他所様のキャラの崩壊が非常に危惧されます、お許し下さい!
――――――がらくたの山に、一筋の光が降り注ぐ。
それは、月が輝く夜の事だった。
何の気なしに、散歩をしていた日の夜。
いや、或いはそう定められた運命だったのかもしれない。
がらくたの山に、埋もれた原石が月光に照らされ光った気がした。
掘り返してみれば、今死に絶えようとしている弱々しい命がそこにあった。
薄汚く、まるで既に死んでいるかのような生気のない女だった。
でも、何故か生かさないといけない気がした。
これもきっと、運命なのだろう。
私は尽きようとする命の灯火を、消すまいと尽力した。
その甲斐あってか、みるみるうちに女は回復していった。
暫くして、女が目を覚ました。
ひどく、怯えていた。
話しかけようとしたら「ひっ」と悲鳴をあげて避けられた、流石にちょっと傷つく。
私はここに至るまでの経緯、敵意がないこと、色々と話してその警戒心を解こうとした。
そしてまた暫くして、怯えたままだった態度は一気に改善した。
話しかけるだけで避けられることはなくなったが、それでも触れようとすると避けられる。
よほどの事があったのだろう。
それから、時間をかけて色々と聞いてみた。
名前は?という質問には
「わからない・・・」と、力ない返事が帰ってきた。
あなたは誰?という質問には
「わからない・・・」と、これまた力ない返事が帰ってきた。
あんな場所で何をしていたの?という質問には
「わから・・・ない・・・」と、苦悩に苛まれている返事が帰ってきた。
記憶喪失か、参ったなぁ。
しかし、こんな事では何も始まらない。
見たところ身寄りもなさそうだし、あっても拒絶されるような事に陥ってるのだろう。
そうでもなければ、あんな所に傷だらけのまま捨て置かれるなんて。
『あなた、行く宛とかあるの?』
「・・・えっ」
素っ頓狂な声だ、つまりないのだろう。
『ここで働くつもりはない?』
「・・・い、いいの、ですか・・・?」
『じゃあ聞くけれど、それ以外あなたはどうするの?』
「・・・。」
決まった。
『なら、決定ね・・・それと名前がないと不便だから、名前をつけてあげるわ―――そうね』
『アニマートよ、あなたは今からアニマート。』
せめてこの名前の意味のように、少しは死んだような雰囲気がどうにかなればいいのだけれど。
「あに、まあと・・・―――は、はい・・・はいっ、ご主人様。」
なんて、ちょっと懐かしい頃を思い出していた。
あの頃はあんなに弱々しくもなんとか生きているような子だったのに。
それがどうして、キスを求めて羨望の眼差しを向けてくる子になったんだか・・・。
はぁ、『運命かもしれない』、なんて安請け合いしなければよかった。
きっとこれは、運命の序章なのだから。
最終更新:2024年04月11日 03:00