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全長 | 40~60cm |
重量 | 0.6~0.9kg |
地域 | ヨーロッパ |
年代 | 13~15世紀 |
非常に広い身幅を持つ装飾短剣。
その身幅が指5本分ほどあることから、イタリア語で5本の指を意味する「cinque dita」を語源としている。
起源はヴィネツアで、ルネサンス時代にエミーリアやヴェネトといった地方で開発された。
この変わった短剣はイタリア全土に広まり、ルネサンス時代の波に乗って世界中にその名を広めていった。
血溝と言うわけでもなく装飾的な溝が掘ってあり、ある程度パターンが決まっている。(基本的に刃元に近いと数が多くなる)
1,2,3と3等分したものが刃元にいくほど溝が増えていくというタイプ。
2.3のもの。
2,3,4のもの。
2つの大きな溝のあるもの。
全く溝の無いもの。
文献と残されている実物(海外ウェブサイト上で確認できたもの)からだと、このようなパターンのものが見られた。
かなり美術品としての意味合いが強く、CGのもののようにガードに宝石の装飾がついているものがかなり多い。
また、金色のグリップのものや象牙のグリップのもの、木のグリップのものと、握る部分一つとっても多種多様であり、薔薇などの装飾を施したメダリオンをつけることもあった。
また、ブロードソードの一種で特に幅広のタイプである「アネラス」という刀剣がある。
この刀剣とたまに混同して、チンクエディアが「アネラス」と呼ばれている文献があったり、アネラスがチンクエディアと呼ばれていることもある。
ひょっとしたらこの二つは同じもので、長さによって名称が違ったのかもしれない…という憶測も出来るが、あくまで憶測の域を出ていない。
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1 | 剣身:ブレイド(Blade) |
2 | 切先:ポイント(Point) |
3 | 柄:ヒルト(Hilt) |
4 | 鍔:ガード(Guard) |
5 | 握り:グリップ(Grip) |
6 | 柄頭:ポメル(Pommel) |
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前述したように、ルネサンス時代の華々しい時代に登場した装飾短剣である。
ルネサンス時代の申し子と呼ばれているチュザーレ・ボルジアという人物が残したチンクエディアが特に有名である。
ローマのカーザ・ガエターニにチンクエディアが。
ロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館には、それを収めるための美しい装飾をした皮製の鞘が保管されている。
このチンクエディアは非常に有名で、ウィーンのフェリペ美公の剣やウェストミンスター寺院が所有するヘンリー5世の剣に影響を与えたとされている。
更に、作者の名前が残っているチンクエディアも存在し、その作者のいる地方には大抵有名な刀鍛冶が集まっており、彼らの作品の一つとして多く作られていたようだ。
作者名が残っているチンクエディアのいずれも見事な装飾を施された、豪華絢爛な一品であると言う。
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前述でくどいほど言っているが、この短剣は装飾用の短剣である。
なのであまり戦闘を想定された強度のものでないと思っておいたほうがいいだろう。
ただ、これだけの身幅がある短剣なので、ブロードソードのようにレイピアをへし折ることが可能かもしれない(刀身強度にもよるが)
完全に戦闘用に作ったとした場合、形状から見て刃の厚みと重さで断ち切るタイプだろう。
また、巨大な槍の穂先(ガードもあるので、さしずめ「ウィングド・スピア」あたりか)と考えれば、刺突にもいいのかもしれない。
が!
あくまで装飾用だから。
チンクエディアなんて飾りです。偉い人にはそれがわからんのですよ!
2008年 11月1日更新
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