「……ーい……おーい……おーい!!」
少々耳触りな怒鳴り声が響く。
俺は今日も忙しい仕事へ向かわないといけないかと…ほんの少し嫌そうに感じたが、
いつも目覚めを迎えてくれる天井はそこになく、戦友の顔が代わりにそこに映った。
そしてぼやけた世界を認識して俺はやっとそこで、さっきの出来事を全て思い出した。
モララーは芝生の上に、仰向けで涎を垂らして寝ているレインドの肩を揺さぶりながら怒鳴っていた。
さすがの彼も目がすっかり冷めたようで、半身を起して大きく欠伸をした。
レインド「ふぁ~……お、今日は何作ってくれるんだモララー?」
モララー「何寝ぼけてんだよお前ー!いつから俺はお前ん家で同居しているんことになってんだよ!?」(汗)
レインド「冗談だ、悪ぃ。」
レインドは苦笑いした。
モララー「ったく、こんな状況でよく冗談が言えるもんだ。」
レインド「ふひひ…んで、ここは何処だ?」
辺りを見渡せば広い草原の中にいた。彼らのすぐ近くに一本の木が立っていて、風に揺れてざわざわと葉の音が絶え間なく、心地よく聞こえた。
モララー「さあな……よく見るいつもの風景だが…。もしかして……あの本に…?」
レインド「滑稽だな。だが……可能性はない事は、ないな。俺たちは少なくとも、あの本に吸い込まれた……そういう事か?」
モララー「ああ…。」
レインドは右手を口元に寄せて苦笑した。
レインド「っていう事はここは……何処かのおとぎ話の世界なのかもしれないな。それも、この
カオス界で起こった話だとか。」
モララーは「そんな馬鹿な」とでも言いたげそうな表情で唖然としている。
レインド「まああくまで仮定の話だ。実際のところ俺たちは何も知らないんだからな。…ていうか、あいつらは?」
モララー「さあな…実のところ、俺もさっき目覚めたばっかだ。ここにいるのはどうやら俺たちだけみたいだ。」
レインドは額に手を当て、周囲を見渡した。
平面に広がるこの草原で、確かに人影らしきものは見当たらなかった。
モララー「もしかしたらあいつ等は…別んところに飛ばされたのかもな。」
レインド「だろうな。…何だかよく分からねえけど、とりあえず…さっきの広場に戻ってみるか?いや、「さっき」じゃなくて「ここでの」と言った方がいいのか?」
モララー「ややこしいな、おい。だが安易だな、そうすっか。」
モララーの差し出した手を掴み、引っ張られて起き上がった。
呆れるくらい青い空を見て吹き荒れる風に靡かれながら、二人は歩き始めた。
一方、ここはとある住宅街
日差しがアスファルトを強く照りつけ、更にそこから反射される熱気がむしむしとした暑さを生んでいた。
立っているだけで滝のように汗が流れ、歩く気力ですらとめどなく奪われてゆく。
そんな状況に、少女ディーヴは耐えきれられなかった。
ディーヴ「どうしてこんなに暑いのよぉー!もうー!!」
メタビィ「暑いって言ったら余計に暑くなるよー…。」
メタナイト「その通りだ、今は影になるところを探すしかない。」
隣で平行に歩いているメタビィとメタナイトはこの暑さに耐えている。
彼らは互いに修行の中を通し体を鍛えているので、ディーヴほどひどく暑さを感じる事はなかった。
5分程度経った先で住宅街から土手に出た。
ディーヴはその場から見える橋を見つけると、一目散にその下へ駆け出した。メタビィは急いで彼女の後を追うが、メタナイトは淡々と歩みを続けた。
ディーヴ「はぁ~うぅ~…♪生き返るわぁ…♪」
橋の下についたディーヴはくるくると回り、芝生の上に仰向けに倒れ込む。
吹き抜ける風が涼しく心地よい。橋の下はこんなにも気持ちのいいところなのかと、彼女は眼を瞑り、満面の笑顔でそれを肌に浸みた。
メタビィも転がるように芝生の上に倒れ込み、彼女の隣に寝転んだ。
メタビィ「メタさん、ここ気持ちいよ。」
遅れてやって来たメタナイトはようやく橋の下に着いた。
メタナイト「ああ、そうだな…。……さて、この辺でいいだろう。」
そう言うとメタナイトは腰を降ろし、二人に視線を向けた。
それに気がついた二人は半身だけ起こし、メタナイトを見つめた。
ディーヴ「じゃあさっきの話の続き。メタナイトー、ここ…何処なの?」
時間は15分前にさかのぼる。
ディーヴは
スカーフィから、フーナの誕生会があるとの便りを貰い、会場へ向かおうとしていた。
スカーフィ、それから
フーナとはあの事件(永久に眠れ、古き混沌編参照)以来、共に世界を救った仲として友達になった。氷冬もそうだ。
友達の誕生会には是非とも行きたいと望んでいたディーヴであったが、道中で突如空から不思議な本が落ちてきてそれを拾い上げた。
修行の帰りで、偶々彼女の近くを通ったメタナイトとメタビィの二人とも出会い、三人で興味心身にそれを見ていた。
だが突然本は激しい光を放ち、三人を瞬く間に白い世界へと連れ込んだ。
そして気が付いたら…猛暑の住宅街地の、公園のベンチで眠っていたのだ。
何が起こったのか状況を整理したいが、あの炎天下の中ではとてもじゃないが会話ができるものではなかった。
故に、何処か、涼しい影辺りのいい場所を探して歩き続けていた。
メタナイト「先程我々がいた場所は、南の国にある住宅街だ。」
メタビィ「メタさん、何で分かったの…?あの暑さの中で、よく分かるんだね。」
メタナイト「私は情報収集をするにあたって各地を飛び回っているからな。この世界の殆どの場所は知り尽くしている。」
ディーヴ「物知りなんだねー。」
ディーヴは感心して頷いた。
メタナイト「ただ一つ言えるのは…我々はあの本により、時空転換に飲み込まれたのやもしれない。」
ディーヴ&メタビィ『……Σえっ…!?』
メタナイト「もともとこの世界は奇妙不可思議の中を循環している。もはや何が起きても驚く事ではないかもしれないが…今回のケースに至っては、過去へのタイムスリップに巻き込まれたと推測できる。」
ディーヴ「ぇ……えええぇぇ~~!!?」(汗)
メタビィ「でも、どうしてそんな事が分かるの?」
メタナイト「季節だ。初めに我々三人があったあの時、季節は冬だ。南の国ですら真冬の寒さに陥っているはずなのに…さっきのはどうだ?」
メタビィ「あ……!」
ディーヴ「可能性はそうかもしれないけど、それだけじゃあ手掛かりにはならないんじゃない?」
あの暑さに酷く苦しんでいた彼女には言われたくないと、二人は思った。
メタナイト「まあ…そうだが、今から街へ繰り出して日付曜日を確認しようと思う。」
メタビィ「確か…あの時は、1月の22日だったね。」
ディーヴ「うん、確か…!」
メタナイト「ああ、そうだ。……今はとりあえず、ここである程度休憩を取って次に行くとしよう。」
ディーヴ「はぁ…また暑いの嫌だぁ…。」
ディーヴはうつ伏せにごろんと転がって足をバタバタさせた。
メタビィ「でもメタさん…仮にここが過去の世界だとしたら…自分たち、どうするんですか?」
メタナイト「その時は……その時だ。真実が分かったのなら次に成すべき事を考えるだけの事だ。とにかくお前も休め、修行での疲労がまだ取れていないだろう。」
メタビィ「……はい。」
そう言うとメタビィはディーヴの横でまた寝転んだ。
メタナイト「さて……どうしたものか…。」
メタナイトは傍に川に目を向ける。彼の白い瞳は…一瞬だけ、碧色に変色した。
一人称:私
宇宙一の大魔道士の称号を持つ美少女。
フーナの誕生会に誘われて向かおうとするけど…。
一人称:自分
メタナイトの弟子である魔法剣士の
カービィ族。
メタナイトとの修行を終えた帰りの道中でディーヴと出逢うが…。
一人称:私
伝説の剣士でメタビィの恩師。
メタビィの稽古を終えた帰りの道中でディーヴと出逢うが…。
最終更新:2012年03月17日 21:25