フーナ「……ぁれ…ここは……。」
フーナは気がつくと周りを見渡した。
まず、小鳥のさえずりが心地よく耳に入り込んできて、次に入ってきたのは…大自然の緑に囲まれた景色だった。
今自分のいる場所がすぐに「森」だと気づいた。
爽やかな木漏れ日が身体を照らす。
呆然と立ち尽くしていた彼女は急に我に返り、さっきの出来事を思い出した。
フーナ「そうだ…みんなは…!?」
もう一度辺りを見渡す。
見渡す限り緑に囲まれた世界、それ以外に何も映らなかった。
だが音は例外だ。すぐ近くで「グゥ」と腹の虫の鳴る音が聞こえた。
彼女はその聞こえた音のほうへ近寄ると、草陰に
スカーフィがぐったりとして倒れ込んでいた。
フーナ「…スカーフィ!」
フーナは彼女を揺さぶって起こそうとした。
しかし彼女は「もう食べられないよぉ~」と寝言を吐いて起きそうにない。
唖然とした表情でふとその先の方を見上げると、氷冬が木に凭れて眠っていた。いや…気を失っている。
スカーフィはこの通りなので先ずは氷冬から起こそうとスカーフィを跨いで彼女から優先して起こすことにした。
流石は剣士と言ったところか、一声かけただけですぐに目を覚ました。
氷冬「ん……フーナ…?」
フーナ「よかったぁ~、無事みたいだね。」
氷冬「…スカーフィは…?」
フーナ「あそこで眠っているわ。」(汗)
フーナは、気持ちよさそうな表情で夢を見ているスカーフィを指した。
あんな顔を見れば、しばらくは起こさないでおこうという気がした。
フーナ「もう、本当に呑気なんだから。」
氷冬「他のみんなは…?」
フーナ「あ…そうだ!」
その周辺を見渡す。よく目を凝らして見ると、少し離れた先で政宗が
林檎姫の下敷きになって苦しそうにもがいていて、
エスカルゴンは
デデデの下敷きになって余計に苦しそうにもがいていて、特に彼らのは見ていて痛々しかった。
シンと
リョウ、
レイナは互いに近くの場で気を失っていて、
チルノフは顔面が地面に突き刺さっていて、
ロイゼは洗濯物の様に枝にぶら下がって気を失っている。
あれ…
カービィがいない。
焦ってもう一度見渡すが、氷冬は「あっ!」と一本の実の成る木を指した。
たくさんの林檎が実る木の中に、一個だけ大きくてより丸々とした桃色の物体があり…それでやっとカービィだと気づいた。あの子は木に引っ掛かっていたんだ。
やれやれと思って、フーナと氷冬は全員を起こしに行った。
ロイゼ「んで、ここは何処なんだ?」
片手を腰に置いたロイゼは首を傾げる。
カービィ「見たところ森だね。でも…僕たちがよく食料を調達する場所とは…なんか違う感じみたい。」
デデデ「なんゾイ?ワシ等はさっきまでパーティ会場にいたんじゃないのかゾイ?」
シン「おいおい、一体どうなっているんだよ。」
リョウ「ていうか、さっきの本何だったの?」
チルノフ「か…カルピス不足…ガクッ」
林檎姫「何だか気味の悪い森…化け物と化出てきそう!」
スカーフィ「化け物?わ~い、見てみた~い♪」
フーナ「みんな…少し落ち着いて!!」
彼女の怒鳴り声で辺りはしんと静まった。
スカーフィ「かぅ…ごめんね。」
シン「悪い…。」
チルノフ「誰か…冷たい飲み物を…。」
リョウ「わわわっ…!ち、チルノフの様子が変だよ!?」
喉をからしたチルノフはうつ伏せに倒れ込んでひたすら唱えるように飲み物を要求していた。
デデデ「…おっ!そうゾイ。さっき持ってきた缶ジュースがまだ残っているゾイ。」
そう言うとデデデは懐から温いカルピスを取り出した。
チルノフ「――――!!カルピス…いただきますっ!!」
ライオンが獲物に食らいつく様に、血走った眼でチルノフはカルピスを飲み干した。
チルノフ「ングングング……ぷふぁー♪助かりましたぁ…ありがとうございます!}
デデデ「礼には及ばんゾイ。ドゥハハハハ!」
レイナ「よかったわね。」
エスカルゴン「――――これはっ…!?」
突然のエスカルゴンの一驚に、一同は彼の視線を向けた。
デデデ「なんゾイ、エスカルゴン?」
エスカルゴンは掌サイズの小さな携帯式ナビコンを握ったまま、強張った表情でそのままにらめっこしていた。
みんなが不思議に首を傾げる中、彼はみんなの方に向いてそのナビコン画面を見せた。
エスカルゴン「これを見てくださいでゲス…。」
氷冬「これは…何なの?」
機械に全く詳しくない彼女は画面を指した。
エスカルゴン「これは…以前陛下がひょんなことでカレンダーに興味を持ちだした際に作り上げた携帯式カレンダーでゲス。」
デデデ「ああ、そんなことあったな。だが毎日見るのもなんかつかれたんでそのまま放置しておいたんだゾイ。」
林檎姫「え…?」(汗)
エスカルゴン「これはリアルタイムに年月日曜日、そしてその日にある行事等が表示されて一目で分かるんでゲスが…。」
シン「すげえな…それならいつ休日がやってくるかすぐに分かるな。」
チルノフ「Σなにっ!?それはいいですなぁ~。」
エスカルゴン「だが、今日の日付をよく見るでゲス!!」
フーナ「ん…?」
みんなは画面に近づいてまじまじと見つめると、誰もが驚きを隠せない表情に一変した。
今日の日付は――――
【2010年 5月14日】
ロイゼ「なっ……2010年!?」(汗)
スカーフィ「あれれ?全然違うよー!」
デデデ「おいエスカルゴン、ついにお前の発明品にボロが出たんじゃないのかゾーイ!?」
エスカルゴン「いやだから、さっきも言ったでゲスよ!このカレンダーはこの世界の日付等をリアルタイムで表示するって!」
伊達政宗「じゃあワシ等は……過去へ飛ばされたというのか?」
先から呑気にポテトチップスを黙々と食べていた政宗の口から出た発言により、辺りは唖然とした表情で静まり返った。
伊達政宗「……?」
一同『なんだってぇえええー!!??』
エスカルゴン「まあそう言う事になるでゲスよ。」
呆れ顔のエスカルゴンはため息をついた。
シン「おい、嘘だろ…っ!?」
リョウ「…はっ!そうだ、きっとさっきの本に違いないよ!僕たちをここへ飛ばしたのは。」
カービィ「あの本にそんな力があるなんて…なんか考えられないなぁ…。いや、そうかも。」
デデデ「おいエスカルゴン、何とかするゾイ!」
エスカルゴン「何とかったって…私にどうする事も出来ないでゲスよー!!」(汗)
フーナ「ちょ、ちょっと待ってみんな!今は先ず落ち着いて。ここでパニックになっていても仕方が無いよ。」
ロイゼ「彼女の言う通りだ。仮に本当に過去の世界に来たとして、右往左往したところで元の世界には帰られる訳でもねえ。方法ならいくらでもあるだうが…今は先ず、冷静になる時じゃねえのか?」
彼はフーナにアイコンタクトを取る。
彼女は申し訳なさそうに苦笑いした。
デデデ「むぅ…。」
エスカルゴン「ホッ…。」
氷冬「ねえ…なんか、暑くなって気がするんだけど…。」
チルノフ「私もそう思います…。」
レイナ「そうかしら、私たちは特に…。」
スカーフィ「……!フーナ、とりあえず場所を変えようよ!このままじゃ二人とも…。」
フーナ「そうだった…みんな、何処かの建物に移動しよう!」
カービィ「…え?どうかしたの…?」
フーナ「二人とも…暑いのは大の苦手なんだ。」
地面から湧き上がるように陽炎が揺れているのを察知したフーナとスカーフィは、先頭になって全員を引き連れて森から抜け出した。
最終更新:2012年03月20日 13:18