ボウッ
光姫の眼が黒く染まって、炎が出る……なんだ、こりゃあ!?
ゾクッ――
驚愕と同時にとんでもねぇ殺気を感じる……これが本気……!?
「その通りだ、これを見られることを光栄に思うがいい!!」
「この瞳と、この刃の輝き!貴様の脳裏に刻みつけろ!!」
刀が黒く染まる、かと思いきや刀にも光姫の眼と同じ炎が灯る
化け物だ……そう思うに相応しい力を感じた
その姿に、とんでもない強さを感じさせるその姿に、しばし俺は見惚れていた…気付けば後方にあった俺の斧がドロドロに溶かされている
「これが私の死の眼……気付かなかっただろうが、幻惑の眼と言う物も使っていたんだ。どうやら君には効かないようで面食らったがね」
「……何を呆けている?せっかく私が昂っているんだ、小細工も無用!楽しませてくれ!!」
「う………おおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!
正気に戻ってその場から飛び退き、服の中からガトリングガンを取り出し、光姫に向けて全弾発射する……
が、全て刀で弾かれる。弾かれた弾丸は…溶けたのか?跡形もない
「あぁぁああぁああぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
無我夢中で突っ込み斧を振り回す
「その程度ではないだろう!キミは、まだまだ強くなるはずだ!」
斧を簡単に弾かれ、ガラ空きになった身体に光姫の拳が入る
俺の身体は吹っ飛び、建物に激突する
「がぁっ……!」
「まだまだ、だ」
俺の服が光姫の刀に引っかけられ、持ち上げられる。熱ぃ、地獄の焔って奴はこういう熱さなんだろうか。それほどに熱ぃ
そのまま放り投げられ、どてっ腹に蹴りを入れられて上へ吹っ飛ぶ。骨の折れる音。痛ぇ
真上に吹っ飛んだ先に何故か既に光姫が居る。上からぶん殴られて地面へ急降下する。脳が揺れる感覚。痛ぇ
殴られた勢いで急降下する俺の真下に、既に光姫が居る。拳を腹に入れられる。内臓を持っていかれたか?溢れ出る血の味。痛ぇ
痛ぇが―――――この世の何よりも、楽しいと感じた
その瞬間、俺の意識はどっかに飛んで行った
「やはり光姫様のお力は凄まじい……!味方であるはずの我々でさえ、気圧されるほどの迫力だ……!」
「光姫様の眼には、見えないものなど無い……!」
「紅蓮の力量もかなりのものな筈だが、やはり光姫様には及ばなかったようだな……」
「さすがは……あの若さで神殺しの異名を持つお方だ」
「視えない武器にも食らい付き、弾も気配りだけで的確に弾く!」
「暗闇の中でも関係無い、瞬時に判断して的確な剣技!」
「どこまで高まるのか、あの強さ…!まるで宇宙の様な深淵、そして無限……!!」
「「驚くべき天才、神殺しの剣!」」
「「まさしく、神殺しの剣!!」」
「フッ……この程度だったか?さすがにここまで力を使う必要は無かったようだな」
真上に突き上げた拳を降ろす。と同時に突き上げられた対象である男……紅蓮もドサリと音を立てて落ちる
「中々楽しませてくれたよ…さて、約束を果たさせて貰おうか……」
崩れ落ちた紅蓮を拾い上げようとしたその時……確かな殺気を感じ、紅蓮から飛び退く
と同時に、紅蓮がのそりと起き上がる。おかしい……致命傷だと思ったんだが……
「ック………ッハッハッハッハッハ…………ハァーッハッハッハッハッハッハッハ!!」
とんでもない大声で高笑いを始める、気でも狂ったか……!?
……む?……気のせいか、ぼんやりと、紅蓮の顔に……緑に光る、紋の様なものが浮かび上がっている……
「おぉおおおおぉぉおぉおおおおおおおおおおあああぁあぁあぁぁぁぁぁぁぁ!!」
絶叫を発し、紅蓮が私に向かって突っ込んでくる……先刻よりも速い、が……大した差じゃない
「はぁっ!!」
紅蓮の拳を刀の峰でかち上げ、腹部に蹴りを入れる。吹っ飛ぶ紅蓮……なんだ、気合いで立ち上がっただけか……?
「ハッハッハッハッハッハッハ!!ヒャァァァァァァァァッハッハッハッハッハッハッハァァァァァ!!」
狂喜の声を上げてまたしても突っ込んでくる……!馬鹿な、身体は限界の筈……!!
「くっ……!!」
同じように紅蓮の拳をいなし、反撃する……また突っ込んでくる、そしてそれを返り討ちにする……
……何回続けただろうか、既に限界を迎えている筈の紅蓮は何も変わりなく突っ込み続けてくる……おかしい、何が起きている?
不気味さすら感じる、確かに彼の力は私には遥かに及ばないはず……だが、この不気味さは……!!
「いい加減に……したまえ!!」
性懲りもなく突っ込んでくる紅蓮に、思わず死の眼の火焔を浴びせる……しまった、これでは跡形も残らないか
「ううう……おおおおぉぉおおぉぉぉぉおおぉぉおぉぉぉぉ!!」
焔に包まれる紅蓮、すまないな、どうやら処刑を済ませてしまったようだ……
「ハッハッハッハッハ!!クハハハハハハハハハハハハハハハッ!!」
――ッ!?焔に焼かれながらも、狂喜の声を上げている……!しかも……気のせいではない、彼が先程よりも強く激しい、緑色の光に包まれている!
そして紅蓮はまた、その身を焔で焦がしながらも、なお私に突っ込んでくる…!なんだ……!なんなんだ、一体……!?
実力では圧倒している、事実死の眼を発動してからは一度も奴に触らせてすらいない……!!
兵士達の声が聞こえてくる――
「な、なんだよあれ……!ば、化け物か?人間じゃねぇ、あんなの……!普通、とっくに死んでる筈だ……!」
「……そういえば、聞いたことがある……奴は劣勢になるほど、進化していく……!」
「進化の力を持つ者……Getter……!!」
「なんだよ、それ!?じゃあアレは、進化の結果なのか!?」
「それも頷ける話だろう……見ろ、あの闘争心…露骨なまでの攻撃力」
「凄い…あの精神力、負けることを許さぬ、集中力……!!」
「アレがアイツの凶器…!正気の沙汰じゃない……!!」
――進化……それが彼が未だに私に立ち向かう理由なのか?
……面白い……!まだ強くなると言うのか!これほどの異常性を見せつけて!!
間違いない…キミが親衛隊となれば、大きな力となっただろう!!
「フッ……いい、良いぞ!!来るがいい!!もっと私に立ち向かってこい!見せ付けろ、キミの進化とやらを!!」
「ヒャッハッハッハッハッハッハッハッハ!!アァァァァァァァァァァァァァァ!!」
「来い、限界を超えろ!目を見張る、その満々な意欲!」
私の焔に全身を焼かれ続ける紅蓮は、未だ私に拳を繰り出してくる
その拳を手で受け止め、捻じって腕の骨を折る
「変われ、進化し続けろ!!なりふり構わず、勝ちにしがみつけ!!」
既に内臓が潰れているであろう腹部に蹴りを入れ前方にふっ飛ばす、再度建物にぶつかって止まる
飛び上がった私は紅蓮の足に勢いを乗せた蹴りを入れ、足の骨も折る
「認めよう!これがキミの狂気!!正気の沙汰じゃ無い!!」
そして彼の身体を刀で一息に、貫く
「グ………オ………アァ……ッ」
それっきり、彼の身体は動かなくなる。彼の顔に刻まれていた緑に光る紋も消える
私は死の眼を解き、彼の身体に纏わりつく焔を消し去った
アレだけの時間、あれほどの焔に身を焼かれていたにもかかわらず、彼の身体は黒コゲにはなっていなかった
「……さすがは光姫様、傷一つ負うことなく紅蓮を倒すとは……」
「俺達とは格が違う、改めて思い知らされるな……」
「……今度こそ、逝ったかな?これで生きていれば……キミの進化は確かに存在する。親衛隊に迎え入れよう」
「だが、これで死ぬようならば……中途半端な危険分子は仲間にするわけにも野放しにするわけにも行かない。処刑完了と言うわけだな」
……ピクリとも動かない。ダメだったか……やれやれ、少し熱くなり過ぎただろうか……
刀を納めて、兵達に彼を弔うように命令する
兵達が、彼を持ち上げようと肩を組んだその時――
「……!!こ、光姫様!!い、息が!!息があります!!」
「――ッ!?何だって!?」
驚愕する――と同時に、ふと笑みが零れる。やはりそうだろうな……と、心のどこかで思ったのだろう
「フッ……はははっ、そうかそうか。それならば、埋葬はしなくていい。王宮に運ぼう、
カムイに治療して貰えばすぐにでも回復する」
「ハッ!仰せのままに!!」
兵達が紅蓮を担ぎ上げる。ふふっ、重そうだな……
「う、うわぁっ!?」
兵の悲鳴。それもそのはず、重症な筈の彼が自分の力で立ち上がったのだから
「ってぇ……やるじゃねぇか、完敗だなこりゃ。仕方ねぇ、約束通りにしてやるよ」
しばし呆ける
「っぷ……あはははははははっ」
そして、思わず笑い出してしまう
「な、なんだ!?なに笑ってやがる!馬鹿にしてんのか、てめぇ!!」
「いやいや、やはりキミは楽しいな。まるで底が見えない……これが、進化の力と言う物なのかな?」
「あ?なに訳のわかんねぇこと言ってやがる……そうだ、ちっと確認したいことがあんだけどよ」
「む、なにかな?今日からキミは私の部下だ、答えられることには答えy
ムニュッ
「おお、マジで女なんだな。俺ァてっきり男なんじゃねーかと……」
彼の頭を鷲掴みにする
「あだだだだだ!てめっ、なにしやがる!離せ!!」
「キミはたった今、私に大きな借りを作った。キミは金を持っていないだろうから、生涯私に仕えることを誓いたまえ」
「あ゛ァッ!?なにふざけたこと
刀を抜いて彼の喉元に突き付ける
「お……おう」
「ふぅ、全くキミと言う奴は……まぁいい」
なんだか毒気を抜かれてしまう。仕方ないな、あんな戦いの後で、こんなにも気持ちが晴々しいんだ
いつも通りかどうか、自信が無い笑みを浮かべる。満面の笑みになってしまっていたら、それは少々恥ずかしいからな
「なにはともあれ、
レゼリア国親衛隊へようこそ――流火紅蓮君」
END
最終更新:2024年04月11日 00:50