星がこんなに綺麗に見えたのは、恐らく人生で初めてなんじゃないだろうか。
仕事を終え、疲れ切った
レインドの顔が少し緩んだ。
片手に持った缶コーヒーを飲み干す。100円で買える温もりが、こんなにも心地よいのかと改めて思い知らされた。
レインド「星空観察…できればゆっくりとしてぇもんだ…。」
コンビニ前のベンチに腰を下ろし、仕事で忙しく読む暇の無かった新聞を鞄から取り出し目を通す。
するとコンビニから二人組の男が出てきて、彼らの会話耳に入ってきた。
古酒「あん…?どうした、最近の連続神隠し事件のことか?」
マリオ「まあ、な…次々と住人たちが行方を切らしているって。一体何があったんだろうな…。」
マリオは買ってきた小さいキノコを口に放り込んだ。
古酒「さぁ~なぁ?少なくとも、この世界じゃいろんなことが起き過ぎてもう何が起きても覚めねぇーわぁ…。」
マリオ「そう…だよな…。んぐんぐ…。」
ちょうど、レインドが目を通している記事の項目だ。
ここ数週間、東方面にて住人たちが行方不明になっているという奇怪な事件。
まああの男、古酒の言う通り…この世界じゃ今までいろんな出来事が起こり過ぎて、あまり胸騒ぎがしてこない。
呆れてレインドは新聞を傍に置き、ぼーっと星空を眺めた。
疲労感と退屈が交じって物思いに耽っている。
その時…
聞き覚えのある声…モララーはラーメンを歩き食いしながら前方に現れた。
レインド「行儀悪ぃなお前…。(汗)」
モララー「気ぃすんな。お前も食うか、コーラ味。」
レインド「な……いいわ、遠慮するわ。」
モララー「あっそう…結構美味なんだが…。」
そう言ってモララーはレインドの隣に座り、ずるずると麺をすする。
レインド「なあ、モララー。」
星空をぼけーっと眺めながらレインドはモララーに言った。
彼は「あ?」と口の中でもぐもぐしている。
レインド「働くって……一体何なんだろうな。」
それを聞いてモララーは少し耳を疑った。
モララー「……働くってのは『傍(はた)を楽にすること』だろ。」
レインド「それは分かっているんだ。ただ……」
モララー「…んだ?」
レインド「最近よく分からなくなってきたんだよな。そもそも俺…なんで今の仕事に就いたんだろうって…。」
モララー「らしくねえな。なんだ、上司の怒りを浴びてきたのか?」
レインド「それなら慣れっこだ。」
モララー「んじゃあ何だ?」
レインド「いやさ、なんだかよ……飽きてきたんだ。」
モララー「………はぁ?」
モララーの顔が一変した。
いや真坂だと思ったが、彼の口からその返答が来るとは…正直驚いた。
レインド「いやな、別に仕事がしたくない訳じゃないんだ。俺の思う仕事ってのが…今の時代になってみんな変わっちまったのさ。」
モララー「と言うと…?」
レインド「昔みたいに…誰かの為に働くという刺激ある仕事がしたかったんだ。」
モララー「んじゃあつい最近まで、ただ自分の為に働いてきたってのか?」
レインド「…そういうことになる。」
モララー「……分からないことも無いが、仕方ねえことだ。だいたい世ん中の制度が変わりつつあるんじゃー…そう思っている奴は少なくねえだろうよい。」
しばらく間が空いた。
モララー「んで…お前は具体的にどういった仕事がしたいんだよ。」
レインド「そうだな……それはまだ…な。」
モララー「……まあいい、いつかそういう仕事に出会えるといいな。好きなことを仕事にすることがなんぼだ。」
レインド「そうだよなぁー…。」
レインドが缶コーヒーを飲み干すと同時に、モララーもラーメンを完食していた。
モララー「うし、じゃあレインド。久々にやるか。」
レインド「何だ…?」
モララー「やるったらやるんだよ、おら。」
モララーは立ち上がって拳を突き付けた。
それを察した時、疲れ切ったレインドの瞳に活気が湧いてきた。
レインド「…ああ!」
二人はコンビニから離れた広場へ移動した。
モララー「モヤついていたら何も起こらねえ、まずは楽しもうぜ。」
レインド「ああ、そうしよう。」
戦闘なんていつ以来だろうか。
ここ最近と言えば、あの魔獣との戦いだったか…だがそれも一か月前のこと、あれから誰かと交えたことは一度も無かった。
そう前のことを思い出していると、すでに相手は駈け出してきていた。
ストレートのパンチを繰り出そうとするモララーを横ステップでよけて受け流し、腹にラリアットを浴びせる。
小柄な彼はそれだけで結構遠くへ吹っ飛ぶが、空中で体制を整え直し、虚空を蹴ってレインドの背後に降り立った。
モララー「そらよぉ!!」
レインド「ちっ…!」
すぐさま振り返って蹴りを繰り出し、互いの攻撃が相打ちとなる。
マリオ「おー、レインドとモララーの奴、やってるなぁ。」
古酒「戦闘か…ふっ、久々に面白い物が見れそうだ。」
先程の二人が偶然その場を通りかかり、遠くから観戦していた。
レインドは高く跳躍し、急降下しながら踵落としを繰り出す。モララーはそれを両腕で受け止める。
ドゥン…ッ…!!!!!
相打ちによる凄まじい衝撃が辺りを飛び交う。
レインド「おらおらおらおらぁ!!」
モララー「うらうらうらうらぁ!!」
レインドの殴りのラッシュ、モララーの蹴りのラッシュはスピード、パワーともほぼ互角。
それを目の当たりにしていたマリオと古酒は呆気に取られていた。
レインド「ぜぇ……ぜぇ……本当に久々だから、体があまり着いてこねえな…。」
モララー「はぁ……はぁ……へへっ、奇遇だな…俺もだ。」
やはり戦うことは楽しい。戦うことで何かが芽生え、何かに気付く。
人生戦うことで成長し続けてきたレインドにとって、“戦い”は必要不可欠なことだった。
モララー「んじゃあ…こっから全力で上げていこうか。」
レインド「ああ、手加減なしだぜ?」
そう言うとモララーは拳を真横に突き付け、レインドは両腕の拳を握りしめて気を高めた。
互いはそれぞれ気を放出してパワーアップをしようとしているのだが、その時……
トサ…ッ…!
レインド&モララー『あ…?』
二人の間に一冊の分厚い本が落ちてきた。
二人は構えを止め、本に近寄った。遠くから観戦していた二人も違和感を感じたのか、彼らの元へ近寄る。
マリオ「何だ、その本?」
レインド「いや…突然空から落ちてきたんだが…。」
古酒「あ~ん?やけに分厚いなぁ…。」
古酒をずっしりとしたその本を両手で拾い上げる。
モララー「誰かの落とし物かぁ?」
マリオ「空か落ちてきたってことは……空飛べる奴しかいないよな。思い付く辺りじゃ、
ピットや
メタナイトとか。」
レインド「題名は不明、作者も不明…何だこれ。(汗)」
古酒「おい見てみろよ、中身も真っ白だらけだ。」
モララー「こーんなに分厚いのに、なんか気味悪いな…。」
レインド「だな。どっか近くの交番にでも届けてやるか…。」
レインドが周辺を見渡したその時、本が薄らと発光した。
四人がそれを見て驚き、古酒は咄嗟に手放してしまう。
古酒「何だ…いきなり…!?」
レインド「こいつは……くっ!?」
周りの広場が歪み始め、やがて白い光の中に包み込まれていく。
モララー「おい…ヤバいんじゃないか…?」
マリオ「くそっ…!」
マリオは咄嗟に掌から火の玉を作り出した。彼の得意技であるファイアーボールだ。それで本を焼却しようとするが…いつの間にか彼は、いや四人は本から遠ざかっていた。
古酒「お、おい…お前ら!何処へ行くんだ!?」
モララー「それはこっちの台詞だぁ!どうなっていやがる!?」
レインド「……違う、これは……くっ、うおぉっ!?」
光は激しさを増していき、三人の姿がかき消されていった。
レインド「古酒、マリオ…モララー!!うああぁぁあああぁああ!!」
一人称:俺
元
円卓の騎士で現在フリーターのAAで英雄の一人。
久々にレインドと戦闘を交えるも、空から落ちてきた本により…。
一人称:俺
誰もが認める英雄、ミスターニンテンドーと謳われた男。
コンビニで出会った古酒と会話していて、レインドとモララーの戦いを観戦していたが…。
一人称:俺
テンションがやけに高い青年。
コンビニで出会ったマリオと最近起こっている謎の怪奇事件について話し合っていた。
マリオと同じく二人の戦いを観戦していたが…。
最終更新:2012年03月17日 21:24