厚生労働省は3日、2010年版の「労働経済の分析」(労働経済白書)を発表した。
今後の日本の産業社会では、長期雇用や年功賃金などを前提とする「日本型雇用が有効」と分析したのが特徴だ。00年代に企業が「雇用の調整弁」として派遣労働者ら非正規雇用を増やして人件費を抑え、所得格差が広がったことについても批判している。
白書では、産業社会の変化や、雇用と賃金の動向を長期的に分析。今後、日本では、保健医療や教養娯楽などの分野が成長すると予測した上で、労働者に高度な職業能力、サービスが求められるとした。能力形成のためには、長期的な人材育成がしやすい日本型雇用が有効だとしている。
白書は、約2万社の企業の意識を探った10年の調査(回答約3000社、回収率15%)も掲載。「今後、長期安定雇用のメリットの方が大きくなる」との回答が全体の49・7%を占め、企業の人事方針も「『即戦力志向』から『じっくり育成型』に」と分析した。
背景には、00年代に大企業を中心に非正規雇用を増やしたことへの批判や反省がある。1997年から07年にかけて、年間収入が100万~200万円台半ばの非正規雇用は増えており、所得格差拡大だけでなく、賃金低下による消費の伸びの抑制につながった。
一方、企業側としては、派遣労働者らの増大により人件費コストを抑えて、安易に事業拡張を行えた面があったと指摘。「すそ野の広い技術・技能の向上と所得の底上げを目指す必要がある」と結論づけた。
(2010年8月3日13時53分 読売新聞)
ソース:YOMIURI ONLINE(読売新聞) http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20100803-OYT1T00651.htm