アットウィキロゴ
本にしてみよう
掲示板 掲示板 ページ検索 ページ検索 メニュー メニュー

本にしてみよう

082

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集

082.戯言


「ねぇ……暇だし、ちょっと聞いてもいい?」
「ん、何? 俺に答えれる事だったらいいぜ。そんかし、終わったら直ぐ寝ろよ? 夜、見張りがあるんだから」
闇の中、♀シーフが言う。襲撃に備えて、火を焚いて居ない為に、相手の姿は見えない。
夜の間は、交代で見張りをする事になっているのだが……いかんせん、まだ時刻が早い。
七時くらいだろうか。本当ならば少しでも早く眠っておいた方がいいのだろうが、そう思うとおりには物事は中々進まぬものだ。
「確か……全ての職に知り合いが居るっていってたよね?」
「げっ……聞こえてたのか」
少し、ばつの悪そうな声が帰ってくる。
「聞こえてたよ。残念だったね」
今度からは口に出さないように気をつけよう、と闇の向こうの声は言う。
それはともかく、と♀シーフは返した。
「あのさ、君、一体どういう事してたの? 聞くのは野暮かもしれないけど……なんていうか、妙に気になる」
「俺? 俺か……」
声は、しばし考え込む様に黙った。
「しいて言うなら、学生かな? ほら、冒険者の学校みたいなのあるだろ? そこに通ってた」
「ふぅん。意外と箱入りなんだね」
少女はふふん、と笑う。
「笑うなよ……あんたは通ってなかったのか?」
「普通は通わないね。つーか、金持ちのボンボンが行くところっしょ、そういうの」
「……キツいお言葉で」
流石にむっ、とした様な声。
しかし、それには構わず、♀シーフは続ける。
「アタシなんかは孤児で、その日暮らし。乞食よりはまだ食ってけるってんで冒険者になったクチだから。正直、アンタみたいな奴が羨ましいやら妬ましいやらでね……いいなぁ、アタシもここに来る前に行ってみたかったなぁ」
数秒の間、それから返事が返る。
「通えるだろ」
返事は、その様に言う。
「馬鹿言わないでよ……こんな場所に来ちゃったんだし……」
しかし、闇の向こうの相手は、その言葉を遮って続ける。
「通える。絶対に此処から帰って……通える様になる」
その言葉は、力強い。
「馬鹿ね。帰れるのは一人じゃない」
「う……」
だが恐らくは、そこまでは考えていなかったのだろう。返事が止まる。
「まぁ、判った事もあるし、このへんで許してあげるよ」
「何だよ……俺が学生って事か?」
「そう。それと、おそらく、その知り合いってのは女の子だろうっ、てことかな。じゃないと、そんな殺し文句、自然に出てこないよ。そんじゃ約束どうり→どおり、アタシは寝るからね」
言うだけって、♀シーフは目を瞑る。
「…………」
残された夜の闇には、ただ沈黙だけが、わだかまっていた。


<ときラグ主人公&♀シーフ 交代で見張りをしながら夜に>

→ 083

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最近更新されたスレッド
ウィキ募集バナー