決戦前夜、決壊前夜。

恐ろしい。

何と、恐ろしいのだろうか。

ああ、恐ろしい。

恐怖だ、これは恐怖。

どこから来るともわからない。

いつ訪れるかもわからない。

いつ終わってしまうかもわからない。

恐ろしい。

不可避の存在として、奴はそこにいる。

死は免れないだろう。

生きることはできないだろう。

これは僕が死ぬまでの過程だ。

次の瞬間には、奴が目の前に現れるかもしれない。

何一つ、抵抗を許されずに死ぬ。

足掻くこともままならずに、死ぬ。

嫌だ。

それは嫌だ。

死にたくない。

だが、恐ろしい。

それでも、やるしかない。

恐ろしい。

せめて、奴に一撃で殺されないような術を考えねばならない。

正しくあいつの攻撃は一撃必殺だ、そんな攻撃が嵐のごとく飛んでくる。

正気ではない、正面からなど戦っていられない。

だが、搦め手が効くような相手でもない。

一人で勝てない事なんて、わかりきっている。

だが、誰かに助けを求める事なんて、できない。

せいぜい、死体がそのまま増えるだけだろう。

それに、助けを求められる相手など、いないのだ。

誰一人、いない。

僕は、ずっと独りなのだから。

この世界に、僕の帰るべき場所は無い。

この世界に、僕の家族はいない。

この世界に、僕の―――はいない。



死にたくない。

どうして、こうなってしまったんだ。

恐ろしい。

生きたい。

どうして僕だけが、こんなにも苦しまなければならない。

どうして僕は、何度も死ななければならない。

どうして僕は、あいつに狙われなければならない。

わからない、わかるわけもない。

未知は恐怖だ、何と恐ろしいことか。

死にたくない。

戦わなければ。

生きていたい。

死なせたくない。

助けてほしい。

助けは、いない。

気が狂ってしまいそうだ。

戦わないと。

戦わなければ。

せめて、足掻かないと。

光の一筋すらも見えない。

希望の欠片なんて、見えもしないけれど。

戦わないと、いけない。

逃れられない。

今すぐにでも、逃げ出したかった。









逃げ場なんて、どこにも無いのに―――

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最終更新:2024年04月11日 03:31