鉄壁。
スタミナABURA丸として。
ブレモンの中でスタミナABURA丸としてのペルソナをかぶった彼女は、まさに無敵だった。
意思を持つ盾『イージスディフェンダー』を
パートナーモンスターとし、ありとあらゆる攻撃を遮断する絶対の防壁。
彼女の防御を突破した者は未だかつて存在せず、その強さは異世界においても遺憾なく発揮され――
は、しなかった。
田中洋子がスタミナABURA丸という仮面をかぶり、比類ない力をふるっていられたのは、それがゲームの世界だったからである。
ゲームの世界。スマホの世界。……インターネットの世界。
実体のない仮想の世界であったからこそ、彼女は現実の自分を忘れて思う存分暴れることが出来た。
どれだけダメージを負っても、電源さえ切ってしまえばノーカウントになる世界。現実と仮想を隔てる分厚い壁。
皆を守る壁役の彼女が、その実誰よりも壁というものに依存していたのだ。
だが――こうして異世界に召喚された今、彼女を守っていた防壁は消滅した。
凭れかかるべき壁がなくなった今、そこに残されたのはスタミナABURA丸ではない。
地味なOL、社内モブの田中洋子がいるだけだった。
文明社会の恩恵を根こそぎ奪われ、地球では想像さえできない不自由な生活を強いられ。
なおかつ
アルフヘイム由来のモンスターに直接命を狙われる生活に、彼女の心は瞬く間に摩耗していった。
そして、折れた。
地球とはまったく勝手の違う
アルフヘイムでの生活に音をあげ、戦線離脱。
ニヴルヘイムの追手から逃れるためパーティー内の合意の上自らのスマホを破壊し、
現在は
リバティウムにあるさっぴょんの箱庭で生活している。
最終更新:2020年09月11日 11:10