・旧八郷町の元美容師殺人 時効まであと1カ月
2007/12/13(木)茨城新聞本紙朝刊 第1社会 A版 23頁
"猟奇"事件得られぬ情報
旧八郷町(現石岡市)の山林で一九九三年一月、旧石下町新石下(現常総市)、元美容師、谷嶋美智子さん=当時(22)=が全裸の他殺体で見つかった事件は、犯人につながる有力な手掛かりを得られないまま、来年一月十三日午前零時の公訴時効まであと一カ月を切った。胸付近を執拗(しつよう)に刺す残忍な手口にもかかわらず、遺体は血痕の付着がほとんどなく清められたような状態で見つかるなど「極めて猟奇的」(県警幹部)な事件。県警は「犯人逮捕に全力を挙げたい」としている。
谷嶋さんは九三年一月十三日夕、八郷町柴内の国有林内の林道脇で全裸遺体で見つかった。石岡・下妻両署の捜査本部の調べで、胸には刃物による深い刺し傷十三カ所があり、うち四カ所が心臓にまで達していることが分かった。首にはひもで絞められたような跡があり、肌には血痕がほとんど付着していなかった。
司法解剖の結果、体内の血液は半分以上が流出していたことも判明。犯人は谷嶋さんを殺害後、遺体を浴槽などにつけ肌に付着した血痕を洗い流すなどの行動を取ったとみられている。
谷嶋さんの足取りは同十二日午前十時半ごろ、自宅近くの自動車学校で姿を確認されたのを最後につかめなくなっている。谷嶋さんは同日、自動車免許取得のため、卒業検定を受けていたが、不合格になった。合格者は同日午後五時ごろまで校内で教習を受けるため、谷嶋さんの当日スケジュールは空白となっていたとみられたが、自宅アパートには戻った形跡はなかった。
当時捜査を担当した県警OBは「自動車学校を出て間もなく犯人と接触し、車でそのまま連れ去られた公算が大きいとみられた」と話す。
県警は延べ三万八千人の捜査員を投入。自宅周辺のほか、交友関係者ら約三万三千人に聞き込みを行い、目撃者の収集に全力を挙げたが、「浮かんでは消えての繰り返し。容疑者につながる情報は得られなかった」と悔しさをにじませた。
「浮かばれない」 悔しさにじむ親族や知人ら
「私の娘の結婚式に出てくれた時、『次はみっちゃんの番よ』と話して楽しみにしてたのに、もう花嫁姿は見ることができない」。谷嶋さんの伯母(64)はそう話し、悔しさをにじませた。
谷嶋さんは、地元の高校を卒業後、念願の美容師になり、石岡市内の美容室に就職した。伯父(66)は「実家で寝たきりになっていた祖母を気遣う優しい子だった。夢がかなったと聞いてみんなが喜んだんだよ」と懐かしそうに話した。
谷嶋さんは顔立ちの整った美人で、「子どものころから明るくて、人懐こいかわいい子だった」と伯父夫婦は口をそろえる。
谷嶋さんが殺害されてから、ほどなく祖父が他界。父親も犯人逮捕を墓前に告げることなく、昨年一月に亡くなった。伯父は「もうすぐ十五年になるが、犯人はつかまっていない。弟も心残りだっただろう」と唇をかんだ。
谷嶋さんが殺害される一カ月前まで勤務していた美容室の女性(71)も特別な思いがある。谷嶋さんは旧石下町にあるこの美容室に約二年半、勤務した。「仕事ぶりはまじめだった」が、「よく男の子が迎えに来ていた。交友関係が多かったからか、欠勤しがちだった」とも。女性は親身になって面倒をみてきただけに、事件に巻き込まれたことが残念でならないという。「私の夢にでも出てきて犯人について教えてほしい。このままじゃ、あの子が浮かばれない」と寂しげに話した。
・旧八郷町の元美容師殺人事件、時効を迎える 茨城 産経新聞2008.1.13 03:00
石岡市(旧八郷町)柴内の国有林内で平成5年1月、常総市(旧石下町)新石下の元美容師、谷嶋美智子さん=当時(22)=が全裸遺体で発見された殺人死体遺棄事件は13日、発生から丸15年が過ぎ、同日午前0時で公訴時効を迎えた。捜査本部が置かれた石岡署は「最後の最後まで犯人検挙のため努力したが、非常に残念だ」と唇をかんだ。
捜査本部のこれまでの調べでは、谷嶋さんは4年11月末まで、旧石下町内の美容室で働いていた。遺体で発見された前日の5年1月12日午前7時半ごろ、黒っぽい服装でアパートの自室からタクシーに乗り、旧石下町の自動車教習所に向かい、午前10時半ごろまで教習所にいたことが確認されている。
谷嶋さんはこの日、同教習所の卒業検定で合格すればマイカー購入の契約予定日になっていた。しかし、不合格だったため、同14日午前11時からの路上教習を予約し、12日午前11時ごろに自動車教習所を出たが、その後の足取りはつかめていない。
捜査は警察官延べ約3万8000人体制で、約3万3000人から事情聴取。谷嶋さんは同教習所を出た後、別の場所で殺害、車で旧八郷町まで運ばれ、国有林に遺棄された可能性が高い。場所は人が通らないような道路から約50メートル山間に入った地点。
県警OBで当時、捜査本部にいた元捜査員は「遺体は洗い清められて色白でマネキンのような状態だった。通常は現場付近に血痕などが散乱しているものだが、まったくといっていいほど物証が見あたらず難しかった。被害者の交友関係から何か出ないかと期待したが、疑いのある人が浮かんでは消えた」と振り返る。
元担当捜査員で現職警察官の1人は「解剖所見では死因は心臓損傷による失血死だが、相当な刺し傷や右大腿(だいたい)部にかなり大きな切創が認められた」と指摘。さらに、「殺害のされかたが、米映画の『氷の微笑』に似ているというので、レンタルビデオ店の顧客名簿なども調べ上げたが、犯人像を絞り切るまでには至らなかった」と明かした。
桜川市(旧真壁町)生まれの谷嶋さんは両親が中学2年時に離婚し、最初は妹や弟とともに実母に引き取られたが、約1年後に谷嶋さんだけ実父の敏昭さんと一緒に暮らした。町内の県立高校を卒業後、石岡市内の美容室に住み込みで勤務した後、旧石下町内の美容室に勤めていた。
その敏昭さんも一昨年1月、病気で死亡。敏昭さんの兄、谷嶋一雄さん(66)は「残念の一語に尽きる。何ともいいようがない。弟が生きている間に犯人が逮捕されてくれたらよかったのだが、弟もさぞかし心残りだったと思う。今は頭の中が真っ白の状態」と悲しみにくれていた。
・朝日 [08年1月13日12時29分更新]
元美容師殺人事件が時効 全裸遺体に多数の刺し傷
1993年に茨城県で、当時22歳の元美容師の女性が殺害された事件は、犯人逮捕に至らないまま、13日午前0時に時効となりました。
事件は、15年前の1993年1月に起きました。茨城県旧石下町、今の常総市の元美容師・谷嶋美智子さんが、自宅近くの自動車学校を出た後に行方が分からなくなり、翌日、山の中で遺体で見つかりました。遺体は全裸で、胸などを十数カ所刺されていました。茨城県警は、これまで延べ約4万人の捜査員を投入し、交友関係などを中心に3万人以上から話を聞くなど、捜査を続けてきました。しかし、犯人に結びつく有力な情報はなく、時効を迎えました。