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大和 第二特区 通称『天宮
国営料亭『池田屋』を中心に様々な行政機関を集約
並びに、大手百貨店や鍛冶屋、極め付けは最大の経済戦力、『大和造船』本社を構える
将軍の城が構える城下町に次いで華やかに潤う
行き交う人々には笑みに溢れ各々思い思いに絢爛豪華な天宮の嗜み方について、
今日この日の過ごし方について口々に語り合っていた
『彼女ら』も当然例外ではなく……
クイント「ひょー!見てくださいよボス!OI RANですよーっ!(完全に外国人観光客テンション、出で立ちで並ぶ商店や道ゆく人々を舐め回すように見渡し奇声を発する)」
リズ「おいおい観光じゃぁーないんだよ。くれぐれも、いいかいくれぐれもハメを外すだとか、羽根を伸ばすだとか、食い倒れるとか、そんな邪な気持ちで往来で騒ぐな?私に恥をかかせないこと、いーね?はい皆さんが静かになるまで2秒かかりましたー(数刻前にブティックで買い漁った黒と紅を基調とする和洋折衷、南蛮渡来を節々に取り入れたコートを得意げにはためかせ番傘で日陰を持ち歩き、りんご飴を口にくわえてふふんと小さく鼻を鳴らす)
シェン「ボクァ突っ込まないぞぅ。こういう時のボスは機嫌が”いいママ”にさせておけばお小遣いをくれる”いいママ”なんだ。折角の花街なんだしキャバレー行きたいねキャバレー。やっぱり西洋のゴージャス美人は可愛いしボンキュッボンなのはいいんだけど気が強くていけない。もうあれ、お腹いっぱい。トラウマ( ア ロ ハ シ ャ ツ ) 」
ジゼル「ここの子供達日本人形みたいであんまりタイプじゃないのですよね。そろそろ目的地に行きませんか。あのほんと、いいんでこういうの(いつもの服装・死んだ魚の眼)それより妹様の姿が見えませんが…?」
リズ「ああ、
キャロルは『雛菊を共につけて別行動』だ。依頼ぬs……いいや、『ニタカも同行している』。腕っ節にそこそこの知識人。さしたる問題はないだろう。なーに、私も浮かれている自覚はないが今は『普段通り』でいこう。幸い此方には剣豪が二人も着いている。下手に構えているとそれはそれで謀反を疑われてしまうだろう?
クイント「雛菊さんをお供にというかお互い違いの一致の上でといった具合でしたかね。ダイキ・カイトウでしたっけ……。熊太郎と刀を取り返さないことには方やお通夜状態、方や激おこプンプンポプチンマルって感じで落ち着けそうにありませんでしたし。でもなんで二鷹さん?第一ボス、二鷹さんとずいぶん話し込んでましたけどなんの依頼だったんです?別段彼ボスのタイプじゃないっしょ?(身振り手振り、忙しなく表情仕草を動かし問いかける)」
リズ「ーーーーさてどうだかね……まあ依頼に関しては守秘義務というものがある。前金は受け取っているし、あまり私の口から一度秘した事を引っ張り出そうとすると逆に仕舞い込まれるよ(肩を竦めクイントの問いには取りつく島もなく前へ前へと、商人の手招きを無視し進んでいく)ただ一つ言えることがあるとすれば……敵の敵は味方、ということだ。海東大輝も例外ではないし……」
リズ「(ピタリと足を止め、大和本島から大きな桟橋を経て訪れた今足をつける島、天宮。その天宮より、目の前にある巨大な桟橋。東洋の『城』をそのまま超高層ビルへ作り変えたかのような岩壁の上に聳えるそれを見上げ、野心を内に潜めた妖艶な瞳を笑みで細めた)ーーーーーこれから会う人物とて例外ではあるまい?」
池田屋 正門
クイント「いやあの………。ボス?なんですかあの水上要塞。なんかいきなり上様の本願に突入といった具合の勢いですが(水上に浮かぶ巨城。要塞と呼ぶに相応しく目を凝らせば『砲門』が見て取れ迎撃体制が整っていることが伺える上、その周囲を軍艦と思しき鉄塊が旋回している。どう見ても民間が恩恵に預かれるような施設ではなく、そこへ向かう人影もない。そのようなスケールに圧倒され、がっくりと肩と顎を落とし呆然とした)」
リズ「池田屋。」
クイント「いやいや、池田『屋』じゃないが?池田城でしょあんなの? ボスこれ宿泊先間違えてますよ。漫画喫茶探しましょ漫画喫茶」
シェン「うん、ボクちゃんとしてもそれに賛成だな。お家帰りたい、前科持ちにはきついわこういうの」
ジゼル「逃がさんぞ \グワシ/(背後から音もなく忍び寄りクイントとシェンの首根っこを鷲掴みにする)」
クイント/シェン「やだぁーーーーー!!絶対こういうとこ腹黒い奴が住んでる!!ソースはうちの職場!!」
ラウニ「大和には何回か来たし存在は知ってたが、実際こうやって見るのは初めてだなあ……(眼前に聳え立つ池田屋を眺めながら)もうちょっと見取り図とか欲しかったんだけどな、従業員用の入り口とか廃棄物の処理ルートとか……こうやって正面から入るのもなぁ…抵抗があるよなあ、どうしても(大きめのバックパックを背負い、腰に隠し持った拳銃にやや不安気に手を添えながら)」
白鷺「ラウニさんにも初めての事があったんですねえ、私は小さい頃父に連れられて来たことがありますよ。あんまり中深くまでは入らせて貰えませんでしたけど……(堂々と刀を提げ、不安気なラウニを他所に我が悠然とリズに付いて歩き)」
リズ「流石に軍艦三隻浮かべてる宿泊施設とは名ばかりの要塞に斥候は難しいね。それこそ餅は餅屋に、隠密は忍者にと言った具合に雇うべきだったか。まああくまで我々は正式に老中のお墨付きで招待されたゲストだ。まかりなりともフロアマップは拝借できるだろうさ。しかしあれだ、言う割にはお前はそこの二人と違って肝が座ってるな?ラウニ(ケタケタと顎に拳を添えて品定めするように目を細め満足げに微笑む)
ラウニ「……ビビッてばっかりじゃあ、居られないでしょ…この面子で一番正面切ってやり合うってのが駄目なのが私なんだから……うまくやらないと、って事ですかね(後方のクイントとシェン、そして余裕綽々の白鷺を見やり)ボスの次に私があいつら当てにしてんだから、いや本当……マジで…(腰の拳銃から手を離し)」
リズ「シラサキ?なんでもここ大和のみならず
ケイオス城の茶っ葉を揃えてるラインだけど君粗茶はいける口かな。いけるよね、大和民そうだって母上が仰っていた(背後で主張する阿鼻叫喚は聞こえないものとし横に歩く人物に問いかけながら、池田屋へ続く大橋をお供立てない優雅な足取りで渡って行く)」
白鷺「お茶は大体何でも好きですよぉ、でも強いて言えば……(少し考えこみ)少し甘みのある種類の方が好きですね、甘い物と一緒に頂くときも、もし選べるなら其方が良いですねえ(どうという事は無い、周囲と比べて実に朗らかな口調でリズに返し)」
リズ「んー、そういうのをフーリューと言うのかな?和菓子の類はあまり詳しくなくてさ、ラウニのあれだ……友人?みたいだし、仕事以外の関係も繋いでおきたいね。いい機会だし茶会でも開くか(彼女にとっては新鮮な白鷺の一挙一動をまじまじと横目に観察しつつも、既に彼女を気に入ったのか楽しげに微笑し) ーーーーーっと……お迎えの舞妓さん……舞妓さんかあれ?(並みの三階建マンションと同等の高さはある正門に近づくと、背後に見えるそれも合間って特別小柄に見える人影が視界に入り眉をひそめる)」
白鷺「風流、といえば確かにそうかもしれませんねえ、お茶に関しては色々ありますし……私もあんまり詳しい方ではありませんよお、甘い物と一緒にゆっくり座っての~んびりお茶を飲む、そういうのが好き……というだけで………ラウニさんとは友人、まあ……そうですね…(やや含みの有る様な、引っ掛かる物が有る様な……そんな様相が一瞬現れ)友人でもあり、仕事仲間でもあり……色々と教えて頂いた事もある、そんな仲ですかね…(そう言い、元の余裕な笑みを再び浮かべながら)」
徒紀和姫「ーーーーーいなーいいなーいばぁ~~。いなーいいなーいバァ(乳母車に乗せられた子供達、おそらくは施設内にある託児所の子達をあやす濡れ羽色の長髪を腰まで伸ばした少女が見える。物言う花を体現したかのようなあり様は舞妓というにはより身分が高い印象を与え……)ーーーーおヤァ。よーやっと来よったんねぇ。ふふふ、とぉ~~っいとこから遠路遥々ご苦労様やなぁ?ん?(トントンと軽い身のこなし、赤の着物を金魚の尾のように揺らめかせリズ達の目と鼻の先まで、舞うような足取りで近付く)」
徒紀和姫「そちらのお嬢さんは池田屋初めて?ふふっ、緊張せんでえぇんよぉウチのお客さんやさかい、我が物顔でくつろいでもだぁれも文句言えへんのやから。ふふ、ふふふふっ。飴ちゃんお食べな?(玉を転がすような笑い声、容姿こそは童女だが妖艶な色を見せる笑みを浮かべ陽気に語り、ラウニにそっと飴玉を握らせようとした)」
白鷺「舞妓さんの出迎えですか?随分な歓迎ですが、独りというのも……っ!? (舞う様に傍までやってくるその女性……それが徒紀和姫だと察した瞬間、表情がやや硬くなり)……これはこれは、貴女の様な方がお出迎えに来られるとは……」
ラウニ「(徒紀和姫、その姿は知識として知っていた様で……困惑と、幾何かの照れが混じった表情で)いやいや、マジか……(話には聞いてたけど、まあ随分と可愛らしい……)あ、はは……ご丁寧にどうも(特に抵抗も出来ず、言われるがままに飴玉を握らされ)」
徒紀和姫「ふふ、ふふふふ。素直やなぁ、偉いなぁ……顔の作りも王子様みたい、素敵やわぁ(すっと何の気なしにラウニの顔を挟むようにして両手を添え頬骨のラインをなぞるようにしてするりと指を滑らせる)んー?……確か白鷺はんとこのお孫さんやったかなぁ?あーそういえば赤ん坊の頃以来やねぇべっぴんさんになったわぁ(すっと足音も立てず丁度霊が移動するかのようにして白鷺の目と鼻の先まで顔を近づけ)こーやって一回あやさせてもらったんよぉ、いなーいいなーいばーゆーてな?ふふふ(甘ったるい声を発し自身の顔の高さで両手をひらひらと振ってあやすような仕草をする)」
リズ「(私と大差のない体格、どう見てもただの童……衣服も上流階層のそれとは異なるが……だがしかし)(一礼、背筋を正して深々と頭を下げる)お初にお目にかかる。
グラナートファミリエとその党首、エリザベス・ヴァンシュタインと申します。此度は『人鬼共存協定』において仲介を担わせていただくことと相成りました。(伏した顔を上げ上目気味に様子を伺う、というよりかはその『目』を観察するようにして見開く)」
徒紀和姫「リズさん、周りのお人にはそうゆーとるんしょ?なら私もそれにならうわぁ、あんじょよろしゅぅなぁ(鏡合わせでもしたかのようにリズと同様の角度まで頭をさげ、リズと同様のタイミングで顔を上げる。その瞳には一片の曇りもなく、同様に光もない。紅色の茶受けに注いだ真水のようだった)『劉王』にお話は伺っておりますわぁ。まぁ、てきとーに与太話しておたがいなかようましょって確認し合うだけやさかい、ほんま気楽に、肩の力縫い取ってなぁ?『宗方はん』はそーいうの好かんけどな?」
ラウニ「(演技半分、素が半分といった体で少々ニヤつきながら……すっと徒紀和姫の右手にすっと両手を添え)褒めて頂いて、えっと……光栄です(照れでたじろぐ様な素振りながら、眼前の徒紀和姫を冷静に観察し)(……紛れも無くこっちの国の踊り子……芸者だっけ?の格好だが……雰囲気は確かに"血筋"を感じる、普通の人間じゃあ無い、ってのも。あと…)繊細で、綺麗な手……っと(リズ、そして彼女に合わせて頭を下げた徒紀和姫に追随する形で頭を下げながらも、視界の端に徒紀和姫を捉えたまま)名乗りが遅れて申し訳ない、ラウニ・レア・ルオデネン……エリザベス・ヴァンシュタインの付き人として、同行させて頂いております
白鷺「(眼前まで寄ってくる徒紀和姫を前に少々逡巡し)有難うございます、祖父とは……親しかった様ですね、幾度か貴女の話をしていましたよ。お会いしたのは私が物心付く前でしたか……正直、初対面だったかと……(全く記憶に無いらしく、やや申し訳なさそうに苦笑いを浮かべ) (『宗方はん』の単語に小さく反応し)……宗方忠成殿も居られるのですね、随分と我々を意識して頂いている様で……」
徒紀和姫「はぁいはい、そないかしこまらんおいてなぁほんまなーぁ。ふふふ……でも偉いねぇ、お国ここじゃないんしょ?えらいわぁ、勉強熱心やわぁ。ラウニさんに、清華ちゃんやったね。よろしゅうなぁ、うちのことは『ばぁば』って呼んどいてな?(頭を下げ上体が傾き身長差が縮まっているのをいいことに、躊躇いなくするりと両腕をラウニの脇に滑り込ませ、手を背に添えて軽く抱擁し頬ずりする)よしよし、これで『大丈夫』やねー。(程なく飛び退くようにして体を離すと、目を細ませて両手をひらひらと振り和やかに微笑んで見せた)」
徒紀和姫「…………(お次はと言いたげにさも当然のように白鷺を抱擁しようと満面の笑みで失せを広げるが、彼女の面持ちを見て一瞬動きを止め)…………。スッ……(ラウニに対して行った軽いハグとは異なる、どこか彼女を慈しむような、包み込むような所作で彼女を抱擁し頰を腕につけた)ーーーー今は、会わん方がええと思う……(耳打ちするようにして囁くと、すぐにほどなくして飛び退くようにして離れ、ラウニにしてみせたように両手をひらひらさせた)困ったことがあったらうちを頼るんよー。お爺ちゃんにはお世話になったさかいなぁ」
伊蒼「(【池田屋三階】踊り子が数人舞っても余りある広さのバルコニーから手すりに掌を添え置いて、外見恬淡寡欲に見える表情で徒紀和姫と見慣れない一同の邂逅を見下ろしていた。ただ一人、白鷺に僅かに覚えがあるのか目をしかめ小首を傾げる)(ふむ、手勢は『盧九垓』のみと考えてはいたが……。しかしかの剣聖の血筋にも関わらず、こちらの情報網にかからないなどということがあるだろうか……。徒紀和姫もそうだが、あの少女、いったい……)」
ラウニ「産まれは此処からずっと北西の雪国ですが、まあ……彼方此方飛び回る仕事ですから…ばぁばだなんてそんな……ご謙遜をっ!?(頭を下げた状態、徒紀和姫が此方に手を伸ばすのには気付いものの、そのまま動く事も出来ず、呆気に取られた様に頬擦りされ)……へ?大丈夫?」
白鷺「(抱擁と頬擦りを受けるラウニを横目に、少し驚いた様に目を見開き……その後、徒紀和姫の抱擁に一瞬身体を強張らせるも、直ぐに力を抜いて身体を預け)――今は、ですか(幾何かの含みが込め、一言だけ呟き)私も、貴女と……祖父を知る方とお会いできて嬉しいです、是非また……頼りにさせて頂きます(此方に手を振る徒紀和姫に、小さく一礼を返し) ―――(常人ならば、恐らくはお互いに向き合っていても視線を向けられている事にも気付かずとも不思議ではない距離、それだけの距離があっても尚自らに向けられる興味の視線を鋭敏に感じ取り、そっと顔を上げ……)にこっ(此方を見る伊蒼に、小さく笑顔を返す)」
リズ「ーーーーー(普段の彼女らしくなく黙したままそのやり取りを遠巻きに眺め)ーーーー徒紀和姫。 無礼を承知の上で進言させていただこう。『会合は延期した方がいい』(ただ一言、それ以上念押しする気もなくただ『告げるべくして告げた』と言わんばかりに、凛とした声でそう告げと、再び口をつぐむ)
徒紀和姫「そやっ、だいじょぉーぅぶっ(何度も、幼子に言い聞かせるようにラウニを含め、相対する面々へその言の葉を紡ぐ。軽やかに足踏み) …………(すれ違いざまリズの放った忠言に目を丸くし足を止め背越しに一瞥をやるが)………。部屋はうちのとこ使い? ばぁは住み慣れた家ばあらへんとろくに眠れへんの(扇で口元を隠しすす笑う。そうして何かを中空へ放り投げると、再び踵を返し下町の方へ駆け出してしまった)
リズ「………。(去っていく徒紀和を互いに背を向けたまま、潮風にコートをはためかせ揺れる頭髪で目元が隠れる)…………。(腕を上げて落ちてきた何か……部屋鍵を掌に収めた。彼女の姿が往来に消え入っても終ぞ言葉は返さず、息を深く吸って高くそびえる天守閣を仰ぎ見る。そこに”ある”何かを見据えるようにして)ありがたい、大部屋貸切なんだそうだぞ? また大勢でUNOでもするか(虚勢たっぷりに冗談をかますと、歩を進めおよそ大人四人は収容できそうな提灯が幾つも吊るされた城門を潜る)
ラウニ「……(丸く収まってくれりゃあ、楽なんだけどな……)(離れ際に鍵を投げ、それを受け取るリズの一幕を見)……部屋の心配はなさそうで、まあ、有難い話じゃないですか ……どうした、清華?(伊蒼へと明確に視線を返す白鷺に、やや怪訝な顔で)」
白鷺「んん……?お出迎え下さった方が徒紀和姫以外にも居ましたから、挨拶ですよ…ちょっとした、ね(何事も無かったかのように前を向き、リズに続いて門を潜る)」
伊蒼「(白鷺の視線が明確に自身を捉えたことを遅れて認識すると面食らったように目を丸くするが、すぐに落ち着き払って会釈を返す)……(立ち去る徒紀和、館内へ足を運ぶ面々の始終をみ収めると踵を返し自身もまた池田屋内部へ。彼にあてがわられた重鎮が為の一室は宴会場がくだらない面積を有し、障害物もなく延々と畳が敷き詰められている。死角を最小限に、かつ間合いに入り込まれるまでの距離を稼ぐ為であった)
伊蒼「(脇息に肘を乗せ、座卓に添え置かれた封筒を見やる。一層険しい表情をすると他に何者も存在しないからなのか眉間にしわを寄せる。封筒の周囲には『烏』の羽が数枚散らばっていたからだ)ーーーー(それをおもむろに手に取り、封を手短にあったペーパーナイフで几帳面にきる。取り出したるはコピー用紙に活字を印刷しただけの、老中に送るには相応しくはない簡易的なもの)」
『ーーーーかの帝国より刺客の気あり。用心されたし。』
ギャァッ… ギャァッ… (鴉の音が凶兆の報せを奏でた。伊蒼がその方角へ背越しに一瞥をやると、雲ひとつない晴天に黒羽が舞い散る)
伊蒼「(『送り主』に見当はついているのか、さも予定調和であったことのように安堵し肩を竦めると、腰を上げ自身に宛行わられた大部屋を出る)
池田屋の本館の内装は特殊な術式が張り巡らされた複雑怪奇な迷宮だ
中枢には上層階から下層まで通ずる吹き抜けが存在する
それを囲む客間の並びはまた不規則で、それぞれに特色を持ち合わせている
共通しているのは吹き抜けに向かって縁側があり、客間同士吹き抜けを貸して互いを視認できるということだ
それこそ声を張り上げれば対話が通ずるほどに
廊下・通路という概念は存在するが、不規則な道筋であるがゆえに『3.5階』といった階層が存在しており……
【1F ロビー】
自立型絡繰「ーーーー カラカラ 何方まで向かわれますか カラカラ
リズ「何これ、こわ……(ドン引き)」
ラウニ「いやこれもうちょっと普通の館内を想像してたんだけどなにこれ?こんなに入り組んでる……というか吹き抜けが、これ、筒抜け…(銃ちゃんと用意して良かった……いやマジ…) いやこれ…何?ペ〇パー君の大和風カスタムって奴…?超動くんだけど…(自立型絡繰に引きながらも、やや興味深そうにそれを眺め)」
白鷺「どこから撃たれるか分かったものじゃあありませんねえ、でもこれ多分何らかの術式で組まれた地形ですし……気にしても仕方ないでしょう(あくまで飄々と館内を歩き)…ああ、これは自立式の絡繰ですよ、普通に言う事聞いてれば大丈夫だったと思いますよ」
道乾「ーーーー何かあれば部屋の配置が変わるんだよこの屋敷。念入りに間取りを調べても不逞の輩が潜ればこれを入れ替え気付けば復路孤児というわけ、すごいだろう?(音もなく、あえて濁音を足すならば『ぬらり』と言わんばかりに、過度に人懐っこい純粋無垢な微笑みを浮かべた青年がラウニの横から顔を覗かせる)さぁさどうぞ寛いでってくれ、俺は嬉しいよ。異国からわざわざこんなに見目麗しいお嬢さん方一行g」
リズ「……(思わず二度見)……。 ゾ ッ うわぁぁぁーーーーー!!(気色悪い、その一言に尽きた。その笑み、所作、全てがリズにとって生理的に受け付けないの際たるものだったのかそれを視界に入れるや否やラウニの服の襟を引っ張りハエたたきを青年へ振りかぶろうとする)
<ギャァー
<ウワァー (別段何も感じ入ることはなかったが、リズの悲鳴自体に恐怖したクイントとシェンの絶叫が児玉する)
ラウニ「(横から唐突に表れた青年―――道乾に面を食らい、腰に手を伸ばすが思い止まり)うわっ、吃驚した………まあ、確かに……見取り図も何もあったもんじゃねえな、密室も抜け道も思いのままに、って所か?(まるで気付かなかった……ったく嫌になってくる……まあそれはそれとして、私はともかく絵に描いたような"ボスが絶対無理そうな奴”だn)ボスゥ!?(リズに引っ張られるがままに転倒しかけながら寄せられ)」
白鷺「(陰陽道の類でしょうか…?)(ニヤニヤとリズ達の一幕を眺めながら)」
道乾「酷いじゃないか(猫なで声で短くそう返すと粘着質な笑みを浮かべたまま閉じた扇を顎に添える様に立てて虫取り網を難なく受け止める)そーそ、抜け道ね!掛け軸の裏から緊急脱出とか男の子好きそうだよねぇNINJAとかなんとか。奥の手と言ってはあれだけど天高く飛ぶ『えれべぇたぁ』は将軍様のお気に入りだねぇ。ああ、ちなみにねこの『部屋』だけど(ねっとりとまくし立てる様に話す傍ら、リズが受け取ったものと全く同一、否リズの所有していた徒紀和姫から渡された鍵を指でつまんで顔の高さまで上げる)ロビーを真っ直ぐ行くと紫の戸が特徴のエレベーターがあるんだけど、部屋番号入力するとこあるからね。そこに『1682』と入れれば着くからね。ああ、間違っても『3569』と入れてはいけないよ。こわーいお爺さんが迎え側に居合入れてくるからね。それじゃーまたね(終始マイペースにまくし立てると、リズへ部屋鍵を投げ渡し袖を引きずって何処かへ続く暗がりへ足を運んで行った)
リズ「 ベシ カランカラン(投げ渡された鍵を受け取らず条件反射的に猫手ではたき落す)フーッッッッ(ラウニの背中に張り付いたまま終始姿が見えなくなるまで威嚇していた)
【 ??階層 特等室 】
生理的に無理に該当する青年の手引き通りのルートを辿ると、エレベーターの扉はそのまま客室へつながっていた
曰く、将軍や将軍関係者、例えば老中が招待した要人に充てがわれる詳細を公にされていない特等室らしい
開け放された襖から覗くバルコニーから見える夜景は、月が思いの外近く潮の香りが薄い
高い階層に到着しているのだろう
大広間はただただ広く、団体客なので人数を超える数の個室も充てがわれている
露天風呂はバルコニーにも存在し、海を見下ろしながら入浴を楽しめる
当然、飲料が完備された冷蔵庫とマッサージチェアも付属される
リズ「ーーーーーやれやれ、初日から私の心臓は剥き出しのまま馬車のエコノミークラスに放り込まれた挙句切り立った岩山を登るかのように疲労困憊を極めているぞ……(既にこういった高待遇には耐性があるのか、見向きもせず適当な座敷机に腕を枕にして突っ伏した)」
ジゼル「話には聞いていましたが文化といい重鎮といい独自の色が強いですね……大和は……(慣れない環境、文化間のギャップに僅かなりとも疲労を感じているのからしくなく心なしかやつれ気味に目を伏せ肩を落とす)本島のレサーティアとは完全に別国でしょう」
白鷺「この国……大和一帯は文化も政治も他所とは全く違うみたいですからねえ、私も初めて外に出た時は吃驚しましたし……とは言えあんな風な出迎えも、この空間も少しだけ困惑というか、驚きがありますねえ……(刀を鞘のまま足元に置き、ラウニの物であろう厚手のコートを掛布団替わりに被り、リラックスした体勢で部屋内を見回しながら)」
ラウニ「お前そんな寒いか…?此処……?まあでも疲れんだよなあ、本当に……既に私ら異国で滅茶苦茶な目に遭っちまってる訳だし(背負っていたバックパックを近くの壁に立て掛け、大型拳銃が収められたホルスターを腰から外して傍らに置きながら)」
白鷺「結構歩いたじゃないですか……ご存知の通り体力が無いので暖かくしてゆっくり休んでるんです、後でお風呂入って寝ます」
ラウニ「いや、知ってたけどお前…まあいいや、ちゃんと薬飲んどけよ。
リズ「水の国は母上とよく訪れたが、大和には近寄らなかったからな。間接的な接触も近海を彷徨く瑠璃と殴り合った程度で、なぜ接点もない上片方とは敵同士の我々が今の役目を担っているのか皆目見当もつかない。そも……」
リズ「これは瑠璃側……劉王ではなく、『徒紀和姫』の図らいだろうさ。仲介人など元より必要ではないのだ。(軟体化していた上体を持ち上げ一瞥をやると、事実を再確認するような重みのある声色で尋ねる)そうだろう、シェン。その辺はお前の方が詳しいんじゃないか」
シェン「そん時は僕ぁ下っ端だったからねぇ……オジキともろくに話せてもらえなかったし。(いつもの調子で茶化すように八の字眉で肩をひそめたが、一呼吸おくと頬杖を突き、ここにあらぬかつての組織の情景を想起し、見据えるように目を細め)まあでも概ねボスの推察の通りじゃない?オジキ……劉王にそもこんな大それた会合の場を開く権限はないのよ。海賊時代の経験を買われたのかなんなのか、『大和造船』とかいう、実は『あってもなくてもいい』大手企業のお守りを任されることで一族がやらかした前科を超法規的に無視。まあ要は、白鬼という種族自体がこの国では飼い殺しされているような門だから……何を今更『人鬼共存協定』なんぞ結ぶ必要があるのか」
シェン「オジキが言うところの『足洗う』ってーのはつまるとこ、大人しく任された造船業やってれば済む話だし、今更身を危うくしてませこんなことする必要ないわけ。あえて、あえて将軍様に睨まれそうな一大行事やらかそうなんざおかしな話なのよ」
クイント「では、それこそ徒紀和姫がそんなゴリラゴリラゴリラ属に同情してそろそろ楽にしたろやゆうたんと違いますん?(洗面台からちゃっかりタオルを頭に巻いた浴衣と湯気を纏った姿で現れ挙手し)あの人掴み所はないけど悪い人には……」
リズ「(徒紀和姫とのファーストコンタクトを思い浮かべそれはないと断言するように首を横に振る。眉間にシワ、既に困惑しているように見える)あれは腹を掻っ捌いても本音を引きずり出せんような切れ者だよ。利益なしに面倒毎はするまいて。ただ、彼女で言うところの『利益』の尺度がなんなのかと言うところが怪しいのだが」
シェン「そも徒紀和姫は一応大和の市場を管理する役目を担っているんだ。その気になれば会合というよりかは鶴の一声で『許してやるよ、明日からシャバで好きにしな』って突き放せばいい
シェン「そうしても徒紀和姫はにデメリットはない。大和造船は
政府軍に軍艦を提供しているからという理由で国家予算こそ積まれてるけれど、実質収益は大してあげていない。国家予算の投資額でプラマイすると国としては赤字もいいところだそれこそさっさと解雇して、白鬼の人権を認めて手放すか……或いはモノホンの首をちょん切って処分する方が遥かに得だ」
リズ「つまり、圧倒的に主導権を担っているのは徒紀和姫だ。ともすればこれは平等な『会合』なんぞではない」
リズ「なんらかの『極秘裏』に行われる取引。しかも、事実上
バスカヴィルからのお尋ね者であると知った上で我々を招き入れてのことだ。こうなってくると我々がやらされる仕事は想像に容易い(とっくにこの結論に至っていたのか『覚悟』を既に決めた面々で一同をぐるりと見据える)」
ラウニ「……連中も一枚岩じゃあないって事か……そこのゴリ…シェンの説明で鬼の皆さんの立ち位置や勢力図は多少分かったが、"徒紀和姫"がまあ…曲者だよなあ、現状本当に掌の上だ。私らグラナートはかなり厳しいぜ、どう状況が動くにしろ、多分…絶対に厄介事の渦中から逃げられねえ」
シェン「………。」
ジゼル「………。」
クイント「え、なになに?これ何が始まるんです?」
リズ「こうなってくるとあのゴキブリ陰陽道がやらかした空間掌握術式が厄介だ。しかしやれることは最低限こなしておいた方がいいだろう。各員、通信端末を携帯し館内を気のみ気の向くまま『探索』して欲しい。部屋数、宿泊客、施設等……可能な限り情報を収集しヤマに備える」
ラウニ「……ボスの言う通りだ、今私達が取れる手段は少ないが、まず情報を少しでも掻き集めて状況を少しでも良い方に回そう。そんでボスの案の上から提案だが、最低二人ずつでも固まって動くべきだ。網の目は広くなっちまうが、孤立しちまって数減らされちまうのは最悪だと思うぜ。っつー訳だ清華、起きて準備しとけ。別にそのコートそのまんまでも構わねえから」
リズ「そうだな。とはいえ事が起こる前に此方に不足な事態があればあまりに割りに合わない。ラウニの提案通り最低二人以上で行動、タイミングが合えば都度合流しこまめに帰還。この大部屋に限らず出張所への帰投も視野に入れて行動しよう。連絡が取れなくなったならば迷わずレサーティア本島の出張所へ一度連絡を入れ、それでも不通な場合……(おもむろにタブレット端末を卓上へ広げ、世界地図を表示。ある一点を指差す)」
リズ「ーーーー各自の判断によって『火の国』への密航をする事。『
G.A.T.E』職員に『ジギー・ハボック』という古い知り合いがいる。彼に私の名を出せば面倒は見てくれる。 いいか、くれぐれも『いのちだいじ』にだ。この場における命は何をおいても己の身を最優先とする。私に何があったとしても捨て置け。まあ支持されるまでもなく捨てるだろうが(ケタケタとそれを是と肯定するように笑いながら)」
クイント「ウンウン超捨てる……。ごめん本当です、超捨てますよ私(風切り音を立てて首をブンブンとふり)」
シェン「あ……ーボス?(ゆっくりと申し訳なさげに挙手し)その話なんだが俺は単独行動を許してくんない?(手を頭に回し頭をくしゃくしゃとかきながら切り出した)」
リズ「いや無理、フツーにダメ(すかさず切り捨てるように返すが、間を置いて八字眉で苦笑し) なんていうのは冗談だ。お前が流れをぶった切ってノーを提言する時は大概意味があるんだろ」
シェン「いやなに、ただの里帰りだよ。オジキと俺は『ただの構成員と首領』って関係じゃーない。俺単身なら何か聞き出せるかもわかんないっしょ」
リズ「……。フスー(不満げながらも仕方ないと言いたげに重い溜息を吐き方をがっくりと落とす)介護には気をつけろよ。『あれ』な……私の買いかぶりだった。下手に突けば噛み付いてくるような寝付きの悪い狸ジジイと見た」
シェン「そう言ってくれるなよ。血は繋がってないとはいえ元オヤジなんだよ?」
リズ「……よし。スミカ、ラウニは同伴で行動。特に、彼女はこの大和でも多少顔が効くからラウニはスミカから離れないように注意してくれ。ジゼルはクイントと館外の警備を装い外部から可能なか限り情報を集める」
ラウニ「了解、二人って事で私と白鷺はちょい建物の把握と他の面子の確認に入るとして……あー……火の国なぁ、まあ…切羽詰まった逃げ場にするのに悪くはねえだろうが、なあ……
(実にバツが悪そうな、眉間にしわを寄せた表情で苦々し気に、どこか遠くに目が行き)
あの辺りは色々厄介事で一杯だし、本当に”ヤバい時”向けって感じだな。……あーあと、何より、もし私の知り合いが居ても知らんふりしててくれると助かる」
白鷺「あぁー……あの人、本当に生きてたら居そうではありますけど、どうでしょうねぇ……(あたかも心当たりがある様にラウニに反応するが、此方は何処か冷めた様な表情で)
多少はまあ、顔も聞くでしょうし地理もありますが……とはいえ、余り当てにされてもアレですし、瑠璃はあんまり知りませんけど、そっちは……えぇっと、ゴリラさんでしたっけ……えっと、ラウニさん?(シェンの方を見ながら)」
ラウニ「あのゴリラはシェンって名前が付いてるから覚えとけ。まあとりあえず……行くとするよ(バックパックから小型のサブマシンガンと弾倉を取り出し、ジャケット内側のホルダーに挿し込み、もう一丁……大型の拳銃を取り出し)
ボス、御守り代わりに持っといてくれ、これ。旧型の『モザンビーク』、そんで特別仕様……"対魔力加工"済みの散弾が装填された拳銃だ。装弾数は5発。バラまけるタイプだからとりあえずでも当てられるし、魔力の抵抗も余程でもない限り抜ける
音もデカいし、今のあんたにゃデカいのより多分こっちが合ってる。私たちが駆けつける時間も稼げるだろうしな(大型の拳銃…『モザンビーク』と呼ばれたソレを軽くリズに放り)」
白鷺「ああ、シェンさん…!ごめんなさい、お名前ちゃんと覚えておきます、ラウニさんゴリラとしか言わなかったから……(流石に申し訳なさそうにシェンに)応援してますから……(刀を手に持ち、もう片手で雑に薬を口に放り込みながら)」
ラウニ「っつー訳で、まあ、行ってくる。もし私達から30分連絡が無かったらもうその時点で次の行動に移ってくれ……あっあとジゼルとクイント、二人とは細かく連絡する事になると思うから一応そのつもりで頼む
(白鷺に手招きし、そのまま軽く部屋の面々に手を振りながら部屋を出る)」
白鷺「それじゃあ、お互い元気な姿でまた皆で会いましょう……行って来ます(ラウニに続き、どこか覚束なげな足取りで部屋を出る)」
――――館内、3F(?)中枢部―――
大広間からエレベーターを抜け、低階層に行こうとした所……"それが当然"かの様に、やはりエレベーターの扉はそのまま3階に相当する階の中枢へと繋がっていた。
下層から上層までの吹き抜けには縁側が設けられ、不規則に客間の扉が並んでいる……
ラウニ「(白鷺の前を歩き、周囲を見回しつつ壁伝いに縁側を歩きながら)……しかし、だ。そこそこ歩いたが……時間もアレなのかな、人とも出くわさないし、やっぱり方向も分かり辛いし、結局向こうの術師の支配下っぽいしなあ……」
白鷺「いきなり撃たれたりする事が無い辺り、一応弁えては頂けているのか、単に出くわしていないだけなのか……あっ、ちょっとラウニさん、あれやりましょうアレ、前やってた奴
(軽い足取りでラウニを追い越し、ラウニの丁度右側45度程前方に立ち、左手で軽くラウニの手を取り)今ちょっと視線を感じました、どこかから見られてますねぇ」
ラウニ「たまたまだろうが客は見えねえとは言え、一応客人の立場だからな私ら。この段階で手を出すってのも警戒し過ぎるのも焦り過ぎ……ああ、いや…"この段階"だからか……
(前に出た白鷺に手を取られ、白鷺の斜め後ろ……白鷺の刀の鞘が当たる程近くに寄りながら歩き)懐かしいな、この体制」
白鷺「私もあの頃からちょっと変わりましたけど、何かあっても邪魔にならないのがその立ち位置なのは今も同じですよ……っとぉ、警戒させちゃいましたね。来ますよ」
ラウニ「早いな―――」
―――ラウニが返事をした直後、白鷺とラウニの後方と、僅かに遅れて真上から二名ずつ短刀を構えた黒ずくめの男が現れ、ラウニ達に振り下ろそうとした瞬間…
……常人には反応すら難しいであろう速度の、白鷺の"鞘"での一閃で頭上の二人と後方の一人が文字通り吹き飛ばされ、残った一人も怯まずに短刀をラウニに振り下ろす、が…
ラウニ「雑魚だな、こいつら……いやまあ、有難いのは有難いんだが(瞬時に左手でナイフを抜き、難なく短刀を受け流し、同時に右の袖に仕込んでいたトンファー状の武器で男の腹部を突き、トンファーに仕込まれた機構で高圧電流を流す)」
黒ずくめの男A「ごぉ゛お゛っ……!!(抵抗する間も無く電流を流され、力なく崩れ落ちる)」
白鷺「……いや、その人はともかく上の二人は多分それなりの腕だったと思いますよ。今の今まで気付きませんでしたし、攻撃も割と速かったですし(鞘に付着した血液を一振りで払い、吹き飛ばした三人……
一人は文字通り頭が割れ、血溜まりの中でぴくりとも動かず、一人は胴体が異常な角度で折れ曲がり、ガクガクと痙攣している。残った一人もやはり異常な方向に折れた腕で折れた短刀を握りながら、視認できるほど凹んだ脇腹をもう片方の手で抑え、倒れたまま動けないでいる)」
白鷺「軽く向こうの戦力を測るつもりで、汚すつもりは無かったんですけどね……まさか一人は頭に綺麗に直撃するとは思わなくて…多分後ろの二人は本当に大したこと無くて、本命は上の二人……まだ元気そうなあの人とかだったと思いますよ(脇腹を抑えている一人を指差し)」
ラウニ「マジだったらお前鞘で"斬れる"もんな……(軽く引きながらも、久しぶりに見た、という風に慣れた様な口ぶりで)まあ、仕掛けて来たのは向こうだ。一応外の連中に連絡入れて、
とりあえず……そうだな、こいつらの身元なり調べるか、人が来ない内に(白鷺が指差した男に歩み寄り……男に一発蹴りを入れ、トンファー状の武器を男の腹部に当てて高圧電流を流す)」
黒ずくめの男B「きさ、まがあ゛っ゛……!(近付いて来たラウニに左手で何らかの抵抗を試みるが、ラウニの蹴りが胴体に当たり、鞘での攻撃による負傷に響いたか動きを止められ、直後に腹部に電流を流され、悲鳴を上げたあと動かなくなる)」
白鷺「最悪しらばっくれて無関係の人を装えば良いって事ですか……?確かに連れ帰るのは手間でしょうけど」
ラウニ「まあそういう事だ、情報が欲しいのは本当だし……っと、ほら脱げ(ナイフで男の服を裂き、手慣れた手つきで身ぐるみを剥ぎに掛かる)」
白鷺達が黒づくめの内一人から物品を回収し始めた頃だった。彼女らの注意が一点に向かう時を伺って居たかのように、一振りの『打刀』が、彼女らの背後に転がる黒づくめの男の背に突き刺さった。
ゾヌ”ヌ” カラン!! ヌ”ヌ” カラン ヌ”ヌ”ヌ”ヌ” カラン……… カラ ン !!
どぶ沼を何かが抉るような何とも形容しがたい異音が、周囲に漂い始める黒い瘴気と共に池田屋中へ響き渡り、それに呼応して所々に吊るされた照明がけたたましい悲鳴をあげて揺れている 」
ゾル……(血溜まりが気化した。水面に垂らした墨汁が如く黒々としたそれは、渦を巻いて『人型』を形成した) 」
月虹「 キ ン (一剣士なら聞き間違える筈もない、鯉口を切る音が凛と、白鷺の背後から耳に届いた。響きの根源は、先に死闘を演じ床板に伏した屍の上に佇んでいる。重力を感じさせず不自然に揺らめく、獣の体毛が如き黒装束を身に纏い、赤の三度笠に顔を覆う。邪気を纏った抜き身の刀を握る腕をだらりと垂らし、殺気こそ感じさせないが確かに、白鷺の姿をあるかもわからない眼に収めていた) 」
白鷺「(背後から飛来し、形を成した"何か"を察知し、そっと傍らに携えた刀の柄に手を添えながら)……ラウニさん、"甲"です。あっこれ私たちのいつもの符丁ですから、アレ、使ってた奴です、お願いしますね(何事も無いかの様な飄々とした軽い口調とは裏腹に、ほんの僅かな殺気を滲ませて) 」
ラウニ「了解、後でまた会おうぜ(それだけ言い残し、先程まで身包みを剥がしていた男に軽く蹴りを入れると……白鷺の視界から離れないルートで、脇目も振らず猛ダッシュでその場から逃走を図った) 」
月虹「カ…… ラサ”キ” ス”ミ”……カ……シラ””…スミ”カ——————『白鷺 清華』(口もないというのにそれはノイズ混じりの音声めいた、辿々しい声を発する。声質は鮮明になり、ハッキリとした抑揚のある発音で相対する者の名を呼び、 深紅染めの刃を返す。抜き身の凶刃は瓢箪の照明を浴びて地平に沈む陽の如く怪しく光を放っていた) 」
月虹「ス——————(左手を三度傘に添え、素顔を隠すようにしてそれを取り払う。顔が晒されると、そこには『翁面』がしわくちゃな笑みを浮かべていた。何処か、実在する老人のような妙な既視感を漂わせた)——————神速の居合、貰い受ける(その場で半月の軌跡を描き下段へ刃を振るう。一尺置いて床板に複数の切れ込みが走り、白鷺、月虹の両者を立たせていた渡り廊下が解体され、重力に従い吹き抜けへ向かって落下し始めた) 」
――――VS 【 自律型変体刀 魔剣月虹 】――――
BGM:Strength And Discipline OST (Extended) [HQ] - Sekiro: Shadows Die Twice
白鷺「(逃げるラウニさん相手に手は出さない……となると、成程、狙いは私ですか)名前までご存じなんですね、有名になったみたいで嬉しいです(ラウニが遠く離れたのを確認し、背後の月虹に向かって振り返り)(真紅の刃……恐らく尋常の鋼の刃ではないんですかね、それと……)……翁、ですか。良いですよ、私の居合くらいくれてあげても。お代として私は貴方から……何を受け取りましょうかね(足場が切り裂かれ、落下しているのにも何ら動じず……そっと刀の柄に手を添えたままの体勢で、月虹の動作を只眺めている) 」
月虹「(落下の風圧で一つ結びにした赤髪が翻る。浮遊感に晒される中沈黙を守り)………… トンッ (言葉は返さず無形の位で答える。これもまた既視感のある佇まいを見せ、緩やかな運脚で接近しつつ背を見せるようにして半回転 → 再び半円を描き遠心力の乗った真一文字の振り抜きで白鷺の胴を切断しにかかる) 」
白鷺「(異様な翁の貌、そしてあの堂に入った"無形"……そしてこの足運び……)……っとぉ(ただ柄に手を添えて立っていた、その体制から僅かに上体を逸らしつつ、一瞬の抜刀を以て月虹から放たれた真一文字の斬撃を"弾く"様に上方へ逸らし、返す刀で月虹を頭上から唐竹の様に叩き斬る……と見せ掛け、月虹の鳩尾目掛け、"気"を込めた右足で細い体からは想像も付かないであろう、普通の人間ならば致命打になり得る威力の右前蹴りを放つ)嫌ですね、心当たりのない人から既視感のある太刀筋が飛んでくるのは 」
月虹「(攻撃の軌道を逸らされた刀に引っ張られ腕が天井の方向へ向く。火の構えからして頭上より降りかかる唐竹割りと予測し、これを状態を捻ることで回避しようとするが、白鷺の思惑通り月虹読みは当たり前足が鳩尾へ————) グ ジョ ル (————入った。それこそ泥濘へ片足を突っ込むような気味の悪い感触が白鷺へ帰り、蹴りが命中した部位では衣類に黒々とした半液状の何かが染みのように広がっている) 」
月虹「————ン”ン”ラ”ァ”ァ”ッッッ!!!!!(老若男女様々な声質が混じった複合音声による非人間染みたお雄叫びを上げ、左手に黒霧を収束し鞘を生成 → 蹴り飛ばされる間際にそれを逆手持ちにしアッパー気味に白鷺の鳩尾向かって振り上げ → 蹴り飛ばされ、吹きぬけ中枢にある渡り廊下の上に降り立ち、迎撃に向け身構える) 」
白鷺「(足を引き抜いて後方に飛び退きながら、振り上げた刀で月虹の鞘を持つ手へと刀を振り下ろし、文字通り"切り下がる")うわっ汚っ……つい癖で型を…(袴と足袋に染みの付いた部分を刀で手早く切り裂き、足を払って吹き飛ばし)……分かってはいましたが、やっぱり人間の身体じゃないですね。八つ裂きが妥当でしょうか(刀を鞘に納め……今度は腰を落とし、右足を後方に流し、月虹と正対しながらも目は閉じ……深く、長く呼吸をすると共に、全身に"気"を漲らせ、明確に殺意を感じさせる構えを取る) 」
月虹「 ボドッッ (遅れて背後に切断された腕が鞘毎落ちる。それには一瞥をやらず、輪切りにされた腕を斜めに振り払って骨を生やし、肉付けし、黒い皮膚で覆うのサイクルを刹那的に終え腕を再生した)—————。ヒュ……コ ヒュ……(”呼吸が変わった”。構えを取る白鷺へ安易に仕掛けず見合ったまま微動だにしない、しかし明確に呼吸法に変化が生じている。”冷気”である、翁面の隙間から冷気が僅かに生じ、月虹の周囲には烏羽が漂っていた。腰を落とし、上体を捻って背越しに相対す白鷺を睨んだまま居合抜きの構えを取る) 」
白鷺「(あの再生力と"冷気"……長引けば体力差でまあ確実に私がぶっ倒れるでしょうね、となれば……手早く、やってみましょうか)――薄雲流、燕穿(月虹に向かって軽く跳び、明らかに刀の"届かない"間合いで刀を抜き放ち……"気"によって形成された"刃を刀から延ばし"、身体毎回転させての超高速の三連撃で足場諸共に月虹を切り裂きに掛かる) 」
月虹「(初動を見逃さず『烏羽の蝶』を舞わし、同じく間合いの外から白鷺のそれに劣るも素早い居合抜き。扇状に展開された冷気を纏う斬撃は一瞬で『氷柱の壁』を発生させる) 」
パキィ ——————┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨(骨身を震わせる轟音が池田屋全体へ響き渡る。超高速の三連撃は一瞬で立ちふさがった氷の結界を細切れにし、凍結した渡り廊下ごと崩した。さながら瓦礫と氷片の滝が如く吹きぬけへ落ちゆく残骸の中には月虹の物と思しき『肉片』『半壊した翁面』が存在したが……) 」
月虹「(砕け落ち四散する氷片に紛れ、白鷺から見て左手側に奴の姿が映り込む。右足を欠損し、脇腹が大きく鋭利に抉れ、辛うじて背骨で胴体を繋いでいるに過ぎないがそれでも御構い無しに)——————キィ ィ イ イ イ ッッ(砕けた翁面の奥から苦悶に血走った眼球を見開き、未熟、未完成、しかし『白鷺の物』を模倣しようと試みた居合抜きを放とうとする。明らかな『悪手』、しかしその『模倣そのもの』に対する執念が滲み出ていた) 」
白鷺「烏……—いや、蝶—(一瞬、烏羽の蝶に微かに気を取られ、崩れる渡り廊下と共に落下しながらも尚視界の端に翁面と肉片は捉え続け) ――浅い、遅い。パク…模倣自体は私も散々やるので、その執念も素敵だとは思いますが……(刀とは別の手で逆手に持った"鞘"による突き上げるような高速の殴打で、居合抜きを弾くと共に翁面を更に細かく砕きに掛かる)―まあ、居合じゃ、多分私には勝てませんよ 」
月虹「—————— (居合を無効化され翁面に鞘の先端が触れる刹那、海中を漂っているかのように時の流れが緩やかに感ぜられた。砂塵の一粒一粒が細かく見分けられるように錯覚したその刹那、確かに月虹の眼は『虚無』に染まり) ベギッッ ゴッ メギ グチ”ィ” (グロテスクな異音が文字通り脳髄に反響した。翁面ごと脆い頭蓋は正面から粉砕され意識が吹っ飛ぶ)—————。———————————(だがどういう訳か、黒いだけの顔面の中で唯一顔のパーツを形成していた口は『笑って』いた) 」
渡り廊下の残骸が最下層へ降り注ぐ寸前、月虹の姿が瓦礫の雨に飲まれ、暗がりへ消えた。足場だったものがロビーに激突すると爆炎めいた砂塵が膨張する。幸い上での戦闘から異常を察知した絡繰達がロビーに居た宿泊客達を誘導して居たことで被害は最小に抑えられていた。 」
白鷺「……(鞘での殴打による、確かな"潰した"感触、確かに視界に捉えた"笑み"…異様な感覚を覚えながらも、刀身を静かに鞘に納め)出し惜しみせず、しんどい技も使っていかないと不味い状況かもしれませんね、身体が持ってくれると良いんですけど…っと!(ロビーに激突する瞬間、お手本の様に綺麗な回転受け身で着地し、砂埃の中から現れ……)ゲッホ!!ゲホ!!ゲホッ!!!!オエッ(砂埃を随分と吸い込んだらしく、盛大に咳き込む) 」
気配は確かにそこにある。積み上がる瓦礫、舞う砂塵、暗がりという暗がりの影に潜み様子を伺っているのかただ気配だけが存在し沈黙していた。しかし———— 」
コ ツ コッ コッ コッ コッ ッ …… (床板を荒く蹴る靴音が遠ざかり小さくなる。漂っていた邪気も消失し、月虹は確かに『敗走』した) 」
白鷺「ゲホッ……ゲホゴホッ……(着物で口を押え、早歩きで砂煙から逃れ)気配の残滓が消えた……というよりこれは……あー……今は考えない様にしましょう、ラウニさん来ないかな……しんどい…(砂埃の及ばない場所まで歩いたのち、その場にへたり込む) 」
最終更新:2021年11月26日 01:37