悪魔城【Noct Queen】ep3-2

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 言葉を失うとはこのことだ
 正確には奪われたのだ

 二の句を言う暇もない
 10m先で起こった現象はただそれだけのことと捨て置くことはできなかった

 ニオの防御結界は間に合った。正面から対峙していた彼女は少女の振るってきたナイフの軌道を目視出来たし当然の結果、
チェック柄の半透明の壁が、刃先を粉にして削る
 しかししてそれにも関わらず赤が夜景に舞っていた

 後方から少女を止めようと奔走していたシェンの眉間には、
   ––––––––なんの手品なのか、一振りしか手に持っていなかったナイフと同型のそれが、二本目が過程を無視して突き立てられていた–––––––


「シェン!」


 純真な殺意
 もしも天使のように無垢な魂がこの世に生まれ落ちたなら、それはあらゆる事象すべてに躊躇はない筈だろう
 つまり目の前で行われたそれは子供という人間とはまたひとつ違う次元に位置する混沌<カオス>を体現したかのようであった

 当然のことを当然のように行う、我々は日々口にする食物がかつて命であったことを意識していない
 鳥の血に悲しめど魚の血に悲しめず、声あるものは幸いなり。つまりはそういうことだ、その程度のことだ

 結界越しにその惨状を正面から眺めていたニオもこれをただの現象として処理するには3秒ほどの時間を、
1分に感じるほどの3秒の中故障した論理空間の迷宮に一人放り込まれたかのような時間を要し、我に返った頃には


「疾ッ!!」


 再びの斬撃が結界の前に突き立てられる
 恐らくはセラミック製の刃こぼれしにくいコンバットナイフなのだろうが、刃は物理反射の作用を持つ結界に阻まれ粉を散らすばかりだった

 この行為には、その結果には、両者ともに目を見張った

 ようやくバックステップを踏み、少女がニオから間合いを離す
 それと同時に、ナイフの投擲、あるいは刺突を眉間に直撃させたシェンはぐにゃりと上体を反らせ、仰向けに石畳の床へ叩き伏せられていた


「ぎゃぁー!」


 先ほどまでムニエルに一心不乱に食らいついていた子供達もゾォットした
 目の前で人が殺された。少なくとも人と見えるそれが殺された、今まで行動を共にしていた孤児仲間によって
 彼女が危険だと判断したからなのか、仲間だと認識され少女共々報復に会うのが恐ろしかったからなのか、
蜘蛛の子を散らすようにして街角の暗がりへ飛び込み溶ける


「……」


 繰り返し行われら攻撃、一度仕損じたのであれば敵対象が反撃に転ずる前に畳み掛けるというのは凡百な素人の発想だが別段間違いでもない
だがしかしそれは、対象が特例な防御手段を持たない場合に限る。例えばそれが大楯であったり、対象以外の敵が存在した場合などだが、
この娘はそれを理解していない程でもない……ない筈だ

 なぜなら、魔女という単語を理解し、魔本という存在を認識し、ともすれば魔法による防御結界の存在を認知していないものだろうか?

 否、月光を背に今、私へ背ごしに一瞥を送ったこの少女は理解していないはずはない
 なぜなら魔女という対象を発見し攻撃を仕掛けてきた以上、彼女は【正教】の回し者か【他の魔女】の手の者である筈なのだ、魔法という非科学を認知している筈だ


「魔女さん–––––––––それは何かしら」

「–––––––––––」


 しかし攻撃の手を休め、暗く歪んだ瞳を相対した対象ではなく、その防御結界へ向け少女は問う
 その非科学の存在を、その実態の在り処を、今しがた自分が手にかけようとした相手に問いを投げかける

 この問を投げ掛ける間に、疑問にとらわれている間に死を持って回答することは容易だった、それだけの時間が存在した、
けれども、無防備とも取るべき少女の有り様に反撃する気など起きなかった……何より
––––––この少女の眼は【確信していた】。反撃など当たるまい、反撃など意味をなすまいと確信している眼の色だ


「質問を質問で返すようでごめんなさい、可憐なお嬢さん。どうしていたいげなアナタにそのような技をこなせるのかしら」

「…………」


 かといってニオにも、この言葉通りいたいげな少女に始末される可能性というものを考えている節はない
 腰にまで伸びた尾のような髪を振り子のように揺らし、小首を傾げ問いかける、
これを受けて少女は相も変わらず、これから殺しにかかるのであろうとは思えない無形の構えを取ったまま、
風穴のように、光を飲み、光を返さず乾いたままの虚ろな瞳でいとおかしと言いたげに対局方向へ小首を傾げて見せた


「––––––––“怪物”に何故そのように生まれ落ちたかと聞くようなことね。それこそどうしてなの?
                       どうして私はこのようにして生まれ落ちてしまったの?」


 ––––––ああ、これはまずい。非常にまずい
 遠目に二人の問答を【10m】という間合を護りつつ観察を決め込んでいたが、なるほど、これは非常に厄介だな……と、リズは心底苦い笑みを浮かべていた

 触れてはいけないスイッチに手を触れた、まあ地雷はそんなものだろう。そも埋まっているものを目視できれば今時そのようなトラップは流行らない
 人間の心理もまた地雷であり、彼女に『能力』について問うことはタブー?だったのだ、何故なら、『力』こそが、『技』こそが彼女の存在意義であり、
それに触れるという行為は砂浜に立った枝に触れるようなものだ。彼女自身が抱える耐え難い矛盾を気づかせてしまうようなものだ、
だが彼女は安心していい確信がある、何故ならこのような問答を始めるきっかけになった殺戮対象を始末すれば、彼女は任務を遂行したという己の再評価を得て矛盾に対する答えを放棄できるのだ

 ––––––– ともすれば、当然反撃してくる。得体の知れない力を前にニオが確実に対処できるという保証はない


「よしもういい。昼寝も対話も充分だろうよ、なあ
  死んでもないくせに人前で仏さんのフリしてるんじゃねぇって孔子様も仰ってるぜ」


 傍観者を決め込んでいたリズが沈黙を破るように手拍子を叩く
 それに釣られてか”少女”のみがリズの赤い瞳に一瞥をやり視界を奪われる、そこに隙が生じた


「––––––あいよッ!!」


 その一瞬が仇となった
 先程まで案山子のようにくたばっていたシェンが寝返りを打つようにして手を床につき、腕力のみで全身ごと中空へ放り投げ、
落下による加速と、回転による遠心力を乗せたローキックを少女へ振り下ろそうとしていた


 「 !? 」


 石畳の床が砂絵であったかのように風穴を開けて崩れ、砂塵が暴発し山のように盛り上がって四散した
 下級とはいえシェンは文字通りひとでなし、”鬼”という種族である以上空中から全体重を乗せた蹴りを床にお見舞いすれば、
立ち所にそれらはビスケットが如くああられもない姿になるであろうことは必然といえよう

問題はそこに血も涙もない。人がそこにいたという残骸が存在しないことだ

 少女は目を点にして息を切らし、シェンの着地地点から3mの距離を置いた位置に『蹴りが直撃するよりも前』に、
『既に1秒前から』そこで一部始終を見ていたかのようであった
 こちらに言わせれば『お前こそなぜ生きている』と言ってやりたいが、彼女また、そのセリフを目で訴えているのでこれを割愛する


「血が足りないといった風だな、立てるか」

「悪い。ど素人なのか獲物が鈍なのか知らんが辛うじて死ななかったってな具合だ
  目眩はするわ頭痛はひでぇわで最悪だ。おー痛い痛い、並の人間なら間違い無く病院行きだぞ」


 距離を離していたリズが、総計13m距離を離されたことで10mの間合いへ寄りを戻すように歩み寄りシェンへ平然と問いかける
 シェンの戦闘続行は期待できそうにない。種族鬼である以上肉体の頑丈さに任せて致命傷を防いだはいいが、
ナイフが着弾した眉間からは傷口から顎に至るまで赤い涙のように流血が続いていて呼吸も荒く、着地の際に片膝をついたまま動けそうにない


「それより魔女っ子、『見えたか』今の」

「–––––––––」


 最初に正面から奇襲を受けたのはニオだ
 結果的に直撃をもらったのはシェンではあったが、彼女は間違い無く正面から、最も近い場所でその一部始終を見ていたはずだった
 しかし彼女の返答はこうだ、『首を横に振る』
 防御結界も恐らく自動的に起動するもので、彼女自身それを目視して攻撃を防いだわけではあるまい


「お嬢、あんたは––––––」

「––––––ん? ああ、そうだな」


 息絶え絶えに問いかけるシェンの問いに対し、リズは目をパチクリさせていたが、腕を組んで余裕たっぷりにこう返した



  「”二回”も見せられれば充分だ。次は【見える】だろうよ
           –––––––––––––––– 眼が慣れてきた頃合だ」



 ようやく、爪を潜めていた蝙蝠少女がヒールで夜想曲の音を奏で始める
 一歩、『10m』という間合いを護り続けていた彼女がその一線を自ら破り、
先ほどより一歩づつ後退しこちらの出方を伺いテリトリーを違えた虎のような不安の混じる瞳を向ける少女を、
宥めるように、甘やかすように妖艶な赤い瞳を横たわる月が如く笑みで細めた


「あなた達、何者–––––––」

「”ひとでなし”だよ、可愛い可愛い小さなお嬢さん。
 神父からはそう教わったのだろう? だがそれは間違いだ、君が今まで相手取ってきたのは”ヒト”であり君もまた”ヒト”でしかない
 刺されれば死ぬし、そも君の能力など認識するまでもなく初見でくたばる」

「––––––––」


 『何を今更』、怪物としてひとでなしを殺し続けてきたのであろう彼女は声をあらあげそう口を挟もうとしたのだろうが、
後述の怪物という定義の否定により口をつぐみ押し黙らされる
 それもそのはず、神父の教えも彼女の怪物の定義も全て、『事実ではなく』『倫理観による』『思い込み』でしかなかったのだから、
だから本物のひとでなし、本物の魔女に相対した時、それを今まで簡単に屠ってきた怪物と照合が不可能になったその時、
薄々予感めいたものとして楔のように深く突き刺さっていた事実への恐怖が、現実味を帯びてきたのだから


「さて礼節を弁えぬ嬢さん、
 相手の素性を知りたければ己から名乗り出るのが筋というものだが、神父の教えからしてそれは心苦しかろう」
 だから、私が代わってご紹介さしあげよう、君が”怪物”と自らを名乗る所以を。何、ただのハッタリだと思って、肩の力を抜いた上でご静聴くださいませ」


 一歩一歩、子守唄を紡ぐように優しく包むように語りかけながら間合いを詰めていく
 だがその足は『ある地点』で足を止めた
 その『距離』を目の当たりにして少女の心持ちはいよいよ穏やかではいられなくなったようで、喉笛を掴まれたかのように息を詰まらせていた 



「–––––––お前、『3秒先の可能性を弄った』だろう?」



 当たらずとも遠からずといったところか
 沈黙を守り、彼女の周りを円を描くようにして歩を進めていた私を目で追っていたが、
すっぽりと顔を覆うフードの影の中、ガラス玉のような目が小さく痙攣した



「10mと言う間合いを私は厳守し続けた。だがそれは偶然だ、偶然、最初の襲撃でキミはシェンとニオの二人に攻撃を仕掛けた
 だが君ほどの殺人鬼であればその瞬間に直接干渉しなかった私や、ただの孤児仲間といえど目撃者はその力を持ってして殺害できたろう
 だがそれはしなかった、いや”できなかった”というべきだろう」

「瞬間移動の類かと最初は思いついたものだ。だがそれでは一瞬で行う『同時攻撃』の説明がつかない。シェンが一撃もらったのも、ニオの防御結界が作動したのも一寸のぶれなく同時であった
 では、私の経験上それを可能とする能力は『時間停止』だ。私に攻撃を仕掛けられなかったのは止めていられる時間の制限と説明がつく、だがしかし時間停止ならな、『ニオの防御結界』は作動しないんだよ
 そも止まった時間を自由に行動が可能であるならば『過程を無視して』ニオの喉笛を引き裂くぐらい用意だ」

「だから基本に立ち戻る。ここでニオを殺害したとして、後方から迫るもう一人の敵に捕まってしまえば戦線離脱は不可能、ご主人様の情報を引きずり出される
 ああ、今この一瞬の中で目の前の魔女も、後方の敵も同時に殺せたらいいのに! 二つの選択肢を、貪欲に両方実行できたらいいのに!」



   「そう、それがお前の『根源』だ、”血染めのジル”」



「お前は立ち止まって目の前の魔女に問答することも、飛び退いて距離を置くこともできた
 あの時点でお前は”両方”を実行していたんだ。お前は二つの結果を同時に体現した」

「”3秒か5秒”が限界か?
 選択肢が無限にあって全てを実行できるなら私を最初の襲撃で攻撃の対象にできた
 いやさ不可能だな、10mと言う間合いを『3秒』で詰めるのは、小さなお嬢さんの足ではな。私がよく身をもって理解しているとも」

「タイムパラドックス。無数の選択肢によって枝分かれしている未来を一本に束ねる万華鏡、そうだろう?」


 ––––––ハッタリだ
 顎に手を添え黙りこくって沈黙していたニオも、薄ぼんやりとした意識で戦況を見守っていたシェンもそう考えた
 何より証明がない、リズの推理は大雑把な憶測に基づく空想の域を脱していない、だからこれが何に功を成すかといえば、
それこそハッタリによる時間稼ぎ……その程度のものに見えた

「–––––––フフッ
 あははッハァッッははははははははははははははははははは!!!!!!」


 彼女もそう考えたのだろうか
 先のような怯えも動揺も、愉悦で塗りつぶされたかのようにフードの影で高笑いを天空の月に捧げた
 心の底から微笑んでいる、心の底からおかしくてたまらないと感情を吐き出している、
しかしどういうわけか、それは瞳に映るのは喜びという今の彼女の現状からして体感するには程遠いであろうはずの感情だった


「『その通りでございます』と、応えたら何が変わるの?
  ひ・と・で・な・しのお嬢さん! 私のチカラが何であれ」


 少女が再びそのナイフ問いう牙を袖口から覗かせる
 一歩、子供にしては十分に素早いと胸を張れるであろう速度でリズへ間合いを詰める、その際に風圧で浮いたフードの下に、
口元を引き裂いてニヤリと歓喜に震えるマスクが攻撃際に移りリズは実感した–––––ああ、自分もこうして今、微笑んでいるのだと


「–––––あなたがここで死ぬことに変わりはないというのに!」


 月光を歪める三つの斬撃が、風車のような軌跡を描き3方向から一寸のズレなく同時に襲いかかる、
 喉笛を切り裂き、脈を抉り、心臓を射止めたのであろうその凶器が今目の前に存在し肉薄してくる
 交わせない、これはまぎれもない事実だ、回避不能の魔剣と称するに相応しいであろう

「フッ」


 ざまあみろの笑いがこみ上げて止まらない
 回避は不可能でも防げないということはない
 いやそもそも、”今”の私なら回避でさえ容易であった





  ––––––––––––––––––––




 彼女にとってはそれが刹那にして永劫のように感ぜられたであろう
 例えるなら生まれると同時に母体から吹き飛び空で老体に至り、そのまま墓標へ墜落し一生を全うしたといった感じだ


「……?」


 三連同時の斬撃はいずれもリズに達することはおろか、小指の皮一枚でさえ傷つけることすら叶わなかった
 その何れもが、それこそ彼女の目からは”過程を無視したかのような”速度で叩き落されていたのだ


「えっ……え?」


 何度そうしたことだろうか
 全くの無傷という結果を守り通したリズを、ひとでなしを前にしてジルは何度も何度もナイフを空振りさせた
 刃折れの、牙を削がれた犬のように惨めな狂気を


「どうした、よく狙いたまえよ血染めのジル。ここだ、
       ––––––––––––––––––––“私はここにいるぞ”」


 トントンと顳顬を指でノックし意地悪くひとでなしは微笑む
 その右手には先ほどまで存在しなかったはずの、ジルにはよく見覚えのある色で構成された剣、
血造の両刃剣が握られ、彼女はそれをポールのように振り回し円を描く威風を巻き起こし、
粉微塵に砕け散ったナイフの先端を花弁のように舞わせてみた


「お前の斬撃は別次元の結果を引き寄せて起きるもの、だから普通の人間には見えもしないし認識もできない
 だがな、私のそれは目に見えるが”認識はできない”。単純な超スピードでしかない。ただの”人間”の肉眼には直視できまい」

「嘘、嘘よ––––– ありえない。こんなことは一度もなかったこんなことは一度もされたことはなかったこんなことは
                  ––––––––––––––怪物<私>にしかできないはずたったのに……………………ッッッ!!!!!」

 カチカチと歯が浮く音が真っ向から向かい合えばこそ骨身に響く
 心底血染めのジルを不幸に思う、哀れみを覚えるなぜなら–––––


「そうか、そうやって”忌み嫌われる存在”であることに縋っていたんだな、お前は」

「知ったような…口を––––––!!!」


 彼女の懐から鍔鳴りが響く
 “折れていない”どころか刃こぼれ秘湯ない新たなナイフが覗いた。予備、いやさ違う、『一度も振るわなかった時空』のナイフか、器用なものだが–––––


「–––––––”観えて”いるぞ」


 軽く血造の剣を振るってやる
 赤い奇跡が三日月を描いて振り上げられた刹那、”プツリ”と弦が切れるような音が響いた

 それを合図にしたかのように、ナイフは実態を失い消失してしまう


「–––––!!!? は? え……?」

「怯えるな。言っただろう、お前の能力は”視えて”いると
 –––––––––時間とは糸のように連なっているもの、それらを一つに束ねる際にどうしても綻びというものが生じる」


 タイムパラドックスというのは時の流れという複数の糸を一つに紡ぐ行為
 だがそれはずべての時空に干渉するほどの強大な力ではなく、一箇所、目視できればそれこそ糸のように細い光を紡ぐというもの

 その糸というものは『異能』に耐性のあるものであれば、”慣れれば”目に移すことができ、そしてそれを断ち切ればパラドックスは存在しなかったことになる
 ありていに言えば能力を無効化できるわけだ

 運命の赤い糸という語源は、この灯りを目視してしまったものが指摘に表現したものなのかもしれない
 そして今–––––運命は手繰り寄せられた


「お前には見えていないだろうがな。お前の力は、青と紫が折り重なった虹のようで……凄く綺麗だ


        「返礼に見せてやろう、そしてハジメマシテ、名前のない怪物
                        私が、私こそが正真正銘の悪魔だ」














 夜が降りてきた
 それはそれは、なんと言い表せばいいのか
 気付けば目の前は赤一色、それが当たり前の日常だった
 どんなに着飾っても、どんなに繕っても私の目の前は、私に触れた人間はどうせ皆鮮血に沈む
 ならば色彩など不要、灰色に染まってしまえ。そう思い始めた頃、茶色だった私の髪は銀に刃の色に変わった
 これがw多脚なんだな、これが私という怪物なんだ
 むしゃむしゃ、むしゃむしゃ
 毎日毎日、手に持った牙が、私という断罪の剣が赤く染まる、今日も染まる、昼も夜も赤と銀でワケがわからない
 けれど


          「ハジメマシテ、名前のない怪物
                     私が、私こそが正真正銘の悪魔だ」



 それは久方に見る夜に舞い降りた
 それは翼?それとも力の具現? どちらでもいい

 背に”虹色”を燃え上がらせ、時計塔?の屋根に足を揃えて降り立つその少女を私は
 心の底から『美しい』と思った
 この色彩を、いつまでも感じていたいと思った




To be conténed



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最終更新:2025年01月21日 03:17