緋月の夜叉姫 ログ12

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―― 池田屋 ―― 


リズ「(グラナートファミリエへ与えられた大広間。真ん中に添え置かれた座卓に頬杖を突き目を閉ざす。瞼の内では昨夜に訪ねて来た依頼人の似姿が克明に映し出されていた) 」
―――『徒紀和姫の護衛を依頼したい』――― 」

リズ「―――――(『二鷹紅夜』。我々が『人鬼和平会議』の仲介役をまか……押し付けられたと知っての依頼だろうが……そもそも護衛有りきの仲介役であった筈だ。改めて護衛を依頼する意味とは……大和の『内政情報』を私に与えてまで……。そもそも『徒紀和姫』のみ念押しされるというのも気掛かりだ。彼があの食わせ物ババアの手の物なら頷けるが、なら何故彼女と別口で我々に接触した? きな臭いな……) 」

リズ「  ス…… (座布団を踏んで腰を上げる。両腕を天井に翳し掌を水平に保つ。続けて、腕を前に翳し指を一本ずつ曲げる、これを一本ずつ広げて元に戻す。『準備体操』を終え、肩を上下させ首を一回り円を描くようにして捻った)(私なら……我ながら陳腐な判断基準だが私なら会合までは敵対することもあるまい。二鷹については直接徒紀和姫に伺うのが早いか―――――) 」


コッコッコッコッコッコッ……(旅館という場所からは有り得ない、廊下から聞こえてくる靴音。どう考えても仲居ではない。かといってこういった文化を知らなかった外国人でもない。明確な意志を以て歩みを進めている)コッコッコッコッコッコッ……(しかしリズの部屋の前で止まるというホラー展開にありがちな想定ははずれる。そのまま足音の主は通り過ぎて行った) 」


リズ「―――――(”靴音”。旅館における異音に違和を覚え髪を靡かせ振り向く。トレンチコートの内ポケットに手を突っ込み表情一つ崩さず身構えるが、何事もなく不気味な静粛に一人取り残された)………。 トン(おもむろに米神に指を当て片目を閉ざす) 」
ミチ”…・・・ ギョロリ”ンッッ(足音が辿っていった廊下の天井にこびり付いた黒いシミが振動し『瞼』が開いた。壁に植えつけられた『眼球』が廊下を見下ろし絶え間なく辺りを見渡す) 」

リズ「―――――(閉ざした左目は廊下に植えられた眼球とリンクし視覚情報を共有していた。監視カメラのような役割を与えていた使い魔だったが、その視覚には足音の主らしき姿はなく)――――。(おもむろに”畳に掌を当て”じっと息を潜める) 」


シィィン…(あまりにも不自然すぎる静寂。あの足音を軽機にすべての音をかき消されたかのような、そして)ヒュウウウウウウウ……(大広間に設けられた襖。その一つがいつの間にやら開いておりそこから風が流れ込んでいる。その先にあるネオンの光を遮るように、一匹の鴉が嘲笑うように鳴いた)ゴゴゴゴゴ………(快適なはずの大広間に悪霊のような重圧が溢れ始める) 」


リズ「―――――。(突然襖が開いた。背越しに一瞥をやりそう認識するがそれも一瞬のこと、進行方向に向き直る。第六感で気配を手繰ろうとするも全方位にあるのは無、無だけ、生体反応を察知する事も叶わず) ゴト  (座卓の側に添えおいた杖を左手に取り腰を上げ、両足をその杖で体を整え立ったままを”維持”し続ける)…………。(”お喋り”な彼女だが、この時ばかりは地蔵のように沈黙していた) 」

リズ「  ヒュ カラ カ ラン   (咄嗟に行儀の悪い部下が置き土産に置いていったビールの空き缶を前方に蹴り転がした) 」


コロンッ!カランッ……(ビールの空き缶が虚しい音を立ててコロコロと転がろうとした、直後)……コロコロコロコロ。(ほんの一瞬、『空き缶が方向転換をした』。今一瞬だけリズの方へと戻ろうとした。正確には……) 」


ソリダス「┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨(彼女の背後、彼女のものかもしれない本を手に取り、ページをパラパラと開けていた)……勘がいいのか、それともわかってやったのか。どちらにしろ組織のボスを張るに相応しい能力は兼ね備えているようだな(口を開き、黒白目の瞳で彼女を見据える)……これはお前の本かな?見たところ洋書だが……(そう言ってリズの方にその本を放った)」 」


リズ「   ゾ   ク  ッ    (己という小人の背へ巨人の手にした刀が当てがわれたような、そんな悪寒がした。使い魔との視角共有、微量な魔力の広範囲展開による反響感知。彼女が即興でし得る手段を尽くしたがこの男は難なく『死角』を取っていた)……(座卓に置かれた酒瓶の写り込みを利用し男、ソリダスの容姿を確認。決して振り返らない、微動だにしない)――――はっ、眼球にサングラス埋めて何語か見分けがつくのかね。常夏の孤島に魂を置いて来たか 」

ソリダス「生憎楽園<バカンス>には縁のない身分でな。……俺に縁があるのは地獄だけだ。――――エリザベス・ヴァン・シュテイン。お前の命をいただく。(すぅっとまるでカンフーの達人めいた無形の構えを取る。武器らしい武器は何一つ持っていない。完全な無手だ。そして格闘をするには離れ過ぎている間合い)最初に言っておく。――――俺は、お前に、近づかない。 」

リズ「おいおいおいおいおい、ロケットパンチで男心が揺さぶられたのはカビが生えた時代だぞ。(ペン回しのようにして杖を手元で弄び両腕を広げ肩を上下させた)―――――(ソリダスの元へ戻ろうとした空き缶を一瞥、間合いの外から近接格闘術の構えを取る姿を警戒し微動だにしない)――――恨まれる理由は腐るほど心当たりがあるが、まあなんだ……ワケの一つぐらい冥土の土産に聞かせてくれてもいいんじゃないか? 」

ソリダス「理由? 簡単に言えば、こうだ。―――――『クローバー』という名のボス、俺はそこからの刺客だ。……これでは不満か? 」

リズ「不足はないといえば嘘になる。だが駄々を捏ねても君はプロだ、クレーマーのうようにあしらわれるだけだろう。はぁ……仕方ないな。やるからには受領印を頂きたいがどうせ判子持ってないだろうお前(微笑を浮かべ淡々と歌を奏でるようにして冗談を並べ)―――――――トン(杖で畳を『貫く』。するとシーソーよろしく畳が捲り上げられ、その影から『銃口』が覗き)―――――代わりにやるよ(杖を精密に動かし引き金を引いた) 」


  ヴォ   ン  ッッ  (大型口径のマグナム銃から鉛玉が螺旋を描いて飛ぶ。通常両腕で支えて撃つ設計のものを床に置き、杖でトリガーを引いた為反動であらぬ方へ銃本体は吹っ飛んでしまうが、放たれた弾丸は正確にソリダスの眉間を狙って飛来した)


ソリダス「―――――ッ!!(弾丸は眉間へめり込む。血は出ていない。そのまま後ろ向きに倒れる―――――が)―――――スゥウゥゥン…(畳が倒れてリズの視界が晴れた直後に、彼の姿は忽然と消えた。そして)……コロコロコロコロ。(放ったはずの弾丸が『ひしゃげた』形で畳の上を転がっていた) 」

リズ「(残されたひしゃげた弾丸を一瞥、当の本人の姿はなく判断材料こそないが)―――――!!(転がる空き缶、異様な間合い想起し点と点が結びつく。一つの仮説を立てるや)  ガンッッ(進行方向にある座卓を踏み越え一脇目も振らず大広間の出口へ向かって駆け出した)ハリーの災難ってあったよなぁ……エリザベスの災難に改名されないかなクソッタレ……ッ!! 」

ソリダス「――――逃げられると思っているのか?(声のみが大広間に響き)すでに準備は出来ている。――――そう言えば、お前は判子を欲しがっていたな。確かに、俺は判子を持っていない。―――だが、『サイン』でいいのなら書いてやろう。お前の『背中』にッ!! 」


ゾリゾリゾリゾリゾリッ!!!(リズの背中に途轍もない違和感と激痛が走る。皮膚と肉の間をなにか蠢いているようで、それでいて剣のような鋭さ。そして――――)ガボォオオオオ!!(異様な音と共に、リズの背中から大量の剃刀が) 」


リズ「(――――痛みを通り越して感覚がイカれ神経が麻痺しそうになる程の刺激。通常であれば良くて失神、悪ければショック死に至る領域だった)  ギ……ぃ” ……ッ ………ッッ!!!あ”グ ぁ” ……!!(だが単純あ痛みの程であればそれに等しい物を幼少期に彼女は知っている、今も尚生きている。その体勢故に楽になることはできず、しかし死ぬこともない。夥しい量の赤を床に流し、腕を前のめりに突き出して倒れこむ。襖を突き破って廊下へ蹲るようにして転がった) 」


ソリダス「―――逃がさない(ゆっくりと歩み寄るも間合いは維持。注意深く観察しながら)血が多く出ているな。大丈夫か? そのまま体を低く、そう、床を這いずり回っていた方がイイ。身体の部位を心臓と同じ位置でキープするんだ。……あぁ、這いずり回るのなら、その『足』はいらないと思うが……どうかな?(次の狙いは足、案の定、例の違和感がアキレス腱に襲い掛かる) 」

リズ「く……くく……ク………(足にかかる違和感、体内から噴き出すカミソリの攻撃が容易に予測できる。未来への恐怖と現在の苦しみにあえいでいたかのと思えば、肩を震わせ煤笑い『お断りだ』とでも言いたげに腕を突いて立ち上がった)なあお前……世間話程度に聞いてもいいかな(下層階へ続く吹き抜けをバッグに、鉄柵へ背を着け滝のような汗を流しながらも余裕を保ち、妖艶に微笑む)輸血車……あるじゃないか。あれにわけてやろうって思い至ったことは? 」

ソリダス「輸血車……一体なんの話だ?………いや、本当に世間話か?その大怪我で?(こめかみに人差し指を当てるようにして)……(その下は別の階層。まさか飛び降りる気か? いいや落ち着け。今のコイツにそれほどの体力があるとは思えん。)…………ないな。俺は別にそんなものに興味はない。だが強いて言うのなら、―――お前の血を全てそこに分けてやったほうがオレにとっても彼等にとっても建設的かもしれんな(ジリッ…) 」

リズ「私も同意見だ。なんだ初めて話が会ったな(”談笑”、それも年頃の悪知恵をつけ始めた頃の悪餓鬼がするようなそれをこの場でする。目を細め、顎に手を当てそれはもう心底愉快に笑い―――――) ザ  ァ グ ゥゥゥウウウ――――――z_________ッ!!!!(事もあろうに、魔力で『電ノコ化』した杖を自らの足に当てなんの脈略もなく自ら切断し)なら届けたまえ、パンクしても知らんがな!!(それをそのまま杖の先端で蹴りばし自らの足をソリダスへ放った) 」


 ――――――メギ ギギ  ギギギギ ギ グ ギギイ ギギギギ……ッッ!!!!(放られた足の切断面からはソリダスの異能による鉄分操作と、リスの『自らの血に限定』する血流操作がせめぎ合っているのが見えた。ヒトの体内で戦争が起こっているかのような口径だが何より異様なのは) ボロ… ボ ド  ボ ド  (ソリダスの磁力操作が血流操作に勝り切断された足をズタズタにしても尚『地が失われない』事だった)


ソリダス「(な、なにぃぃぃぃいいいッ!!?)―――――ッ!(彼女の常軌を逸した機転。そして放られた足を見て思わず動きが止まった)貴様、自分の足をッ!!(まさか、あの男同様……わずかな情報で見破ったというのかッ!!?ありえない……だがッ!!)舐めるんじゃない! まだ俺の射程圏内であるということを忘れるなァーーーーッ!!(ズァアアアア!!)(能力の発動、今度は慢心なく全身をターゲットにエネルギーを込める) 」

リズ「(磁力操作は私の血液に限定した血流操作より優先順位が高い、つまりこの男との弱点は最悪だ……だが) サグッッ ボドボド ボ┣¨(吹き抜けへ飛び降りようと床板を蹴り勝ち誇ったような笑みを向ける)ク……クク……殺しきれんよ!!お前ではなッ!!(―――――一撃で殺せなかった。初見殺しの異能にも関わらずだ。これは恐らくじわじわと痛ぶり失血死へ誘うタイプと予測する。もしそうなら相性が悪いが勝ちの目がない訳ではない―――!!) 」


パチン  ドボ ボ ゴ ボ  ボボ ゴボ  (床に残された彼女の足が半液体を煮詰めたようなグロテスクな音を立て、トカゲの尻尾同然に一人でにのたうち回り)   パンッッ   (骨を残して爆ぜる。およそ人の子の足に収まるはずがない量の血が滴りった。廊下から吹き抜けへ溢れる血の溜池という程に。その尋常ではない量と『血流操作』によって発生する『血の槍』攻撃。磁力操作で防ぐことは十分に可能だがそれは無尽蔵に湧いてくる)


ソリダス「これはッ!『血の槍』!? ……なんという胆力、そして機転の速さだ。これでは近づけない!(回避するしかない。能力で身を守りながらさらにターゲットから距離を離すしかない)……奴は血液を自在に操るのか。そう言えばどこかの街にもいたなそういうスタンド使い……。だが奴のはそれを遥かに上回る。……見誤ったか?この俺が?――――否!! まだ俺の攻撃は終わってはいない!!(そう言って自身も下へと飛び降りる) 」

リズ「  ド シャ  ァ  ベギ ヴェギギギヴォギ(一直線に下層階に落下。受け身もまともに取れず骨が『潰れる』嫌な音が響きボロ雑巾のように這いつくばる)ゲホッッ ゲホッッッ (杖を片足代わりに喀血混じりにゆっくりと起き上がる) グチ ベギギボギグチグジュッッ(当然のように切断した足を生やす……が骨の生成、血肉の生成、皮膚の保護という工程が遅く苦しげに歯噛みした)チッ……(リジェネが遅い……ッ 全盛期には遥かに及ばない。相性も最悪……不利という以前にやはり時間稼ぎが時間の山か……!) 」

リズ「くそったれ……よりにもよって私が単独行動だなんてどうかしてた……ッ!!(コートのボタンを外し、それに擬態していた『C4爆弾』を床に乱雑に転がしつつ、非常出口マーク天井で発光している通路へ足を引きずりつつ移動を始める) 」

ソリダス「―――スタッ。……血の痕からみて、非常口か。(歩いていくと彼女はやはりそこにいた)……凄まじいな。回復というレベルじゃあない。ここまでいくと、『再生』だな。(関心を覚えつつ少しずつ距離を詰めるが…)……妙な物をバラまいているな。これは、ボタンか? こんな狭い通路にこれだけの量をバラまくとは、余程こういう場所で効力を発揮する物なのだろうな。(推察を述べたボソリと)……爆弾か?(ギロリ)」 」

リズ「早いな……足の長さでマウントを取りやがって……嫌な野郎じゃないか……(爪先がまだ床に着いていない片足を引きずりつつ、通路に背を預け追いついてきたソリダスを睨みつける。尋常ではない血液量からして貧血ではないが元々青白い顔はより具合が悪く呼吸も荒い)踏めばボンッッって言う奴だが……まあお前相手じゃ大した効力もなさそうだ。(そう苦笑しつつ、目だけを動かしダンボールが山積みにされた荷台を見やる) 」

ソリダス「そうだな……俺には(そういうと周囲の壁や天井を見て、何かを感じとる)……まったくといっていいほど(壁に足をつけると、そのままググググググググと、『壁に立ち上がる』)――――通用しない(今度はそのまま壁を歩き、天井に立つ。まるで蝙蝠がぶら下がっているかのように。自らの能力を使い、磁力でくっついているのだ)さて、お前は相当に手癖が悪いな。吸血鬼らしく十字架で聖痕を打ってやろうかッ!!(そう言うと彼女の両手の内部から5寸釘を作り出そうとパワーを働かせた) 」

リズ「ッッ―――――~~~~ッッ!!(手の内側から打ち付けられる五寸釘、聖者を磔にしたという彼女にとって屈辱的な攻撃に痛みよりも憤慨から、激しく歯を食いしばる)はッ……お前の拙僧のないサディズムと比べれば可愛い悪戯だろうが……!(だが攻撃対象は『足』ではない。これを幸いに倒れこむよにして荷台に積まれたダンボールにしがみつき)ン”ン”ら”ァ”!!!!!(生えかけの不完全な足ももいたわる事なく使って湯を蹴り、荷台のキャスターを利用してボブスレーのソリが如く通路を滑走し『射程範囲』から逃れつつ――――) 」

リズ「ッッ――――――!!(状態を捻り振り向いてコートの内ポケットから取り出したリボルバーを取り出し銃口を一度ソリダスへ向け) ゴガギィンッッ!!(一瞬のフェイントの後、天井に逆立ちする彼の真下にばら撒かれたC4を狙ってトリガーを引く) 」

ソリダス「な、なに―――――ッ!?(自分の治りかけの足を…いや、それ以上にあの段ボールの積まれた荷台を移動手段に考えるとは……ッ)―――――ハッ!!(銃弾を撃ち込まれると身構えた直後、まんまとフェイントに引っ掛かる)ぬ、ぬぉぉおおおおおおッ!!!(C4が爆発したと同時に雄叫びを上げた。非常口は爆炎に包まれていく中、彼の姿は視認できない) 」

リズ「――――ッ!!(苦し紛れの抵抗、他に選択肢はなかったと判断しての行動だったが爆発による余波は想定を超え、既に満身創痍の彼女からすれば)ぐぁ ッッ ……ァ!! がァ……!!(圧で肺が潰れそうになる。皮肉にもそれの助けがあって荷台は一直線に通路を駆け抜け)  ┣¨ ォ  ン   ガッッ  ゴ ン  (出口へ出るや、恐らくは池田屋の正面入り口が真下に見えるエリアの通路に飛ばされ、床に叩きつけられた)はっ……さっきのツラだけは……フィルムに納めてやりたかったな馬鹿野郎……ッ 」
炎に照らされる中、やっと終わったと一息ついた直後だった。軋むような音が炎の中から聞こえる。金属と金属を擦り合わせるようなそんな不快な音が。その音の主が姿を現す。――――無数の金属片が巨大なボール状に固まってリズの視界に現れた。…そして 」

ソリダス「…バラバラ、バラ(金属片の塊が崩れ、中から血を流す彼の姿を見せる)┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨…(金属片を蹴っ飛ばすようにして道を開く。そして腕で血を拭うと炎の中から出てきた)一瞬だった……ほんの一瞬、俺に運命は傾いた。爆発した直後に天井や壁が崩れ、内部の金属が露出した。……それで小型のシェルターを作って九死に一生を得たぞ。(血を吐き捨てながらリズを見下ろす 」

リズ「――――――はっ なんだお前その脱出法、今からMGSでもマルチするか?(『やれやれ、参ったな』とでも言いたげ燃え盛る通路の明かりに照らされながらヤケクソ気味に、笑いを吐き捨てた)――――一瞬の運命で偉ぶるじゃないか、今日神引きして明日爆死かますソシャゲユーザーのようだぞ。私は『この姿』に生まれた時から天運に恵まれているがな…… 」

ソリダス「悪魔が天運とは…よほど見る目の無い神がこの世にはいるらしいな。もっとも、それは俺も同じだが。(スッ…)――――これで終わりだ。エリザベス・ヴァン・シュテインッ!! 終わりだッ!!(能力の発動の気配が濃くなる。今度は足と両腕から無数の釘を、そして胃から込み上げるほどの量の剃刀を) 」

リズ「―――――――(ソリダスが異能を解放する間際、刹那的に周囲を確認するようにして目線だけ動かし)――――― フッ(『笑った』この悪魔は常に笑みを絶やさない、追い込まれようが、忿怒に身を焼き焦がそうが常に異なる笑みを浮かべていた……しかし―――――――)あ”あ”あ”あ”ぁ”ぁ”あ”あ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”―――――~~~~~~ッッッッっっっt!!!!!!!!!! 」

リズ「(悪魔は『泣いた』、一人の南蛮人の童としてあろうことか、戦のいの字も知らない子供のように泣き喚いた。今まで耐え忍んでいた分を吐き出すようにして、そして今現在進行形で受けている苦痛も上乗せして血反吐を吐きながらもしきりに泣いた)誰”か”あ”あ”ぁ”ぁ”~~~~――――助けてえぇえぇ助けてええええ痛いよおおおおやだああああえっぐ……ヒグッッ……!!ころっっ 殺されるああああぁぁやだぁぁぁあああッッ!!!!あ”あ”あ”ぁ”ぁ”アアァァ―――――!!! 」


『な、なんだどうした!』『うわああ子供がっ 子供がマグロの解体ショーみたいになってるううううゥゥ――――z____!!!!!』『見廻組だ!!なんだどうし……うわ……ちょ……ええ!?』『狙撃犯を呼べ!!子供が殺されてしまう!!目が黒い男だ!!』『御用ー!!御用ウゥゥゥ――――!!』 」


ソリダス「―――――――ッ!!!!?(ソリダス、衝撃的絶句ッ!! これまで数々の獲物をしとめてきたこの男。金なら払うといって命乞いをしてきた者もいれば、泣きながら命乞いをする者も見てきた。――――だがッ!!)……な、な、……なに?……(この恥もなにもかもを捨てたような童のような大泣きに、一気に戦意と集中が削がれた。そしてすぐに気付くッ!!)(こ、コイツまさか……ッ! 自分の姿を客観視して……ッ!!)くぅう!!(ヒトが集まってきた以上残された手段はただひとつ、退却するしかない。それしか方法はない。これ以上自分の情報を残すまいと、彼は能力でステルス状態になり、足早に去っていった) 」


――――――  トッ  ト ッ     ト  ッ     ト  ン  ッ  (人集りが発生し喧騒の渦になる中、遠方から床板を間隔をあけて靴で蹴る音が接近する)  ヒュ オ   (一陣の風の如く駆け抜けたそれは、見廻組の腰に帯びた刀を掠め取りソリダスの頭上へ迫り―――――) 」



オリヴィエ「(――――――一本に結び桜色の髪をなびかせ、ソリダスの頭部へその一刀を振り下ろす)  ガッッッ  (ステルスで姿を消された事で斬撃は空を切り切っ先が床に埋まる。桜の花弁の形をした魔素の残光をばら撒いて、その娘はおよそ戦場に似つかわしくない、愚直なまでまっすぐな少女像という横顔をリズの前に晒しソリダスが立ち去った方向を見据えていた) 」

リズ「んべぇぇぇーーーーー(意識を保つのも困難な傷を追っているにも関わらず、気合だけで『あっかんべー』を立ち去る間際のソリダスを向けていたが)  ゴッッ   (斬撃が目の前を通り過ぎ思わず足を引っ込め体育すわりに、素っ頓狂な悲鳴を上げ縮こまった)えっ……えっ……なに。え???援軍???今更??? 」

オリヴィエ「――――――(桜花爛漫、一人の少女にして咲き誇る桜の如き髪で曲線を描いて振り返り、腰を落としたリズを見下ろす) ニ コ (掠め取った刀を下ろし、外から差し込む陽光を背に華やぐ微笑みを向けた)――――呼び声を聞きつけ駆けつけました。問いましょうあなたが『エリザベス・ヴァンシュテイン』ですか 」

リズ「 ―――――――。――――――ふっ……でなければ助けなかったよいう顔でもないだろう、お前は。(気が抜けたのか脱力し魔力の抜けたキノッピオのように横たわる)―――――そーだと言ったらどうする、聖杯戦争でもおっ始めるのかい 」
オリヴィエ「(十剣武闘祭の時と何一つ変わらない、タオらかな笑みを浮かべたままい小さくうなずいてその場に傅き)――――徒紀和姫よりあなたの救出を仰せつかりました。あなたのお仲間の無事も確認しています(そのまま軽々とリズをお姫様抱っこで持ち上げて見せた)―――――事情聴取ともなると面倒です。部屋までお運びしますがよろしいですか 」

リズ「グチョ―――――――(抱き上げられた際に手から伝わる感触、体温にただならぬ違和感を覚える。いざオリヴィエの微笑みを見やるが何かかくし立てをできるような器用なそれにはとても見えず、疲労困憊なのもあってそれ以上の思考は叶わなかった)―――――ああ、私の部屋まで頼む。あそこならこの身体を直す道具もそろっているから……  な……  ――――――(48時間のフライトを終えたサラリーマンのようにくたびれ形相で目を閉じ、そのままぐったりとして寝息を立て始めた) 」





池田屋 ロビー


激しい戦闘によって派手に舞い上がった砂埃、それらが収まり始め……
ざわざわと宿泊達が混乱と共に湧き始め、その隅で視線を俄かに集めながら、和服の少女……
白鷺が咳き込みながらへたり込んでいる

白鷺「ケホッ、ゲッホ……砂埃もちょっと収まってくれたのに……ちょっとしんどいですね…ああ、いや、我ながらバテるのが早い……のか……(少しでも周囲からの目を避ける様に、刀を背の後ろに回し)」

尚も騒ぎ立てながら、集まる宿泊客達と従業員から目を逸らしながら立ち上がり、群衆から離れようと歩き始め…

ラウニ「……痛っ、何か当たったか今……あっ、居た!無事か、清華!?(何かが当たったのか、左の二の腕を軽く押さえながら群集を掻き分け、白鷺の肩を掴んで恵まれた上背で群衆から庇う様に引き寄せ)」

白鷺「っとお、思ったより早いですね…大技使わされて煙も吸っちゃいましたよ、前みたいに貴方の口を経由した煙吸ってた時とどっちがマシですかね(ラウニに寄り掛かる様に)……あと、直接的なアプローチを仕掛けてきた以上……リズさん?ボスさん?どっちでしたっけ…とにかく、私達そっちに戻るべきだと思いますねえ、さっき私とやり合ったのも、明らかに”に人間”のそれじゃあありませんでした……剣の妖か、兵器の類か…」

ラウニ「アレが普通じゃねえのは私にも分かるっての、それに他の連中にも報告はまともに出来てない、どっちにしろ目立ち過ぎた訳だし、無線で報告がてら戻……っ…(帰り道を探して周囲を見渡し……一人の人物が目に入り、一瞬動きが止まる)」



ラウニの目に映った、尋常ならざる雰囲気を漂わせた一人の和服の人物……
この国の人間ならば誰もがその顔を知っているだろう、その男……四老中が一人、宗方忠成が視線の先に、護衛と思しき数名の男と共に……腕を組み、堂々とした立ち姿で此方を睨みながら立っていた。



宗方「随分と派手に騒いでくれる物だな、異人共。いや……(白鷺の顔が目に入り)ほう…白鷺の娘が居たというのは本当だったか。他所の国で野垂れ死んだ物かと思っていたが…あの老いぼれも上手くやったものだな」

白鷺「……ちょっとばかり狼藉を働かれまして。安全意識とか、なんかそういうのが足りて無いんじゃないですか?一般のお客様も居る所で白刃沙汰なんて品が無いですよね、なんだか(口では軽口を叩きながらも、そっと刀の柄に手を添え)」

宗方「ふっ、阿呆が狼藉を働いたから抜いた……大方そんな所だろうが……(そう言いながら白鷺の足元、そして背の後ろに隠した刀を見)(あの四人はこの分だと斬り殺されたと見るのが妥当か……其方で詰めてやっても構わんが)」
宗方の傍の護衛は武器を構える様な素振りも無く、微動だにせず…只ラウニ達を見据えている。

宗方「軍部を束ね、この国を守る……この儂が、民の前で異人二人なぞに騒ぎを起こすのは確かに騒ぎ過ぎと捉えられても仕方なかろうよ、故に……(視線は白鷺とラウニに向けたまま、傍の護衛が携えた刀の柄に手を伸ばした……文字通り、その”瞬間”)」



ガ ギ ィ ン !



ロビーに鳴り響く、鋼鉄のぶつかる音と一瞬だけ弾けた火花……



抜き身の刀身すらも常人には見えない程の、”神速の居合”が宗方から放たれた、その一閃を……
白鷺が”同等の速度”の剣戟を持って、迎撃した。
周囲の群衆には、金属音と火花による”結果”しか知覚は出来ないだろう、神速の攻防。



宗方「(何事も無かったかのように刀の柄から手を離し、護衛の鞘に収め)……ほう、防いだか…成程、あの間抜けの子とはいえ腕は悪くないようだ。この場で無ければもう少し付き合っ……」



宗方が言い終える前に、非常口、続いて正面入り口方向から轟音が響く。
爆音と衝撃音。明らかな異常に、群衆も含めその場の全員の意識が其方に向く。



白鷺「っ!?……えぇ…?ちょっと流石に異常すぎません?こんなに彼方此方で同時に騒ぎが起こるなんて………ラウニさん、ラウニさん?(完全に意識外からの轟音にびくり、と反応した後、目線は宗方に向けたまま傍のラウニに話しかけ)」

宗方「……(徒紀和姫の一派の状況を考えれば、此処まで派手に騒ぎ立てるとは考え難い……あの爆音、少なくともこの二人の意図するものではない、か)…誠に残念だ、どうも仕事が出来たらしい……おい、客を避難させるぞ。儂も同行する(傍らの護衛達に目線を向けながら指示し、爆音のした正面入り口方向へ歩き)」

宗方「くっ……くくっ、あの阿呆の若造に、直ぐに勝手に死んだその嫁……滑稽だと思っていたが、いやはや…(嗤いを抑えながら、白鷺を一瞥し……去って行った)」

白鷺「(宗方の去り際の台詞から、”何か”を察し……顔を上げる、が)……ラウニさん…!(傍で様子のおかしなラウニの身体を逆に抱え)」

ラウニ「ああ……大丈夫、大丈夫だが……何かされたかもしれん……一人になったときか……?毒…か……?これ…(明らかに脂汗を流し、ふら付き始め)」

白鷺「……っ、なっ…っていうか熱っ……熱出してる…?これ…?とにかく戻りますよ、此処じゃ何も出来ませんし、無線の使い方も良く分かりませんし……あと道だけ伝えてください、しっかりしてくださいよ!ラウニさん!!貸しなんですからね!これ!!(ラウニに無理矢理ながら肩を貸す形になり、来た道を戻ろうと歩き出す)」












池田屋 グラナートファミリエ客室



『敵からの襲撃があったとはどういうことですお嬢様ッ!!状況を詳しくッ!!今何処にいらっしゃるのです、損害は!!』

『赤チン塗りました!?塗りましたよね!!なんとか言ってくださいボス!!』

ーーーーー無線から聞こえる絶叫めいた金切り声で頭蓋骨が割れそうだ。ただせさえ出血多量、脳震盪、複雑骨折等々、自らの神経回路を術式に組み替えて自動発動させるタイプの『リジェネ』がなければ自然治癒不可能即刻集中治療室行きのダメージを負っているというのに。あれか?なんだかんだ別行動させたことへの腹いせなのか?とでも小言をぶちかましてやりたいのだが事実、首領の私が単独行動を取ったというのは些か迂闊だった。小言をぶちかまされるのはむしろ自分だ


リズ「ーーーーーしばらく動けないが丸一日寝れば明日には何事もなく活動できる。幸い『修復可能領域』までしか損傷を受けていない。いらん心配だよ(乱雑に敷いた布団の上に気をつけの姿勢で仰向けになり枕元に置いた無線へ頭だけ向ける。目を開けているのも億劫なのか瞼を重く閉ざしたまま投げやり気味に答える)ーーーーーー初見殺し的術の使い手だった。私が『一人』だからこそ逃げ切れたようなものだ……とにかく今は徒紀和姫が気を利かせて寄越した護衛が着いている。収穫がなさそうなら一旦此方に戻れ。ラウニ、シェンのグループにもこれを伝えろ、いいな。………切るぞ………あ”ーーー……(よっこらせと言わんばかりに寝返りを打って腕を伸ばし、一方的に無線機を切ってうつ伏せのまま脱力)」


リズ「ーーーーーー協力感謝するよ(冷やした手ぬぐいを額に当て仰向けになる。目線だけを隣に佇む人物へ向け、幾ばくかの余力こそあるが力のない掠れた声で囁いた)リンドブルム家のご令嬢……オリヴィエ殿だったか? 徒紀和姫との関係は……

オリヴィエ「(開け放された襖の前に正座し、潮風を浴びて背を向けたまま沈黙を守る。リズの問いかけに答える様子はなく眼を閉じている)

リズ「まぁ…… 君の”声色”からして徒紀和姫の事を悪くは思っていないようだ。彼女とはなんらかの面識はあるのだろう(返事を諦め目線を天井に戻し、口を閉ざしたまま静粛が流れる)ーーーーーーーそれよりなんだ、君の方こそ床につかなくていいのか(沈黙を破り異なる問いを投げかける。別段興味はないがとでも言いたげに薄ぼんやりとした微睡んだ瞼のまま)

オリヴィエ「ーーーーーーーー。(片や彼女は咄嗟に振り向いて反応を示した。目は大きく見開かれており、自分が反射的に反応したことを自覚するとやり場に困った目線を落ち着きなく右往左往させていた)

リズ「ーーーーーーー悪かったね。私はこのナリの通りおしゃべりなんだ(意地悪く口橋を釣り上げ微笑を浮かべる)部下が戻るまで時間がある。30分程仮眠を取るから……うん、そうだな……『依頼』させてくれないか。私という悪餓鬼の子守を

オリヴィエ「ーーーーーー。ーーーーーーーー 。(返答に困っているのがひしひしと顔を染める困惑の色から伺える。 やがて弱々しい意思決定が為されたのか)  コクン  (小さく頷いて見せた)

リズ「ーーーーーーー 。(そう、この娘には影がない。無垢な少女、或いは道半ばの未熟な剣士像そのものだ……だがそれに相反して私に向けていた言葉の全てが『台本有りき』の三文芝居のようだった。今は台本を手に持ってないから、自分の言葉を持っていないように見受けられる)ーーーーーーー。(ーーーーーーー瑣末なことか。何にせよこの娘のお陰で命拾いした。それだけで一つ儲けたと納得する他ないだろうさ……ーーーーーーー)





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最終更新:2021年11月26日 01:38