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全長 | 3.6~4.2cm |
重量 | 3.5~4.0kg |
地域 | ヨーロッパ(西欧) |
年代 | 6~20世紀 |
西欧においてのランスは、騎兵専用の武器である。
語源はランシアという歩兵も騎兵も使用した槍で、古フランスのルンサを経てランスと言う言葉が生まれた。
三角錐のような形状のものが典型的で、手元にはバンプレートと呼ばれる握る手を保護する大きな傘状の鍔がついている。
穂先は戦場では槍状、騎士同士が腕を競い合うトーナメントにおいては切先がなく、王冠状のカップ「コロネル」を付けることもあった。
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1 | 穂先:スピアーヘッド(SpearHeads) |
2 | 柄:シャフト(Shaftt) |
3 | 護拳:バンプレート(VamPlate) |
4 | 握り:グリップ(Grip) |
5 | 石突:バット(Butt) |
ランシアの時代では、騎兵も歩兵も使える武器だったが、13世紀ごろのイングランドにおいて、ランスと言う名前で文献に登場。
このときはまだ、普通の長柄武器(ロングスピア等)と大差ない武器であった。
その後16世紀になって、本格的な騎兵用として作られたのが、今日のランスである。
強力な戦力であったが、製鉄技術の発展、銃器の開発、そしてパイク戦術に弱いと言うことがあって、次第に戦場から姿を消していった。
戦闘用穂先
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トーナメント用穂先(コロネル)
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仕様用途は至って簡単。
馬上で突き出すように固定して構え、そのまま馬を疾走させて突撃し、同じ馬上の相手を「突き倒す」。
一人倒したら、ヒットアンドウェイの要領で戻るか、次の敵に向かって再突撃する。
これがいわゆる「ランスチャージ」と言う、馬の突進力を最大限に利用した、ランスの唯一無二の攻撃手段である。
騎兵全盛期には最大の攻撃手段であり、戦争全体で非常に重要な戦力として数えられていた。
意外と勘違いされているのだが、決して歩兵がまともに扱える代物ではないということだ。
ここまでの重量兵器を歩兵…つまり人の足で支え、馬のように疾走して突撃するのは不可能である。
馬上の騎士でさえ、ランス装備用専用の右腕をほぼ固定した特殊なプレートメイルを装備して、やっと支えられる程度である。
(このプレートメイルは手首のみ多少動き、穂先の敵の狙いを定められるよう微調整できるようになっている。)
また、ランスチャージの突撃力で馬上から相手を突き倒すことが主な目的であるので、貫通力はさほど重視していない。
貫通力を重視してしまったら、いい加減クソ重い武器の先端に、プレートメイルを着た同じくクソ重い死体を突き刺したままにしなければならない。
そうなってしまったら、ランスを持つ騎士の手も、ランス自体も重さに耐え切れずに折れるのがオチだ。
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ランス使いの騎士たちは、たびたびトーナメントという模擬戦を行っていたと言われている。(これを主題にした映画が「ROCK YOU!」である。)
一枚の仕切り版を挟んで、ランスチャージ同士を交差させるようにぶつけ合うという実戦さながらの試合である。
この個人戦は「ジョスト(Joust)といい、装備も実戦さながらに特殊プレートメイルを着込んで行われたと言う。
もちろん安全のためにプレートメイルは次第に頑丈なものになっていったり、模擬戦用のランスとして木製のランス(ブルードナス)が作られた。
…が、負ければ思いっきり突き倒されるわけで、地面に激突する衝撃で死ぬものも少なくなかった。
2007年 11月23日更新 2008年 9月10日 画像差し替え+追記
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