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第9章『異邦の勇者達』

前編――世界の真実と、勇者になれない風


聖都エーデルグーテへ帰還したなゆたたちは、復元されたシャーロットの記録から、この世界を覆う《侵食》の正体を知る。

アルフヘイム、ニヴルヘイム、そして地球。三つの世界はすべて、オンラインゲーム《ブレイブ&モンスターズ!》を構成する世界そのものだった。

ローウェルはプロデューサー、バロールはチーフデザイナー、シャーロットはメインプログラマー。彼らは神などではなく、この世界を作り、運営していた開発者たちである。

だが《ブレイブ&モンスターズ!》は人気を失い、サービス終了が決定した。ローウェルはマスターデータの削除を始め、それが世界の側から見た《侵食》として現れていたのだ。

ローウェルは、アルフヘイムとニヴルヘイムを争わせ、最後に生き残った世界を地球とともに残すと約束した。しかし、それは世界を救うための戦いではなかった。終わりゆくゲームへ最後の話題を集めるため、住人たちの命すらイベントとして消費する計画だった。

それに抗ったのがシャーロットである。

彼女は削除を免れたデータを集め、不完全ながら世界のバックアップを作成した。そして修復プログラム《機械仕掛けの神――デウス・エクス・マキナ》によって、時間を巻き戻すように世界を再構築した。

現在の世界は、すでに一度滅びたあとの《二巡目》だった。

一巡目の記憶や能力、イベントの進行状況の多くは失われた。だが不完全な復元によって、イブリースやカザハのように、前の世界の記憶を断片的に残した者もいる。

そしてエンデは、自分が通常の住人ではなく、シャーロットの遺した世界修復用のプログラム――《機械仕掛けの神》そのものであると明かす。

地球で配信されていたゲーム版《ブレイブ&モンスターズ!》も、アルフヘイムを模して作られた単なる娯楽ではない。異世界へ召喚される地球人が、あらかじめモンスターやスペルの扱いを学ぶための訓練装置だった。

さらに地球人には、この世界の住人には本来存在しない特殊なパラメーターが与えられている。

それが《勇気》だった。

なゆたたちが何度も不可能を覆してきた力。ゲームの計算だけでは説明できない奇跡。その正体は、シャーロットが異邦の勇者たちへ託した、世界を存続させるための可能性だったのである。

だがローウェルを倒せば、すべてが解決するわけではない。

サービス終了そのものを覆せなければ、世界はいずれ削除される。なゆたたちは戦いを止めるだけでなく、《ブレイブ&モンスターズ!》にはまだ未来があると証明しなければならなかった。

真実を知ったオデットもまた、これまでの行いを詫び、一行へ協力する。

聖罰騎士団は彼女に直接命じられて虐殺を行ったわけではなく、信仰と忠誠が暴走した結果だった。エーデルグーテを覆っていた魔法の霧も、民衆を操るためのものではない。滅びを待つ人々の苦痛を和らげるための、いわば終末医療だった。

それでも、自分の理想と沈黙が多くの犠牲を生んだ責任は消えない。オデットは聖女としてではなく、世界に生きる一人として、ローウェルへ抗う道を選んだ。

一方、決戦の準備が進むなか、カザハはひそかにパーティーを離れることを考えていた。

戦いは急激に激しさを増している。なゆたたちは《勇気》によって限界を越え、エンバースや明神、ジョンも次々と新たな力を得ていた。

だがカザハには、地球人の持つ《勇気》がない。

風精王の資格を持ちながら双巫女を救えず、ガザーヴァの裏切りにも心を乱され、戦闘でも仲間に追いつけない。自分はもう、パーティーに必要とされていないのではないか。

その迷いを見抜いたのは、ガザーヴァだった。

ガザーヴァは、パーティーを抜ける理由を自分のせいにするなとカザハを叱りつける。

確かに今のカザハは弱い。戦闘では足手まといになるかもしれない。だが仲間の価値は、戦闘力だけで決まるものではない。

明神とくだらないことを言い合い、エンバースへ皮肉を返し、ジョンと話し、なゆたと料理を作る。そんな旅を、本当はまだ続けたいのではないか。

ガザーヴァは涙を浮かべながら、カザハには勇者たちの旅を見届け、その物語を伝える役目があると言う。

自分と同じ姿を持ちながら、ずっと憎み、羨み、追い越そうとしてきた相手。そんなガザーヴァに引き留められ、カザハはとうとう降参する。

戦えないから去るのではない。

戦えなくても、ここにいてよい。

カザハはパーティーへ残ることを決めた。

だが、物語を伝えるといっても、自分には優れた文章を書く才能があるわけではない。どうすれば勇者たちの物語を残せるのか。

その夜、眠りについたカザハは、不思議な夢を見る。

そこにいたのは、竪琴を奏でる、初代の風精王を名乗る謎の人物だった。

初代風精王は、カザハに新しい何かを与えたわけではない。ただ、地球で自分が何を愛していたのか思い出せと告げる。

物語を伝える方法は、文章だけではない。

そして《レクス・テンペスト》であるカザハは、空気を操ることができる。空気の振動――すなわち音もまた、彼の支配する風の一部だった。

翌日、カザハはエーデルグーテの路上で、突如ライブを始める。

地球時代のカザハが壊滅的な音痴だったことを知るカケルは、惨事を予感してジョンを連れて駆けつける。ところが、カザハの歌声は正確で、美しく、聴く者の心へまっすぐ届いた。

本人の歌唱力が突然上がったわけではない。《レクス・テンペスト》の力で空気の振動を調整し、外れた音程すら風で修正していたのだ。

カザハが歌ったのは、《ブレイブ&モンスターズ!》のテーマソング。

カケルも魂のつながりを通して演奏へ加わり、二人の歌は街へ響いていく。

だが、二番へ入ったところでジョンは異変に気づいた。

それは公式には存在しない、ありえない歌詞だった。

自分が消え果てたあとも、残された者たちなら必ずやり遂げてくれる――まるで世界を去ったシャーロットが、異邦の勇者たちへ未来を託すような言葉。

カザハ自身も、その歌詞を作った覚えはない。ただ歌っているうちに、初めから知っていた言葉のように自然と口から出てきたのだという。

それがシャーロットの遺したメッセージなのか、別の誰かの言葉なのかは分からない。

だがカザハは、ようやく自分なりの戦い方を見つける。

敵を直接倒すのではなく、歌によって仲間を支え、その勇気を引き出す。

カザハはこれまでの戦闘職から、《呪歌士》へクラスチェンジした。

誰か一人を歌で支援するなら、ジョンを選ぶ。

そう宣言しておきながら、カザハは「他意はない」と言い張る。ジョンもそれ以上は追及しなかったが、二人の間には、それまでとは違う空気が流れ始めていた。

決戦までのわずかな時間、カザハとカケルは《二代目T SOUL SISTERS》を名乗って路上ライブを続ける。

耳を澄ませれば、仲間たち一人ひとりに異なる曲が聞こえる。

なゆたにも、エンバースにも、明神にも、ジョンにも、ガザーヴァにも、それぞれの物語と主題歌がある。

この旅に、ただ一人の主人公はいない。

全員がそれぞれの物語を背負って進む、異邦の勇者たちだった。

やがてエーデルグーテには、オデットの軍勢と、グランダイトの生き残った騎兵たちが集結する。

エンデの力によって開かれた転移門の先は、ニヴルヘイム第八階層。

大軍が敵を引きつけている間に、なゆたたちはローウェルのいる《ダークマター》へ突入する。

だがニヴルヘイムには、迎撃の軍勢どころか、住民の姿すらなかった。

魔物たちはすでに、地球へ送り込まれていたのである。

ダークマターで一行を待っていたのは、兇魔将軍イブリースだった。

イブリースの身体には、これまでの戦いで死んだニヴルヘイムの魔物たちの怨念が取り憑いていた。彼らの苦しみと憎しみをすべて背負い、血の涙を流しながら、イブリースは異邦の勇者たちへ剣を向ける。

なゆたの中に残された記録から、イブリースのかつてのマスターがシャーロットであったことも判明する。

シャーロットは皇魔将軍として、ニヴルヘイムの民を守るようイブリースへ命じていた。

だが、今のなゆたはシャーロット本人ではない。命令を取り消すことも、彼の罪をなかったことにすることもできなかった。

ジョンは、それでもイブリースを救いたいと願う。

しかし明神は、簡単に味方として受け入れることを拒む。

イブリースは多くの命を奪い、キングヒルの滅亡にも加担した。ローウェルに利用されていたとしても、その責任から逃がしてしまえば、イブリースが背負ってきた覚悟まで偽物になる。

だからこそ、まず敵として倒す。

そのうえで、生き残った者として責任を取らせる。

なゆたたちは、イブリースとの決戦へ挑んだ。

戦いを前に、ジョンはカザハの手を取り、その甲へ口づける。

あまりにも突然で、カザハは完全に思考を止める。

だが拒絶することも、嫌がることもできなかった。むしろ自分の内側に生まれた感情へ気づき、どう扱えばよいのか分からないまま、戦場へ向かうことになる。

イブリースの力は、始原の草原で戦ったとき以上だった。

無数の怨念が魔力となって彼を強化し、なゆたたちの攻撃を押し返す。倒された魔物たちの怒りは、異邦人である勇者たちへ向けられ、言葉も祈りも届かない。

ジョンと部長、エンバース、明神、なゆたたちは、全力で食らいつく。それでもイブリースと怨霊の力を同時に相手取ることはできない。

窮地のなか、カザハは歌う。

それは先ほどの出来事への即答として歌われたものではない。仲間たちを救い、死者の心へ言葉を届けるために選んだ、呪歌士としての戦いだった。

だが《憧れを追う風》と名づけられたその歌は、結果としてジョンへ向けたカザハの返事にもなっていた。

明神も演奏へ加わり、風に乗った歌がダークマターを満たす。

地球人ではないカザハには、《勇気》のパラメーターがない。

それでも彼の歌は仲間たちの勇気を引き出し、憎しみに囚われたニヴルヘイムの魂へ届いた。

イブリースを縛っていた怨念が揺らぐ。

彼らが本当に望んでいたのは、アルフヘイムや地球への復讐ではない。故郷を救い、自分たちの命を未来へつなぐことだった。

死者たちの力が剥がれ落ちた瞬間、ジョンと部長がイブリースへ飛び込む。

カザハの歌、明神の術、エンバースとなゆたの攻撃。全員が作り出した一瞬の隙をつなぎ、ジョンはついにイブリースを打ち倒した。

だがイブリースは、自分がローウェルに操られていただけだとは認めようとしない。

明神は、利用されていたと言えば味方になる口実ができるのだと怒鳴る。それでもイブリースは、自分の選択と罪を他人へ押しつけることを拒んだ。

そんな彼へ、エンバースは語りかける。

自分もまた、一巡目の世界で多くを失い、過去の人間の記憶を引き継ぎながら、別の存在として生きている。過去を消すことはできない。だからこそ、生き残った者はその先を選び直さなければならない。

イブリースは罪を許されたわけではない。

なゆたたちの仲間になったとも認めない。

それでも、残されたニヴルヘイムの民を救うため、彼は異邦の勇者たちと同じ道を進むことを選んだ。

こうして三人の皇魔将軍は、再び同じ場所へ集う。

もっとも、再会を誰より喜んでいたのは、主にガザーヴァだった。

後編――地球へ帰った異邦の勇者達


地球へ向かうには、ダークマター内部に隠された管理者用の転移機能を起動しなければならない。

そのためには、六属性に対応する力を持つ勇者たちが魔法陣へ入り、膨大な魔力を供給する必要があった。

モンスターやパートナーは陣へ入ることができない。

なゆた、エンバース、明神、ジョン、カザハたちは互いに手を取り、命を削るような儀式へ挑む。

カザハはジョンの手を握り、自分はもう皆に追いつけたのかと尋ねる。

守られてばかりの足手まといではなく、自分も仲間を守れる存在になれたのか。

仲間たちは、今さら何を言っているのだと答える。

カザハは以前から、誰よりも仲間を支えてきた。彼の風と歌がなければ、ここまでたどり着けなかった。

明神は、世界を救ったあとに皆で食べたいものや、やりたいことを次々と口にする。

大げさな使命ではなく、くだらない約束と未来への欲望。それらもまた《勇気》となって魔法陣を満たしていく。

なゆたとエンバースも、互いの気持ちを確かめ合う。

エンバースは、なゆたにもうどこにも行かないでほしいと告げる。なゆたも彼への想いを認め、その心に応えるように《銀の魔法使い》の力を呼び起こした。

一方、ジョンはカザハへ、世界を救ったあとは別れなければならないと告げる。

自分には償うべき罪がある。イブリースとも、いずれもう一度決着をつけなければならない。その道へカザハを巻き込むわけにはいかない。

だが、別れを告げたジョン自身が涙を流していた。

そして儀式が限界へ近づいたとき、ジョンはその言葉を撤回する。

カザハの進む先を守る大地になる。

だから世界を救ったあとも、一生、自分についてきてほしい。

カザハもまた、その申し出を受け入れた。

二人の関係は、まだ名前すら定まっていない。それでも、世界の終わりを越えた先まで、ともに進む約束だけは交わされた。

勇者たちの力によって管理者メニューは姿を現す。

ところが、その機能はローウェルによって書き換えられ、なゆたたちには操作できなくなっていた。

そこで前へ出たのがミノリだった。

彼女の身体には、バロールの《創世の魔眼》が移植されていた。その力を用いてローウェルの制限を突破し、地球へ通じる転移門を開く。

ミノリは以前から、世界の真実の一部を知っていた。

それでも何も語らなかったのは、真実だけを与えられても、かつてのなゆたたちには受け止められないと考えていたからだ。

ミノリとウィズリィは門を維持するため、ダークマターへ残る。

なゆたたちはイブリースたちとともに、ついに地球へ帰還した。

転移した先は、戦火に包まれたラスベガスだった。

ニヴルヘイムの軍勢と地球の軍隊が衝突し、街は巨大な戦場と化している。

その中心に建つワールドマーケットセンターで、一行を待っていたのは金獅子ミハエルだった。

ミハエルは、かつてエンバース――ハイバラとともに世界大会を目指したクラン《リューグークラン》を復活させていた。

彼らは一度死んだ者たちのデータから再構成され、《悪魔の種子》によってこの世へつなぎ止められた存在だった。

ミハエルが望んでいるのは、ただ一つ。

かつて決着をつけられなかったハイバラと、もう一度、世界最高の舞台で戦うこと。

そのためだけに、ラスベガスを巨大な大会会場へ作り変えたのである。

かつての仲間たちは、現在の異邦の勇者たちの前へ立ちはだかる。

ミハエルはエンバースと。

マイディアはなゆたと。

黒刃は明神と。

流川たなはジョンと。

あいうえ夫はカザハと。

それぞれが、自分たちこそ本物の勇者であると証明するように、過去と現在の《ブレイブ》が激突する。

明神は黒刃との肉弾戦へ挑む。

ゲームの知識や装備だけでなく、自分自身の身体と、ガザーヴァから託された力を使い、真正面から食らいつく。

黒刃もまた、明神の覚悟を認め、最後の《ブレイブスマイト》が放たれる前に敗北を受け入れた。

ジョンと部長は、流川たなとそのパートナーへ挑む。

部長は戦いのなかで新たな姿《ウェルシュ・コトカリス・ウィング》へ進化。ジョンと積み重ねてきた連携によって、かつてのトッププレイヤーを打ち破る。

なゆたの前に立ったマイディアは、ハイバラへの想いを隠そうとしなかった。

過去の彼を知る者として、今のエンバースとともにいるなゆたを認められるのか。自分より彼を支えられるのか。

なゆたは、あえて自分を危険へ追い込み、《銀の魔法使い》の力を引き出して立ち向かう。

これはエンバースを奪い合うための戦いではない。

過去のハイバラを愛したマイディアと、今のエンバースと生きようとするなゆたが、それぞれの想いをぶつけ合う戦いだった。

敗れたマイディアは、エンバースをなゆたへ託す。

絶対に死なせるな。

そして、なゆた自身も生きろ。

なゆたはその願いを受け取り、エンバースとともに未来へ進むことを誓った。

カザハとカケル、ガザーヴァは、あいうえ夫とマーリンに立ち向かう。

カザハは直接戦うのではなく、戦場全体へ歌を届ける。

その歌へ、ガザーヴァも加わった。

カザハのコピーとして生まれ、彼を妬み、憎み、特別になろうともがき続けたガザーヴァ。二人の声が重なることなど、かつては考えられなかった。

だが明神に背中を押され、ガザーヴァはカザハとともに歌う。

憎しみも嫉妬も、なかったことにはしない。

他人の不幸を喜んでしまう醜ささえ、自分たちを前へ進ませる力へ変える。

二人の呪歌は戦場を駆け抜け、仲間たちの《勇気》を爆発的に引き上げた。

力を使い果たしたガザーヴァは、あとの決着をカザハへ託す。

そして、ずっと認めることのできなかった相手を、初めて「お姉ちゃん」と呼んだ。

その一言が、カザハの中に新たな力を目覚めさせる。

地球人ではないカザハには存在しないはずだった《勇気》。

カザハは、ようやく《ブレイブ》として覚醒する。

《ブレイブ同士の戦い》とは、パートナーモンスターを戦わせることだけではない。

勇者自身が、自らの身体で戦うことでもある。

カケルが演奏を引き継ぎ、カザハは自分の歌による支援を受けながら、あいうえ夫へ直接挑む。

最後に放ったのは、

《終律――レヴァナント・スターライト――永遠に滅びぬ星の煌き》。

それは相手を破壊するための攻撃ではなかった。

あいうえ夫の体力をぎりぎりまで調整し、彼が必ずマーリンを守ろうとすることまで見越したうえで、戦意を鎮める呪歌。

力でねじ伏せるのではなく、相手が自分の意志で戦いを終える余地を残す。

呪歌士となったカザハらしい方法で、あいうえ夫との戦いは決着した。

一方、エンバースとミハエルの戦いは、かつて実現しなかった世界大会決勝そのものだった。

ミハエルのパートナーはルシファー。

エンバースはフラウとともに、かつてのハイバラが持っていた技術と、現在の仲間たちとの旅で得た力を総動員する。

装備を瞬時に切り替える《トループシステム》。

魔王としての新たな姿。

そして、仲間たちがつないだ力を結集したダインスレイヴ。

ミハエルが戦いたかったのは、過去のハイバラだった。

だが目の前にいるエンバースは、その記憶と姿を受け継ぎながら、すでに別の道を歩いている。

なゆたと出会い、明神やジョン、カザハたちと旅をし、誰かを見捨てずに世界を救おうとする者になっていた。

二人は互いのすべてを込め、最後の一撃を放つ。

ほぼ同時に刃が届くなか、ルシファーはミハエルを庇い、ダインスレイヴを受け止めた。

エンデが告げた勝者は、現在の異邦の勇者たちだった。

ミハエルは、生涯で初めての敗北を受け入れられなかった。

戦いを終えたリューグークランの者たちは、自分たちがすでに一度死んでいたことを思い出す。

それでも、もう一度仲間たちと戦い、ハイバラと同じ舞台へ立つという願いは果たされた。

マイディアたちは、思い残すもののない表情で消えていく。

多くの命を奪ったミハエルをどうするのか。

明神は、彼には罪を償わせなければならないと主張する。

エンバースも、その罪を許したわけではない。

それでも彼は、次に戦うときはもっとまともな舞台にしようとミハエルへ告げる。そしてローウェルが作ったこの結末を、自分の手で終わらせると宣言する。

その言葉を、ジョンが訂正する。

「俺」ではなく、「俺達」だと。

ここまで来たのは、ハイバラ一人の物語ではない。

なゆた、エンバース、明神、ジョン、カザハ。そして彼らを支えてきたすべての仲間たちによる物語なのだ。

ローウェルの居場所を問い詰められたミハエルは、答えは建物の外にあると告げる。

だがワールドマーケットセンターを出ようとした一行の前へ、瀕死のイブリースたちが現れる。

イブリース、エカテリーナ、アシュトラーセ。

彼らは、ニヴルヘイム軍と地球の軍隊を止めようとしていた。

ところが地上へ出た三人が目にしたのは、戦争などではなかった。

ニヴルヘイムの魔物も、地球の兵士も、区別なく何者かに虐殺されていた。

なゆたたちが外へ出る。

崩壊したラスベガスの街には、両軍の死体が無数に転がっている。

そして空を見上げた一行は、言葉を失った。

天空を埋め尽くしていたのは、アルフヘイムにも、ニヴルヘイムにも、地球にも属さない、巨大な艦隊。

異邦の勇者たちが、過去との戦いを終えたその瞬間。

三つの世界すべてを脅かす、星界からの侵略者が姿を現したのである。

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最終更新:2026年08月14日 21:01