気がつくと、氷冬は真っ暗な空間に佇んでいた。目の前には、一切の光も気も失い、絶望に浸った表情で項垂れているゼロリアの姿があった。
ゼロリア「…… …… …… 」
氷冬「……!(
クロリアー…)(目の前にいる彼女のもとへ、ゆっくりと歩み寄っていく) 」
ゼロリア「………どう、して…… 何故……なんで…っ…(俯いたまま声を震わせる) 」
氷冬「……(その様子を窺いながら静かに彼女を見つめる) 」
ゼロリア「(顔を上げ、その血走った様な真っ赤な瞳を氷冬へと向ける)…お前には…っ…友達が、仲間が…いるじゃない…っ……!大切なものだとか…守りたいものだとか…そんなものが、たくさんあるのに…っ……それなのに、何故…結局裏切られるだけのそれらを頼って、お前は生きているの…!? 」
氷冬「…クロリアー…(…そうか…「この人」は…―――――)(何かを悟ったように、再びゆっくりと彼女の傍へ歩み寄る) 」
ゼロリア「信じても…笑っても…愛しても… どんなに善く生きたって絶望の淵に突き落とされて!!何もかもに裏切られてしまうんだ…!!…すべてが孤独だった…だから、私は"死んだ"んだ… 」
氷冬「……(何も言わず、何も語りかけず…ただ、彼女に向かって足を進めていく) 」
ゼロリア「…いらない…っ…そんなことなら、絆も、愛も、夢も、希望も…ぜんぶ…ぜんぶ、ぜんぶぜんぶぜんぶッ!!!いらないんだ…ッ…消 え て し ま え ッ ――――――(小さな拳を振り上げ、氷冬に殴りかかろうとするが…) 」
氷冬「―――― ギ ュ ――――(正面から、彼女をしっかりと抱きしめた) 」
ゼロリア「――――!!??(突然の出来事に酷く動揺し、振り上げたままの拳が静止する) 」
ゼロリア「……何…してるの……っ…? ………なせ… …離せ…っ… …離せ…ッ…!!!(もがき、氷冬から離れようとする) 」
氷冬「…良かった…貴方には…――――――ちゃんと「傍にいてくれる人」がいたのね。 」
ゼロリア「―――――――!! …… …… ……(耳元から聞こえた彼女の声に鎮まり、振り上げた拳をゆっくりと下ろした) 」
氷冬「…私は生まれた時からずっとひとりぼっちだった。父や母の顔も分からなくて、周りには支えてくれる人だっていなかった…冷たくて、寒くて、凍える世界の中で、ただ"独り"だった。もしかしたら自分は人間なんかじゃなくて、人の姿をした妖怪なんじゃないかって思った。だから捨てられたんじゃないかって、ずっとそう思い続けて…目の前の世界が嫌になったことがある。 」
氷冬「でも…そんな私の前に、『奇跡』がやってきた。…『彼』は私とよく似た人間だった。『彼』はいろんな世界を見てきた。そんな『彼』からいろんなことを教えてもらった。」
――― "生まれた時からひとりぼっち?ははっ、気にすることじゃないさ。だってこの世界には、星の数よりもたくさんの人がいる。" ―――
――― "もちろん、ボクたちの様に…キミによく似た人たちだっている。彼や彼女たちと出会って、いろんなことを知って、そして…大切な友達をつくっていけばいい。" ―――
――― "キミが思っている以上に、世界はとっても輝いているのだから。" ―――
氷冬「そして気付いた…人も、動物も、剣も刀も…"独り"じゃ何もできないってこと… 誰かと一緒じゃなきゃ、駄目だってこと… だから「私たち」は、"誰かと共にいること"を望んでいくの。 」
ゼロリア「………でも…っ……たとえ、一緒になっても…やがて……裏切られる……絆や愛なんて…脆いんだ…… 」
氷冬「ええ、脆いわ。だって、「人間」だもの。……クロリアー…貴方は、「人間」だったのよね。 」
ゼロリア「……!(灰色の景色が脳裏に蘇る。一人称視点から見える親友と思われる男性の顔、最愛の妻と思われる女性の顔、その女性と共に抱きあった赤子の顔…)…… …… …… …… 」
氷冬「裏切られることを恐れるのは、自分が信じた人に突き離されるからっていうのもあるかもしれない… でも、本当は…"また自分が独りになること"が怖いだけなの…人は…やっぱり独りじゃ生きていけないんだ… 」
――― "この世で最も怖いのは、"独り"になること、"独り"になったときだ。" ―――
氷冬「貴方の言うとおり…孤独と死は等しいものなのかもしれない。でも、生きている限り、本当に孤独であるはずがないの…」
ゼロリア「……もう、死んだ命だよ…… 」
氷冬「でも、貴方の魂はまだ生きている。生前の怨念を剣に残してまで生き長らえたその魂は…形はどうであっても、「生きたい」と望んだ貴方の心の叫びに呼応したもの。……独りだと感じたまま死にたくなかった貴方の願いが、『クロリアー』を生み出した… 」
氷冬「
メタナイトからクロリアーのこんな話を聞いたことがある。あれは…『皇帝の雫』という意味があるのね… 皇帝が涙する時は「妃が死ぬ」と言った家族に対する哀れの感情を現した時だと…――――― 結局、誰も、孤独になんてなりたくないの。 」
氷冬「…貴方には、傍にいてくれる人がいた。…本当に裏切られてしまったかどうかは知らない…でも――"その人たちは貴方を心の底から愛していた"―― これはきっと、確かなことだと思う。そうでなきゃ、「裏切られた」なんて口にするはずがないもの。 」
ゼロリア「…… …… …… ……私には……私には、愛する人がいた…その人との愛の証明を示す子どももいた…とりわけ能力がない私にいろんなことを教えてくれた親友がいた…そして、他所からやってきた私を…迎えてくれる多くの人がいた… みんな、優しかった…語り合って、見つめ合って、触れ合って…温かさを感じた… 」
ゼロリア「…思えば、最期の日…そんな温かな日常を失いたくないと…必死になって、現実から逃げ出した… 頭の中は真っ白だった、でも、目の前は真っ暗だった。何も考えられなかった。大事なものを、見失って、忘れてしまった。…だから、だからなのかもしれない……「裏切られた」と思い込んでしまったのは…」
ゼロリア「…でも…っ…それでも、不可解だった。どうして私が死ななければならなかったのか… 私がいなくても回り続ける世界で、何故私だけが死ななければならなかったの……!?…死にたくなかった…独りになりたくなかった…! …だから、すべてを憎んだ…そんな、そんな理不尽な運命を、壊してやろうと思った…っ…… 」
ゼロリア「…… …… …… …… …… 」
ゼロリア「…… ……でも、もう一つ…だけ…思い出したことがある… 私が「 剣 」だった時、すべてを憎み…誰かを愛することが出来なかった時…『
カイル』という男に出会った。彼には愛する妻がいた。彼女の名は『
シリーラ』だった。幸せな夫婦だった。そんな二人を見ていると、その関係を滅茶苦茶にしてやろうとも思った。 」
ゼロリア「シリーラは私を抑える「陽」の力を持っていた。「陽」がある限り、私は…憎悪で誰かを汚染することが出来なかった。シリーラが憎かった。だから、カイルを利用し…彼女を殺害した。……でも…これは私の最期によく似ていた…結局二人は、私に齎された理不尽な運命によって、その愛が裂かれたのだから。 」
ゼロリア「…ただ、彼女…シリーラは…それでも笑っていたんだ…その時の私には、彼女のあの笑顔を理解することはできなかった。…でも、今なら…今なら、少しだけ…分かる気がする… 脆いと思われた絆や愛というものは…たとえ、目には絶えた様に見えても…それは一生紡がれるものなんだって… …当時、私はそのことが本当に理解できなかった… でも、シリーラ…ううん…二人の絆が、愛が、私の憎悪を打ち消したんだ。…きっと、私にも、あったのかもしれない…持っていたけれど、失ったから…未練が残っていたのかもしれない…――― そんな、ものが… 」
氷冬「……遠すぎて見えないものがあるように、近すぎて見えないものもある。最初はすれ違っても…あとになって、振り返って見つけ出せることもある。貴方は…ただ、見つけ出すのに時間がかかっただけなのかもしれないわね。…でも、それは私も同じよ。しょうがないじゃない、「人間」だもの。だから、それでいいのよ。 」
ゼロリア「…結局…自分に起きた悲劇を、私は気付かない内に…他の誰かにも与えていたんだ……そんな負の連鎖を続けたところで…昔の自分を見つめているみたいで… それに、自分が怖くなった… ……寂しかった…苦しかった… 誰かを傷つける度に、「私」が傷ついていくのを… 誰かを殺す度に、「私」が殺されていくのを… 何かを壊す度に、「私」の中で、また一つ…何かが壊れていくのを感じて……――――また、独りになるんじゃないかって…っ…(唇が震え、両手が痙攣したように震え出す) 」
氷冬「(密着して感じるゼロリアの震えを抑え込むように、ぎゅうと強く抱きしめる)……よかった…貴方に、「心」があって。貴方が、心を通わせられる「人間」であって。…大丈夫…もう、気付いたでしょ…?貴方は多くの"罪"を背負い過ぎた…でも、今――――― あなたは"罪"を断ち切った。(瞳を閉じ、柔らかな表情で微笑んだ) 」
ゼロリア「――――――――――! 」
――― …あたたかい… ―――
――― シリーラ…貴女のことが大嫌いだった… ―――
――― どんな時だって、私の「陰」は、貴女の「陽」を拒絶した… ―――
――― ……でも…… ―――
――― 貴女が…彼を、息子たちを、民を愛したように… ―――
――― 「陽」を通じて、私のことも、愛してくれた ―――
――― 貴女に抱かれたあたたかな光…… ―――
――― ……嫌いじゃ、なかった… ―――
ゼロリア「…………ぅ…ぁ……あ…っ…… ぁ、あぁ…っ……!(鮮血のように真っ赤に染まった瞳から、透明な雫が滴り落ちる。洗い流された"罪"が、真っ暗な空間を白く、染め上げていく…) 」
氷冬「…貴方はもう、独りじゃない。今度は『私たち』が、貴方を愛するから。剣として、人間として…そして、ひとつの「命」として――――――― 愛してるわ。 」
ゼロリア「ふ…ぅっ… うぁ…あっ… …あぐっ、あっ……!(黒かった衣装が徐々に白みを帯びていき…一切の光がなかった瞳が灯り始める。流れ落ちてく雫と共に、自らを覆っていた憎悪が、怨念が、砕かれていく…)」
氷冬「(しばらく抱き合い続け、ゼロリアが落ち着いてきたのを感じ取って腕から離した)……私は氷冬。貴方の…貴方の本当の名前、聞かせてほしい。」
ゼロリア「(瞳に溜まった雫を手で拭い取り、優しい表情で氷冬と向き合った―――)――――――『 バーババッハ 』―――――― それが…本当の名前… 」
ゼロリア「…この姿は…生前に愛した妻と子ども…二人の姿を合わせて創り出したもの… はじめは、憎悪の対象でしかなかったこの姿だけど… この名前も、忌々しい記憶として忘れたかったんだけど…でも……今なら、全部、愛せられる。そんな気がする。…氷冬、貴女のおかげだよ。…こんな私でも、誰かに許され、愛され、求められるなんて思わなかったから……嬉しいよ… 」
氷冬「素敵な名前ね。(ふふっと微笑んで)…生前の貴方と、貴方の家族、そして親友に会ってみたかったわ。……私だけじゃないわ。私にも、大切な人たちがいる。そんな多くの人たちに支えられたからこそ、貴方を救い出せたのだから。…孤独だった私に奇跡を見せてくれた『彼』に出会ってから、もう…独りじゃなくなった。貴方とこうして出会えたこと、私も本当に嬉しいわ。 」
――― 人は、必ずしも分かり合えるものじゃない。時に傷つけあうこともある。だけど、どちらかが笑顔を見せなければ…相手と分かち合うことなんてできない。 ―――
――― そうだよね…『 ミシェル』… ―――
――― "世界に誰もいない気がした夜があった。自分がいない気分に浸った朝もあった。" ―――
――― "そうやって孤独を望んで、今もまだ震えながら…笑おうとして泣いて、音の無い声で叫んだこともあった。" ―――
――― "だけど、それは正しい姿。" ―――
――― "このままだっていいんだ。勇気とか、元気とか、生きる上では無くて困るものじゃない。あって困ることが多い時もある。" ―――
――― "大丈夫。キミはまだ、キミ自身をちゃんと見てあげていないだけ。誰だってそうさ、キミひとりじゃない。" ―――
――― "これから先、キミは…キミの傍にいてくれる人と出会うだろう。" ―――
――― "じゃあ、もう行かなきゃ。だって、また何処かで、涙の落ちる音が聞こえたから…" ―――
――― " Merci, au revoir "(ありがとう、またね) ―――
氷冬「…さぁ、行こう。みんなが私たちを待っているから。」
ゼロリア「…うん…―――――― キ ラ … キ ラ ……(……!)(その時、全身が眩い光に包まれ、光の粒子がゆっくりと天へ昇っていく) 」
氷冬「……!?(光に包まれ、そして今にも消えていこうとするゼロリアを見て驚嘆する) 」
ゼロリア「…… …… …もう、お別れみたいだね。(両足から少しずつ、光となって消滅活動を始めていく)…もともと私は死んだ人間。果てなき憎悪を晴らす為に、剣に心を預けていただけ… でも…貴女と出会って、私は…自分の"罪"と向き合えた。もう誰かを憎んだり、傷つけたりしたいとは思わない。…だからもう、私は行くよ…還るべきところへ。(ふふっと微笑んで) 」
氷冬「クロリアー……(名残惜しそうに、その名を呟く) 」
ゼロリア「…わかってる。(氷冬の冷たくも温かい手を取って)…たとえ、目には見えなくたって…私たちは『ここ』で繋がっている。貴女から、シリーラから、妻から、そして…多くの人たちから「愛」を教えてもらったように、私も…今度は私も…誰かを愛せられるように――――……ねぇ、一つだけ、約束…してくれないかな…?(下半身が消えていく) 」
氷冬「…そうね…(『ここ』と印された胸に手を当てる)……何かしら…? 」
ゼロリア「……―――――――― また、会えるかな…? 」
――― 忘れないで いつだって呼んでいるから ―――
氷冬「(その言葉に、満面の笑みを浮かべて)―――――― ええ、もちろんよ。いつも『ここ』で、待っているから。 」
――― そうさ 必ず僕らは出会うだろう ―――
ゼロリア「…… …… …… 」
――― 約束は果たされる ―――
ゼロリア「――――――― " あ り が と う " ―――――――」
――― 僕らはひとつになる ―――
氷冬「……またね、『クロリアー』…――――――――――― 」
そして、世界は、眩い光に包まれる…―――――――
―――――――……ら… ……つら… ……氷冬………!
聞いた事のある声だ。誰かが何かを呼んでいる。頬に伝う風と共に、その声が耳に入ってくるのが分かる。真っ白でも真っ黒でも無色でもない、鮮やかな世界が少しずつ、見えてくる―――――
フーナ「―――― 氷冬…!……氷冬……っ…! 」
氷冬「―――――……ん……… …… …… ……(少しずつ、瞳が開かれていく。忘れもしない声に景色…そして肌身に感じる風に、ようやく目が覚める) 」
スカーフィ「……!氷冬……ちゅららぁーッ!!うわぁあーん…!…やっと、やっと目が覚めたんだね…!(氷冬の目覚めと共に、ステージ上に横たわったままの彼女の胸に顔を埋めて号泣する) 」
気がつけば、氷冬たちはもといた世界…半壊した闘技場にいた。時間の流れが元に戻ったかのように、空は暁によって徐々に照らされていく――――
ヒロ「………全ては、終わったのか(暁によって照らされた空を見て) 」
氷冬「…フーナ……スカーフィ…――――ひゃ!?(自らに突っ込んできたスカーフィに驚き、やや虚ろ気だった目が完全に覚め、上半身を起こす)…ここは……そうか…―――― (ぜんぶ、終わったのね…)(ふふっと微笑んで、スカーフィの頭を優しく撫でる) 」
ヒロ「………(氷冬とスカーフィの方を向き、無言で拍手を送る) 」
ルドゥラ「…… ……(一人、朱色に染まる世界の中で瓦礫の陰に身を置き、他の戦士、及びこの騒動に収束をもたらした氷冬を一瞥していた)……あの小娘の力……最後に見えたあの輝きは……(和やかな雰囲気とは別の薄暗い影の中で刀を杖のように地に押し付け)」
フーナ「よかった…!突然あの異空間の穴からみんな戻ってきたのに、氷冬だけ目が覚めなかったんだから…心配したよ。…やったんだね、氷冬。(彼女に満面に笑みを浮かべる) 」
メタナイト「目が覚めたか。よくやった、氷冬。おそらく、クロリアーと和解できたのだな。急激に進んだ時間の流れが遡り、時空間は元通りになった。剣の所在こそは見失ってしまったが、これで、罪剣による脅威は…もう二度と起こらないだろう。(フッと仮面の奥でほくそ笑む) 」
レインド「――(形容から外されたクロリアーを想い、虚空を見つめ)……(氷冬と
フーナ、スカーフィの余韻と喜びを共有する雰囲気に過去の自分を照らし合わせ、フッと口元を緩める)ココツコツコツ……(その場その場で、近くの人に会釈程度に挨拶を織り交ぜ、横転したバイクの元まで歩く) 」
プルスト「やれやれ…一時はどうなるかと冷や冷やしましたよ。…でも、流石はフーナの親友ですね。我々(神族)が出るまでもなく、この世界を守ったのですから… 」
シグマ「……鋼の身体に染み渡る…この感情は……―――― フッ…いささか、面白いものだ。(暁に染まる空を仰ぎ、それまで人前で見せることの無かった表情が浮き彫りになっていく) 」
カイ「ははっ…!これにて一見落着というわけだな――――お?(…なんだ、シグマの野郎……―――――)――――― 人間みてぇな面してるな。(彼のその横顔に、思わず噴き出す) 」
モララー「ったく、最高だぜ……最高過ぎて、かける言葉も見つからねえよ。(がらんどうの客席でただ一人、戦士たちに激励の視線を送る) 」
AS「寝覚めはどうだ、いい・・・『夢<希望>』が見れたようだな。(氷冬に、声をかける)お前はどんな窮地でも決して折れる事がなかった、・・・お前の『剣<決意>』、しかと見届けた、良い剣だ。(少しだけ、微笑む) 」
氷冬「そうだったの…?…心配、かけたわね。(半ば申し訳なさそうに苦笑いしながら)メタナイト… ええ、みんなのお陰で、クロリアーの心を閉ざしていたものを見つけ出すことが出来たから… クロリアーはもう、罪を司る剣じゃなくなった。自ら罪を断ち切り、その罪と向き合うことが出来たんだもの。 ……!(去り行くレインドの背を見つけ、ゆっくりと起き上がり、彼の名を叫ぶ) 」
ユキ「…… …… ……。(そよ風に髪がなびく。氷冬たちのやり取りを素のような表情で遠目に見ていた)(……強い人と戦うことだけが、零士を超えることだけが全て。そう、思っていたけれど―――)―――まぁ。こういうのも、たまには。(彼女たちから視線を外し、うつむきがちに抑えていた感情がつい漏れてしまったような微笑を浮かべる) 」
氷冬「AS…!…私、ちゃんと…クロリアーと向き合うことが出来たわ。彼女が…いえ、彼が見ていた世界を知ることもできた。貴方の言葉を信じて、本当に良かった。(ASに微笑み返す) 」
ルドゥラ「…… ……。(すっと立ち上がり彼らを見据える)考えても詮無きこと。彼奴が俺の前に立つのなら、俺は更なる力を以て倒すだけだ。(彼らの茜色の明るさとは対照的な立ち位置の陰の中で、ルドゥラはぐっと拳を握る) 」
白鷺「怪我は治ったとは、いえ……まあ、私は主役じゃありませんし、負けちゃいましたし…クールに去るとしましょうかね(ルドゥラを横目にちらりと見、そそくさと帰って行く) 」
雛菊「……(心地よい風に髪を靡かせ、少しずつ明るくなっていく空を仰いだ)……(…自分の罪と向き合うこと……私も…そうできるように、努めないと…――――)(静かに胸に手を添える) 」
レインド「ドドドドドッ(マシーンに鼓動を吹き込み、エンジンが動き始めた音を確かめて、スロットルを大きく回し、エンジン音を1度だけ轟かせる)ドドドッ(振り向きも、返事もしないが、その背中は氷冬の呼び声に応えるように見える) 」
八頭身ギコ侍「かっかっかっ…!良きかな良きかな!この歓び…まさに大団円でござろう。これほど生が心地良いと感じたのは、何百年ぶりのことでござろうか…!(腰に手を当て満足そうに高笑いしている) 」
ヒロ「………(俺も、少しは罪に向き合うことが、できるかな……)(氷冬の話を聞き、胸に手を当てる) 」
氷冬「―――― " あ り が と う "―――― クロリアーが、貴方にそう言ってたわ。(レインドの背に、そう叫んだ) 」
AS「俺はただ背中を押しただけだ、成し遂げたのは紛れもないお前の力―――嬉しく思うよ、一人の『友』として。(友―――彼が今まで一度たりとも口にしなかった言葉が、向けられる)よくやった、本当にな。 」
エゴ猫「ちくしょう~…結局何一つ活躍できなかったか……だがッ!!次はこうはいねえぞゴルァ!いつか必ず、俺様がリア充になるその日まで!!…あいででで…(腰元を摩る)」
大剣使いの男「……罪剣の脅威さえも斬り払う、か… ふふっ、やはりこの大会に集う者たちはみな、格が違うな。(満足そうにほくそ笑み、暁の空を見上げた) 」
フーナ「罪剣事件もこれで幕引きってところね。残すは十刀剣武祭のみだよ…って……あー…(ゼロリアとの戦闘で半壊した闘技場一帯を見渡して顔が引きつる) 」
サビスケ「あ…あわわ…(わ、私は…いったいどうすればよいのだろうか…っ…?クロリアーがあれば、この刀剣武祭をより映えあるものにできると信じていたのに…)(瓦礫の陰から、一同の様子や荒れ果てた会場を見渡していた) 」
ゼンサイ「 ヌ ――――(サビスケの傍に音もなく現れる) 」
サビスケ「―――― ひっ…!?(しばらく呆然としていたが、ゼンサイの存在に気付き蒼白した表情で彼を見上げた)ぜ、ゼンサイ様…!!…ぁ、あの…これは――― 」
ゼンサイ「サビスケよ。(落胆したように瞳を閉ざす)…話は全て、かの剣士(メタナイト)から聞いたぞ。…どうやら、お前にはまだ…荷が重すぎたようだな。 」
サビスケ「……!!ち、違うんです、ゼンサイ様…!私はただ、貴方様の期待に応えるために…この刀剣武祭を――― 」
××A「―――だからと言って、「罪剣」に手を出すなんて愚かなことです。(ゼンサイの傍にいた二人の少女。その内の一人、碧髪のインテリな剣士がサビスケの前を遮り、見下すような冷たい視線を送った) 」
××B「ええ、まあ…そうねぇ… 頑張ろうとした姿は褒められるかもしれないけれど、ちょっとだけ、努力不足だったかもしれないわねぇ。(蒼髪の麗しい剣士が、柔らかい表情をしてその発言に続く) 」
ゼンサイ「サビスケよ、話があるなら…後でいくらでも聞こう。だが、お前には…実行委員長から降りてもらう。また一から、ワシの道場でしごいてやるからな。覚悟しとけい。(そう吐き捨て、二人の少女を連れて戦士たちのもとへと歩み出す) 」
サビスケ「……!!?(風鳴(かざな)様…海音(みうね)様…!!)(二人の少女を見て絶句する)――――!!そ、そんな……(虚脱し、その場で項垂れた) 」
ヒロ「………これ、試合できんのかいな(汗) 」
レインド「――(ほんの秒単位程の一瞬だが、クロリアーからの言葉に動きが止まる)……(肩を動かさず、氷冬の方に振り返ると、彼女の瞳を覗き込むように目を細め、ゆったりとクロリアーを想い空へと顔をあげる)……ドドドルゥルルル(黙って体勢を直し、バイクに一速クラッチを入れ替え、微速発進し彼女らの元に身を寄せる)……いい友達を持ったな……(風に撫でられるような柔らかい笑みを落とし、多くも語らず、ただ手を軽く振り『感謝』を表現)ドドドドドド!(そのままバイクを加速させ、その物語から姿を消す) 」
ヒロ「……今度は何者だ?(ゼンサイと二人の少女を睨む) 」
氷冬「……!……ふふっ…♪(「友」―――その言葉に想わす噴き出すも、内心はこの上ない信頼を得て喜んでいる)―――――!(擦れ違い様に受け取ったレインドの言葉に、一瞬呆然とするも…バイクのエンジン音と共に我に返り、風の如く去り行く英雄を、笑って見送った)……友達…ね…ふふっ…(そして、朝日を迎えた青空を仰ぐ。清々しいそよ風をその身で受け止め、深呼吸した) ……?(こちらに近寄るゼンサイを「誰?」と小首を傾げながら見つめる) 」
フーナ「レインド…ありがとう!(去り行く彼に手を振り返す)…今大会の代表取締役会長さんだよ。(そんな氷冬の様子を見て、彼女に耳打ちする) 」
ゼンサイ「(氷冬たちの前に現れた厳かな雰囲気を漂わせる老翁)…此度の事件…責任の所在は、ワシら運営陣にある。(古傷を噛みしめる様な、厳かでありながら苦い表情を見せる) 民の皆様、戦士の皆様に…深く、お詫びを申し上げます。(そして、一同の前で土下座。深く頭を垂れる) 」
××A&××B→風鳴&海音『 ス … … (ゼンサイに続き、片膝を付いて首を垂れる)』 」
キリギリス&スタッフ一同『―――――!(ゼンサイと姉妹に続く様に、陰から現れた大会関係者一同が姿を現し、選手たちに頭を下げた)』 」
氷冬「……!(ゼンサイをはじめとする大会関係者の土下座を前に、一度はどう反応すればいいのかわからず狼狽するも…)…い、いえ…貴方がたのせいじゃない。私たちにも、止められる術や機会は…いくらでもあったはずだから。………私は、この大会のことを知って、初めてここへ踏み入れた。こんな素敵な大会があったなんて知らなかったしここへ来てから、目的以上に…もっと、大事な『何か』も得られたのだから。…これからもずっと続けてほしいと思う。…だから、存続させてほしい、輝かしいこの舞台を。(ゼンサイに微笑んで) 」
ルドゥラ「……ふん、詫びなどどうでもいい。丁度いい暇つぶしがあっただけの事だ。(今回の事に特に意に還さずといった態度で) 」
ヒロ「……主催者、か(ゼンサイ達を見て) 」
ゼンサイ「……!(頭を上げる)…娘よ、そなたは…そう言ってくれるのだな… ああ、今なら、分かる。様々な壁に衝突しながら、それでも尚、この大会を多くの者たちに知ってもらい、後世に残すために全うした…我々の奮励努力が、決して無駄ではなかったことを…!…ありがとう…ありがとう…!ワシらはまだ…"ここ"から立ち上がれる…!(ゆっくりと立ち上がり、淡い青色の空を仰いだ) 」
ゼンサイ「二週間… 二週間だけの猶予をくだされ。その間(かん)…我々は、この歴史ある刀剣武祭の輝きを取り戻す為に、すべての者たちから信頼を取り戻す為に、復興に全うしよう…!必ずだ、約束する。 」
AS「―――そうだな、紛れもなくこの大会は『剣』が語らい、そして同時に成長する場でもある・・・続けてもらわなければ困る。(ちらりと氷冬を見る)それに―――次が無ければ、俺は氷冬と・・・今度は『頂点を賭けて』戦えないだろう?これでも結構気にしているものでな。 」
氷冬「……!…貴方がたを、信じるわ。(クロリアーの存在から、初めは疑っていた運営だったが…その心からの謝罪を汲み取り、握手を求める様に手を差し出した) 」
ゼンサイ「……!(しわくちゃの手で氷冬と握手を交わし、誓いを立てる)……さあ、お前たち。そうと決まればさっそく実行に移すぞ。各自配置に着けい!(踵を返し、何処かへと去っていく) 」
風鳴「はぁ…面倒ですが、この不始末は我々で拭わなければいけませんね。(眼鏡をかけ直し、氷冬たちに向き合う) 貴方がたには感謝します。しばらく復興作業に入りますので、試合は先延ばしになってしまいますが…完璧に、元通りに致しますのでどうぞお待ちください。では。(腰元に携えた二振りの剣が納まった鞘を輝かせ、ゼンサイへと続いていく) 」
海音「ふふふ…お爺様のために、私たちも励まなければいけませんわね。(麗しい長髪を掻き上げ、同様に彼女たちに向き合う)今回の大会に集まってくださったみなさん…本当にお強いですのね。「目」を見ればわかりますよ。ふふっ…それでは、御機嫌よう~。(風鳴と共に去っていく) 」
氷冬「……(あの二人… 感じる…とてつもない覇気の持ち主であるのが…)……ふふっ、そうね…私にはまだ、この昂ぶりが残っている…(強者と対峙した際の昂揚感が戻ってくるのを感じ、思わず不敵な笑みを浮かべた) 」
雛菊「…感じたみたいですね。(姉妹を見送った氷冬に背後から声をかける)…風鳴さんと海音さん。あのお二人はゼンサイさんのお孫さんのようですが、過去の刀剣武祭で連続優勝を極めてきた剣豪姉妹です。あまりにも強すぎて、ゼンサイさんに大会への出場を止められているみたいです。今はああして、あの方のボディーガードを務めているようですが… ……それより、氷冬さん。貴女とのせっかく試合が先延ばしになってしまいましたね。(あははと苦笑しながら) 」
AS「お前の行く末を俺は見届けよう。・・・お前の道には数多の強敵がいる、だが超えろ、お前はそう約束したんだろう?(自分もまた、心の中に闘志を揺らがせながら声をかける)・・・そうだな、再開までの間、幾らか手合わせしようか?お前が何かつかめるまで何度でも『あれ』を見せてやるのも悪くない、それに結局・・・自分に素直になったところ、結論は『戦いたい』とばかり来たものだからな。 」
氷冬「へ、へぇ……(…世界は広い…まだ、私の知らないものがたくさんあるのね。)(剣豪姉妹の背を見送り、再び雛菊と向き合う)ええ、少し残念だけど…まずはお互い休息が大事かもしれないわね。(ふぅと息をついて)貴女と共に戦えたこと、光栄に思うわ。でも…次の試合、全力で勝たせてもらうわよ。 」
雛菊「そのようですね。気が満ちているのが感じ取れます。…あれから急激な進化を遂げたみたいですが…私も、負けるわけにはいきません。氷冬さん、二週間後に、またこのステージ上でお会いしましょう。そして、再び貴女と刃を交えられるその瞬間を…心待ちにしています。(彼女に会釈し、踵を返してその場を後にした) 」
氷冬「ええ、私も待っているわ…雛菊。(去り行く彼女を見送る。だがその後、何かを思い出したようにはっと息を呑む)……しまった…"また"伝えそびれてしまった…(懐に忍ばせた一枚の封筒…それを元に戻した)…越えてみせる…そうよ、だって…そう約束したんだもの…(ふと脳裏に、縊鬼の像が過った)……!…そうね…正直なところ、今の私じゃまだ…彼女(雛菊)に勝てるとは思えない。…なら、ちょっとだけ、付き合ってもらえるかしら?(ふふっと笑んで) 」
AS「それでいい・・・お前のその真っ直ぐな『剣<おもい>』は、とても美しい。(眩しげながらも、どこか嬉しそうだ)戦う前から勝ち負けを思うな、全てはやってみてこそ・・・だろう?そこは一つの悪い癖だ・・・二週間で徹底的に矯正してやろう、喜んで付き合うさ、友よ。(不敵に笑い返す)さて・・・今日は多くのことがありすぎた、だが明日からは修練だ、お互いしっかりと体を休めよう。(そう言って、歩いてその場をあとにする) 」
氷冬「うっ…お手柔らかに…してくれないでしょうね…(んげっと苦い表情で舌を出して)よろしくね、AS。(彼を見送り、今度はフーナたちと向き合う)…ということだから。(てへっと舌を出して) 」
フーナ「あはは…まあ、氷冬らしいけどね。(苦笑して)…いろんなことがあったけど、やっぱり、こういう時って感じるよね。…「友達」でいてよかったって。(にひひと笑う) 」
スカーフィ「かぅ…♪ボクたちは、ずっとこれからも、大切な友達だよ♪……あうぅ…お腹空いちゃった…(空腹で再び倒れ込む) 」
氷冬「…ふふっ、そうね。(フーナとスカーフィ…そして、ここで出会ったすべての「友」に感謝するように、微笑んだ) 」
――――― …ようやく出会えたよ。心の底から、本当に信じられる「友」が… ―――――
――――― ありがとう、みんな。 ―――――
――― "ここ"ではない、どこかの世界 ―――
プルルル…♪ プルルル…♪
…… …… ……
試作機E85より、『擬時録』(ヴァンデルング)を回収。
どういう運命か分からんが、『彼女』も足を踏み入れたことのあるという≪ CHAOS≫という世界から、データを受信した。
残念ながら、時空漂浪によって保管データの閲覧はほぼ不可能だ。あとでヴァラフに適当に解析作業をさせておいてくれ。
ただ、非常に興味深いものが、断片的だが確認できた。『この世界』ではあり得ないであろう。とてもとても興味深いものだった。
三日坊主で定評のある『彼女』ですら、≪あの世界≫に執着していたのも頷ける。いつかはこの眼で直接見てみたいものだ、その世界の"空"の色を。
試作機E85…ああ、「Elchidrah」は機能停止したか、破壊されただろう。だが、幸いにも、奴に搭載されたスーイサイドプログラム“自壊予告”(シュテルベン)の発動記録がなかったのを確認できてほっとしたよ。
とにかく、報告はこれで以上だ。後処理はあのマッドサイエンティスト様に回してくれ。……それから、以前お願いした良いべっぴんさん、早く紹介してくれよな。
―――――――――――――― From:イージス・ベル・フェルン
最終更新:2017年04月30日 20:29